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2010年5月11日 (火)

宮崎県口蹄疫事件その3 感染拡大してから、補償の話をしても遅い

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赤松広隆という人は致命的にこの状況を理解していないのではないかと思います。ようやく10日になって宮崎県に入りました。口蹄疫が発生が公式に確認されたのが4月20日ですから、遅れることなんと20日ということになります。

今から10日前の4月30日の時点で、移動・搬出制限区域を宮崎、鹿児島、熊本、大分の4県に拡大し、そして現時点で殺処分の牛豚は7万6852頭(5月11日現在)にも達しています。

本来ならば、赤松大臣は対策本部長として遅くとも発生1週間以内、出来るならば3日以内に現地入りして、宮崎県と協議に入り、緊急支援策をとりまとめるべきでした。そして国庫から補正予算を組んで緊急支援対策費をひねり出し、当座の緊急支援対策費として100億円単位の予算を一気に投入すべきでした。これは一見大変な額のようですが、半年後になれば10分1以下の支出で済んだことがわかるはずです。

なによりもこれによって自治体や農家をパニックと失望から落ち着かせることができます。この心理的な効果は絶大です。いわば、「ちゃんと国は君らを支えるから」という心理的メッセージなのです。2000年時の同様な発生が小規模で落ち着いたのは、この初期の緊急支援策が有効だったからです。

しかし今回のような対策予算の逐次投入は、口蹄疫という極度の感染スピードに追いつけません。予算設定から執行までのタイムラグがありすぎるからです。執行主体に自由裁量権も与えねばなりません。1週間が勝負という口蹄疫との戦いにおいては、そのような裁可を仰ぐ時間など不可能なのですから。

政府は宮崎県に、このような性質の100億円単位の予算を4月一杯に出すべきでした。しかし、政府が与えたのは4月23日に家畜疾病経営維持資金融資枠を20億円から100億円に拡大するとしただけにとどまります。その時、赤松農相は「これ以上病気を広げないための防疫措置と、畜産農家への経済支援など、あらゆることをやっていきたい」と言ったそうです。

必要なことは経営維持資金といった事後のことではなく、今、目前に燃え盛っている業火を消し止めるための緊急防疫対策費なのにもかかわらず!

また、自衛隊の出動も重要です。というのは、優に7万頭を超える大型の患畜(病気にかかった家畜のこと)の殺処分、埋葬、畜舎の消毒、移動制限区域の設定と維持が緊急に必要だからです。ところが県レベルでは、どのように動員してもせいぜいが400人体制ではないでしょうか。

たぶん家畜保健衛生所は休日もないフル動員体制に入っており、九州各県を中心として全国から大動員をかけて支援体制を組んでいるはずです。また各地の県農政事務所も同様のシフトを敷いているはずです。
しかしこのシフトは長続きません。いわば「平時」の体制を無理やり拡大して非常時対応させているからです。続くとそのように出来ていない平時の行政組織では、参ってしまいます。

今回の場合、宮崎県は国の判断が遅れたために5月1日、県知事の権限で可能な災害派遣要請を陸自都城駐屯地の第43普連に出しました。現在、100名の自衛隊員が緊急に派遣され、埋却作業などに関わっています。

しかし、政府は県の災害派遣要請から遅れること1週間後の5月7日になってから、平野博文官房長官は閣議後の記者会見で「自衛隊についても足りなければさらに追加出動を北沢俊美防衛相に要請しなければいけない」と周回遅れのことを言っています。

まぁ平野さんはそれでなくとも普天間で頭が一杯だったんでしょうが自業自得ですが)。ちなみに、もはやどうでもいいですが、逃亡した赤松さんの農水大臣代理はこともあろうに福島瑞穂さんで、もう考えるまでもありません。

世界常識一般からいえば、2001年にあった英国の口蹄疫事件においては、英国が軍隊出動が遅れたことに対して国際機関の批判がされました。大規模畜産伝染病に、軍隊を投入するのは当然なのです。同様に、たぶん今後だされるFAOやQIEの報告書で、日本政府は初動制圧の失敗と自衛隊の派遣の遅れを批判されると思われます。

このことについて、私は5年前の茨城県トリインフル大発生事件の当事者でしたから、皮膚感覚で理解できます。あの時は、560万羽が殺処分となり、県南、県央、県北の多くの地域が移動禁止区域となりました。これも戦後史上最大規模の畜産災害でした。

