• S-026_20241214013201
  • S-027_20241214013301
  • 20241213-153622
  • 20241213-154411
  • 20241213-160832
  • 20241212-235901
  • 20241211-032939
  • 20241211-154712
  • 20241211-160322
  • 20241210-023508

« 宮崎口蹄疫事件 その24 宮崎市、日向市でも疑似患畜確認! 消毒液が不足などという煽りは止めてください! | トップページ | 宮崎口蹄疫事件 その26  自治体は移動制限の権限をギリギリ一杯まで使って防御してほしい! »

2010年6月12日 (土)

宮崎口蹄疫事件 その25  家保のマンパワーを殺処分ではなく、発生動向調査に投入しろ!

013_edited1_3

宮崎市と日向市の疑似患畜は陽性であることが確認されました。これで北は日向市から南は都城まで、実に南北約100㎞を超える地帯が口蹄疫感染エリアに入ったことになります。

現地対策本部はえびの市を教訓として早期の殺処分に入ることを決定しました。本部長は党内で農政最高の理論家である篠原孝副大臣ですから、ぜひその手腕のほどをこの「戦場」で見せて下さい。彼に対しては手ひどい批判をこのブログでしたことがありますので、皮肉ではなく、今回は心から応援しています。

さて、児湯郡の拡大阻止の失敗を振り返ると、いくつかの問題点が浮かび上がってきます。第1に、初動の失敗ですが、このことについては今まで何回か触れてきましたので、今回は触れません。
第2に、処分と発生動向調査(サーベイランス)の遅れがあります。今回はこの問題を考えます。

私が児湯郡の防疫態勢を見て感じたのは、単純に発生地点から半径10㎞を移動制限区域、半径10~20㎞を搬出制限区域とするような機械的な方法で感染の拡大状況が分かるのだろうかということでした。

これは実際自分が感染エリアの近くで営農してみれば分かります。私には5年前の茨城トリインフルの時にその経験がありました。家保がどうやってそのコンパスを回すのか実際に見ていたからです。

よく新聞などでグルリと輪が描かれていますが、実際はそんな単純なものではありません。行政区や地形、そしてなにより実際に家保(家畜保健衛生所)が発生動向調査をしながら慎重に移動制限ラインを引いていくのです。

ところが今回、想定の速度をはるかに超えて感染が拡大しました。となるとどうなるのでしょうか。疑似患畜として処分を決めた家畜が、処分仕切れないまま膨大な数万頭という数で残されていき、そこから(特に豚)更に感染が加速していくという構図でした。もはや細緻な制限ラインを引く余裕などなかったのです。

その上、その処分しきれない待機患畜の上にワクチンを打った後に処分すべき16万頭が更に積み重なるという二重の泥沼を引き起こしてしまいました。

この原因のひとつは、家畜伝染予防法(家伝法)の読み間違いによる家保獣医師を殺処分にのみ動員したためです。家伝法16条にはこうあります。

第16条 家畜の所有者は、家畜防疫員の指示に従い、直ちに当該の家畜を殺さねばならない
一、(略)口蹄疫
二、(略)口蹄疫の(略)疑似患畜
三、 家畜防疫員は、(略)緊急の必要がある時は、同項の指示に代えて、自らこれを殺すことができる。

驚きませんか。この私も含めて「殺処分をするのは家保の獣医師資格者のみ」と思い込んできていましたから。この鹿児島大学岡本嘉六教授(獣医衛生学)の指摘を知って、私も愕然となりました。今まで宮崎県が全国から家保とボランティアの獣医師を集めて何をさせてきたのかといえば、殺処分です。国の現地対策本部も異議を唱えませんでした。

結果、牛豚を扱える獣医師という貴重な存在を全国から駆り集めておきながら(*獣医師で牛豚などの大型家畜を扱えるのは半分にも満たない)、本来任務ではない殺処分にマンパワーを注ぎ込んでいたわけです。

岡本教授はこのような処分は、家畜防疫員(家保獣医師)がするのではなく、訓練と規律が行き届いた組織である自衛隊に任せ、処分-搬出-埋却まで依頼すべきであるとしています。

家畜防疫員がすべきことは、処分にかかわことではなく家保でなければできない任務、つまり発生動向調査(サーベイランス)です。

つまり、発生地点から単純に半径10㎞のコンパスを描くことではなく、「感染地帯」の周辺地域(「発生動向確認地帯」)、さらには「清浄地域」まで含んで、感染が飛び火していないかを入念に調査し尽くすことです

私の農場は家保のモニタリング農場なので、月に一回家保の獣医師が数人一組で訪れます。つい先日もいらっしゃいました。この暑いさなか、例の白い宇宙服もどきの防御服に農場の外で着替えて、消毒液で長靴を洗浄し、サージカルグローブ(ゴム手袋)をつけて入念に、家畜の咽喉や肛門から検体を採ったり、血液採取や、聞き取り調査をしたりするわけですが、大変な仕事です。だいたい一農場で2時間はかかります。専門性のみならず、肉体的にも大変な作業です。

岡本教授はこのような獣医師でしかできない立ち入り検査の頻度こそが、拡大阻止につながる鍵だとされています。児湯郡において、獣医師が大量投入された時点では、既に感染が拡大しきっており、感染ルート確定調査もなにもグチャグチャな状況でした。いわば、殺人現場で刑事が現場に来た時点では、足跡だらけ指紋だらけだったようなものです。

不幸中の幸い都城、宮崎、日向はまだ感染が初期の段階です。感染動向確認地域を防疫の最前線として家保が全力で調査に入り、感染ルートを特定し、感染を撲滅できます!

