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2010年8月25日 (水)

宮崎口蹄疫事件 その82  堆肥処分温度の引き下げ問題について

Img_0009

堆肥処分温度に関してコメント欄で議論が盛り上がっています。宮崎県が温度が61°から49°に基準緩和された「裏事情」が 公開されています。

糞尿の堆肥化の設定発酵温度基準が、「科学的には60度未満でも一定時間経過すれば無害化できるデータを持っていながら、
(1)55度以上で2分間維持(2)49度以上で1時間維持で、大丈夫と言う情報を、動物衛生研究所から得ていた」と言う事実を知りながら、農家の「気の弛み」を警戒して農家にあえてそのことを知らせなかった、ということを指摘していらっしゃいます。

ではこれに関してのデータを見てみましょう。
まずFAO(2002年4月)の「FMD」からです。

物理的および化学的処理に対する抵抗性

温度: 冷蔵と凍結によって保存され、50°C以上の温度で徐々に不活化される。

pH: pH 6.0未満またはpH9.0以上で不活化される。

消毒剤: 水酸化ナトリウム(2%)、炭酸ナトリウム(4%)、クエン酸(0.2%)によって不活化される。ヨード消毒剤、4級アンモニウム塩、次亜塩素酸塩、フェノールに抵抗性であり、とくに有機物存在下では無効。

生存: 中性のリンパ節、骨髄で生残し、pH 6.0未満の死体硬直後の筋肉では死滅する。飼料や環境では1か月まで生残可能だが、温度とpH条件に左右される

続いて動物衛生研究所九州支所のデーターでは、以下です。

堆肥(牛)

いろいろな状態が考えられる

液状、12-22

液状(凍結)、0℃以下

1週

24週

6週

180日

 

Moderate(やや危険)

High

High

High

http://www.sat.affrc.go.jp/sishocho/Ogawa/ekigaku/shiryou.htm

また、英国の文献PHYSICAL SUSCEPTIBILITY with literature reports for Foot and Mouth Disease Virusを岡本嘉六先生が訳出していらっしゃいますので転載いたします。(*赤字青字は原文ママ)

物理的抵抗性に関する口蹄疫ウイルスの文献報告

温度

  低温に対して比較的抵抗性:低温条件では最も長く生存

  生肉中では長期間生存でき、とくに、急速凍結された場合に肉中で酸の酸性が行われないため長期に及ぶ。

  温度に対する抵抗性はウイルス株によって異なる

  熱に対しては比較的感受性

  最適なpH (7.2 - 7.6)条件で口蹄疫ウイルスは、4°C1年間、22°C810週間37°C10日間、56°C30分未満、生存することが記録されている。

  61 °C3秒、55 °C20秒、49 °C1時間43 °C7時間、37 °C21時間、20 °C11日間4 °C18週間の条件があれば、ウイルスの90%が不活化する。

  大半のウイルス株を殺滅するのに、56 °C30分で十分である。

  懸濁液では、37°Cで最長10日間、22°C 810週間4°C1年以上、凍結温度以下では「ほぼ無期限」に感染性を失わない。

  ウイルスの一部は、55 °C および 61 °Cの加熱による不活化が期待される時間では、生残することがある。

  ある場合には、予想外に加熱後も感染性が残ることがあり、たとえば、80°C6時間。この場合でも、引き続き85°C6時間加熱後には感染性がみられなかった。

  組織外のウイルスは煮沸によって殺滅される。高圧滅菌は、殺菌目的で使用する場合により効果的である。

  溶液中の口蹄疫ウイルスが紙やカバー・スリップなどの表面で乾燥した場合、懸濁液中のタンパクの濃縮によって保護され、懸濁液中のウイルスが殺滅される温度では生き残ることがある。懸濁液中のウイルスは、37 °C7日間、50 °C2日間、80 °C3.75分間処理することによって感染性がなくなる(細胞培養液の接種による)。カバー・スリップ上で風乾させたウイルス懸濁液は、力価が乾燥後に低くなるが、その程度は血清型によって異なり、A型はO型、C型、 Asia-1型より安定していたが、37 °C14日間、50 °C2日間、80 °C1時間の加熱では、4血清型の内3血清型が完全には不活化されなかった。

  粘液や糞便によって保護された、ならびに、強い日差しが遮られた場合に、口蹄疫ウイルスは通常の気温では比較的熱に安定である。

  感染した乳腺からウイルスが排出される際に乳ミセルと脂肪滴に包まれるために、乳中のウイルスは加熱に対して保護され、ウイルスの一部は72°C15秒間の殺菌、さらには、88°C50秒間の加熱後にも生残していた。

  連続殺菌における米国FDA の乳殺菌法(Pasteurized Milk Ordinance)に指定された72°C15秒間の高温殺菌(HTST)は、スキムミルクや全乳中で1000000分の1までウイルス生残量を減らすことが細胞培養法によって分かったが、去勢牛への接種試験において残ったウイルスの感染性が確認された。乳の加熱時間を36秒に延長、または、80 °C95 °Cに温度を上げたが、全乳を去勢牛に接種すると感染性のあるウイルスが完全には殺滅されていないことが判明した。

私は処分温度を県が61°から指示したことにはなんの不思議も感じていません。畜産農家の心理をお考えください。畜産農家が40°~50°発酵でよしとされた場合、61°以上を選択することはありえません。

