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2010年6月17日 (木)

宮崎口蹄疫事件 その30  ようやく「発生動向調査」が始まった!

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遅まきながら、宮崎県でようやく家保による「発生動向調査」(サーベイランス)が行われるようになりました。何回かこのブログで書いてきていますが、「発生動向調査」とは口蹄疫が発生した場合の基本的なマニュアル手順に入っています。

少し専門的になりますが、ご勘弁ください。これは国際的防疫マニュアルであるFAOのFAO animal health manualNo.16、第6章「口蹄疫の緊急事態に対する早期対処緊急時計画」にマニュアル化されて掲載されています。(原文訳と解説はここから)
http://vetweb.agri.kagoshima-u.ac.jp/vetpub/Dr_Okamoto/Animal%20Health/Contingency%20Plans%20CHAPTER%206.htm

この第6章の「地区割り」(ゾーニング)は、伝染病を早期にくい止めるための疾病制御です。まず初発の地点から半径10㎞を「感染地区」とします。いわば火事で言えば、出火地点です。これはよくニュースでも聞きますね。あのグルリとコンパスで描いた内側の同心円です。この地域は移動制限と殺処分対象地区となります。

問題は次の「発生動向調査地域」です。これは「清浄地区」の安全地帯と、今述べた火の元である「感染地区」の間の地域で、いわばグレイゾーンです。感染が侵入しているか、どうかわからない地域です。

ここが問題なのです。ほとんどニュースで聞かないでしょう。ニュースでは「非常事態宣言」だとか、「全頭処分」だとか、「感染拡大」といった禍々しい話題ばかりで溢れていましたが、その陰で忘れさられたていた存在が、この「発生動向調査」でした。

実はこれが今回の口蹄疫事件ではまったくなされなかったのです!
現実には官民共にパニックでした。感染スピードがあまりに速かったこともあります。「みゃあ」様のおっしゃるように政治家の対応も非常に遅かったのも事実です。それはこのシリーズで再三指摘し続けてきました。

4月28日に川南町で豚の感染が確認されると、一気に豚の感染が拡がり、豚が持つ増幅動物(*牛から感染したウイルスを2~3千倍にする)の特徴で、一気に地域の汚染濃度を濃くしていきました。

そして処分対象が瞬く間に積み上がり、この処分地がないことがいっそうパニックに輪をかけます。そして処分できずにいる患畜が数万頭といった目も当てられない状況になっていきます。この待機患畜からは、膨大なウイルスが日夜排出され、これが拡大にいっそう拍車をかけることになりました。

この時点でブログ界は「赤松口蹄疫事件」などという政治的な利用主義が主流を占めてしまいました。そして片や民主党支持者たちは県知事責任論を持ち出して対抗するという不毛なバカ騒ぎとなりました。
赤松前大臣と鳩山前政権の無為無策はいうまでもありませんが、彼の首を取ったところで何も解決しないのに。大事なことは、この口蹄疫をどうやって止めるのか、その一点にかかっていたはずでした。

この時点で必要な緊急事態対処政策はなんだったのでしょうか?頭を冷やしてFAOの対処マニュアルを紐解くべきでした。実際に日本政府のあまりのドタバタぶりに見かねたFAOは、顧問団を派遣することを申し出たのですが、なんと呆れたことには政府は拒絶してしまいました。ヤレヤレですね。このときFAOの顧問団に来てもらえればその後の展開はまったく違ったものになったことでしょうに。

対策本部がパニックに陥ったために「手順の後先」が忘れられていました。発生地区を確認した後にすべきは、この「発生動向調査」だったのです。どこまで発生が進んでいるのか、どこに飛び火しているのか、いないのか、それを農場に立ち入り検査をすることが必要でした。

このきわめて重要な「発生動向調査」を欠落させて、農家の自己申告に委ねたために農家もまたパニックになりました。それはそうでしょう。侵入ルートがわからないのですから,防ぎようがありません。どこまで来ているのかの発表もないのです。信じがたいことですが、事実です。農家はまったく目隠しされたまま、ただ風聞に恐怖し、ありったけの石灰を蒔き、足りないビルコンをチビチビと撒いて凌いでいたのです。