前車の轍を踏むことなく、この災厄を根こそぎやっつけましょう!

« 宮崎口蹄疫事件 その24 宮崎市、日向市でも疑似患畜確認! 消毒液が不足などという煽りは止めてください! | トップページ | 宮崎口蹄疫事件 その26  自治体は移動制限の権限をギリギリ一杯まで使って防御してほしい! »

口蹄疫問題」カテゴリの記事

コメント

濱田様、

早い終息をと願っている神奈川県の主婦です。児湯郡出身の友人が宮崎市内におります。少し前からみやざき様や北海道様とのやりとりを含め拝読しております。日々の情報分析、記事の更新ありがとうございます。 

未だに「戦場」で民間人が仕事と平行して交代で消毒作業(埋設作業)をしているということがまず信じられません。 友人の妹のご主人も数週間前から交代で借りだされるようになりました。 

赤松前大臣がやっと指示した「自衛隊増派」以前から大規模な自衛隊投入なくして早急な鎮圧はできないのではないかと思っていました。 

道路の封鎖、24時間の消毒体制も全て自衛隊のみなさんにやっていただいてはと考えます。また、処分や埋設を待っている感染農場への消毒液空中散布などはどうなのかと素人ながら考えてしまいます。 災害等で他国にも派遣される消防のレスキュー部隊も消毒作業に従事できないのでしょうか・・。 

獣医さんの事故も現在までで35件と川南町の獣医さんのブログにありました。 これから暑くなり体力の消耗が激しくなります。 怪我以外にも心配の種が増えます。 

家伝法、驚きました。教えていただいてありがとうございます。殺処分に関しては、辛いという言葉させ相応しくないぐらいに思いますが、農家のみなさんが牛や豚達を一番怖がらせず、無駄な痛みも感じさせず処分していただけるのではないかと。 不慣れな獣医さんよりも遥かに事故も現場のトラブルも少なく迅速性も増すと考えます。

また一県職員と私的なトラブルを抱える牛・豚専門の獣医を100人抱える会社(初期から手伝いの申し出ていたが断られていた)もあり、この緊急時に何をしているのか・・と県外の私でさえ呆れたくなる事例もあります。この会社の獣医さんの奥様がミクシーで日記を書かれています。

サーベイランスが重要だというご指摘、頭の悪い私にもよく分かります。 自衛隊の投入でマンパワーを回復し、迅速なサーベイランスが実施されることを願ってやみません。

阪神大震災のような激甚災害に指定し大規模な自衛隊の投入をしていただきたい。 一刻も早く!! 

選挙なんか後回しです、選挙カーも消毒しながら名前だけ連呼して走り回るのでしょうか・・。 投票所には大勢人が集まりますし・・。 どうなるのか・・。心配です。 長々と失礼いたしました。

濱田様
・・・、・・・。絶句ですね。川南地区の発生時(特に1農場で3000頭とか豚の発生が起きてから)、「獣医師しか殺処分の資格が無い」という指示(国・県)でしたので、殺処分の順番待ちが発生しています。第一次爆発の前後では殺処分する獣医師の頭数が足りなくて、3、4日前に疑似確定してもまだ来てくれない、という状態でした。
 獣医師が各県から増員されて来ても、今度は発生農場の前に「殺処分担当の獣医師」が埋却場所が確保出来てないので「座って待つ」ような状態でした。
 この時国も県もみんな「勘違いしてた」って事ですよね。何という事でしょう・・・。
さらに「発生農場周辺の家畜の調査を済ませた」=「農場へお電話で大丈夫ですか~って聞き取りしました」って事です。
一斉に検体採取して確認は出来なかったのでしょうか。
 それと、
発生以来宮崎で実行されている移動制限の内容
1.農場側
①10km移動制限区域=家畜の移動が出来なくなる地域=農場敷地から家畜が出れない。
②20km搬出制限区域(10km~20kmの間)=家畜の移動が10kmと20kmの間で有れば出来る。
2.続いてト場の状態
①10km移動制限区域の中に入るト畜処理工場は閉鎖
②10km~20kmの中に入るト畜処理工場は稼動。「ただ、10kmの内側に有る農場からの搬入は止まる」だけで「10km~20km圏内の家畜は、20kmの外に出れないだけで、20km圏内に有ると場には搬入可能(消毒ポイントは通過)。つまり、20km圏外の農場(制限区域にかからない地域)から20km制限区域内へのと畜場への搬入も発生後も全く変わらず行われています・・・。