だってたいへんですからね。理由はそれだけです。仮に61°で3秒とわかっていても、技術的に困難だということも含めてですがやらないでしょう。事実61°以上処理では19日までに達成率22%というヒサンな結果になりました。

農家は経験から予測できるので、大半は低温発酵を選択します。現在の宮崎被災農家には、この酷暑の中でそのていどの残された余力はないのです。

では一方、それが防疫上考えて万全かといえば、動物衛生研究所九州支社が言うように「堆肥中では色々な条件が考えられる」わけで、はなはだ不安定、かつ、不確実です。研究所がこう言う以上に、農家の現場ほど千差万別なものはこの世の中に少ないほどです。

ならば県行政が61°以上を指示するのはあたりまえで、清浄国復帰への道筋で万が一にでも農場現場こウイルスが残存すれば、また新たな感染の火種となるのでそのような指示を出したと思われます。これに関しては政治的な思惑はないと思います。

ご指摘のように27日の宮崎県「終息宣言」を61°処理では達成不可能とみたということとの関わりもあるとは思いますが、初めから畜産農家に「知っていて教えない」ようないわば「たぶらかす」意図があったとは私には思えません。

整理すれば、県はたしかに40°~50°の温度帯で発酵処理することで、ウイルスが死滅することはNZの研究報告や宮崎大の後藤義孝先生の研究を見て知っていました。
しかし、40~50発酵では条件次第で時間がかかりすぎるということ、また不確実性が高いので、ウイルス処理終了時期を読めないということで61°以上の処理を命じました。

現実に農家でやってみると、想定外の出来事が起きました。大量に混入した石灰によってphが強アルカリに変化しており、微生物が死滅したために61°以上の発酵温度に達することが難しかったのです。

そこで農水省とも話し合って、40°~50°の処理温度帯の上限温度49°以上に設定し直したということでないでしょうか。

県が当初高い温度設定を命じたのは防疫上当然の考え方であり、それが現場で難しかった以上その変更をするのもまた当然の話です。

とまぁこれだけの話と言えばこれだけで、特に県に政治的な裏があってのことではない気がしますが、いかがでしょうか。

■写真 アマガエルは暑さと雨の少なさでめっきり減りました。朝露を狙ってまったりとした時を過ごしにきます。

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コメント

政治的裏があったのかと言うことで、論点を持ってこられると困りますが、もともと、膨大な堆肥の数箇所の温度を測定して、たまたまそこが60度だったから、全体が60度以上と言うことは、ありえないでしょう。測定場所が、60度ならどこか40度くらいの場所もあるのでは?仮にあったとしても、1時間以上保持しているので、大丈夫でしょう。と、言う判断なのでは?だからこそ、60度を推進したのですよね。

ところが、7月25日時点で、すでに、2900箇所のすべてで、60度達成が、困難と承知している。

「防疫上当然の考え方」を優先するなら、設定温度を下げるのでなく、ウイルス根絶の新たな手法を、知らせるべきなのでは?

ご理解してもらえないとは、思いますが、どうやったら確実に27日までに、ウイルス撲滅できるか、もし、温度が上がらなかったら、どう対処すべきか。7月下旬から、最初の切り返し日まで、県と折衝したのですが、その時点では、まったく対応できていなかったと言うことです。

私は、政治は特に興味がありません。しかし、県は、興味があったのかも知れません。

基本は、ウイルスが無くなればよいだけの話です。

結局、対応が遅すぎると言うことです。7月下旬レベルで、お話してもらえるとありがたいです。

最初の切り替えしで、ウイルスが飛散するかどうかが、1番の心配だったので。

りぼん様の考え方は納得しました。
私は主様の考え方と同じです。さすがに三種の温度が提示されて、いきなり49℃を選ぶ方が多いという心理は想像してませんでしたけど。
より安全を考え61℃を選択して目標設定したので特にそれより低い温度について伝える必要もなかったんだろうと。
ただ、今回は消石灰の事で予想外の事態になった。

りぼん様の言うように7月下旬で県が予想できていたなら、61℃のごり押し以外の策も提示する必要についても一理あります。
安全についての立ち位置の違いがあるのでは?
県のより安全にする為の温度設定の徹底も、農家さんの切り返し等による菌の拡散を心配する声、迅速なウイルスの撲滅を望む気持ちも理解できます。

時系列。

消石灰が混ざっているので、温度が上がらない可能性があることを、県に伝える===話を聞いてくれない。1万分の1とは、どのような暴露レベルか、説明がない。

7月25日

今回は消石灰の事で予想外の事態になった。堆肥温度モニターの結果で、事態を知る。文献では、堆肥の場合、たとえば、80度でも、ウイルスが死ななかったケースもあるようだ。現状、稲わらは、蒸気80度30分消毒である。

8月3日

42日静置が終わり、8月5日には、第1回の一斉切り替えしです。
案の定、温度が上がらない。乳牛糞だからとか、水分が多いからだけの理由ではない。ほとんどの農家で、60度が達成できていないことは、すべての農家に、家保の職員が、温度測定にきて、解っている。3日、4日と、明日の切り替えしを目前に交渉する。

切り替えし強行。==不安になる。

おお!!わかりやすい。
なんか今回全体的に家保の動きが微妙な気がしますね。知事にある程度の決定権があっても専門家ではないので、横がしっかりしなければいけないと思うのですが。
想定外の損害だったのかもしれませんが、やはりマニュアル(法律?)があってないから右往左往している印象があります。


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