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2010年5月29日 (土)

宮崎口蹄疫事件 その14  被災農家が受け取るべきなのは、「補償」ではなく、「賠償」だ!

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ワクチンは幸運にも、おおむね拡大阻止に一定の働きを見せています。本日の報道では川南町で3農場で陽性反応が発見されました。一方、移動した種牛5頭は陰性で、6月4日まで経過を観察するとのことです。
宮崎市が2頭の種牛の陰性を隠匿したと、農水省とマスコミは大騒ぎをしていますが、褒められることではないにせよ、いかに宮崎県が国に不信感を持っているのかが改めて露になりました。

また口蹄疫特別措置法が可決されました。内容的には反対をしている方も多いようですが、畜産農家としてはまぁこんなもんかな、ていどの常識的内容です。私が感じる問題点は内容的なこと以前にいくつかあります。

まず何度も繰り返しますが、「すべて遅すぎる」ということです。このような緊急的な支援予算は、パンデミックが起きる前に投入されるべきでした。4月下旬に予算組みをして直ちに実施していれば、10分の1以下の規模で、感染阻止ができたと思います。今はもう6月になんなんとしているのですよ。

つまり、今はパンデミックの盛りを超えて、清浄性確認をしながら、別な地域に飛び火していないか、野生動物に潜伏していないか観察する時期になってきています。こんな時期に戦後焼け跡処理よろしく、特別措置法を出してきても肝心の「気持ち」が伝わらないのです。

私がここで言う「気持ち」は単なる感情ではなく、「筋」です。北海道様には叱られるかもしれませんし、「みやざき」様の一丸となってという訴えもじゅうぶんにわかりますが、いいのですかこのまま終わってしまって。

私がこの特別措置法で引っかかるのは、ワクチン接種⇒殺処分に抵抗している農家をなだめる取引条件として出されています。偽悪的に言えば、補償のカネで頬を叩く、言うことを聞かなければ強制執行するぞ、ということではないですか。私はこのようなやり方が大嫌いです。

私が被災農家だったら、国や地方行政、そして世論から袋叩きにあっても「冗談じゃねぇや、その前にやることがあるだろう!お前らの謝罪があるまで、オレは自分の家畜に手をかけさせない!」の啖呵のひとつも切ることでしょう。

農家の怒りは絶望までに至っているのです。筋をきちんと立てて、政府当局者は現地被災農家と向きあい、現地に来て、対策が大幅に遅れたことに対する誠意ある謝罪をしたらどうなのですか。農水大臣は現地に来ても県庁どまりですか。それともまた居直りますか?

5月初めに特別措置法をいまより小規模でもいいから緊急支出し、現地行政に緊急的な裁量権を与えれば初動体制の構築が可能となり、なによりも現地が心理的に落ち着いたことでしょう。

前回の口蹄疫も宮崎県で起きましたが、江藤拓議員の父君が尽力して、100億円というそれなりのボリュームのある緊急支援予算を、きわめて初期に投入して初期制圧ができたと聞きます。

殺処分に対しても、4月20日の口蹄疫確認から3日以内、遅くとも1週間以内に決断を下せばよかったのです。この最初のボタンをかけ間違ってしまったために、この大惨事になりました。

また、ワクチン投与も遅い。私は殺処分には抵抗感を持つ者です。本来ワクチネーションと対症薬、消毒体制で防疫できるものを、なぜ殺すのかというのが根本的な疑問でした。確かに国際的防疫体制の枠組みからの離脱を伴うことは、緊急時には不可能でしょう。ならば、発症しても周辺ワクチンの投与をためらわなければ、被害は最小限でくい止められたと考えています。

川南町で豚に感染が発症したことを重大視した被災現地の関係者は、赤松大臣の宮崎入りの時に、「川南町の豚をすべて殺処分させてほしい」と陳情しました。しかし、この要望は家伝法を楯ににべもなく拒絶されました。

赤松大臣はこの増幅家畜という意味も、そもそも口蹄疫のイロハも知らないのですから、川南町の畜産農家から豚の殺処分を訴えられた時に、謙虚にその場で拒否せずにいったんペンディングにして、農水の防疫官僚や専門家と検討してからでも拒絶は遅くなかったはずです。

今頃になってにやにや笑いながら「早く殺しときゃよかったんだよ」とは、どの口から出る言葉なのでしょうか。赤松さん、はっきり言うが、あんたおかしいよ。

パンデミックにうろたえてワクチン投与をしてでは遅いのです。周辺ワクチンをするなら、初発から数例の殺処分の包囲網が破られて、その次の拡大に対して決断すべきでした。私は5月の初めからそう主張してきました。それを30万頭も殺処分対象を出してからでは、自分の優柔不断の代償としてはあまりに大きいのではありませんか?

