宮崎口蹄疫事件 その46 野生偶蹄類に感染している可能性は高い! 「その44」の訂正をかねて
今回の宮崎の戦後最大規模の畜産災害を見て感じることのひとつは、「政府」が横断的に統合して機能していないことです。
いままで初動にポイントを置いた検討をしてきましたが、現在の清浄化確認という時期を迎えてまた別の意味での「政府」の働きが問われています。
それは環境省、農水省管轄の林野庁などの持っているはずの宮崎県被災地地域の丘陵から山地にかけてのシカ、イノシシの生態情報が、いっかな口蹄疫対策に活かされていない現実です。
昨日beachmollusc様からいただいたコメントを拝見し、貴重な情報をご提供いただきました。教えられることしきりでした。ありがとうございました。
氏はある国立大学で教員をされていた生態系の研究者でいらっしゃいます。お読みになればおわかりのように都農、川南、高鍋、新富、木城地区などでは、野生偶蹄類と交差感染する可能性のあるケースが非常に多くあることが判ります。
私は前々回の記事(その44)で「野生の偶蹄類からの再感染の脅威度は低い」と書いてしまいましたが、まったくのミスリードでした。私がなまじ被災地の農家だった経験があるばかりに自分の体験に引きづられておりました。丘陵から山地にかけての牛の飼育形態と、私のような平地での養鶏とは根本的に異なる様相をもっていました。
訂正をかねてbeachmollusc様のコメントを再掲載いたします。な お、氏のブログは一度紹介いたしましたが以下です。 同じ口蹄疫を取り上げておられて、私とまったく異なる視座からの鋭い論旨に目が覚める想いです。
「ひむかのハマグリ」 http://beachmollu.exblog.jp/
[以下引用・太字引用者]
(前略)野生動物のことは、外野から見ると分からないでしょうが、宮崎県北部の口蹄疫発生地域は(略)平野部の農村地帯とは違います。山地が海に迫っていて、起伏が激しい、海岸段丘がうねっている場所です。宮崎市の跡江も隆起平野の段丘が沖積平野の中に頭を突き出している場所です。さすがに跡江に鹿はいないでしょうが、猪はいるかもしれません。
都農、川南、高鍋、新富、木城は全て丘陵から山地にかけての斜面で、海に近い場所でも複雑な地形です。海岸に沿った砂丘地形もあります。家畜の畜舎の多くは人家から離れている所で丘や林に囲まれていることが多く、最近は山地に多くの農場ができています。また近隣の山には放牧地があちこちにあります。
豚舎はよくわかりませんが、牛舎は大小さまざまで、多くは開放的であり、林、藪や草原に囲まれていて野生動物は日常的に周囲を徘徊しています。川南の市街地から近い発症豚舎に鹿が居座っていたことが目撃されています。餌のオコボレや堆肥を狙っていると思われます。猪は鹿よりも人家に近づいて、農地を荒らしまくっています。
自宅の日向市の場合、市役所から車で10分、距離は5キロくらいの山地の入り口ですが、毎晩鹿が家の周りを歩いていますし、猪は裏手でヌタ場を作っており、林道に無数の獣道があります。夕暮れにはウリボウをゾロゾロ従えて母猪が林道を横断しています。周辺の谷間の水田には猪よけの電気柵が必須です。していなかった田んぼのなかで稲がなぎ倒されていたことを何度も見ています。
昨年都農の山中を調査していた時に見ましたが、山の放牧場(水牛牧場のすぐ近く)で鹿が昼間からウヨウヨしていました。木城町でマスコミが放牧場の牛と鹿を撮影していましたが、全く同じことは川南と都農でもおこっています。
というわけで、野生動物の実情をよく知っているので、発生当初から野生動物と接触する感染リスクについてブログで情報発信を続け、県にもメールでアドバイスしたつもりですが、全く手ごたえがなかったので驚きました。
野生動物が再感染に関係するリスクですが、このまま野生の鹿と猪の疫学調査なしで、感染を確かめないままの児湯地区の畜産業の再開は危険だと思っています。もしもすでに感染しているとすれば、野生の鹿と猪は畜舎の周辺に慣れている、言い換えれば共生関係になっている個体が多いはずです。
