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2010年8月22日 (日)

宮崎口蹄疫事件 その79   ふたつある防疫の「主語」

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「主語}をしっかりとしなければならないと思っています。

「主語」とは、「誰が」、「何をする」のかで最初に問われる問題です。ここが曖昧になっていると、必ず混乱が生じてしまいます。昨日みた家伝法第5条など、この「主語」がよくわからない法律的悪文となっています。

もう一回引用してみましょう。

家伝法第5条 都道府県知事は農林水産省令の定めるところにより、家畜又はその死体の所有者に対し、家畜又はその死体について、家畜伝染病又は届出伝染病の発生を予防し、又はその発生を予察するため必要があるときは、その発生の状況及び動向を把握するための家畜防疫員の検査を受けるべき旨を命ずることができる。

この法律文言の主語は明らかに「都道府県知事」です。しかし、この主語に対して覆い被さるようにして、「農林水産省令の定めるところにより」という文言が入ってきます。

書き直すとこのようになります。「農林水産省令の定めるところにより、都道府県知事は」、何々を命じることができるということになります。

要するに、「都道府県知事」は「農林水産省令」に従って行政執行しなさいということです。これは地方自治法に規定されています。

地方自治法第十一章 国と普通地方公共団体との関係及び普通地方公共団体相互間の関係

第二百四十五条  本章において「普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与」とは、普通地方公共団体の事務の処理に関し、国の行政機関又は都道府県の機関が行う次に掲げる行為をいう。 

ニ 同意

ホ 許可、認可又は承認

ヘ 指示

ト 代執行

この地方自治法第245条のトこそが、民間種牛問題が宮崎県とこじれた時に山田大臣がチラつかせた伝家の宝刀の「代執行」でした。

その伝家の宝刀を抜く前に、国が自治体に対して「関与できる行為」がこの第241条です。同意、許可、承認、指示です。

私が難渋なこの法律を引用したのは、「解りにくさ」を知って頂きたいからです。私は、この国と県の二重底のような構造が、口蹄疫の初動という緊急事態に混乱を招き、感染拡大のピークであった5月中旬に畜産事業団の種牛問題を引き起こし、それだけにとどまらず、制限解除の局面で再度民間種牛問題として再燃した遠因だと思っています。

日本の現行の口蹄疫防疫体制は、「主語」が都道府県知事にあるかのように見えながら、実は農水省にお伺いをたて、同意をもらい、許可を得て、承認してもらい、意見が別れる場合には国が地方自治体に代わって代執行するシステムなのです。

家伝法の第16条の文言のみを見ると、家畜所有者の義務ですから、それに処分を命じる家畜防疫員(家保獣医師)の責任者たる県知事に最終的な権限があるようにみえます。

しかし、農林水産省からすれば、自治体に対して地方自治法を根拠にして、指示を仰ぐことを要求し、イヤダと言い張るならば代執行をかけることすら可能です。

まるでカメレオンです。どうとでも読めます。だから、民間種牛問題の時に知事は前者を根拠にし、農水大臣は後者に依拠しました。

たぶん法律論争に及んだら農水大臣に軍配が上がったでしょう。しかし、勝ち負けではなく、こんな巨大伝染病が燃え盛っている時に、言い換えれば、寸刻を争って対策をたてねばならない時期に、その指揮命令系統が二重に存在すること、それ自体が大きな問題ではないでしょうか。

解釈次第ではどちらでも読めるという「主語」不在の法律ほど、非常事態にふさわしくないものはありません

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コメント

都道府県知事は、農林水産省令の定めるところにより>>>>>ですので、農林水産省令の定が、ない場合は、何もできないのでは?

農林水産省令の定めとは、

口蹄疫対策特別措置法施行規則
(平成二十二年六月四日農林水産省令第四十一号)

家畜伝染病予防法施行規則
(昭和二十六年五月三十一日農林省令第三十五号)
最終改正:平成二二年三月九日農林水産省令第一五号

のことでは?

地方分権、地方自治と謳いながら、結局は国が実質関与する。業務委託と言いながら、お伺いをたてないと何も出来ない。口は出すが、金は地方持ち。
そして、何か不都合があると、法律を楯に責任転嫁。
非常にうまいシステムですよね。
家伝法の改正論議が出ていますが、やはり責任の所在をはっきりできる法体制にすべきでしょう。

命令指揮系統も一元化して、正確な情報の収集と、それに対する指揮伝達の確実性を構築すべきではないでしょうか?今回も現場の混乱ぶりが報じられていましたが、やはり、このような重大伝染病の場合には、強いリーダーシップと、強力な権限をもつリーダーが、的確に指示を出す必要性を感じます。

国から地方へ…などと言っても、法律でしっかりと解りにくく縛ってある。しかも解釈のしようでミスリードしかねないという、困ったシステムですね。
早い話が「国には逆らえない。自治体が変なことしようとしたらすぐに潰せる」
法整備された時代背景を考えれば、当時の法律家は上手いことやったなあ…とも思いますが。
地方自治法など各分野も含めて、現代に合わせて作り変えていくことが必要な時期でしょう。

それにしても、表現の解りにくさはなんとかならんもんでしょうか。
曖昧さを無くすためにそうなってるものと理解してましたが(民間でも保険やカードの約款なんか、どれほどの人が全部読んでかつ理解できるのかと…)、これでは専門家を揃えた上位の役所側が「いつでも好きなようにできます。」と言ってるようなもんで、ホントに地方自治体や国民のためにあるのか?と。

地方自治の拡大をするならその辺をしっかり委ねて、強力な権限を県知事や自治体に与える形にしなければなりません。
しかし、今回の口蹄疫災害のような地方の手に余る事態が発生した場合には、国が速やかに介入・支援する手段も必要なのも事実です。
「県からの要請がこないから何もできません」「それは国の知ったこっちゃないです」などと言われるのでは困ります。
「あそこの知事はいままで文句ばっかり言ってたからほっときゃいい」とか、「とうとう泣きついてきたか。じゃあダラダラやるか」
なんてことがいつでも起こりうるわけで…また、政治家と官僚の関係も絡んでくるので複雑な話です。

なんだか身近な職場などで毎日見かける光景みたいな話ですね…。

ハッキリ言えるのは、利権の発生とそれに群がる者達が常に存在することが形を歪める原因で、残念ながらそれが無くなることは無いということです。


まとまりの悪い文章で、また長々と失礼しました。

農林水産省令の定めとは、「こういう時にはこうしなさい」という方針であるので、もしこの定めが無ければ、まさに「鹿児島と宮崎で防疫体制が全然違う」という事がそこかしこで発生しますから、「省令の定めにより」があるのは別に問題無いと思います。「○○の時には刑法第○条により」みたいな。
問題なのは、国と県がお互いに責任を押し付けあえる法律の構造そのもので、農水省内に家畜防疫庁みたいな機関を設置し、その全責任を持たせるような構造改革ではないでしょうか。
但し、「命令により各都道府県知事は実行しなければならない」というような強権を持つ法律を、地方分権上、各地方自治体が受け入れるかは別問題ですが。

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