宮崎口蹄疫事件 その68 「大規模農場」の謎
7月19日の「宮崎日日新聞」の報道が、「大規模農場」報道の始まりでした。そこにはこのように報道されていました。記事をもとにして、この「大規模農場」を時系列で追うとこうなります。
■①4日18日に川南町の「大規模農場」で牛数頭によだれの症状を発見。獣医師(社員獣医師)は風邪を疑い、抗生物質を投与。
■②4月20日。県が口蹄疫と確定。
■③4月22日。「大規模農場」で、牛の舌のただれなどの症状が見つかる。
■④4月24日。更に2頭で同様の症状が見つかる。涎がおおくなったので、県家保に通報。
■⑤4月25日。「大規模農場」農牛の遺伝子検査で陽性判明。
■⑥5月23日。ワクチン接種。
■⑦5月28日。えびの市にある系列農場で疑い例。
■⑧6月7日。農水省疫学調査チームが、「大規模農場」とえびの市の関連農場について「家畜運搬車などを通じて感染が飛び火した可能性」との見解を公表。
この「宮崎日日新聞」報道でわかることは、4月18日に牛のよだれなどの症状を社員獣医師が発見したのだが口蹄疫だと判らずに、遅れること6日たって県に通報したとのことです。
4月20日以前は、他の病気の症状と判定がつかなかったという弁解をこれを発表した「大規模農場」顧問弁護士はしています。しかし、発症が複数頭いたことから伝染病であることは疑いようがなく、なぜ4月18日、遅くとも4月22日の時点で県家保に通報しなかったのでしょうか。
実際の通報は口蹄疫確定以降の4月24日にしており、確定から実に4日間たっての通報となります。この「大規模農場」は地元紙によれば牛700頭を飼育するきわめて大きな農場です。
とするなら、感染力のきわめて大きな今回の口蹄疫ウイルスは数日間でこの「大規模農場」を席巻し、多数の患畜が出ていた可能性があります。
そしてそのような感染拡大する状況下でありながら、「大規模農場」は、えびの市の系列農場に家畜を移動して、えびの市にまで感染を拡げてしまいました。これは推測ではなく、農水省疫学チームの公表見解です。
これらの6日間もの届け出義務違反と、不可解なえびの市への家畜移動は、単に道義上の問題にとどまらず、家伝法はもはより獣医師法に照らしても大きな疑問が残ります。
そして最新の追加報道が以下です。
宮崎日日新聞(8月5日朝刊より)
経営会社の関係者によると、高鍋町の大規模農場で5月21日朝、牛舎の見回りをしていた農場主任らが大量のよだれを出している牛数頭を発見。この牛舎では直後に従業員の出入りが禁止された。
昼頃開かれた従業員のミーティングでは、もう一人の主任が「口蹄疫が発生した」と発言。しかし、同日夕方のミーティングで「間違いだった」と否定したという。
同農場ではその後、5月23日にワクチン接種を実施。県によると、農場側が牛の異常を家畜保健衛生所に届け出たのは25日で、翌26日に遺伝子検査で3頭が陽性となった。
さて、今回「みやざき甲斐」さんが新たにコメント欄に提出した疑問は以下です。
■① 同じ時期に「大規模農場」は。3農場ともワクチン接種が避けられない状態になるまで申告をせずにいた。
■② 6月24日から埋却処理に立ち入った時には3農場で200頭以上頭数が合わず。耳標番号も死亡したはずの牛が生きていたり、ここにはいないはずの牛がいたりしていた。
■③ 5月末の発覚以降、飼料給与を絞ったために6月24日の埋却処理に立ち入った時に、死亡した子牛も多数みられて、農場に患畜の死体が積み上げられた状態だった。
■④ 51あるパドックのうち15パドックしか県の立ち入り検査をうけなかった。採血検査も100頭(*「大規模農場」は700頭規模)のみだった。
■⑤ 処分を免れた西都の系列農場から、制限解除以降名古屋に出荷されている。20カ月令の若い牛をなぜ出荷を急ぐのか。
■⑥ 以上から家伝法違反・獣医師法違反(知ってて届出義務違反)、トレサビ法違反(耳番号)、出資法違反(オーナーへの虚偽報告…牛の居場所)。このように家伝法に違反した農場に補償金はおりるのか?
