« 宮崎口蹄疫事件 その64  ウイルス・テロ説を考える | トップページ | 宮崎口蹄疫事件 その66   官僚の伝統芸のスゴサとは »

宮崎口蹄疫事件 その65  宮崎事件をウイルス・テロだとする説は迷惑だ

Img_0015

私はウイルス・テロというのは大いにありえる侵入ルートだと思っています。しかし、このことがわが国政府で真剣に考慮された節はありません。あくまでも口蹄疫は農業問題、農水省管轄下という切り取られ方をしています。

それではなぜ、英国の口蹄疫緊急対策で、DEFLA(デフラ・英国農務省)が中心となって警察や外務省、英軍にまで対策チームの連絡官の派遣要請するのでしょうか?

理由が単なる口蹄疫の外国発生状況の提供ならば、FAOやOIEの窓口であるDEFLAが押えているはずですし、同じく外国への発生通告ならばなにも外務省や警察関係までも必要としないでしょう。

このように消去法的に考えていくと、DEFLAは口蹄疫がウイルス・テロであった場合も念頭に置いて対策をたてていると考えられます。ましてや、全世界のテロリストの主目標である米国のUSDA(米国農務省)に至っておやです。

危機管理の鉄則は「最悪の事態を想定せよ」です。日本の家伝法や防疫指針の精神は逆に「すべての関係者が法律を遵守すること」を前提にたてられています。届け出義務にしてもしかり、殺処分命令にしかり。一切が善意の人たちばかりであることをあたりまえに考えて対策を立てています。

初めからそのような法律を遵守する気持ちがない者、つまりデロリストのように意図的にウイルスを持ち込もうとする人達に対してはまったく想定すらされていません。よくも悪しくもあまりにも「日本的」です。

テロリストは皆んな工作船でしか来ないのでしょうか。原発や軍事目標しか狙わないのでしょうか。たぶん、好むと好まざるとに関わらず、9・11同時テロ以降の世界は、もはやそのような時代ではなくなってきているような気がいたします。

少なくとも英国、米国、欧州各国、韓国など諸外国はそう考えておらず、口蹄疫緊急対策を立案しています。だから、口蹄疫緊急対策が対テロ防衛と酷似しているのです。

では、このように書いたからといって、今回の宮崎県の口蹄疫発生がウイルス・テロであったかというと、私は大いに疑問だと思っています。

一部のネット界では「定説」の観すらあるウイルス・テロ説はこんなストーリーです。まず東アジア某国、はっきり言えば韓国が主犯とされているようです。というよりか、初めから「犯人」は決まっていて、それに合うようにストーリーを作り出していると言ったほうがいいでしょう。

まず、宮崎県種牛の精液盗難事件をI強引に結びつけます。この動機は韓国が優秀な宮崎牛の血をほしかったからだとされます。しかし、宮崎牛は確かに日本屈指の優秀な品種ですが、しょせんはと言ってはなんですが交配種です。ほんとうに盗むならば、日本の黒毛和牛の元祖である関西の某系統ではないでしょうか。

そしてどんどんこのストーリーは飛躍していき、盗んだ宮崎牛のオリジナルに打撃を与えようととして、ウイルスを持たせて第6例に行かせ、それに民主党議員も絡まった、というふうに展開していくわけです。

典型的なトンデモ陰謀論です。このテが好きな人は多いのですよね(ため息)。有名なものには、9・11同時テロが米国の自作自演であったとか、果ては米国のアポロ11号の月着陸はなかっただとか(爆笑)。
まぁトンデモ話として聞いている分には反論する気持ちすら起きないのですが、こと私たちが真剣に考えている口蹄疫事件にまで、こんなトンデモ陰謀論を吹っ掛けられると迷惑千万です。

簡単に検証してみます。まず、3月に第6例に韓国から訪問団が来たことは事実は当事者から反論されています。また彼らがウイルスを持ち込んだというのならば、その時の韓国のウイルス株はA型でした。

