« 宮崎口蹄疫事件 その103 やめちゃうの、東国原知事! | トップページ | 宮崎口蹄疫事件 その105  疾病小委員会は確信をもってワクチン戦術をとったのか? »

宮崎口蹄疫事件 その104 「殺処分を前提にしないワクチン接種」は現実に可能であったのか?

016

ワクチン問題を考える時、なんとも歯切れが悪い感想が拭えません。なんでこうもハッキリしないのかなと自問しています。

私の鈍い頭で少々整理してみましょう。

私は自称リアリストですので、学者の言うことはあまり信用していません。学者が「○○は可能であった」と言うのは勝手ですが、実際可能であったと言うにはパラメーターがいくつも必要です。

今回の宮崎事件の場合はこんなことでしょうか。思いつくままに書き出してみましょう。


第1に、緊急ワクチンをどの時点で接種するのかという時点の問題です。最初の確定時の4月20日に初動制圧の手段として接種すべきなのか、それとも、感染拡大をして国が介入した5月12日以降なのか、それとも現実に国が「殺処分を前提にしたワクチン接種」を開始した5月20日以降なのかです。

第2に、将来のケースについてなのか、現に起こってしまった宮崎口蹄疫事件における「もうひとつの選択」なのか、です。現に起きた事件ならば、当時の県の防疫方針を規定していた、国の口蹄疫対策の諸規範との関わりを見ておく必要があります。

第3に、つまり、家伝法や防疫指針は殺処分を前提に成立しており、ワクチン接種は想定されていないからです。今回国がワクチン接種を考えたのは、たぶん4月下旬の時期だったでしょうが、その時に国がストックしていたのは、宮崎県で使用されたMerial社のAFTOPORでKilledタイプ(不活化ワクチン)です。

となると、マーカーワクチンは国内にはあったのか、という問題に突き当たります。マーカーワクチンは、ご承知のように、精製時に非構造タンパク質(NS蛋白質)を取り除き、自然感染の抗体と識別できるようにしたワクチンをいいます。

マーカーワクチンでないとなると、野外感染との識別が不可能となります。ですから、抗体検査をしても、自然感染なのか、ワクチン由来の感染なのか識別できずに、一律殺処分となるというのが、国の見解のはずです。

第4に、となると、「殺処分を前提としないワクチン接種」をするためにはマーカーワクチンの緊急輸入をせねばならず、消毒液すら不足していた当時の状況でそれが可能だったのか、可能であったとしたらどの程度のスパンが必要だったのかも考えねばなりません。

たぶん、そうなるとマーカーワクチンを使用するとなると、6月にまでワクチン接種が、殺処分を前提にしよとしまいと、ズレ込んだ可能性が出てきます。

第5に、まだマーカーワクチンはまだ開発途上であり、実用になったばかりです。エライザ法以外の簡易的な検査方法がないのではないかと思われます。となるとマーカーワクチンをやったら、その後の発生動向検査はしんどいこととなりはしないかという思いもあります。

第6に、発生動向検査の手順です。発生動向検査をやってから、緊急ワクチン投与か摘発淘汰を選ぶのか、その発生動向検査工程を省いて一律に緊急ワクチンを投与するのかどうかです。

一律に省くというのは、5月中旬時点で発生動向検査をすべき獣医師がまったく不足していた(殺処分が原因でずが)ことを考えると、殺処分を一時停止して緊急ワクチンに切り換えるという苦しい選択になったと思われます。

5月中旬の「殺処分を前提としたワクチン接種」をしなかった場合、当時の感染拡大の爆発的状況において、既に処分地は決定的に不足しており、処分はのべ5千人の獣医師を投入してすら遅滞していました。

第7に、となると(←今日は「となると」が多いですなぁ)、現実には「殺処分を前提としたワクチン接種」をしなかったのならば、たとえそれが時間稼ぎであったとしても感染拡大は止まらなかった可能性があると思われます。

