赤松大臣、総辞職で逃げきる 次の農水大臣は農業を知っている人にしてほしい!
鳩山内閣が潰れました。まぁ、予想された事態で、いまさらなんの驚きもありません。むしろ今まであれだけの失政を山ほど積み上げて辞めなかったほうがかえって驚きでした。
ただし、これも延命のための手段に過ぎず、小沢氏が表舞台から消えただけで、党内に150名もの「オザワ・ユーゲント」を抱え込んでいる権力構造が不変な以上、本質的変化はないと思われます。
農業に関しては、4月1日から農家戸別所得保障政策が、モデル事業として米作のみに取り入れられました。これは地域によって実施時期や事前説明にバラつきがあるために、農業者もまだよく全体像を理解していないようです。
所得補償を見込んでの米の買い叩きがそここで発生して農家を悩ませています。仲買が補助金を見込んで、その分を買い叩くわけです。米価は下がり続ける一方、前年度米の大量在庫という異常事態が生じています。
果たして今年の新米時期にどうなっているのか、この農家戸別補償政策を見る上で興味深いところです。というのは、今年は冷夏予想で、農家は冷夏による作柄不良を予想しています。通常なら供給量不足で価格は上昇するのですが、これと所得補償政策がどのように絡んで影響を及ぼすのか、過剰米対策が明らかになっていないので、私にも予測ができません。
一方、この農家戸別所得補償政策に5618億円も注ぎ込んだために、土地改良予算を前年度比63.1%も大幅カットするということをしました。土地改良事業の全国の会長が野中広務氏であったためです。自民が作った事業は潰し、自分になびく予算はお手盛りするという典型的な利益誘導型の予算配分でした。あまりにもオザワ的なオザワ政治です。
複数年の土地改良事業による基盤整備が中途で廃止されてしまったために、村でも途中のまま放棄される事業がポツポツ現れだしました。なびくものには金をバラまき、なびかぬ者の予算はたとえ複数年度であろうと中途でぶった切るという民主党の政策スタイルは農村に目に見えない亀裂を作り出しました。
JA茨城ですら、あれほどのJAいじめに合いながら、望月副大臣の選挙区であることを理由に、政権党の鼻息をうかがって民主党支持するありさまです。
あ、そうそう民主党はJAを解体するのが方針です。理由はJAが自民党の集票マシーンだった時期があるということと、民主党の持つ新自由主義的考えがあるからです。独占禁止法にからめて攻撃していますが、この政権が4年続けば、JAも郵便局のようなことに追い込まれるでしょうね。
つまり、民主党の農業政策は、選挙の利害関係だけはやたら鮮明に見えるのですが、では何をしたいのかとなるととんとビジョンが見えてきません。戸別補償にしても、だから金バラまいてどうしたいのか、子供手当ての農業バージョンを作ってもっと農業をひ弱にしたいのでしょうか、減反を緩めるのは私も賛成ですが、それとどう関わって来るのか、自民党農政に替わる全体像が何なのかさっぱり見えません。
第一、本来それを議論して政策に練り込んでいくべき党の農水政策研究会が、小沢氏による「政策は政府だけが考えればいい」という一元化政策により消滅してしまったために、脳死状態となってしまいました。無役の議員がやる仕事は国会での汚い野次だけとなり、最近これはあんまりだということで復活したようですが、肝心な政権のほうがガタガタでは今更どうしようもありません。
そんなこんなで、民主党の農政はズブの素人が政権中枢に陣取り、知見をもつ例えば篠原孝議員などにまったく出番がないという体たらくとなりました。それに加えて「政治主導」とやらで官僚というツールを使わないものですから、官僚はだらけきり、かくて口蹄疫事件のような口蹄疫確認から丸々1カ月遅れて対策が出るという想像を絶する事態が生まれました。
とまぁ、私は民主党農政を見るとき、とてもじゃないがまともな政権運営がなされているとは思えません。赤松さんウンヌンではなく、彼のような強権的な素人大臣でも勤まってしまう、口蹄疫の真っ最中にカリブ海にゴルフをしに行っても誰も止めない体制を考え直したほうがいいでしょう。
次の大臣が誰かは分かりませんが(たぶん山田さんかな?)、ゼイタクは言いませんから農業を何も知らない人に大臣をやらすのだけはやめていただきたいものです。農民やパンデミックの被災地が迷惑します。
■ 写真、海に見えるかもしれませんが霞ヶ浦です。沖の養殖網を見に行っています。
■ 追記 私の関わる有機農業支援予算も5年間予算が2年度目で事業仕分けされてしまい、今年度はまったく予算ゼロで活動することになりました。前年度で作った新規就農者支援施設もドンガラだけで、それを活用する予算が突如消滅したために途方に暮れています。
少なくとも、民主党が有機農業や環境保全型農畜産を支援していく気がないことだけはよく分かりました。
« 宮崎口蹄疫事件 その17 口蹄疫の特殊性と、えびの市の発生直後の対応について | トップページ | 宮崎口蹄疫事件その18 川南町・畜産の町の光と影 »
「民主党の農業政策ウオッチ」カテゴリの記事
- TPP、心しよう、今度は本気だ。自由貿易圏構想の裏側(2010.11.16)
- TPPやEPA 彌縫策とバラマキででどうかなる時代は終わった(2010.11.15)
- 赤松大臣、総辞職で逃げきる 次の農水大臣は農業を知っている人にしてほしい!(2010.06.04)
- 赤松広隆農水大臣の最初の仕事のスゴサ(2010.05.16)
- 有機農業支援・また一からの旅の開始 第1回 有機農業推進法ができるまで(2010.04.09)