そして情報の提供も遅い。豚を増幅する空気汚染に対しての警告も農水省からなく、逆に当初「空気感染はない」という誤った情報を農水省が出してしまったために、当時の暑さから豚小屋の窓を開放してしまい、被害を大きくしました。

口蹄疫において豚が持つ位置は、牛からもらったウイルス感染を最大2~3千倍にも増幅する動物です。口蹄疫は牛から豚に感染すれば、新たな感染ステージに突入してしまうのであり、感染速度はおそろしいほど加速します。

他の防疫対策も遅れ続けました。特に交通の制限と消毒の遅れです。口蹄疫のような驚異的なスピードで伝染するウイルスには、交通を統制していかねばなりません。自動車、人、モノを、一定の制限下におき、完全な消毒をせねばなりません。

たとえば、川南町には国道10号線が走っており、折からのGWという交通量が増加する時期にもかかわらず、消毒対象を飼料運搬者や業務車両に限定したために、西都市や、木城市にも拡大してしまいました。

それ以外にも獣医師投入の遅れによる殺処分の遅滞、埋却地の不足と混乱などなど今まで過去ログでも取り上げてきた膨大な失敗の累積を検証せねばなりません。

これまで失敗が重なることが信じられるでしょうか?ひとつ、ふたつのミスではなく、たぶん数十のミスが重なって、更に事態をひどくしています。ひとつの失敗が次の悪しき結果を出し、それを総括しないままにそこからまた別の失敗を導き出し、ついには等比級数列的に倍増していくというまさにケイオス(混沌)です。

この宮崎公蹄疫事件は明らかに「人災」です。行政の不作為による人為的な畜産災害です。諸外国がなしている防疫措置を取っておけば、起きずに済んだパンデミックでした赤松大臣がカリブ海に遊びに行ってゴルフをしようがしまいが、このような不作為が必然な体制の中では構造的に起きるべくして起きた人災でした。

したがって行政、特に国家の不作為、なすべきことを知りながらしない結果の必然であった以上、今、被災農家が受け取るべきなのは、「補償」ではなく、「賠償」です。私は被災地農家と農業団体が事態が鎮静化した後、国家損害賠償の集団訴訟を起こすべきだと思います。

これは、単に金銭的な賠償にとどまらず、裁判の席でなぜこのような大規模災害が起きたのか、人災的な側面はなかったのか、行政の初動はあれでよかったのか、責任体系はなんなのかなどを、国家に情報を公開させて明らかにしていくべきだと思います。

さもないと、わが国はもう一度この悲劇を繰り返すことになります。殺されていった無辜の家畜たちの霊も浮かばれますまい。

がんばれ、宮崎!

■写真 5月の太陽にかざした柿の葉です。葉脈が美しいですね。

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コメント

やっと被害に対する支給(埋却の済んだ順番の最初の方から)が来週手元に来る段階です。
もう1ヶ月経過しています。
その他、宮崎県ナンバートラックお断り、飲食・宴会キャンセル、餌代金(飼料販売業者)棚上げ。
全国の皆様、宮崎県産の指定買いを1回でもいいから御願いします。肉に限らず野菜でも旅行でも。長くかかりますので今だけでなく、出来れば持続して・・・。義援金はこちらでは振り込み以外でも大手コンビニや店頭に箱が有ります。のど元過ぎても続けて行きたいと思います。

5月28日成立の口蹄疫対策特措法の要旨
1.口蹄疫が蔓延している指定地域内で、一般車両などに消毒を義務付ける
1.口蹄疫に感染または感染したと見られる牛、豚を殺処分した場合、所有者は家畜防疫員に、死骸の焼却、埋却を要請できる
1.国は殺処分した牛、豚の埋却に必要な土地を確保する
1.口蹄疫の蔓延を防止するために、都道府県知事は、感染していない牛、豚でも期限内に殺処分するよう、所有者に勧告することができる
1.所有者が殺処分の勧告に従わない場合、都道府県知事は家畜防疫員に牛、豚を殺処分させることが出来る
1.感染していない牛、豚を殺処分された所有者に対し、都道府県知事は損失を補填する
1.都道府県知事は殺処分した牛、豚の死骸を焼却または埋却した費用を負担する
1.都道府県知事が牛、豚の殺処分やワクチン接種に従わない場合、国が直接実施出来る
1.都道府県知事は口蹄疫蔓延を防止するため、イベントなどの中止を主催者に求めることが出来る
1.国は当該地域の専門家が感染の有無を迅速に判断するために必要な措置を講ずる
1.国は口蹄疫に感染または感染したと見られる牛、豚の所有者に対し、手当金のほか経済支援を実施する
1.家畜の移動禁止による所有者の損失は、国が負担する
1.口蹄疫の被害で経営が不安定になった農家や食品加工業者、飼料会社などに対し、国は資金の無利子貸し付けや債権費用の助成を実施する
1.国や地方自治体は、地域経済の再建と再生に必要な基金を設置する