[引用終了]
県当局に警告なさったことも書かれていて、まったくの無視を決め込まれたことも述べられています。清浄化期間において、野生偶蹄類への感染動向調査を行わないとすればまさに自殺行為です。
まして児湯地区の畜産業を開始することは、再度の感染の繰り返しを演じる導火線となりえます。
またブログ記事では環境省のまったくひとごとのような対応も批判されています。これは感染拡大期の国交省の対応にも似ています。要するに農水省の関係部局以外は口蹄疫に対してまったく無関心、無気力であるということです。一丸となって口蹄疫と闘おうという「政府の意志」が不在です。
宮崎県知事は、4日の宮崎市の発生を受けても、「移動制限区域なので非常事態制限の変更はない」(産経新聞7月6日)という対応をしています。
この時期での1例の発生の背後にはその十倍の潜伏個体がいると思うべきです。また児湯地区周辺の野生動物の発生動向など手つかずのはずです。このような状況のままで、非常事態宣言と移動制限解除などぜったいにありえないことだと言わねばなりません。
宮崎県知事は安易な人気とり政策に陥るのではなく、現実を直視した行政官の視点に戻るべきです。それがほんとうの護民官たる県知事の姿ではないでしょうか。
■写真 少し前のジャガイモの花。今はほとんどを掘り上げてしまいました。村中をジャガイモのヤレ(選別外品)が飛び回っています。作っていない我が家にももうダンボール一杯分が各所から舞い込んでいます。この時期のわが村の地域貨幣といったところですか。
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コメント
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宮崎の皆さん
7月4日発症の接点 (292例目 宮崎市生目跡江地区 繁殖和牛農家)
公式発表:6月30日に清浄性確認検査で9頭採血、7月4日抗体検査により3頭の陰性が確認できなかっため立ち入り。
①6月25日に目視検査チームが入っている。殺処分に出ていたチーム。事前目視の指示を出した為実施
②跡江の豚(285例目)の近く
*30日の本採血時には他の農場はエライザは陰性。
宮崎地区の方々は消毒の徹底を今まで通り緩める事無くお願いします。知事の根拠の無い一部非常事態宣言解除のインパクトのおかげで消毒ポイントを通過する車両は半減しています。
あと今週が無事に過ぎることを願っていますが、各地非常事態宣言一部解除を鵜呑みにせず、一般の方々もご協力お願いします。
また今日から西都の制限解除です。長かったと思います。
投稿: みやざき甲斐 | 2010年7月 6日 (火) 07時10分
>みやざき甲斐さん
はじめまして。
少し前からあなたのコメントを含め、このブログを読んでいる者ですが、あなたのコメントに対して疑問点があるので、是非教えていただきたいです。
(1)
>一部のみの目視確認だけで、「全頭目視検査が実施されなかった」
というのは本当ですか? 事実であるという根拠はどこにありますか?
(2)(1)の超大規模牧場というのはどこですか? 具体的に教えてください。 そうでないと私たちはどうしても過剰に警戒せざるを得なくなります。その結果、風評被害が拡大することになるのですよ。
以上、よろしくお願いいたします。
投稿: とみた | 2010年7月 6日 (火) 09時26分
「とみた」さんへ。言い分は理解できます。しかし、ここは記事内容から離れて、コメント投稿者同士でやりとりする掲示板ではありません。このことは先日「コメントのルール」で説明してありますのでご覧ください。
また、「みやざき甲斐」さんの当該のコメント部分は誤解を呼ぶ可能性がありますので、管理者の責任において削除しました。あしからずご了承ください。
投稿: ブログ管理者 | 2010年7月 6日 (火) 14時35分