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宮崎口蹄疫事件 その16  30万頭という膨大な単位の中にひとつひとつの命が埋もれていきませんように

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私がこの間訴えたかったことのひとつは、簡単にいえば「命」です。
殺処分にかかった畜産農家が、母豚と子豚が別に殺処分をされると知り、「なんで一緒に埋めてやらんのだ」と泣きじゃくったという話を聞いた時に、あらためてそう思いました。
この話はプロの、そうむしろプロの、ある意味すれっからしの畜産農家の心をうちました。彼らの死と交換に生きている自分の生活を思いました。
いちばん柔らかい心の部分だったのでしょう。私たち農家は、家畜を農場から送り出す時、心のどこかシャッターを降ろします。
彼らと日常接して手入れをし、なにくれとなく見ているのは私たちだからです。
小説「食堂かたつむり」のエルメスを肉にしていく部分があります。エルメスは最後の最後まで自分が殺されるとは思わなかったわけです。彼女を全部食べきるということが主人公の「愛情」でした。
家畜はペットではありません。私たち農家は家畜をもっと突き放して見ています。さもないと、人としてやっていけないからです。毎回エルメスを屠殺するような心を引き裂かれることをしていたら、正直、身が持たない。
「食堂かたつむり」の主人公はもう一回豚を飼うでしょうか?私は飼わないと思います。
それは「ひと」と「家畜」の距離があまりに心理的に近すぎるからです。ペットとして飼った生き物を殺せません。
畜産は家畜という生き物との距離のバランスの中にあります。あまりに近ければ、私たちは心理的バランスを失います。経営として成り立ちません。逆に遠すぎれば、家畜を単なる経済的な単位としてしかみないでしょう。つまり、肉や玉子、乳を生産する「モノ」としてです。
この宮崎の悲劇を見て、全国の畜産農家は自分の家畜と接した時にどこかで考えたと思います。
「こいつらにワクチンを打っていったん助けてから、殺処分などできるのか」、と。あるいは食べられないような家畜の死は何なのかと。
そのような理屈ではわかっていても、心が許さないような複雑な思いの中から、はるか宮崎の同業者の苦衷を思うのです。

そしてあらためて、あたりまえに彼らに餌をくれてやる喜び、手入れをしてやれる、いや手入れをできる日々の喜びを思ったのではないでしょうか。
私は祈ります。今回の人為的な災害が、あらためて家畜の命の重さを知ることにつながりますように。30万頭という膨大な単位の中にひとつひとつの命が埋もれていきませんように。
                    ~~~~~~~              
■写真 アザミでお仕事中のニホンミツバチ。
■「北海道」様、参考書のご紹介ありがとうございます。探してみます。
■「宮崎」様。やはり感染の拡がりは止まりませんか。20㌔圏内で出ると・・・今度はまた同じことの拡大反復です。殺処分数は膨大なものとなります。出ないことを切に祈ります。
これから梅雨です。雨はウイルスが苦手とするものなので、多少は違うかもしれません。ただし埋却作業は穴に水が溜まり、泥濘になるので一層困難になりますが。
埋却からハエがひどいですか。ハエは感染媒介生物なんですよ。消毒液や殺虫剤で抑えきれないということか・・・。まずいなぁ。
■「宮崎」様、「北海道」様、よかったらメルアドを教えて下さい。当然非公開にしますので。
■メディアの報道が非常に減りました。赤松大臣が訪れて「謝罪」し、知事と手打ちしたことや、ワクチンが終了しつつあるという宣伝で、状況が終息しつつあると考えているのかしら?「みやざき」様、大手メディアなんてこんなもんですよ。現地からの発信よろしくお願いします!