濱田様宮崎様今日は。貴重な情報ありがとうございます。今空港のラウンジで拝見させていただきました。
宮崎様のご指摘の通り、宮崎県内では黒毛和種について県内育種(県内限定改良)を行ってきました。精液は圏外持ち出し禁止ですし、指定の人工授精師にしか配布されません。宮崎県の予算をつぎ込んで育種改良をしてきたわけですから当然と言えば当然の考え・・・・・・と言えなくも無いですが、そもそも人工授精は自分の家畜及び試験研究目的の場合は「人工授精師」の資格は要りません。他人所有の牛に授精する場合には「資格」が必要です。試験の合格者には都道府県知事から免許証が交付されます。有資格者の場合、授精を依頼されたら正当な理由が無ければそれを断る事は出来ない・・・と法にも記載されています。
県で育種して出来上がった種雄牛の精液は県内限定、県指定授精師にしか配布しない・・・は、自主的な取り決めであって、法的根拠は何もないです。人工授精の目的は「家畜改良」です。基本的に国内にしかいない「黒毛和種」を県内や地区内限定で行う事は本来の目的から外れていると言わざるを得ません。ただし「兵庫県の但馬牛の育種改良」は、国内黒毛和種の「原種」的存在ですから、ここだけは全国民で守っていかなければならないと考えています。
今回の大発生を教訓に、黒毛和種の育種改良について再考する必要性があるものと考えます。
①黒毛和種の登録(名前をつけたり、血統を明らかにした書類を作成する)団体である「「全国和牛登録協会」も、九州各県の意見が強く、言いなりになっているところもある。
②人工授精師の全国組織である「日本家畜人工授精師協会」にも、鹿児島県では黒毛和種の人工授精師しか加入できず、酪農組合や共済組合所属でホルスタインに授精している技術員は未加入であり、様々な情報が届かなくなっている。
③特に黒毛和種は国内限定であるため、全国を基盤として改良を進め、安全で安心出来、そして安価に消費者に提供するようにしなければならない。
等々思いつくまま書きましたが、我が県だけが優秀な種雄牛を所持し、我が県だけの生産者が全国的に優位に立てれば良い・・・との考えは、これまでは良かったかもしれないが、今後は全国ベースで発想する事が必要なのではないでしょうか?
被害にあわれた方々に対する支援は国・県はもとより関係団体(者)が一丸となってすべきものだと思います。そしてその先には、一致協力して国民全ての人が「美味しい国産黒毛和種牛肉」を安心して口に出来るようになるよう努力していかなければなりません・・

文脈が整わず申し訳ありません。これから北海道に向けて出発します。宮崎様今後も貴重な情報お願いします。また濱田様にもよろしくお願いします。

北海道様、濱田様はじめ論点がずれているのを承知でのコメントです。とにかく早期終息を願っています。
これだけ長期化・複雑化すると色々吹き出ている気がしています。同じ畜産業なので一致団結すべきなのですが、県から農家までそれぞれ自分の要望を100%主張し、100%受け入れられるまで妥協しない=調整になお時間がかかる、という感じです。
発生地域の状況は結局まだ何も変わっていません。
頑張れ現地のみんな!!

夕方3泊4日の出張から帰宅しました。
宮崎様の仰る通り改良育種の話は今後に向けての話であって、今は感染拡大防止と早期終息が第一で、第二は農家の再建(生産体制と経済的)です。第三がこれまで行ってきた「改良育種」です。それも、これまで以上に力を注ぎスピードアップしていかなければ早期復活は果たせません。
その為には、国・県・農業団体・生産者が一体となって推進しなければなりませんし、相当の覚悟が必要です。
現時点では未来を語るより現実目の前にある状況の「早期解決」が先である事は誰もが願っています。
関係者の心労や肉体的疲労はピークと推察しますが、是非是非もうひと頑張りお願いします。全国民が応援しています。

こんばんは。口蹄疫事件が、我々の業界へもハッキリと影響し始めました。流通業ですが、口蹄疫に関してネットを探してたどり着きました。良くまとめて頂いています。断片的な知識で、想像し、発言する事の良し悪しは存じているつもりですが、眠れない夜に成ってしまいました。

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