シー・シェパードの論理とは
パタゴニア日本支社に対するシー・シェパード支援を止めるようにと訴えた私の抗議メールには未だ返答がありません。しかし、パタゴニア日本支社の広報担当者はこのように会見で答えています。
「当社のビジネスは最高の製品を作ることはもちろんですが、『環境危機に警鐘を鳴らし、解決していく』という理念があります。シー・シェパードの考え方もそうした方向性であり、シー・シェパードに賛同しない方もたくさんいるとは思いますが、賛同しない方々に対してもご説明し、理解していただけるよう対応したいと思っています」
シー・シェパードには強固な論理的な背骨があります。彼らの行為は一見、バットマンカーまがいの抗議船にうちまたがり海賊旗すらたてて、レーザーや矢を射るようなマンガチックなテロリストにすぎません。
彼らはある種の酔狂人にすらみえます。しかし、彼らの行為には独特の正義感とそれを徹底して実行に移す「狂気」があります。これが多くの、エコロジー団体と彼ら「エコ・テロリスト」を分ける一線でしょう。
いまやあまりにも有名になったシー・シェパードの首領であるポール・ワトソンは元船員で、グリーンピースの抗議船にも乗り組んでいました。彼は船員という特殊技能とその類まれな行動力でグリーンピースの中で頭角を現しました。
貨物船に乗っていたワトソンは筋骨たくましい男で、アーミージャケットにありとあらゆる反権力のパッチをつけていた男だったそうです。インテリが多い初期グリーンピースの中で珍しく役に立つカッコイイ奴だったでしょう。同時に彼も心秘かに思っていたのでしょう、「こんなヌルイ方法じゃあどうにもなんねぇ」と。
彼がグリーンピースと袂を分かったのは、1977年のタテゴトアザラシ猟に対する反対運動でした。ワトソンはタテゴトアザラシの毛皮に染料をかけて商品価値をなくそうとし、狩猟者と暴力事件に発展します。その中での彼の暴力行為に対して、グリーンピース指導部は彼を厳しく批判します。その言葉はワトソンにとっては屈辱的だったことでしょう。
「君には判事と陪審を務める権利はないのだ」、「ひとり自警団を任ずる権利は君にはない」
この彼への言葉は、後の彼らを思うと暗示的です。このようにしてワトソンはグリーンピースを追われ,シー・シェパードを作ります。彼は、このときに大きく一線を乗り越えたのでした。シー・シェパードはグリーンピースから放り出されたいわば分派だといわれるのはこのような理由からです。
では、このようなグリーンピースの批判にワトソンは、・・・後にエコ・テロリストといわれる人たち・・・はどのように反論したでしょうか。それはこのようなものです。
われわれはテロリストではない。ほんとうのテロリストは他に存在する。原生林を破壊し、リゾート目的で汚水を流し、毛皮のコートのために希少生物を殺す。「自然の権利」、「動物の権利」を奪っているのではないか。
ワトソンたちはこのような状況を「急迫性」をもった状況だと捉えます。そこまではいいとしましょう。私もそう思います。次に彼らは、このような状況に対して仮処分という法的概念で対抗しようとします。仮処分とは、「いったん起こったら回復しえない重大な侵害に対して、当面の回復を保存する」ことです。
では、政府でもなく、ましてや産業団体でもないワトソンらはどうするのか?なんの権限も、力もない彼らはいったいどうやって「仮処分」を執行するのか?
彼らの回答が、テロです。
ぜったいに許してはいけません。そのような恣意的な「正義による仮処分」をまかりとらせてはなりません。
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