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宮崎口蹄疫事件 その43   清浄国への復帰を政治的スケジュールにからめてはいけない

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宮崎県知事が非常事態を一部解除するとのプレスリリースがありました。(宮崎県の口蹄疫プレスリリースはこちらから)http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/honbu/seisaku/emergency/100630.html

このプレスリースを読むと、7月16日からの夏休みにまで、本格的な解除をしたい意向のようです。

ほぼ同時期に篠原副大臣(現地本部長)は、移動搬出制限を7月16日午前零時に解除できると発表しました。(読売新聞6月26日記事全文はこちらから)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20100518-296281/news/20100626-OYT1T00763.htm

まずは、現地の農家の方によかったですね、と心から言いたいと思います。長い闇が晴れて、一筋の光明が見えてきました。
しかし、同時に一抹の不安が残ります。現地の農家の皆さんの神経を逆撫ですることを覚悟で、そこのところを今日はお話していきたいと思います。

さて、とうぜんのことですが、清浄国復帰への道と、なんの法的権限もない宮崎県の知事の「お願い」にすぎない非常事態宣言は別な次元の話です。
私は知事を馬鹿にしているのではなく、このような「お願い」しか出せない知事の歯ぎしりするような悔しさをわかった上で、OIEの「陸生動物衛生規約」
によって厳密に規定されている清浄国復帰への道程が同じ夏休み開始7月16日という日程をめどにに組まれてしまったことをいぶかるのです。
(OIEの訳文と解説はこちらから。抜粋は最下段を参照のこと)
http://vetweb.agri.kagoshima-u.ac.jp/vetpub/Dr_Okamoto/Terrestrial%20Animal%20Health%20Code/Terrestrial%20FMD.htm

一方この7月16日解除予告会見の後に、山田大臣は農水省定例記者会見でこう述べています。(農水省記者会見概要はこちらから・太字と改行引用者)http://www.maff.go.jp/j/press-conf/min/100629.html
[引用開始]

大臣 いろいろな疫学調査チームで、今回、民間の獣医さんも入れて、現地調査チームを私の指示で作らせて、現地へやっております。
その中で、いろいろな報告を聞いておりますが、やっぱり、いろいろなことが分かってまいりました。
そんな中で、やはり、
人とか、車両等々の感染ルートというのが、かなり濃いのではないかと思っておりますが、そういった時、まだまだ油断できないというか、
あそこに、あれだけ発生して、まだワクチン接種家畜も8千頭からいて、しかも、たい肥の量、糞尿の量が、半端じゃありませんで、
2か月間ですから、まだそこに生きてるウイルスがいるわけで、こういう時、ちょっと気を緩めたら、本当に、それは拡散してしまって、どうなるか分からないという、
非常に私自身は、こういう時が危ないのだという危惧を覚えておりまして、何となく、そんな予感がするところです。 
[引用終了]

さすがと言いますか、自分自身五島で牛を飼っていた山田さんだけあって、リアルな把握です。多少お世辞も含めてですが、赤松さんではなく、彼が当初から今のポストにいたらと思わせますね。

しかし、ならばどうして7月16日の移動制限解除が日程化されたのでしょうか?現在の日本の清浄国のステータスは「ワクチン接種を行っていない清浄国」の資格停止国状態です。ご承知のように4月20日の口蹄疫確認のFAOへの通知に従って、5月のOIE代表者国際総会で正式に清浄国の資格を剥奪された状態のままです。

清浄国復帰へは、国内に口蹄疫ウイルスがラボ以外にあってはならないことが前提とされます。

そしてこの清浄国復帰には、家畜とその副産物である「動物に由来する製品」(未加工も含む)、そして当該地区に棲息する野生の偶蹄類にも、口蹄疫ウイルスがないことを証明しなければなりません

とりあえず牛、豚の家畜の血清調査がシロだとしても(実際は山田大臣が言うにように予断を許しませんが)、問題なのは動物由来の製品と野生の偶蹄類のシロ証明です。

不安を煽るようで申し訳ないのですが、川南地区や西都市の山間部には多くのイノシシやシカがいることが知られています。今まで、家畜の感染拡大を阻止することで手一杯の状況で、家畜の発生動向調査すら満足におこなってこなかったのが実情です。

そこに今、清浄国復帰という新たな壁を前にして今まであえて見てこなかったもうひとつの危機、野生偶蹄類への感染拡大の潜在的可能性が登場したのです。
つまり、仮に家畜からは口蹄疫を一掃しても、堆肥、糞尿、ワラにも長期間(*口蹄疫ウイルスは糞尿中には最大6カ月間生存する)残存し、かつ野生動物の発生動向に至っては手つかずだというのが現実です。

これはなにを意味するのでしょう。野生偶蹄類に口蹄疫ウイルスが残存し、潜伏し続ける火薬庫の可能性を抱えているということです

このようなことを考えた時、7月16日、非常事態宣言と移動制限の同時解除という、ある意味、政治的なスケジュールが優先する清浄化への動きには大きな不安を感じざるを得ないのです。
徹底した清浄化確認を,家畜の血清検査はもとより、被災地区の敷料、堆肥、糞尿に至るまで調査し、さらには加工肉や野生偶蹄類のフィールド調査までをやり切って行く中からほんとうの「安心」を獲得すべきではないでしょうか。