第8に、OIEとの関係です。当然のこととして、いったんワクチン接種すれば「ワクチン非接種清浄国」から「ワクチン接種汚染国」に格下げになりますから、OIE陸生動物規約cord8・5・8を拒否しない限り、清浄国ステータス回復ルートが異なります。

う~ん、三谷さんたちの言う「殺処分を前提としないワクチン接種」の旗色は悪いなぁ・・・。もうちょっと考えてみます。

では、将来はというと、どうなのかは次回にでも。

|

« 宮崎口蹄疫事件 その103 やめちゃうの、東国原知事! | トップページ | 宮崎口蹄疫事件 その105  疾病小委員会は確信をもってワクチン戦術をとったのか? »

口蹄疫問題」カテゴリの記事

コメント

今回の事例ですと個人的には、連休前に、殺処分前提のワクチン接種が出来ればよかったかな?とも思いますが、実際、ワクチン接種農家数から見ても、合意を得るのは、難しく、特別措置法で、補償金も含め、強制解決しかなかったのでは?
ウイルス問題と補償金問題が、同じ法令で、重なってますので。。

ただ、次回も、殺処分ありきでは、いけないという、Mさんのお気持ちは、もっともと思います。

投稿: りぼん。 | 2010年9月22日 (水) 09時58分

ワクチン接種したにもかかわらず、発症した(臨床症状での判断もあり)ため殺処分された家畜(68件)が結構います。
ワクチン接種日 件数
5/22 3件
5/23 9件
5/24 23件
5/25 15件
5/26 14件
5/28 2件
5/29 1件
6/8 1件

ワクチン接種から発症日までの日数 件数
1日 2件
2日 6件
3日 4件
4日 14件
5日 11件
6日 4件
7日 5件
8日 4件
9日 4件
10日 3件
11日 1件
12日 2件
13日 2件
15日 2件
16日 1件
17日 2件
19日 1件

ワクチン接種から19日経って、発症した288例目の場合、ワクチンの効果は如何なものなのでしょう?素人なのでよく分かりません。
それと、ワクチン接種に赴く際、感染を拡大させてしまった可能性もあるや否や。つまり、「どうせ殺処分するのだから」と防疫に油断が無かったかどうか。

えびの市に当時の山田農水副大臣が、ワクチン接種実施について、来られたとき、我々全員、何しに来たんだろうと思いました。だって、どう見ても、ここでは、感染拡大が顕著というわけではなかった。ワクチン接種後殺処分という施策について、国内初という非常に実験的な側面を感じ取ったのは、私だけではなかったと思います。

投稿: Cowboy | 2010年9月22日 (水) 10時53分

国内初という非常に実験的な側面を感じ取ったのは、私だけではなかったと思います。
>>>>私も、そう思いましたが、埋却が出来ていない以上、家畜の居ない耐火地帯を作る考えは、山火事に似ていますね。

投稿: りぼん。 | 2010年9月22日 (水) 11時23分

COWBOYさま、

県外人は、一番知りたい科学的事実データについて、詳しいことを知りません。地元、農業新聞やJA宮崎などとコンタクトがないため、
たとえば「ワクチン接種から19日経って、発症した288例目の場合、ワクチンの効果は如何なものなのでしょう?」などということさえ、情報不足で、知らないです。

よって、そういう基本的情報を共有してから、議論しないと、今後、マスコミ情報が、ゼロなので、内容が濃くなることは、難しいです。宮崎の被災農家さんだけ、得ている情報で、こちらが知らない情報が多すぎます。

