昭和の悪霊は、魂を寄越せば栄光の日々を与えようと言った
ご承知のように、民主党大会が開かれました。なんと覇王とともに轡を並べて戦うそうです。鳩山首相も「どうぞ検察と戦ってください」と、小沢一郎氏に檄まで飛ばしました。
ひとつの政権が、検察司法と全面対決に突入するという異常事態が始まったのです。
また、毎日新聞によれば、この男が鳴り物入りで行った政府への「陳情」なるものの内容がわかってきました。
民主党の小沢一郎幹事長が2010年度予算編成に向けて鳩山由紀夫首相へ提出した「重点要望」のうち、目玉項目となったガソリン税の暫定税率維持や子ども手当への所得制限導入について、実際には各種団体や自治体からの陳情、要望はなかったとみられることが17日、分かった。複数の党関係者が明らかにした。
やっぱりね。そうじゃないかと思っていたのです。形式的には各党に上がってきた「陳情」を、党務の責任者としてのこの男が、政府に「陳情」するという形式ですが、内実は政府の上にそびえ立つ覇王による政府への恣意的な政策のゴリ押しだったというのが、はしなくもバレてしまったようです。
民主党幹事長室の陳情箱の中には、私たち地域の有機農業推進協議会の陳情書もあったはずですが、そんなものは眼の端にもなかったと見えます。ま、ゼニになりませんからな、わが有機農業は。
さて、彼は「陳情」の聴取を、従来の選挙区の議員から取り上げ、いったん県連に集約した形をとった後に、中央の幹事長室に一括集約するというシステムに作り替えました。これによって、民主党議員は陳情を聞き取ることも、添え書きひとつもできず、かてて加えて議員立法も禁止という議会で手を挙げるだけの存在に成り下がったのです。
このような党の政治体制を民主中央集権制、別名全体主義といいます。
この陳情聞き取り禁止の名目をこの男は、体裁良く「政-官-業の癒着を断つ」としました。しかし、ちょっと待っていただきたい。この男だけにゃあ言われたくはないですな。今政界を見渡して、この男ほど絵に描いたような政-官-業の談合そのもののをあいもかわらず、大っぴらにやって恬として恥じないヤカバラはいないのではありませんか。
談合本家の自民でも、今や彼のような「利権工学」の域にまで達した者はいません。
たしかにかつての自民党政治は、議員に業者や住民が陳情をするのを官僚に仲介する中から、政-官-業の談合腐敗構造で下から支えられていました。これが自民党政治の温床であった金権構造です。
たとえばODAがあれば、必ずコンサルタント会社があり、それが政治家を仲介して外務省を動かし、その3~5%をコミッションとして政治家が自分のポッポに入れたと言います。このODAがらみの最大の闇が、中国利権でした。
これは田中角栄が「井戸を掘った」(中国側の表現)ことにより、旧田中派が一元的に握ってきました。田中-金丸-橋本と連綿と続く中国ODAの利権のやり口をもっとも知悉していたのは、誰あろう田中-金丸という流れの直系本流にある小沢一郎その人だったはずです。
そう考えると、なぜこの男が毎年几帳面に年末北京詣でを続けたてきたのか、そして日本の最高権力者になった今、国会会期を調整してまで、なぜ160名の現職議員、そして随行合わせて600人もの恥知らずの北京参拝団を従えたのか、あるいは、中国共産党の御曹司に天皇陛下を強引に会見させる必要があったのか、その理由の一端を説明することができます。
ダム利権、道路利権、土地改良にまつわる利権など、自民党がなしてきたすべての談合構造を知り尽くした彼が考えてきたことは、自民党の持てるすべての利権を自らに吸い寄せること、そっくり自らの下に移し替ることだったのです。
そして利権の全面的な移し替えのためには、「政権交替」が必須でした。ある意味、旧民主党も利用されたのかもしれません。しかし、昭和の悪霊に乗っ取られ、それなくしては何も出来ないようでは、乗っ取られてあたリまえです。
今回、民主党が唯一生き延びる方法は、この男をいったん検察の捜査中は休職させて空位にし、それの責任をとった形で鳩山首相が辞任した上で、前原氏などに代表を交替し、新代表の元に第三者を交えた党内調査委員会を作る危機管理体制だけだったはずです。
この陣形ならば、仮にこの男に検察の鉄槌が振り下ろされようと、あるいは助かろうとどちらにも対応できるはずでした。鉄槌ならば、休職を辞任にすればいいだけですし、セーフならば復職すればいいだけです。
しかし、民主党は最悪の方法をとってしまったようです。つまり、昭和の悪霊と轡を並べて戦い、そしてこの男と共に地獄にまで落ちるという。悪霊は空虚な者にしか憑依しないというのは、どうやらほんとうのようです。
かつて悪霊は彼らを訪れ、お前らの力ではとうてい見ることが出来ない栄光の日々を与えようと約束しました。
そしてその引き換えに、魂を奪っていったのですから。
■ 写真 満月の下の農場の宵
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