しかしご承知のように宮崎県で発生したウイルス・タイプはO型です。それは3月に東アジアのウイルスがA型からO 型にシフトしているからです。ですから、韓国から第6例が持ち込まれたのならば、A型でなければなりません(これに関しても異説があります)。

ここで既に韓国ウイルス・テロ説の大前提は崩壊しました。実はこのウイルス・シフトは頭が痛い問題で。初発の第6例の侵入ルートをめぐってはまだまだ解き明かされていない謎が沢山あるのですが、このトンデモ陰謀論はそんなレベルではなくて、単純に韓国から訪問団が来たろう、彼らが持って来たに違いないというお粗末なレベルの話です。

そもそも動機が判りません。種牛の精液などは合法的に入手する方法がなにかしらあるはずで、こんな大規模ウイルス・テロをしてまでやるようなこととはとうてい思えません。

またこんな燐国でウイルステロをやったら、自分もとばっちりを受けてしまいます。韓国では去年の冬からずっと発生が小規模ながら続いており、3月に発生、4月に鎮火、5月に再発生と、発生と鎮火をくりかえしています。こんな不安定な状況で海峡を超えて飛び火する可能性がある燐国で、わざわざこんな大規模ウイルステロをするはずもありません。自分たちの防疫がかえって大変になるだけですから。

となると「誰が」という犯行主体となりますが、下手をすれば自分にも飛び火する可能性がある畜産業界人がするはずもありません。得られる利得より、失う危険のほうが大きいからです。

ならば国家となると、もっとありえないでしょう。それは国家テロほど割に合わないリスキーなものはないからです。かつてのリビアのパンアメ機爆破テロや、北朝鮮のラングーン事件や大韓航空機爆破など、すべてが白日にさらされています。

口蹄疫ウイルス・テロにおいてももし発覚した場合、政権が潰れるていどでは済まず、深刻な韓国の孤立を来すはずです。FAO、OIE、あるいは口蹄疫研究国際同盟からの永久追放、安保理非難決議などが加えられるかもしれません。
最悪の場合、米国によるテロ国家指定と米韓同盟の危機にまで発展します。そんなわかりきった愚行を、宮崎種牛の精液をほしいばかりにするでしょうか。常識で考えてほしいものです。

要するに、韓国ウイルス・テロ説はまったくの妄想にすぎません。しかし、だからと言ってウイルス・テロの可能性は口蹄疫緊急対策の中のひとつの柱とすべきことにはかわりありません。

たとえば空港や港の防疫の徹底をするだけでも違います。宮崎県やわが茨城県には空港から直接に大量の中国人、韓国人観光客が訪れています。空港に踏み込み消毒マット設置を義務化し、消毒ブースを設置,するだけでも状況は大きく改善するはずです。

また畜産関係での外国人労働者の登録義務づけも必要となるでしょう。特に農場レベルでの外国からの来訪者名簿と家保への定期的提出義務づけは必須です。

つまりは、仮に口蹄疫がウイルス・テロであったとしても私たちはやることは同じだと心しましょう。数時間以内に初動制圧が可能となる包括的緊急対策があれば少しも怖くないのです。

このような抜本的なことに眼を向けずに、隣国への反感のみを煽ることを目的とするトンデモ陰謀論は、その意味でも危険だと私は思います。口蹄疫に関して必要なことは、東アジアでの国際的防疫体制作りであって、憎悪を煽ることではないはずですから。

■写真 月見草。咲き始めの薄桃色。

|

« 宮崎口蹄疫事件 その64  ウイルス・テロ説を考える | トップページ | 宮崎口蹄疫事件 その66   官僚の伝統芸のスゴサとは »

口蹄疫問題」カテゴリの記事

コメント

前回のエントリで「濱田さん、けっこう過激なこと言うなぁ」と思いましたが(書くことにかなりの葛藤があったであろうと…)、
言いたいことは今回のエントリでよく理解しました。
『安易な陰謀論』は迷惑千万!しかしながら容易に我が国の農業・経済活動に多大な打撃を与えうるウイルステロに対しては、できうる限りの防護措置を取るべきである。
賛成です。9年前のWTC突入テロ、あれは世界(人類史)が大きく方向転換する出来事で、田舎の一市民である私も渦中にあるのだと強く感じる出来事でした。
あの日から「世界は変わってしまった」のです。

今、公安出身の平沢勝栄議員が民主のJR革マル派や日教祖とのつながりを激しく追及してますが…またまたノラリクラリです…。まあ、三里塚で火炎瓶投げてた人の仲間で落選しながら法務大臣やってる内閣ですから(千葉さん個人は昔からスゴくいい人ですよ!)