上記ケースでは、抗体が上がるのは、豚で数日、やぎで、4-5日、牛が長くて、7-10日あたりと聞いています。過去の事実関係は、論文にあります。

よって、ワクチンは、完全ではなかったこと。
もともと、口蹄疫ワクチンは、打っても、抗体が出来ても、自然感染はします。塩基配列が違うので。。

よって、19日後、発症することは、想定内でしょう。不活化不完全事故などもありえますし。ただ、この場合は、一斉に発病するでしょうが。

そういう意味もあり、殺処分前提なのだと思いますが。

投稿: りぼん。 | 2010年9月22日 (水) 11時35分

ワクチン使用のタイミングとしては、やはり豚に感染が確認された時点が良かったのではないかと考えます。補償の部分が、その時点では合意を得ていませんでしたので、無理ではありましたが、あの時点でリングワクチネーションが実施されていたらと、以前から考えていました。あるいは、あの時点で、豚だけにでもワクチネーションがなされたら、感染速度がどうなったか?ずっと気になっています。
ただ、あの当時は、農水もさほど危機感がないのか、大臣の外遊を認めていますので、どだい無理な話ではありましたが。
今後の家伝法の改定においては、やはり、韓国方式のように、発生農家から半径を決めて、予防的殺処分を行うのが良いのではないでしょうか?
マーカーワクチンは、現時点では、導入にもう少し時間がかかりそうな気がします。

投稿: 一宮崎人 | 2010年9月22日 (水) 12時53分

うーん、こうなると専門的すぎて突っ込みにくいんですが…まずマーカーワクチンが確立されておらず在庫も無い。
殺処分前提のワクチネーションで狭いうちに囲い込むなら、一宮崎人さんのおっしゃるように豚で確認された時点が妥当でしょう。。
しかし、Cowboyさんの貴重な情報によるとワクチンの効果も疑問アリかも?たまたま発症が遅かった個体がいたともとれなくもないですが…

これは人がインフルエンザワクチンをうっても「感染を全ては防げない。軽くて済むだけ」なのと同じようなものでしょうか?
ウイルス変異の可能性も考えられるかも…と。

豚の場合は急速拡散させるので、深刻ですね。

埋却地の不足はいかんともしがたいわけで…だから以前私は場所が無いなら焼却炉で燃やせとか珍説承知で書いてみたんですが。

初動から一連の動きが遅すぎたという感想は強くもちました。

投稿: 山形 | 2010年9月22日 (水) 14時00分

連投失礼
以前、輸出なんてたいした料じゃないだろうなどと書きました。清浄国復帰を焦る必要はないと。
実際高級品が海外の高級レストラン向けに出荷していたようですが、先週破産しちゃった輸出業者がありますね。
お見舞い申し上げますm(__)m

また、香港は輸入再開とか。外交問題も含めてちょっと注目してます。


素朴な疑問ですが、
パンデミック当時、テレビでは「感染した牛肉や牛乳は出回らないし、もし食べても問題ありません」と強調してましたが…「だったら埋めるよりも早く少しでも食肉処理して食べちまおうよ!」とも消費者目線で思いました。価格はがた落ちでしょうが。
日本の食肉処理場は清潔でしょうし、牧場からそこまでのルートや流通してから家庭での台所消毒徹底の必要がありますが…。

投稿: 山形 | 2010年9月22日 (水) 14時28分

だったら埋めるよりも早く少しでも食肉処理して食べちまおうよ!>>>>これは、現在、当時の移動制限区域内の食肉加工能力がまったく不足している。

現状、生体が、名古屋のと畜場に、どんどん宮崎から搬入されています。とちく順番は、と畜前検査(厚生労働省所轄)が終わった順番。検査と言っても、余程、病気牛でない限り、耳標と書類チェックだけ。
潜伏期間の問題もあり、名古屋の食肉加工場が汚染されたら、全面消毒と、当面の閉鎖。観察牛の導入となるでしょう。
食べる時点では、加熱処理するから、大丈夫ですが、まな板、包丁は、熱湯に包丁をつけながら、解体しますが、汚染防止は、無理。もちろん、家庭に持ち込まれれば、冷蔵庫が汚染されます。