この原因は「発生確認調査」にあたるべき主力部隊である家保の獣医師団が、殺処分の現場にことごとく釘付けになったことです。人間の伝染病にたとえるのならば、いわば医師が斎場に全員張りつきになったようなものだ、と岡本嘉六鹿児島大学教授(獣医衛生学)は言います。

そして今、ようやく、やっとですが、農水省の家畜衛生部会疾病小委員会は、都城に感染が飛び火したことを受けて重い腰を上げ、このような答申をしました。「発生農場周辺の、従来の農場からの異常畜の通報による方法に加えて、近隣の農場(略)については、それぞれ念のために抽出検体について精密及び臨床検査を実施する」。(本文はPDFでこちらから)http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/eisei/pdf/gaiyou14.pdf

この疾病小委がグダグダと解りにくく言っているのが、「発生動向調査」です。なんとこれが発生以来最初の「発生動向調査」なのです。都城では、PCR検査と抗体検査を実施し、陰性であることが判明しました。

この発生動向調査の陰性結果を得て、都城は落ち着きを取り戻しました。あの発生農場近辺の大規模農場が陽性で、疑似患畜が出た場合とてつもない大惨事になったからです。

私自身5年前の茨城トリインフルエンザ事件で爆心地のすぐそばにいた農家のひとりとして、もっとも不安なことは、「どこから感染拡大しているのかわからない」ことでした。どこから来るのかわからないから対策を立てようがないわけです。

その代わり風評は山ほど飛来します。不安心理につけ込むように、やれ野鳥だ、やれアブだ、いや蚊もアブねぇ・・・。こんな被災地農家心理を更に煽るように、やれ何国人が運んだ、カルト宗教がからんでいる、最後には某国のウイルステロだ、もう日本の畜産は全滅だ・・・!
いいかげんに外野はくだらない情報を流さないでいただきたい!ちっとは被災地農家の気持ちにもなってみろ!あなた方がやっているのは、同情に見せかけた単なる煽りです。火に油を注ぐ行為に等しい。

ウイルスの運び屋の三要素は、家畜糞尿、家畜関係車両、そして人です。この3要素以外に今の段階で、農家がアブや野鳥までブロックできるはずもありません。この3要素をまず徹底的にブロックし、発生動向調査を徹底して行い、被災地農家を安心させるのが急務です。

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コメント

宮崎を見捨てた民主党
http://www.youtube.com/watch?v=APQZDR36srg

関西テレビ『アンカー』青山繁晴氏
民主党を批判
http://www.youtube.com/watch?v=GiETfQZ0_zE

泉谷しげる氏 口蹄疫について
http://ameblo.jp/shigeru-izumiya/

今晩は。1日発生が無かったので、この調子で行けば・・・と期待していましたが新たな地域で発生の一報を見て落胆です。まだまだ油断(安心)は出来ませんね。腰の重い北海道の行政もやっと動き出しました。口蹄疫の防疫に対する補正予算が可決されました。農家の消毒剤購入、港湾(フェリー)の消毒マット費用、公共牧場の消毒機器購入、消毒薬や検査機器の購入費用など総額3億3千万強の予算手当が出来ました。侵入防止を呼び掛けるだけの動きから、具体的に動き出したのが感じられ少し安心しました。様々な準備も当然ですが、管理人様がご指摘されているように、法の解釈もきちんとしておく必要性も感じています。これからです・・・・

しばらくです。こんなところhttp://binzumedengon.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-1b78.html
で話題になっていますね。

家畜防疫の基本は、「隔離」です。「発生動向調査」で獣医師が農場へ出入りしようものなら感染は広がります。行政的には感染拡大の状況を把握する必要があるでしょうが、産業的にはひとつひとつの農場にウイルスが入らないように隔離する事が先決です。
伝染病ウイルスの進入経路はひとつとは限りません。すべて遮断してしまうことが基本です。どこから来るかは問題ではありません。

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