また「りぼん」様より以下の情報提供がありました。ありがとうございました。
■① 制限解除後の「大規模農場」からの出荷は、都城からなのか、西都なのかは、名古屋市食肉衛生検査所からの情報ではわからない。
■② ただし、宮崎県産のと畜量は、4月20日以降、移動制限全面解除までは減ったが、現在は4月以前に戻っている。
■③ と畜場では、口蹄疫は目視検査しかしないので、症状が出て居なければそのまま流通する。
以上の数々の謎は、県の調査待ちです。残念ですが、今の県の調査姿勢では、多くを望めないでしょう。
私のブログでも新聞報道がなされるまでは記事化できませんでしたし、現在に至るも顧問弁護士を抱えた「大規模農場」に対しては名誉棄損訴訟を避ける範囲を超えられない制約下にあります。
ただしコメント欄はブログ記事とは違い、一種の掲示板ですので、私の法的責任の外にあります。根拠のない風評や誹謗中傷、名誉棄損的コメントは私が管理者として適時削除しております。
宮崎県口蹄疫事件について情報や知見をお持ちの方は奮ってコメントをお寄せください。心よりお待ちしています。
■写真 村の道祖神。
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濱田様
疫学上関連する(獣医師、場長、濃厚飼料、発酵飼料、出荷車両)全て共通している傘下農場に立ち入り検査していればもっと早く蔓延を防げたと思っています。
誘致時にも故N議員や児湯地区連、地元市長、一部議員が地元で自然と起った反対運動を沈めたり、BSE発生で肉牛の相場が低迷し、本来畜産農家にしか認められていなかった「肉用牛肥育経営安定対策事業」の加入要件を江藤隆美議員がむりやり拡大解釈して、中途加入の対象としてしまった事が今とても悔やまれています。
*純粋な畜産農家しか対象を認めておらず、預託オーナー経営(投機資金目的)なので畜産農家と言えるのか?、という農水省の見解を議員が眉毛で一喝した事が有りました。
投稿: みやざき甲斐 | 2010年8月 6日 (金) 08時05分
ボンも眉毛に関しては、遺伝しているのかな。
投稿: 下請です | 2010年8月 6日 (金) 14時27分
地元ローカル新聞でも大々的に取り上げているということは、スケープゴードのシフトが起きつつあると考えてといのだろうか?
それとも、穿った見方?
投稿: 一宮崎人 | 2010年8月 6日 (金) 15時16分
5月のワクチン打つ前に口蹄疫感染を隠す意図が不明。
ということは、宮崎日日新聞の記事は大規模農場に対する悪意があると思ってしまう。
隠す事に対する、大規模農場の利益を教えてほしい。
投稿: 素朴な疑問 | 2010年8月 6日 (金) 15時48分
隠す事に対する、大規模農場の利益を教えてほしい>>>>>>大規模農場の特殊な資金調達状況を保護するためと思われます。あくまで、健康牛が、ワクチン接種と言う政策指導によって、殺された状況にしたかったのではないでしょうか。
では、逆に、なぜ、関東地区の弁護士系由でないと、話が出来ないのでしょうか。感染したら、報告して、殺処分しか道はありませんから、弁護士が、最初から、介入する意味がわかりません。
投稿: 素朴な疑問さんへ | 2010年8月 6日 (金) 16時12分
素朴な疑問さま。
どなたもお書きにならないので、ちょっとだけ…。
疑似患畜より、ワクチン接種家畜のほうがやや補償が大きいため、大規模農場の利益になります。
他の農場で、殺処分中に、疑わしい例が見つかったが不問にしたとのニュースもありました。
農家のためを思った「温情」ではないかと思っています。
正直に申告すると不利になる制度にも、問題があったはずです。
投稿: コンタン | 2010年8月 7日 (土) 14時40分
回答ありがとうございます。
疑似患畜よりワクチン接種家畜のほうがやや補償が大きい、というのは初耳です。
ありうる話かもと思いました。
正直に申告すると不利になる制度、考えさせられます。
投稿: 素朴な疑問 | 2010年8月13日 (金) 11時42分