ただ、汚染暴露量に対して、宿主固定する方向か、感染爆発する方向か、見極めが、感受性家畜ごとで、定量的に示されていないので、難しい。

科学は、定量分析があたりまえなのに、定性分析結果の一部しか、公開されていないのが、不思議。

また、別ルートで、ミヤチクから、枝肉やブロックが、ダンボールで、名古屋に大量に来ます。ここで、初めて、需要に応じて、スライスします。

ぜんぶ、汚染されちゃいますよ。

感染した牛肉や牛乳は出回らないし>>これ、リップサービス。出回っていない証明は、ありません。

ワクチンの効果も疑問アリかも?>>>これは、感染発生牛の、感染自然ウイルスとワクチンウイルスの抗体価が、IgM、IgA、IgG1、IgG2、の値が測定できますので、前の方が高い場合は、感染後2-3日、後ろの値が、高い場合は、量により、1週間から1ヶ月以上でしょう。この場合、暴露量が、わからないと正確には、測定できないので、空気感染とかなら、空気中に暴露量を測定するウイルスが付着できる細かい試験紙など、農場に吊るしたりとか、考えて、暴露量を測定する必要があります。

早い話、IgGが高い場合は、ワクチン接種前に、感染牛だったことも、ありえます。これ、マーカーワクチンで、PCRとエライザで、定性判断できても、定量判断できるのか、知りません。

口蹄疫は、インフルエンザ同様、A香港型の抗体を持ってる人も新型には、移るように、今回の2010Jで、作ったワクチン以外は、ワクチン打っても感染するはず。ただし、同じ血清種なので、増幅速度は、たぶん遅くなり、感染拡大スピードは、落ちるはず。

もっとも、期待することは、感染後、埋却しない場合、豚などは、死体が爆発して、飛まつ感染が、あっというまに起きる。この爆発飛まつ感染を、埋却遅れで、増やしたくまかったのでは?

このように、科学的に出せる情報がたくさんあるのに、一切公開しない、国、県では、科学的検証が難しいですね。

投稿: りぼん。 | 2010年9月22日 (水) 15時40分

抗体価は、1つでは、ありません。

抗体は定常領域の構造の違いにより、いくつかのクラス (アイソタイプ)に分けられる。多くの哺乳類では、定常領域の構造の違いによりIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類のクラスの免疫グロブリンに分類される。それぞれのクラスの免疫グロブリンは大きさや生理活性が異なり、ヒトの場合、IgGにはIgG1~IgG4の4つのサブクラスが、IgAにはIgA1とIgA2の2つのサブクラスがあり、それぞれ少しずつ構造が異なっている。IgM、IgD、IgEにはサブクラスはない。