当時は夏であったために、防護服、マスク、ゴーグル着用しての殺処分は苛烈を究め、家畜保健衛生所の職員は過労の為にバタバタと倒れていったそうです。しかし、現場にしがみつくようにして、死臭で食べ物が喉を通らないのを無理やり詰め込むようにして、まさに血反吐を吐くようにしてこの困難な防疫をやり遂げたのです。

途中から、応援の消防団、建築会社、自治体職員、そしてなによりも強力な助っ人であった自衛隊員も参加し、延べ数万人を超える防疫作戦をやり切ったのです。私はあの炎天下に、自らに感染する危険を顧みず戦い抜いた人たちに心からの敬意を表します。彼らこそ名を刻まれることのない英雄でした。

ちなみに自衛隊は、このような伝染病の修羅場において大変に優秀でした。まず、組織だって訓練されているだけではなく、食事、給水、重機などの機材、輸送手段に至るまですべて自前で完結しているために、迎い入れる現地は受け入れ準備がなにも要らないのです。一方、他県の行政がらみの支援者ではこうはいきません。宿、食事、交通手段まですべてを地元行政が準備せねばなりません。

自衛隊は防疫関係者をして、そこまで張り切るなよとまで言わしめたほどの高い献身性を発揮し、地元に感謝されました。彼らが疲れ切って帰っていく夕方、彼らのトラックの車列に深々と頭を下げた地元の人々がいたことを覚えています。

さて一方、地元の畜産農家は、殺処分にかかった農家は一挙に1年間分の所得を失いました。というのは、単に死んだ家畜の数だけの損害ではなく、それが生みだすはずであった利益が消し飛んだからです。通常家畜はいくつものロットに分けられていますが、このような強力な伝染病においては、もっとも若い育成期間中のものから、出荷寸前の仕上がり段階まで一気にすべてが殺処分対象となります。

ありうべき来月からの収入が消滅し、これに続く複数ロットもまた処分されたために、その先約1年間は出荷する家畜がなくなる、言い換えれば所得がゼロになるばかりか、急遽入れた代替えの育成用家畜の餌代、管理費などが積み重なるという非常事態となったわけです

要するに、畜産農家は所得は1年間は見込めないが、経費は積み重なるというゼロどころかマイナスの累積をせねばならなくなったのでした。いままで多くの家畜伝染病において自殺する人が絶えませんでした。今回の宮崎県で自殺者が出ないことを祈ります。

私はこの5年前の茨城トリインフル事件を「茨城トリインフル戦争」と名付けました。まさに伝染病という悪魔と人間との総力をあげた戦争そのものなのです

赤松大臣にはこの「総力を上げた伝染病との戦争」という意識が欠落しています。ですから「一部報道では対応が遅いと言われているが心外だ。できることはすべてやっている」(宮崎日日新聞5月10日))などというとぼけたことがいえるのです。

7日現地入りした小沢一郎幹事長は、「大変大きな県の課題」という表現で、責任を県行政にすり替えるような逃げを打っています。次回にお話しますが、2週間たてば自然治癒してしまうような死亡率が低い口蹄疫を、なぜ殺処分せねばならないのかはQIE(国際獣疫事務局)などの国際防疫協定によって決められているからです。

これは国が批准しているもので、あたりまえですが県が批准しているものではない以上、トリインフルや口蹄疫の防疫に伴う殺処分とその被害の回復はすべて国に責任の所在があるといえます。第一、宮崎県は既に緊急予算を300億円以上も出費しており、もう鼻血も出やしません。

それにしてもこのような大規模家畜伝染病が、政府の体をなしていない政権時に起きてしまったのは悲劇でした。

■資料

農水相、全額補償を表明 処分対象6万匹超の口蹄疫
                     
5月10日 産経ウェブ

宮崎県で家畜感染症の口蹄疫被害が拡大していることを受け、赤松広隆農林水産相は10日、宮崎県庁で東国原英夫知事と会談し、感染拡大防止などのために家畜を処分された農家に対し、全額補償を実施すると表明した。

 現在、家畜処分への補償は評価額の8割とされているが、農水相は会談で「(当面は)県が残りを措置し、後で国がやる。事実上の5分の5(の補償)だ」と強調した。

 同県で4月下旬からこれまでに、牛や豚の感染疑いが見つかった農家や施設は計56カ所。処分対象は6万匹を超えており、国内で過去最悪の被害規模になっている。

 また農水相は、家畜の埋設処分の場所として国有地を提供するほか、防疫態勢を確保するため獣医師を倍増させ、九州農政局からの人員派遣を現在の10人から100人まで増やすことなども打ち出した。農家に対する生活支援については「検討したい」と述べた。

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