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2010年4月24日 (土)

アイスランド・ラカギガル火山大噴火は「火山の冬」をもたらすのか?

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信じられないような春です。 太陽は弱々しく、もう5月だというのに、最低温度が4度などという考えられない記録を出しています。4月17日には、とうとう気象観測史上いちばん遅い雪までも降る始末です。いつもだったら、汗ばむ陽気の季節に冬支度で農作業をする毎日です。

農家は怯え始めています。私たちにとってもっとも恐ろしい冷夏の予感が脳裏を横切るからです。村の農家仲間の挨拶がわりが「いったいこの天気どうなるのか」になってしまいました。田んぼの水温は上がらず、これではゴールデンウイークの田植えはどうしたもんかと腕組みをしています。ハウスの園芸栽培もののトマト、キユウリなどは軒並み加温をせねば出来ない状況です。よもや4月にボイラーを炊くとは予想もせぬことでした。

アイスランドのラカギガル(Lakagígar)火山の大噴火は北半球の全体の航空路のみならず、経済全体への深刻な影響を及ぼし始めてきました。実は、このラカギガル火山はいわば魔の山です。

このラカギガル火山大噴火の真の恐怖は、単に航空路のマヒにとどまらず北半球のみならず、全地球規模の気象変動に影響することです。今回の噴火は前回の噴火が1821年にあったので、189年ぶりとなります。それ以前には、1783年6月8日に始まり、1784年2月7日まで8か月も続いた記録が残っています。
規模は1991年のピナトゥボ山の噴火に相当すると見られているそうで、この大噴火により数億万トンもの有毒な二酸化硫黄が放出され、それが雨と共に降り注ぎました。

また、この硫化酸化物を含んだ酸性雨の影響だけではなく、噴煙が成層圏に達し、ジェット気流に乗って酸化硫黄の微小粉末をまき散らしたために「火山の傘」を作ってしまいました。この「火山の傘」が北半球全体を覆い尽くしました。これにより、北半球は急激な気温低下に見舞われました。これが「火山の冬」」(volcanic winter)という現象です。

このとき、噴火で成層圏に吐き出された二酸化硫黄は、単なる火山灰などや煤と違い、長期間大気中で霧態で浮遊し、太陽光を遮断するために甚大な影響を与えます。

この影響は東半球にもすみやかに及び、ラカギガル火山が噴火したほぼ同時期の1782年から87年にかけて、江戸期4大飢饉(嘉永、享保、天明、天保)の天明の飢饉が勃発しています。

これは「近世の飢饉」(菊地勇夫・吉川弘文館)に詳述されています。この天明の飢饉は、江戸後期の爛熟した商品経済が、大阪を中心とした米相場の投機を発生させ(ちなみにこれが世界最初のヘッジファンドですが)、大凶作による品不足を投機の対象にしたことも拍車を掛けました。なにか、現代にも通じる構図ですね。また、浅間山の噴火も同時期に重なったことが被害を大きくしました。

西欧でも同様に深刻な寒冷化のために全土で飢饉が勃発し、社会不安が勃発し、1789年のフランス革命へとつながっていく素地を作りました。

さて今回、ほとんどのメディアは、能天気にも航空路の麻痺とその与える経済的影響にのみ報道が絞られているようですが、真に怖いのは今回のラカギガル火山の噴煙が、高さ1万6千メートルから成層圏上にまで及んだとBBCニュースなどで報じられていることです。

既に寒冷化に向かって気象変動の予兆が見られます。噴火後の北半球全体はいっせいに寒冷化を始めています。米国北東部では冬の平均気温が2℃からからマイナス6℃にまで一気に低下しました。

現在のわが国の寒冷化がこれと無関係だとは、逆に考えにくいことです。とするとこの急激な寒冷化現象は、未だ憶測の域を抜けませんが、二酸化硫黄の微粒子が地表に完全に落ちきるまで太陽光を遮蔽し続ける「火山の冬」現象が既に起きている可能性があるということになります。

1782年のラガギガル火山の大噴火は約1年8カ月続き、天明の飢饉は1782から87年までの5年間続きました。現代のわが国では、農業技術の進歩により、一挙に深刻な凶作はないと思われますが、燐国の中国に巨大な農業生産不足からくる飢饉が発生した場合、中国は有り余っている外貨で、国際市場から穀物や燃料、畜産物を買い占めることが予想されます。

このような事態になった場合、中国国内で沸点に達しつつある内陸部貧困地が大きくきしみ、次いで国際食料価格の高騰により、発展途上国の食料危機が連鎖することでしょう。
これとリーマンショク以降の世界的経済危機から回復仕切れずに呻吟している先進諸国の経済状況が影響し合うと・・・、もうあまり考えたくもない事態に進むこともありえないことではありません。

まず直近には、この夏から始まる深刻な米や野菜、畜産物の高騰はもはや避けられず、むしろこれがどれだけ続くのか、それに対する政治経済的な手当てや、国際的な枠組みをどうするのかという次元に問題は動いていくと思われます。それにつけても、わが国がよりによってこんな時に限って、自分の政権公約の尻ぬぐいも出来ないような政権しか持ち得ないことは悲劇です。

たぶん数年後には、地球温暖化危機なんてことを真顔で言う人はほとんどいなくなりそうです。

私はこんな予想があたってもうれしくもなんともありません。むしろ狼少年だといいと思います。なぜなら、わが農業にとって温暖化より10倍も怖いのが寒冷化なのですから。

■写真 弱々しい太陽
■BBCはいつも的確です
Live: Volcanic cloud over Europe
■身の毛もよだつ噴火の画像を見たい方はこちらを。「ロード・オブ・ザ・リングス」のCGみたい。http://www.boston.com/bigpicture/2010/04/icelands_disruptive_volcano.html「Iceland's disruptive volcano

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コメント

私の住んでいる町(アメリカ)も昨日は雪でしたし、春とは思えない肌寒さでした。

今回のアイスランドの噴火は91年のピナトゥボに比て桁違いに規模が小さく、幸いなことに気候変動をもたらす可能性は小さいと見られているようですが、今後も注視しておく必要があります。

現在の寒冷化の原因は、太陽活動など別にあるように思います。

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