また、免疫グロブリンは血中や粘膜への分泌型の他、B細胞の細胞表面に結合した型(膜型)のものがある。

投稿: りぼん。 | 2010年9月22日 (水) 18時52分

http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/FMD/taiou.html

これが、10年前のデーターです。

投稿: りぼん。 | 2010年9月22日 (水) 19時04分

http://www.maff.go.jp/nval/kouhou/dyknews/gaiyou/pdf/no276_10.pdf

これも、参考資料です。

投稿: りぼん。 | 2010年9月22日 (水) 19時07分

http://nichiju.lin.gr.jp/mag/05305/01_18.htm

これが、自然感染とワクチン感染の違いです。

投稿: りぼん。 | 2010年9月22日 (水) 19時10分

病性鑑定材料には,可能な限り新鮮な水疱上皮を採取する必要がある。

口蹄疫の診断材料は,同一農場であれば家畜個体ごとに採取する必要はなく,複数の個体から新鮮な水疱上皮を集め採材してかまわない。上皮が破裂していない場合には水疱液も診断材料として利用できるので,注射器等で別途内容液を採取する。水疱上皮は2cm角または合計1g以上が必要で,家畜保健衛生所の病性鑑定施設に準備されている保存液に浮遊させる。口蹄疫ウイルスは酸性や塩基性で容易に不活化されるので,保存液のpHは7.2~7.6の間に厳密に調製する。保存液には,滅菌した1/25Mリン酸緩衝液に等量のグリセリンを混ぜたものを使用する。幼獣等の死亡例が出た場合には,心筋,リンパ節,主要臓器などを病性鑑定材料に使用できるが,汚染の拡大防止には細心の注意を払う必要がある。採材のために剖検を要する場合には,焼却や集中的な消毒が可能な病性鑑定施設等で実施すべきである。病性鑑定材料を保存液を満たした容器に入れ,密栓したのち,表面を4%炭酸ソーダ液等で消毒する。

破損や水漏れのないように2重包装して,凍結させないように冷蔵保存して運搬する。また,血液も採取して水疱材料と同様に冷蔵保存で運搬する。

運搬には,上記の要領に従い連絡員が持参するが,空輸等最も迅速な方法を用いる。

3) 診断手法
 病原学的検査では,同時にタイプ分類が可能な抗原検出用のエライザや補体結合(CF)反応,ウイルス分離及びPCR法が,また血清学的検査手法では,中和試験,抗体検出用エライザ及びVIA抗原などウイルスの非構造蛋白質を用いた抗体検出法が,それぞれ標準的な手法になっている41,45,73)。

なお,口蹄疫を疑う疾病の診断では,実際には口蹄疫以外の水疱性疾病との類症鑑別も同時に実施する。

 (1)病原学的検査法: CF反応は1952年に開発された抗原検出法で,当初は試験管法であったが,現在では微量化したマイクロ法になっている。口蹄疫ウイルスのタイプ分類にはウイルス抗原の立体構造が重要で,で抗原・抗体反応を行うCF反応の信頼性は現在でも高い。わが国では,口蹄疫7タイプに豚水疱病ウイルスと水疱性口炎ウイルス血清型を加えて,水疱性疾病の類症鑑別も可能なCF反応を実施している。しかし,CF反応における抗補体作用や検出感度の問題を解消するため,現在では間接エライザ・サンドイッチ法(Indirect sandwich ELISA)がこれに代わりつつある45,98,121)。この方法では,口蹄疫ウイルスの7種のタイプと豚水疱病ウイルスに対する捕捉抗体をプレートに固相化し,次いで検査材料(組織乳剤や感染培養液),タイプ特異検出抗体,標識抗体及び基質の順に反応させる。結果は各タイプ及び豚水疱病の陽性抗原との比較で判定する。

 口蹄疫ウイルスの分離には,かつてはモルモット,マウス及び牛などの感受性動物を用いた動物接種を実施してきた45)。しかし,動物接種法は,経費と時間を要するため現在は細胞培養がウイルス分離に用いられている。細胞培養には,歴史的に初代豚腎細胞,初代牛甲状腺細胞,ハムスター腎由来株化細胞のBHK細胞,豚腎由来株化細胞のIBRS2細胞などが用いられる。分離株の宿主親和性を考慮して,由来動物種の異なる培養細胞を用意する必要もある。また,口蹄疫ウイルスとその類似疾病の感受性を考慮して,細胞種を組み合わせ分別分離を行う。なお,分離ウイルスは上記の抗原検出法で同定する。また,キャリアー動物からのウイルス分離材料は,金属製小カップで咽頭から食道上部の粘液を掻き取るプロバング法で採取する41)。キャリアー動物はウイルスを中和する抗体を保有するので,採取材料は速やかに凍結冷却したのち運搬してウイルス分離に用いる。

 また,キャプシド蛋白質1Dまたは非キャプシド蛋白質3D遺伝子領域を標的としたPCR法による遺伝子診断法も実用化され,現在では不可欠の口蹄疫診断法になっている70,82)。キャプシド蛋白質1D遺伝子領域を標的としたタイプ決定が可能であるというPCR法も報告されているが2,97),限られたウイルス株を対象にした実験段階の成績にとどまり,野外材料への応用には誤診断の可能性があるため現在のところ普及していない。

