何にも使えない有機農業支援新予算
新有機農業支援予算、とるべきか、とらざるべきかでこの毎日うなっています。そうとうにきついというのが実感です。
わが国で最初に誕生した旧予算「有機農業モデルタウン事業」はそれなりによくできた予算でした。しかし、あえなく5年間継続の予算がわずか2年目で、かの悪逆非道の事業仕け人ども(←犯人はあのレンポーと枝野だよ)によって潰されてしまいました。
しかし、なんとかガンバッて形だけは再生しましたんで後はよろしく、みたいな内容です。前に一度ご報告したことがありました。
■旧ログ {新有機農業支援予算 費用対効果で有機農業が計れるのか?」http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-e5e8.html
この有機農業支援新予算は、名称を「産地収益力向上支援事業のうち有機農業推進」といいますが、なんか名前からしてして変に長いでしょう。そう、これは「産地収益力向上支援事業」という既存の別枠事業に、コケてしまった有機農業モデルタウン事業を無理やり押し込んだ結果の苦肉の策なのです。
もともと産地収益力向上なんじゃら予算には、有機農業なんて分野なんかなかったのです。ところが、有機農業向け予算が、バッサリやられたので急遽、既存の枠組みに突っ込んだだけです。ですから、旧予算、つまり有機農業モデルタウン事業にあった理念の部分が完全に欠落しています。
では費用対効果というこの新予算の概念に有機農業が乗れるのでしょうか。農業を評価するパラメータを費用に対しての効果とした場合、当然この新予算のように産出額、つまり生産量となります。
ならばお聞きしたい、私たち有機農業は単純に「産出額」というものさしだけで計れるようなしろものなのですか?
実はこのエコノミーか、エコロジーかという問題は、古典的なテーマでした。農業は、自分の生産基盤の土や水を一代で収奪してしまうわけではなく、次代に更に豊かにして手渡さねばならない義務があります。さもないと縮小再生産になるからです。
農家は一代で終わる仕事ではありません。アメリカのようにこの土地がダメになったから別の土地に行こうなんてできるはずもありません。だから、自分の世代に自分の土と水を痛めないようにと思って生きています。
ですから、農業がエコロジーを考えて農業をするのは当然で、この何十年かの化学肥料と農薬に頼りきった農業のあり方のほうが異常だったのです。有機農業というとなにか特殊な資材を使ったりすると思われている人もいますが,そうではなくごくあたりまえの農業に戻していこうとするありかたでした。
つまりエコノミーを続けるためには、エコロジーが必要ですし、逆にエコノミーなきエコロジーでは農業が趣味の菜園と同じになってしまいます。互いに互いを条件にしている関係で、二者択一的なものではないのです。
今回の新予算は、エコノミーとエコロジーを二項対立させて見ているようです。ですから、エコノミーの部分のみに焦点をあてて、その「産出額の増大」だけを指標にしています。まったく有機農業を根本的に理解していないとしか言いようがありません。
具体的にみていくと、農水省が新予算が採択の前提としている「地域協議会のエリアの生産額」ひとつにしても、JA一本で米の単作というわけでもない私たちに、簡単に出せる数値ではありません。しかも、品目と単価まで出せ、というに至っては現実の産地というものをまるで知らない官僚の作文です。
はっきり言って、わが行方地域は40数名もの有機農業者、5団体ものグループがおり、それぞれが50品目近い作物を両手の数ほどの取引先と、これまたそれぞれに応じた価格で販売している行方地域の「地域産出額」とやらなど出すことは不可能に近いと言っていいでしょう。
仮にそれを出せたとして、産出額を5年後に5%増し(*必ずしも5%にはこだわらないともいう)にしろなどとは空論もはなはだしい。私たちの地域はたぶん産出額が地域のトータルで10億円規模あります。それをこんな年間400万円規模のチャチな予算で、年間5%増しの5千万円伸ばせと・・・ご冗談もほどほどに。
ほかにも、人材育成も隣町に新規就農してはダメで、協議会エリアに限るだとか、協議会メンバーには人件費コストを支出しないとか、食育活動の生き物観察などは販売効果を見るとか、もう話にもなりません。エコノミーとエコロジーが一体化して出来ている有機農業を、エコノミーだけで裁断するとこうなるという見本のような予算です。
説明会に出席した各地の有機農業推進協議会とも話を交わしましたが、皆ボーゼン、アゼン、怒る元気もなしの様子でした。こんな何に使ったらいいのかわからない、というより何にも使えない有機農業支援新予算、どうしたものでしょうか?
で、よしんばこの新予算を取得(採択というそうですが)しても、次の年末の事業仕分けに引っかかって廃止の可能性もあるとか・・・もうあきれ果ててしまいました。
いままで一度もお国のごやっかいになったことのないわれわれ有機農業者だ。初めからなかったと思えばいいさ。それにしても、何よりもだめな農水省、何をしてもだめな民主党。
■写真 わが家のキッチンの窓辺です。ほんとうはゴタゴタしていていますが、こうして見るときれいですなぁ。
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