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コメント

宮崎様いつも貴重な情報、それも現場での生々しくそして正確な情報をありがとうございます。はるか北に住む小生にとって大変参考にさせていただいております。埋却した死骸は数日の内に腐敗し、そのガスが地表に出てきます。宮崎様のおっしゃる通り、覆った大量の土も持ち上がるくらいガスが出てきます。当然臭気はものすごく、近隣住民は耐えられなくなり、そこそこから「クレーム」が出てくるでしょう。行政はその対応に迫られるものと考えます。ガス発生が落ち着いても、覆った土に混ざったガスは中々消えませんので2~3年は臭気に悩まされる事を覚悟しなければなりません。管理人様が仰る通り、農家も周辺住民も引っ越しをする方が今後出てくるでしょう。まさに「ゴーストタウン」化する事も想像できます。宮崎は北海道と違い気温も高い為、腐敗速度も速くハエの大量発生も当然起きます。(北海道ではまだ「ハエ」はいませんが)農家の心痛は当然ですが、関係者の心労・肉体的疲労はピークと思います。我々には何も手を差し伸べる事はできませんが、再建に向けてのカンパと、将来に向けての育種・改良の面で可能な限り応援したいと考えています。

投稿: 北海道 | 2010年6月 1日 (火) 10時25分

えびの地区の口蹄疫での対応
4月20日の1例目PCR陽性判明(確定は4月20日16時50分)時点で西諸家畜市場子牛セリ1日目終了。
翌4月21日も市場当日8時30分頃まで検討し、当日の家畜市場開催中止決定。しかし当日8時台まで決断を延期したため市場には当日上場子牛準備・購買者は集合した状態。
さらに、前日20日に売買成立した引き取り待ちの子牛の移動(引き取り)が各地より問い合わせ殺到(買主より)。事情からキャンセル希望が相次ぎ、なおかつ既にトラックに積み込んだ子牛もキャンセルとなり引き返す事態に。通常売買が成立すると、キャンセルは認められないのですが市場の判断で止む無しとなる。家畜市場には売買成立したものの、キャンセルされた子牛が約130頭係留される事態に。
この中から「発熱・下痢」などの口蹄疫疑いの症状が出る。(密集度、ストレスと思いますが)。慌てながらもきちんと1頭1頭採血検査を実施し、疑いを晴らしていく。しかし、中で3頭だけは最後までよだれが出るなどの濃厚な疑いが晴れず、都度採血検査を実施。この間近距離のと畜場には、明日の搬入は今回の採血結果が出るまで搬入を見合わせる様に水面下で蜜に連絡を取り合う。農家さんには夜中に「ちょっと連絡するまで待ってて下さいね」程度、翌朝早朝「大丈夫ですよ~」という具合です。
表現が悪いですが、家畜保健所に許される権限範囲の中で準備運動が出来ていた、という状態でした。
その後、4月28日9例目のえびの市での1例目確定。翌日29日18時には殺処分・埋却完了。同時に4月25日7例目(川南町)でのA農場からの移動牛との疫学調査結果を踏まえ、管内周辺の関係農場一斉聞き取り、立ち入り開始。血清検査も実施し確認。
そんな中5月4日の2例目の「豚」に発生が確認される。獣医師の立ち入りで血清検体採取と同時に、検査結果を待たず立ち入り当日から獣医師の権限で殺処分開始。翌日には殺処分・埋却終了。
前市長の不祥事により09年10月の選挙で交代したばかりの村岡市長も素直に行動に移し、消毒ポイント設置、消石灰自主散布(各商店、スタンドなど全域)、消毒ポイント増設、取りうる体制を素早く布陣。唯一消毒ポイント(裏道)が出来ていなかったが、すぐに看板にて消毒ポイントへ誘導。
そこまでしても5月11日68例目が発生。この時も即殺処分と同時に農場主が出入りしていた別農場も殺処分完了。しかし、車両の貸し借りの有った82例目でも5月13日に発症。
以後、農薬散布用のヘリコプターでお酢を空中散布したり、考えうるだけの対策と、きちんと臨時広報で一般住民にも協力と、食い止めることの重要性を周知されていました。
発症が13日以降休息しても、管内の少しでも疑わしい症状は全て採血し検体発送。通常の薬剤も配達を避け、農家に引取りに来てもらい、さらに往診も農場敷地には入らず、道路に引き出してもらって診断。徹底した接触遮断。おかげで「あそこで口蹄疫出た~」とう「デマ」が飛び交う状態ではありました。

まだ正式解除では有りませんが、もしどこかで何か有った時には、関係者の方々にはやり過ぎて頂きたいと思いコメントしています。南の島(ここ個人的に思い入れアリ)での騒動を聞いて、あらためて乱文まとめです。

投稿: みやざき | 2010年6月 1日 (火) 22時39分

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