 (2)血清学的検査法: 中和試験にはIBRS2細胞などの感受性株化細胞を使用する。しかし,生ウイルスの使用が禁止されているわが国では中和試験は実施できない。口蹄疫ウイルスの抗体検出用ELISAは従来から多数の試みがある。しかし,抗原の立体構造が保たれ非特異反応が少ないこと,極めて多種類の感受性宿主動物についても,単一の反応系で抗体検出が可能なことなどを検討した結果,現在液相競合エライザ・サンドイッチ法(Liquid phase blocking ELISA)が標準法になっている53,54,55)。この方法は,まず,抗体検査する目的タイプごとに,被検血清と一定量の口蹄疫ウイルス不活化抗原とをCFプレート上で混和,一次の抗原抗体反応を液相で実施する。その後,被検血清に含まれる抗体で消費された抗原量を上述の間接エライザ・サンドイッチ法で測定し,競合的に抗体の有無と定量を行うものである。スクリーニング法と抗体価測定法があり,抗体価測定では抗体価45倍以上を陽性とする。

 VIA抗原などのウイルス非構造(NS)蛋白質は,タイプ間の共通抗原として,またウイルス感染を証明する抗体検出用の抗原に利用されている。すなわち,NS蛋白質に対する抗体は,理論的にはウイルス感染時にのみ産生され,キャプシド(構造)蛋白質のみからなる不活化ワクチンで免疫した個体にはNS蛋白質に対する抗体は産生されない。このため,NS蛋白質に対する抗体の検出は野外ではウイルス感染を意味し,その抗体検査によりワクチン接種動物と感染動物の識別が可能となる。このため,NS蛋白質に対する抗体検査手法は,ワクチン接種地域におけるキャリアー動物の摘発手法になる可能性があって,各国で研究が行われている。これまで,NS蛋白質のL,2B,2C,3A,3B,3C,3D,3ABCなどを遺伝子組換え技術や化学合成法で作製し,これらを抗原とした免疫拡散法,エライザ及びウェスタンブロット法などの抗体検出法が検討されている13,84)。しかし,こうしたNS蛋白質を抗原とする抗体検出法には問題も残されている。すなわち,上記の各NS蛋白質の中には,3D蛋白質(VIA抗原)のようにウイルス粒子に微量が組み込まれ,結果としてワクチンを頻回接種した動物にも抗体が検出されるため特異性が乏しいものや89),免疫原性が低く抗体が持続しないもの(L,2C蛋白質)などが存在する。1994年~1997年にかけて,欧州委員会で実施されたNS蛋白質を利用した抗体検出法に関する共同研究によると(Dr.Mackay, 私信),3ABCポリ蛋白質を抗原とした抗体検出法が最も有望視されている。

しかし,現在のところ,こうした抗体検出法のみで抗体識別を行いキャリアー動物の摘発を図るのは困難で,プロバング法やPCR法との併用が不可欠と考えられている。

しかしながら,NS蛋白質を用いる抗体検出法は,万一口蹄疫が発生した場合にもその後の清浄化技術に不可欠で,その研究は清浄国においても重要性を増している。

4) ウイルス株の抗原解析
 タイプあるいはサブタイプの決定などウイルス株間の抗原の比較は,従来はモルモットで作製した免疫血清を用いて,補体結合反応または中和試験で行われてきた46)。この方法では,2株間の抗原的相関度Rは,R=(r1×r2)1/2×100で求める。rはヘテロ血清とホモ血清の抗体価の比率で示され,2種類の抗原についてr1とr2を求める。その結果,R値が70%以上を示した場合に同一タイプに分類され,ヘテロワクチンが有効とみなされる。一方,R値が32%以上70%未満の場合には異なるサブタイプに分類され,ヘテロワクチンの効果は不充分と判定される。またR値が32%未満の場合には,その程度に応じて著しく異なるサブタイプか,まったく異なるタイプに分類され,ヘテロワクチンの効果は無効と判定される。