コメント
« 宮崎口蹄疫事件 その17 口蹄疫の特殊性と、えびの市の発生直後の対応について | トップページ | 宮崎口蹄疫事件その18 川南町・畜産の町の光と影 »
宮崎様貴重な情報ありがとうございます。「えびの市」の対応を参考に、我町の初動対応等を整理したいと考えています。
昨日は長文で「個体識別」についてコメントさせて頂きました。言いたかったのは、たまたまではあるが、個体識別に関する事業が、BSE発生の数年前からスタートしており、耳標装着までシステムが出来上がっていた事によって、緊急の法制化による全牛に対する装着も世界に類を見ない短期間に、完了した事です。そして、食肉用の全頭検査の実施、及び牛の流通経路をトレースするシステムが消費者にも理解され、大混乱を早期に終息させる事につながったのです。決して某大臣がステーキを食べたパフォーマンスによって、国民が安したわけではありません。このように、事前からの準備が功を奏する事が実証できたことが大きいのです。口蹄疫も日頃から防疫意識の高揚や発生時の対応等をマニュアル化し、準備しておく事が重要だと思い記載させて頂いた次第です。えびのの解除本当に良かったと思っています。
宮崎様今後ともよろしくお願いします。管理人様にも心からお礼申し上げます。
投稿: 北海道 | 2010年6月 4日 (金) 13時11分
しばらくこちらをROMってた山形市民(農学部中退)です。
山形のローカルニュースでは先月から『検疫体制強化』しようにも、自前の消毒車は1台しかないとか、肉牛生産者は戦々恐々として入り口に石灰巻く程度。
狭い島国ではとても対岸の火事とは思えません。
県でもあわててマニュアル策定してる段階です。
宮崎様には
とにかくお見舞い申し上げます!
なにかできることは無いのかと思ってたら、明日地元でのJリーグカップ戦で義援金を募るようなので、ちょっとだけでも(現在無職なもんで…)募金させていただきます!
キャンプ地としてお世話になった宮崎ですし。
出身者の増田誓志は、けして高くないギャラからポンッと100万出して、募金を引っ張るようです。
やはりなにより初動体制が大事と感じる出来事でしたね。
東知事を叩く流れをマスコミ主導で進め始めたら、赤松大臣&農水省のダメダメっぷりがことさら浮き上がった出来事でした。
すいません。GW末期にデンマーク視察に行っちゃったのは山形選出の新人舟山康江政務官です。
都会から田舎に嫁いださわやかで感じのいいおばちゃんですが、時々イタイことをやっちまう人です。
つくづく選挙は大切だと思いました。
1日も早い終息をお祈りしておりますm(__)m
投稿: 山形DIO | 2010年6月 4日 (金) 13時50分
濱田様 今晩は。えびのの制限解除で正直、ほっとしています。しかし川南地域では感染の発生、処理の状況はここ1週間何も良い方向へ進みませんでした。防疫に携わる方々も作業に集中して進めてくれていますが、大型農場(牛・豚ともに)の発症スピードに追いかけられています。この1週間、むなしくなる程ウイルスの感染力を改めて見せつけられています。鳩山内閣総辞職、赤松大臣も。変わって山田副大臣が大臣になるのが現地にとっても一番望ましい事と思います。
特措法の施行に備えて各地でお酢の通行車両への消毒準備が進んだり、都農への牛の搬入が休止したり動きが変わって行くのを感じています。
今度こそ、現地の事情に沿ったスピードの上がる対策方針がとられる事を念じています。自分にない捉え方をなさるので今後とも見て行きたいです。
北海道様
BSE事件の時は人間への感染が可能性が有りましたので影響が長引きましたね。恥ずかしながらF1肥育から枝肉になったら和牛へ、という不合理が解消されたのも、その後の履歴制度を確立出来たのは副次的かもしれませんが業界の襟を正す意味でも良かったです。当時からまじめにやっている人は沢山いましたので。あの時も原因は特定の製造業者の製造したミルクが汚染原料の使用が疑われましたが、何も公表されず立ち消えになったのを思い出しました。今回の口蹄疫では今後繰り返さないために、管理人様も書いておられましたが、具体的なルート、川南での感染が進んだ理由(何が悪かったのか)など公表し、皆で共有したいです。発症地域ですら断片的な情報しか得られない部分も多いのを感じ、歯がゆい思いをしていますので・・。
たぶん明日辺りから対処方法が変わると思います。みやざき頑張れ!必ずストップさせましよう!
投稿: みやざき | 2010年6月 4日 (金) 21時50分
濱田様、宮崎様おはようございます。
6月4日特措法が公布・施行されました。今後の対応にも変化が出てくると思いますが、願うのは終息です。首相も変わり週明けには新しい内閣で国政がスタートします。国民受けや耳ざわりの良い言葉を並べるのではなく、実質的に国家国民の現在から将来の事を考えた発言や政策を切に望む所です。
様々な課題が山積している状況では、なにを優先するか、何にポイントを絞るかか難し舵取りとなる事は容易に想像できますが、優秀な官僚をフルに活用して取り組んで欲しいものです。マスコミしか情報入手の手段がない我々としても、評論家の言葉を鵜呑みにしないで、じっくり見て行きたいと考えています。
宮崎様のおっしゃる通り、今回の発生経過やその対応を検証し、今後につなげていく事が、今回被害を受けられた方々の苦しみに少しでも報いる事が出来るのではないかと感じています。今後ともよろしくお願いします。
投稿: 北海道 | 2010年6月 5日 (土) 08時48分