私には辺野古の地が三里塚の菱田に見えますよ
昨日の夜半からみぞれに変わった雪は、夜に雪となりました。私の地方は鹿島灘と、ふたつの湖である北浦、霞ヶ浦にはさまれた温暖な土地ですので、雪は年に数回にとどまります。
ところで、こんな雪が降って、おかしなことにかつて入植した雪など降らない沖縄のことを思い出してしまいました。農業というのは適地適作というように、農業生産のそうとうな部分をその土地の有り様が決定してしまいます。たとえば私が最初に入植した沖縄名護の山の中だと、荒くれた山の石まじりの酸性土壌、おまけに傾斜地という三冠王。
そして市場までトラックで往復2時間という四重苦。沖縄やんばるとはそんな生きていること自体が大変な土地でした。
辺野古問題を私が単なる安保問題で考えられないのは、あの沖縄本島北部ヤンバルの生きることすら大変な地域を実感で知っているからです。私が沖縄に住んでいた時に訪れたヒヌクは、東海岸の大浦湾というこぶりな美しい湾に面した寒村でした。
復帰前までは細い道が、波に洗われるようにくねくねと続いていたそうです。この猫の額のような土地に、へばりつくようにして生きてきました。農業も漁業もままならない、
そこにキャンプ・シュアブや辺野古弾薬庫ができ、基地のほうを見れば、 夜でも不気味な赤い光が煌々と警戒している土地になります。これも基地の米兵相手の上がりは少ないので、コザやキン(金武)の賑わいとは比較になりません。軍用地代しか期待できないので、若い者がシマ(村)から出ていくしかなかった土地です。しかし、そこで生きてきました。
ここに降って湧いた普天間移設問題。基地をメガフロートという環境負荷が少ない方法にするのか、それとも埋め立てによるのかの工法でひとモメありました。メガフロートなどでは、地元の国場組などの建設業者たちが納得しません。そんなハイテク工法では、「わったぁらは支柱のペンキ塗りくらいしか仕事がないさ」と騒いだそうです。
結局、埋め立てによる従来工法が採用され、ジュゴンの海は沖縄内部の利害によって埋め立てられることに決まりました。ちなみに、沖縄本島の海岸線の生態系は、軍事エリアは比較的保全されています。軍事目的意外に彼らは関心がないからです。一方、他の民間エリアは、ホテル建設などのレジャー施設の潟の埋め立てや、排水による汚染は目を覆うものがあります。なんとも皮肉なことですが。
そして基地移設を条件として投じられた北部開発予算という名の延べ14年間数千億円もの国費、これが沖縄県、そして名護市長岸本市長をも惑わせた金です。たぶん名護プランの立案者である故岸本さんはそこにプランの原資を見たのではないでしょうか。地方行政官にとっては財源は命ですから。
そしてその北部開発予算の中に、調査費という「領収書のいらない金」が潜ませてありました。議会対策費や地元、対策費に使えという一種の官房機密費のような性格の金です。それが一説数百億円。地元対策費というのは、要するに地元を宥めるための金です。これがとうぜんのことのようにして、建設反対派の側にも流れ込んだと言われています。このようにして、地元の「村」は分断され、そして腐っていきます。
かつての成田、私には三里塚というほうがしっくりくるのですが、国策による巨大建設事業は地元を狂わせます。しかもそれが失政であった場合、そのリカバリーとして、また巨額な国費が投じられます。
構図は三里塚で見たものと同一です。国策の失敗がまずあり、それが国家政策の中枢が故に誤っていたとしても国としても譲れず強行し、そのために多大な国費を投じる。
国は、札ビラで農民の頬をはたくようにしてひとつひとつの村を滑走路の下に埋めていきました。拒否する者には、強制代執行と逮捕下獄が待っていました。
あるのは、農民の涙と血と、そしてゼニ。ありえない金を吸ってしまった土地。そして修復できなくなってしまった「村」。
私には辺野古の地が三里塚の菱田に見えますよ。そして埋めたらてコンクリートの下に消えるかもしれない辺野古の海は、今は消滅した駒井野部落に思えてなりません。こんな綺麗な雪景色の空の下で考えることではなかったかもしれませんが。
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コメント
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う~ん、なるほど…。ブログ主様ならではの実感だ。道理に足が生えている物言いだ。わかりました。
投稿: 余情 半 | 2010年2月 2日 (火) 15時23分