ところで,以上の分類方式は1967年に口蹄疫WRLにより提案されたものであるが,その後サブタイプ分類に関する諸問題が生じてきた,すなわち,

(1)測定誤差や免疫動物の個体差によりR値の変動が時にサブタイプ分類の枠を越える場合があること,

(2)ワクチン株の選択には広い抗原相関度を持つdominannt株が良いが,r1とr2の平均値で示されるRは必ずしもそのことを反映しておらず,ワクチン株の選択という観点からはむしろrを重要視すべきこと,(3)将来限りなく新しいサブタイプが出現する可能性があって,分類学上混乱が生じる,

などの問題点である。

このため,1976年に同じく口蹄疫WRLから,既存のサブタイプは存続させるが,将来のサブタイプは疫学的に重要なものに限定するとともに,ワクチン株の選択という観点からはR値よりr値を重視するよう提案がなされている46,68)。さらに,その後モノクローナル抗体による抗原決定基の解析が進んだこと66),流行疫学の分析に遺伝子の相同性解析に基づく分子疫学手法が加わったこと10,77)などから,現在の口蹄疫WRL責任者であるKitchingらは,1988年に従来から実施してきた分離株のサブタイプ表示を中止し,株間の抗原関係の解析に液相競合エライザ・サンドイッチ法を用いることを提案した64,65)。現在ではこの方法により抗原解析が実施されているが,こうした提案の背景には,サブタイプ分類に関する従来からの問題点に加えて,抗原決定基の構造解析が進みサブタイプ分類が実際上意味を持たなくなったこと,ワクチンバンクなど新しい防疫システムが普及し,免疫血清の作製に時間を要する従来のサブタイプ分類は,バンクワクチン株を緊急に選択するためには迅速性に欠けることなどがある64,65)。新規提案された方法では,株間の抗原関係r1は,牛標準血清に対するヘテロウイルス株とホモウイルス株の抗体価の比で表される。実際にはr1値が0.7を越える場合に,相互のウイルス株の間に交差感染防御能があると推定される。さらに,分離株を血清型/分離地/株番号/分離年/抗原型(R;抗原的に最も近縁な参照株またはワクチン株番号)/遺伝子型(G;遺伝的に最も近縁な参照株番号)で表示する統一命名法も提案されている64,65)。抗原型はワクチン株の選択など実際の防疫活動に重要な情報を提供する。一方,遺伝子型は抗原決定基を含む1D遺伝子領域(VP1をコード)の相同性解析に基づくもので,ワクチン株との関係に加え,次項で示すように伝播経路の究明など流行疫学の解析に活用されている。さらに,各地の流行株に対するモノクローナル抗体を一元的に収集し,そのパネルを作製してより迅速にウイルス抗原の解析が実施できるよう計画が進められている46,61)。

5) ウイルス株の分子疫学
 ウイルス株間の遺伝学的な近縁関係の究明は,国際的なウイルスの伝播経路を明らかにする重要な手法となっており,地球規模での口蹄疫の防疫に役立つ101)。

従来手法では,ウイルス蛋白のポリアクリルアミド電気泳動やRNaseT1フィンガープリント法による塩基の泳動パターン解析が用いられてきたが28),手法が複雑で時間を要するばかりでなく,解析も複雑であること,ウイルスRNAのごく一部の比較に留まることなどの問題もあって,今ではウイルスRNAの相同性解析が行われるようになった。

とくに,RT-PCR法で増幅した特定部位(1D領域)の相同性解析手法は,微量のウイルス材料でも解析が可能であるばかりでなく,迅速に株間の遺伝的近縁関係を求められるという利点がある46,61)。