今が、まさに山田大臣の言うが如く「もっとも危険な時期」なのです。光明が見えだした今、焦ってはなりません。

■資料

OIE 「陸生動物衛生規約」から抜粋 8・5・8条 清浄資格の回復  

1. ワクチン接種が行われていない口蹄疫清浄国または清浄地帯で口蹄疫またはFMDV感染が起きた時、ワクチン接種が行われていない口蹄疫清浄国または清浄地帯の資格を得るために以下の待ち期間の一つが求められる。

a. 第8.5.40条から第8.5.46条に従って殺処分政策および血清学的発生動向調査が適用されている場合、最後の症例から3ヶ月。または、

b. 第8.5.40条から第8.5.46条に従って殺処分政策、緊急ワクチン接種、および、血清学的発生動向調査が適用されている場合、全てのワクチン接種動物が食用と殺されてから3ヶ月。

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コメント

ブログ主様、宮崎の皆様。お疲れ様です。

でも清浄国への回帰は早すぎると思います。
慎重に慎重を重ねて数ヶ月調査すべき段階ですね。

投稿: 山形 | 2010年7月 3日 (土) 13時38分

濱田様 
やっと先の見える状況にはなりました。本当にここまでが長かった、というのが実感です。
 赤外線サーモグラフィ、2002年に開発されていたならせめて各県1台でも備えて準備出来ていれば全然状況が変わったと思います。2000年に宮崎・北海道で発生した後に十分な準備を検討していれば、日本でも導入、又は開発されていたでしょうね。
 (前回の宮崎では初発の2002年3月23日発生の1件目は発熱などの症状を出し始めたのは3月12日からでした。その後の2例目の発見は、1例目発生後の周辺農場への一斉血清検査での確認中に出たものでした。その時は制限区域は50km、6家畜市場一斉休止。)
 今回の1例目の発生後は前回に行った周辺農場への一斉検査は行われていません。また、今回の各発生地域で行われた洗浄性確認検査(目視)でもより精度の高い確認が出来たと思います。今回は確認数が膨大で、多地域に渡った為、処分作業に従事される獣医師が多く、拡大防止の為に全国各地から専門獣医師の応援を頂いて進められています。しかし、全国の獣医師さんはペット専門や鶏専門で、牛や豚は殆ど未経験な方々も多く含まれます。「すみません(標準語)。母豚、親牛はどれですか?・・・」という状況です。
 決して協力頂いた方々がダメだっと、という事を言いたいのでは有りません。今回の様な大きな爆発を起こしてまった時の準備が全くなされていない為に今回の様な事態になってしまった事を、ブログでも実感している所です。
 ここに至って改めて分かったはずのウイルスの恐ろしさを、今後の方針に反映されない事にも非常に不安を憶えています。

何とか皆の協力のお陰で埋却処分は終了する事が出来ました。でも6月27日に発症して、当初の順番を変えて埋却された牛さん(ワクチン接種、済み)もいたり、堆肥(石灰をかけてシートで覆ったり、堆肥舎に山積みしたり、石灰を投入してアルカリ化させたり)した後、家畜の埋却を優先させた為にそのままになっている堆肥も有ります。堆肥は家畜の容積どころではなく、物凄い量です。これを埋却する事は例え用地が有っても不可能です。でも決して現地では放置しているわけでは有りません。何とかスピードを上げて処理しようと引き続き頑張っています。
一部では「堆肥埋却用地も補償として用意してもらわないと(自分の農場用地に埋めると再開スピードが落ちて)困る、と開き直って動かない周辺同意の一切取れない超大規模農場」も有りますが・・・怒。
 野生動物も発生したどの農場付近にはよく出没するかは把握出来ていますが、まだ手付かずです。未発症の家畜がどんな状態なのか、堆肥からの感染をどう防ぐのか、初発の感染ルートが何だったのか、が何も解決されていません。
そんな中7月16日という制限解除が設定されてしまいました。
東国原知事の「非常事態一部制限解除」の発表が有った途端に、消毒ポイントを通過して下さる一般車両の数が激減しています。消毒ポイントが暇になっています。折角ここまでたどり着いたのにまた発症して、振り出しに戻らないかがとても心配です。
27万6094頭という犠牲が無駄にならない様に、選挙も大事なのですが、終息状態の演出ではなく、再発生防止だけを考えて対策を考えて欲しいです。

*市長さんが会見で、「二日酔い」では無かったので、本当に安心しました。一般の方々にはあと10日は全ての施設も閉鎖、活動自粛とお願いされるのに、閉鎖されているはずの星の見える公園ではカウントダウンが。とても心配していました。生産者の参加が少なかったのが幸いです市長。「現」知事は発生現場視察だけですぐお帰りでしたよ。
都城はたまたま、川南地区の被害拡大を見て、えびの地区の独自初動での制圧成功の結果を事前に取り入れる時間が有って、発生農場が農場内で埋却出来る規模だっただけですよ。侵入経路もはっきり発表されない状況ですのでちょっとでも緩めたら、だめだと思いますが。

 北海道様 都城では発生日15時過ぎには重機の搬入が始まり、夕方には埋却準備が完了しました。すべて地元の土方のおじさん達の協力でした。おっしゃる通り前もってそれぞれの地域で取れる最速の対策を考えて準備して下さい。
 山形様 宮崎を気にかけて頂きありがたく思っています。今後とも宜しくお願いします。

投稿: みやざき甲斐 | 2010年7月 3日 (土) 19時10分

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