春だからしたい、種と交配のお話
村のそこここでは、路傍に川辺に菜の花やとう立ちしてしまった葉物野菜から菜の花が満開です。ちなみに写真はホンモノの菜の花です。
葉物野菜をとう立ちさせておくと花が咲き、インゲンのような莢が出来、黒く熟して弾けそうになれば種が採れます。晴天無風の日に、大きな青シートを拡げてバサバサと茎の根元を持って叩いて莢を落として、後はのんびりと余分なものを捨ててふるいかけていきます。ふるいを何度か通して自家採取の種となるわけです。瓶に詰めてシールを張っておきます。
菜種の場合は、油絞り屋さんに持ち込んで絞ってもらいます。前にこの菜種油製造実験をやったことがありました。そのうちお話しましょうね。結論だけ簡単に言うと、作るのは簡単、種だけに仕分けるのが大変。たぶん何かの選別機械があるんだろうなぁ。
さて、自家採取の種を採る時は畑の一角に同じ系統の他種の野菜を植えずにとう立ちをさせて種を採取します。
これまた言うのは簡単で、実際たいした技術がいるわけではないのですが、問題は異種交配しちゃうことです。たとえば、私の経験では、小松菜とたぶんコウタイサイかなにかがかかってしまって、薄紫色の小松菜というなんとも面妖な新野菜が出来てしまったことがありました。
この交配という神の業は、在来ミツバチ諸君やチョウ、時には風がせっせと交配にいそしんでいただけたおかげであります。種の拡大戦略というやつですな。花は一種のネオンサイン。こっちゃ来い、おいしい密や花粉があるでヨー(←なぜか名古屋産)と誘っているわけです。夜の蝶ならぬ、昼のハタラキバチ。
ですから、自家採種をする場合には、専門の種会社では、離れ小島とか、四方にまったく畑のない専門農場ですると聞いたことがあります。私たちでも原理は一緒で、今年はこの種を残すと決めたら、私はこの一種のみとしています。別の品種は離れた場所でやります。
ただ、現在の野菜の種はF1といってハイブリッド種のカクテル品種ですから、次代になると形質が分解してバラけていろいろな種が出てきます。おや、あんたの中にはこんな形質が眠ってたのねってもんです。
それらをできるだけ原種に近く戻すためには、そこからもう何世代もかけて、原種に近いものを選抜してそれを残し、また翌年出来たものから選抜し・・・ということを繰り返していきます。これを戻し交配といいますが、まぁ、けっこう気が長い仕事で、5、6代で終わればいいかなといった根気が勝負の仕事となります。
私たち農家が、特に化学農薬を使わないで栽培している有機農家が原種にこだわりたがるのは、在来種のほうが耐病性が高いからです。いじりまくられて生産性がいい消費者受けする品種はどうもひ弱なものが多いのです。
在来種の保存運動はもうかなり前から始められており、先に言った戻し交配ではなく、生産者同士で交換した在来種の種を自家採種する場合がほとんどです。
というのも、苦労して原種に戻したからといって、消費者の口にあうとは限らないわけで、むしろいじりまくって、原種から魔改造をしたコマーシャルな野菜のほうが好評てなことはザラにあります。
たとえば、その典型がトウモロコシです。原種のトウモロコシは中南米原産ですが、日本人のように茹でて食べるということはしません。よく干してから、石灰を入れ水煮をして、あく抜きをしなければなりません。それを石のセンタク板みたいなものですり潰して粉にしてから、パン生地にしたのがメキシコのトルティーヤです。
わが日本では、例によってガラパゴス的発展をとげて、今や砂糖キビのような大甘の品種まで作り出される始末。当然柔らかいものが好まれて、生食可などと、インディオが聞いたらのけぞるようなものさえあります。
ちなみに原種の中南米トウモロコシは、ハードボイルドなまでに甘さなどこれっぽっちもありません。色も黒あり、茶色あり、大小ありで、まぁ、日本のトウモロコシとは、別な品種と割り切ったほうがいいのかもしれません。
そんな人間サマまの思いを知ってか知らずか(知るわきゃないが)、在来ミツバチは今日もアッチの花粉をコッチに、コッチをアッチへとぶんぶん飛び回っております。
■写真 菜種とニホンミツバチのコラボ風景。ミツバチの羽はその超高速羽ばたきによって空中停止も可能というすぐれものです。
ちなみにセイヨウミツバチは、屋外に天然の巣を作ることが出来ず、越冬ができません。ですから、セイヨウミツバチは、飼育されても、日本の自然界では拡大できないわけです。外来種による自然生態系攪乱がみられない例です。
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なるほど!
「菜種とみつばちと菜種油売りのおばあさんの売り言葉と初夏のなま暖かさ
」が私の幼少の原風景にありましてね。こういう写真が楽しくうれしいですね。ブログ主の物の語りには知らないことばかりで、‘ふ~ん’です。アイ・リスペクトです。あったかい人柄なんだろう、ちょっとおっかないけど(ゴメン)。
ところで、「とうだち」という言葉や野菜に起きる現象を知らないのです、多くの消費者が。悲しくなる…。こころない、問いかけに。いや、こころ持ち直して、「“とうだち”といいましてね」と話し返そう…。そうだ、よい社会をつくるんだ。
ところがねぇ、(あんたのことだよ)なんて言い出しかねないのね。人間いつまでも修行しなければいけません、ハイ。
モズクも徳之島の牛もヤンバルもジュゴンの海も踏みつぶさせたくない、よ!蜜蜂だって。ごくつぶしの軍隊に
投稿: 余情 半 | 2010年4月13日 (火) 10時08分