山形でも数年前に困ったことがありました。主力さくらんぼ品質の佐藤錦をしのぐ高級品質「紅秀峰」の苗木が、オーストラリアに流出しました。
中国のハチャメチャな商標登録の問題も深刻です。
「おまえらニコニコしながら、どんだけ日本を食い物にする気なんだよ!自国の農業の誇りは無いのか!?」と。
いずれにしろ、県や自治体で簡単に対処できることではなく『国はなにをやってるんだ!』と怒りたくもなります。当たり前です。

しょっちゅうテレビで話題になる、全国の湖沼へ拡がってしまったブラックバスやブルーギルの釣りマニアによる放流&繁殖、駆除の難しさ…(唐揚げにして食っちまおうゼ!もしくは魚粉にして養殖エサに)
そんなことよりも口蹄疫の持ち込みなど、遥かに簡単です。
私も様々な『陰謀論』には嫌悪感をもちますが、テロ対策には強い危機感を持ちます!

また、アグラ牧場の件、法整備も含めて徹底検証が必要ですね。
ここにこなければ知り得ない情報でした!

投稿: 山形 | 2010年8月 3日 (火) 11時00分

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100803k0000m040029000c.html

山田大臣も、よく分からない人だ。
まあ、この場合は、石破議員が先に菅総理の言質をとっていたから、大臣も認めざるを得なかった様ですが。

ただ、民主党の場合は、「検討する」のは前進している事になるらしいので、今後が見物ですね。

投稿: みき | 2010年8月 3日 (火) 11時59分

案愚楽の件と第6例は調査中です。しばらく待って下さい。

投稿: ブログ主 | 2010年8月 3日 (火) 13時51分

噂は噂。
事実は事実。

噂は、疑問を持つとっかかりにはなりますが、何よりも、まずは証拠を積み上げていく事に勝るモノはありません。

菅首相もこう仰っているではありませんか。

http://ad.nikkansports.com/html.ng/site=banner.com&menu=superbanner&cat=general&page=news&ord=304649?

投稿: みき | 2010年8月 3日 (火) 15時37分

日本人は基本的に「玉虫色」的結論が好きですから、BSEの時もそうですが、最終的には「可能性が否定できない」程度で、まとめてしまうでしょう。
BSEのときの「食品安全委員会・・・」の委員の方にも聞きましたが、委員が夫々の根拠を示し提案なり意見を言っても、国が全て「×」をつけ、結局のところ国が用意した「原案」を認めさせる方向に持って行きます。ま、アリバイ作りと言うか、委員会で出した結論・・と言う事にしたいだけの会議である・・・と言う事でした。
今回の結論も同じ様になり、結局の所「闇」に包まれて、疑念と殺処分し埋却した屍、そして借金が残るだけでしょう。
我々には無力感だけが残ります・・・・・

投稿: 北海道 | 2010年8月 3日 (火) 17時44分

濱田さんお疲れ様です
911テロ直後、たんそ菌が入った郵便物が出回った時、
牛のたんそ病を思い起こしました。
様々なファインダーを通して、今回の原因を問わなければならないと痛感してます。
濱田さん提言、今後とも期待してます。

投稿: doll24 | 2010年8月 3日 (火) 22時23分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/515571/49035760

この記事へのトラックバック一覧です: 宮崎口蹄疫事件 その65  宮崎事件をウイルス・テロだとする説は迷惑だ:

« 宮崎口蹄疫事件 その64  ウイルス・テロ説を考える | トップページ | 宮崎口蹄疫事件 その66   官僚の伝統芸のスゴサとは »