• 20250216-055038
  • S-127_20250215005301
  • S-129_20250215004901
  • S-141
  • S-142
  • S-143
  • 20250214-014540
  • 20250215-001818
  • 20250213-105949
  • 20250211-165850

« 宮崎県口蹄疫事件その5   殺処分の根底にある「清浄国」思想 ・ 殺処分を考え直す時期だ | トップページ | 宮崎口蹄疫事件その7  現実にそぐわない家畜伝染病予防法がかえって感染拡大をしている »

2010年5月14日 (金)

宮崎県口蹄疫事件その6  なぜ豚が感染した後に、周辺ワクチンを接種しなかったのだろうか?

023_edited1

私はかつて、宮崎県の今の畜産農民のような立場にいたことがあります。5年前のことでした。私の家畜は幸運にも感染せず、また首の皮一枚で移動制限区域に入りませんでしたが、知人や地域の農家が続々と飲み込まれていく様を目の前で見ました。

あのひたひたと襲って来る目に見えないウイルスの恐怖感は、言葉ではなかなか説明しにくいものです。ご丁寧にも私の地域は10年前に東海村の原子力燃料会社のボンっにも遭遇しており、放射能とウイルスという現代2大「目に見えない恐怖」を学習させていただきました。もう二度と学習したくはありませんが。

さて、今回の宮崎県口蹄疫のパンデミック(感染爆発)は、もうそう言ってかまわないと思いますが、豚への感染がひとつの目印でした。それは4月28日です。川南町のこともあろうに県の畜産試験場というもっともウイルス・セキュリティが高いはずの場所で発生しました。

なぜ豚への口蹄疫の感染時期が重要かといえば、豚は口蹄疫の感染ルートの中でいわばアンプ(増幅装置)のような位置にあるからです。感染疫学において口蹄疫では牛が初めに発生し、それを豚が増幅するとされています。

そして豚の潜伏期間は長いのでなかなか表にでません。しかしいったん出るとなると、豚のウイルス排出量は、一般的に牛に比較して百倍から2千倍も多く、高濃度の口蹄疫ウイルスをエアロゾル状態で呼吸器から排出し続けます。

ですから、牛と豚が一緒に飼われている地域においていったん口蹄疫が発生してしまうと、牛から発生したウイルスが豚で増幅されて、一気に地域のウイルス汚染度が高まる結果、空気伝播(空気感染)が起こりやすくなります

こうなると防疫は非常に困難になります。まさに今の宮崎県の状況です。この分水嶺が豚に口蹄疫が出た4月28日でした。豚に出たことにより、宮崎県の感染は一挙に進みました。パンデミックです。

しかし農水省第12回牛豚等疾病小委員会で防疫専門家たちは、このような評価をしています。

「初発から2週間以上経過しているが、宮崎県での発生は半径10kmの移動制限区域の概ね3km以内に収まっており、引き続き厳格な消毒や農場内への出入りの制限を実施するとともに、現行の発生農場での迅速な殺処分、埋却等による防疫措置を徹底すべきである」

この疾病小委員会の答申を聞いて、たぶん農水省は2000年時の740頭発生時のように地域封じ込めができると甘く読んだのでしょう。だから、農水大臣に外遊に出たいと「政治主導」されると、それを抑えきれなかった。結果、パンデミックです。

この報告書を農水省のHPで読むと、まったく危機感が感じられません。おざなりの防疫ラインの設定しか話されておらず、成功パターンの10年前の踏襲をしています。地図上でコンパスで川南町から10㌔をクルリと輪を書き、20㌔でももうひとつ輪をクルリ、と。

しかし、現実にはこのような想定を超えて、遠く離れたえびな市でも発生していきます。畜産農家は飼料、生乳、ふん尿処理、人の出入りなど複雑な農場への出入りをしています。

私たち茨城のトリインフルの場合は、日々排泄される鶏糞と廃鶏が感染拡大の地下茎でした。違法な闇ワクチン投与から始まったトリインフルエンザの大感染は、この廃鶏と鶏糞のラインという地下茎に乗って感染を拡大していきました。

この4月28日の豚感染がみつかった段階で防疫当局は頭を切り換えるべきでした。ここにひとつの方法があります。

殺処分のみでは防疫が間に合わない場合、緊急時に地域を限定して蔓延を防止のために周辺地域にワクチネンを接種する方法です。これを「戦略ワクチネーション」といいます。この方法によって、被害を最小限度に止め、畜産農家の悲惨を軽減できます

このワクチンを接種した家畜は、感染しにくくなり、またウイルス排出量も最小限なります。そして伝染が収まったあとは、出荷することも可能です。

なぜ、このような周辺地域への防御的ワクチン投与を行わなかったのでしょうか?そして今、このような絶壁に立ってもなお、その選択を考慮しないのか不思議でなりません。

■写真 田植えが終わった田んぼ。今年は非常に寒い。冷夏が心配です。

« 宮崎県口蹄疫事件その5   殺処分の根底にある「清浄国」思想 ・ 殺処分を考え直す時期だ | トップページ | 宮崎口蹄疫事件その7  現実にそぐわない家畜伝染病予防法がかえって感染拡大をしている »

口蹄疫問題」カテゴリの記事

コメント

私は宮崎県民ですが今は大学で大分にきています。宮崎で口蹄疫が流行っているのは知っていましたがまさかこんなにひどいとは思いませんでした。宮崎県民ながら恥ずかしく思っています。友達のブログに口蹄疫のことが書いてあって気にはなっていました。このブログを読ませていただいて今の宮崎の状況がわかってきました。私にできることはないのでしょうか。宮崎が心配でたまりません。

「何故ワクチンの投与を行わなかったのか」と仰ってますが、この行為の主語は、行政、農家、その他のうちどれでしょうか?誰を非難されているのかよく分かりません。獣医に頼んで農家が自主的にワクチンの投与をする事はできなかったのでしょうか。何でも「お上」頼りの親方日の丸の農家に非がある様に思えるのですが、如何でしょうか。製造業等の企業では問題が起こっても、非効率な行政の介入はできるだけ避け、自社で解決する方法を選択します。

ワクチン接種は23日の時点で関係者から県レベルまでは検討課題として上がっています。接種後の対処の難しさ(主に非洗浄国への「転落」を恐れての事)から、選択肢としては上がっていません。)。安易に食品製造業など他の食品産業とは比べる事は出来ないと思います。理由は、治療・薬剤使用、もっと言えばと畜(生きた家畜を食肉へ変える)ことまで全てが行政の許可・指示が無いと行えない産業です。
さらに家畜を飼育する場所も、自分で土地を入手しても行政の許可が無いと自分では勝手に「家畜を飼育する」という行為も出来ないのです・・・

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 宮崎県口蹄疫事件その5   殺処分の根底にある「清浄国」思想 ・ 殺処分を考え直す時期だ | トップページ | 宮崎口蹄疫事件その7  現実にそぐわない家畜伝染病予防法がかえって感染拡大をしている »