 濱田さんがおっしゃっていますが、発症農場が分かったら10km、20kmが設定されるのですが、それが分かるのは県が発表してからです。そして発表になった字番を元に判断することになります。役場に問い合わせると「その農場は10km、あっちの農場は20km。」と教えてくれます。
でも2サイト・3サイトに分かれているのが殆どです。(繁殖専用地、肥育専用地)。
自分のこの繁殖農場は10km圏内、この肥育農場は20km圏内って事になって、同じ人間が行き来する農場でも、片方は移動が出来て、もう片方は移動が出来ないっていう「矛盾」が生じています。

 私はワクチンを10km圏内の外側にリング状に接種した事で、ワクチン接種ラインに接している20km圏内は限りなくグレー(見ても分からない)になったのでは、と考えていました。で今回のワクチンラインの突破で現在の10km~20km圏内は「限りなくグレー」になったのがはっきりしたのではないでしょうか。効くか効かないかわからないワクチンを接種して、微弱な感染(目で見てもわからない)をしていたのなら。
生きた家畜の表面は消毒出来ても、体の内部は消毒出来ないですよね・・・。

これは「勘違い」ですよね?

「特例」はもうダメですよ。またタイムロスして点が面になるだけです。動きを止めないと追いつきません!!

http://www.niah.affrc.go.jp/publication/news/29/news2904.pdf
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819696E3E3E2EB948DE3E3E2E4E0E2E3E28698E2E2E2E2

口蹄疫治療薬開発へ 富山化学工業
2年後をめどに承認申請
2010/6/12 2:01

とありました。
今後、さらに被害が拡大した場合、発症した豚を殺処分するまでの時間、ウイルスの産生を抑制する意味でも、抗ウイルス薬の投与はどうなんでしょうか?

抗ウイルス薬の投与となると、食肉にできるかの問題がありますが、殺処分するのがきまっているならば、その問題はクリアできると思います。

はじめまして
教えて頂けたら、嬉しいです。
口蹄疫ウイルスの病消毒液として『酢を水で1000倍に薄めたものが有効』と聞きました。
一般家庭の対策でお手軽で安価にできるから良いと思うのですが、
ネット上では『消毒効果が低い』ということが広まっているようです。
多分…『ビルコンがなくて代わりに酢をまいた』という急場しのぎのイメージがあると思います。

ビルコンでなくても酢で十分な効果があることが、わかるような情報があると嬉しいのですが…
又、口蹄疫対策に限って言った時に、酢に比べてビルコンの優れている点は何なのでしょう?

初コメントにして、いきなり質問ばかりでごめんなさい。情報をたくさんお持ちでらっしゃるので…ついつい聞いてしまいました。
情報がありましたら、よろしくお願いします。

さくらさま
ビルコンや塩素系(プールに使うやつ)、消石灰が「強力」に効きます。でも強力すぎるんで「家畜(牛・豚)に直接かける」と消毒効果で家畜の体力が弱るみたいです。だから、家畜の予防消毒にはお酸が一番。
 これも誤解しないで欲しいのですが人間にかかってもビルコンなんかの消毒液が「危険」、というレベルでは無いですよ。ですから、消毒に協力していただけるなら足元とか車はうんこや汚れを「強力」に消毒し、浸透させないといけませんので、理想はビルコンや塩素、消石灰が理想です(マットにしみ込ませるとか)
関心を持って頂いてありがとうございます

濱田様 北海道様
 消毒ですが未だに川南地区でも発症していない豚屋さんがいたり牛屋さんがいたりします。
共通するのは「お酸500倍噴霧・口元スプレー」です。体全体を濡らすことでの体力低下で感染したパターンも有ります。動噴や細霧で直接当てない「お酢」、口元だけスプレーお酸は効果大きいみいです。
 家畜へのビルコン・塩素系は逆に効き過ぎるみたいです。
えびのも空中散布は「お酸」でした。

みやざき様

ご回答、ありがとうございました。
ごめんなさい。
一般家庭の生活の中でできる消毒の意味での質問でした。
もちろん、道路での消毒ポイントや消毒マット等の協力はした上でです。

さくらさま
全然平気です。高い関心を持っていただいて嬉しく思います。農家も自宅に帰れば一般家庭です。
皆一緒ですよ。
頑張って終息させますので応援してください。

家伝法第16条の解釈の件について質問させてください。

今まで、「家畜防疫員(獣医師資格者)だけが殺処分する資格を持っていた」とあちこちで思われていたのが、家伝法第16条をよく見ると、「所有者自ら処分しなさい」って書いてあった、それならば「所有者」の委託を受けた人、例えば自衛隊の方などが殺処分を担当してもかまわないのだった

という風に理解していいのでしょうか?

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 宮崎口蹄疫事件 その24 宮崎市、日向市でも疑似患畜確認! 消毒液が不足などという煽りは止めてください! | トップページ | 宮崎口蹄疫事件 その26  自治体は移動制限の権限をギリギリ一杯まで使って防御してほしい! »