宮崎口蹄疫事件 その69 「大規模農場」で起きたこと
「大規模農場」の謎は、通常では考えにくいことが相次いでいるからです。
まず第1の謎は、獣医師が4月18日に発症を知りながら、感染が複数頭になった4月22日まで口蹄疫という疑いをもたなかったとされていることです。
そう言っているのですから、そうなのかとしか言いようがありませんが、20日に口蹄疫を公式に県は確定していますし、それまでに疑わしき症例は疫学チームの概要でも10例近く出ていたはずでず。
公式に確定されていて、しかも地元で10例以上の発生を見ていて気がつかないということになりますね。よほど使えない獣医師だったと見えます。公式確定を出た後も、涎が出て、口のただれがあり、なおかつ複数頭に感染が拡大していても「口蹄疫だったとは思わなかった」とは、ほんとうに獣医師免許を持った人なのでしょうか?
しかしこの獣医師は、地元の獣医師でも家保の獣医師でもなく、社員寮に住むお抱え獣医師(社員獣医師)であることです。一般的な話ですが、お抱え獣医師は非常に特殊な思考形態を持ちます。会社の利益を最優先することです。
普通の獣医師は、なにか症状が出てから往診で農場を訪れますが、お抱え獣医師は農場に常駐しています。そして常に家畜を見て、それに応じてワクチネーションや投薬を計画して、実施します。農場にいることすら少ないオーナーや、入れ替わりの激しい現場労働者に代わって、家畜の健康管理をするのがその仕事です。
作業日報は農場長がするでしょうが、細かな衛生管理記録や投薬記録を作る立場です。にもかかわらず、たぶん大規模に蔓延していたであろう4月20日以降に、口蹄疫が自分の農場のある地域で発生したにもかかわらず、その疑いを持たなかったわけです。
「大規模農場」の言い分をそのまま受け取るとそのようなことになります。つまり、獣医師は届け出義務違反ではなく、単なる診断もできない無能な医師であった。これは獣医師としては二度と世に出られないことですが、なんの罪にもなりません。
なぜなら、届け出義務違反は立派な家畜伝染予防法や獣医師法違反ですが、「わからなかった」のは無能だったことを証明しているだけの話ですから。
お抱え弁護士がそう主張するのですから、それを疑う理由はありません。たぶん意図的隠蔽をしたのではないということです。
意図的隠蔽とは、18日に発症してからの6日間の間に何かしらの工作をすることですが、たとえば、発症が疑われるような牛を、立ち入り検査が来る前に他の系列の農場に移動させてしまうことなども可能性としてはありえます。
事実、後にえびの市に移動したことは疫学チームにより公表されていますが、これはあくまでも例外であって、当初の事例ではそんな意図はなかったことになります。そうお抱え弁護士が言う以上疑ってはなりません。
また「大型農場」が、出資を一般から募って収益を還元する特殊な経営形態ですので、自分のところの衛生管理ミスが疑われることによる処分は望ましくないということもあるかもしれません。しかし、これも「知らなかった」ことが原因だとお抱え弁護士が主張する以上、ありえません。
後は単純なパニックであったということも考えられます。この時期、宮崎県も含めて完全なパニック症状を呈しています。正常時にできるな判断ができずに、ズルズルと混乱を深めていく時期でした。
このミニ版が「大規模農場」の内幕で繰り広げられていたことは考えられます。ここのオーナー社長は、この事件の当初よりどこかに行ってしまい、お抱え弁護士がマスコミ対応するような、社会的な責任感の乏しさと、危機管理のなさを露呈していました。これは誹謗ではなく事実です。
このようなトップが不在で大規模パニックに突入した場合、その指揮を誰が取るのか、農場長か、防疫責任者たる獣医師なのかで混乱を来したことは憶測できます。
このような大規模伝染病が侵入した場合は、文句なくその職制の序列を通り越して獣医師が指揮に立つ権限を車内規約等で持たねばなりません。「大規模農場」の社内規約は知る由もありませんが、たぶん平時において危機管理が徹底していなかったと思われます。
そこで、参考になるのが、もう少し後の同系列高鍋で起きた5月21日の口蹄疫発症時の顛末です。朝に発症を見ながら、主任が朝ミーティングで「発症した」発表したその夕方に、今度は「なかった」と訂正するという文字どおりの朝令暮改です。(「宮崎日日新聞」8/6による)
まさに危機管理も、指揮管理すら疑われるテンヤワンヤの騒ぎです。これと同じことが起きていたのだと思われます。あんがい裏目読みより、このあたりが正解なのかもしれませんが、なんともいえません。だから「謎」なのです。
■写真わが村のハス池と民家。景観作物ではないのですか、ハスの花の咲く時期にはえも言われぬ極楽的風景となります。わが村は土浦に並ぶハスの産地です。
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おはようございます。
企業ぐるみで「分からなかった」で押し通しきれれば、少なくとも家伝法違反、獣医師法違反は乗り切れるし、仕事はできないかもしれないが免許は安泰。
あと、民事裁判がありますが、この結果で家伝法、獣医師法での罪は問えないから、告発して強制捜査があるかないか、やる気があるかどうかを注視しましょう。
投稿: 現役養豚家 | 2010年8月 7日 (土) 09時05分
社員獣医師は、あくまでも獣医師免許を持った社員ですから、会社に有益な事を優先するのは極々当り前です。それが、「とぼけて」済む事なら尚更です。
会社の利害に絡む事なら、精神論なんて吹っ飛んでしまいます。悲しい事ですが、それが現実ではないでしょうか?(かと言って容認している訳ではないですよ)
北海道でも大型牧場の場合、お抱え獣医師はおりますが、現役を定年した獣医師が多く、身体もままならない(動けないと言うほどではないが)人もいます。
動物医薬品使用に伴う指示書の関係が業務としては大部分を占めているものと考えられます。
濱田様の記事の獣医師がどのような人物か分かりませんが、会社に都合の良い判断をした事が、未曾有の被害の原因だったとしたら・・・・・考えたくないですね。
292例目の発生からようやく1ヶ月が経ちました。聞く所によれば、場所によって「家畜市場」も「人工授精」も再開された様ですね。
糞尿の処理中だと思いますが、本当に暑い中ご苦労様としか言えません。関係者の皆様の苦労に応える為にも、二度と発生しないよう、しっかりとした検証をして欲しいと願っています。
投稿: 北海道 | 2010年8月 7日 (土) 10時35分