1997年の台湾における口蹄疫発生でも,口蹄疫WRLは発生後直ちにこの手法で分離株が近年の東南アジアの流行株に遺伝的に近縁であることを明らかにしている

投稿: りぼん。 | 2010年9月22日 (水) 19時13分

http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/byosei-kantei/kaigai/zairyou-yusou.html

プロバング採取法の説明です。

これら、採取法は、家保に、通知文が配布されてます。

投稿: りぼん。 | 2010年9月22日 (水) 21時12分

http://lin.alic.go.jp/alic/month/dome/2000/aug/nosui-1.htm

10年前のレポートです。

投稿: りぼん。 | 2010年9月22日 (水) 21時14分

http://www.asyura2.com/09/buta02/msg/682.html

偶然見つけた、うわさ話の延長のブログ。
ただし、真実が、含まれているかいないかは、不明。

投稿: りぼん。 | 2010年9月22日 (水) 21時23分

りぼん。さんへ
すごく専門的な内容で、やや、戸惑ってますが。
私の投稿した内容は、宮崎県庁や農水省のHPに発表されるプレスリリースを私なりに、EXCELに落とし、ワクチン接種に関する日数や件数などを起算したものです。
ですから、宮崎県にいるものだけが知りうる内容ではありません。
明日、セリなので寝ます。済みません。

投稿: Cowboy | 2010年9月22日 (水) 21時55分

私なりに、EXCELに落とし、ワクチン接種に関する日数や件数などを起算したものです。
>>>>そういう情報でも、コンタンさんのように、グラフや表にしてくださると、内容が、よく見えてきて、大変、参考になります。

各人が、表にしたり、グラフにすることは、案外面倒です。やってみて、時計を見ると、深夜ってことが多いです。お互い、公表して、協力すれば、分かり合えると思います。

ことばは、専門的ですが、図に書いて、ここの塩基が、こっちと入れ替わったりして、云々と、模式図の絵で説明しあうと、割りと理解できますよ。

投稿: りぼん。 | 2010年9月22日 (水) 22時42分

議論が広がっているようですが…、このブログの(その88)のコメントでomizoさんが書かれているように、
口蹄疫ワクチンに添加されているアジュバントを接種した肉・乳製品は、現状、国内で食品としての流通が認められていません。
そこの評価を変えないと、結局殺すしかない(ペットや種牛なら可?)です。

ワクチン接種後の評価のための調査をどれだけやったのかは、相当怪しいですね。

投稿: コンタン | 2010年9月23日 (木) 00時11分

口蹄疫ワクチンに添加されているアジュバントを接種した肉・乳製品は、現状、国内で食品としての流通が認められていません。
>>>>これは、流通を認める以上、変えないといけないかもしれませんね。しかし、現状、海外からのワクチン接種肉、ハムなどは、輸入禁止を貫きたいとすれば、全部殺処分だが、殺処分範囲を著しく少なくする方法以外にないように、思います。(たとえば、韓国式、半径3km以内、全頭、即殺処分とか)
OIEで、2009年に、コンバートメントは、絶対反対と言ったのは、日本ですし。

ワクチン接種肉を、認めれば、ワクチン接種清浄国の肉を輸入せざるを得なくなります。政治的に、BSEで、落ち込んだ、米国牛肉の輸入量増大には、日本が、完全清浄国に戻ることを、米国が1番望んでいるし、今、1番有利なオーストラリアも、それは、賛成するような気がしますが。。

米国牛肉の輸入量減が、もっとひどくなると、日米経済関係は、悪化するでしょうし、穀物問題など、報復手段は、相手のこまの方が多いですし。

ペットでも、豚オーエスキーのように、県外持ち出しは、両県の検査証明が必要。
また、ワクチン接種家畜は、時期により血清種やステージが違うので、個体ごとの接種証明を添付しないと、管理できないかも。。

せいぜい、種牛などの範囲で、接種種牛は、食肉にしないと言うルールでしょうか?ただ、種オス、種メスに、ワクチン接種したら、子牛が、どうなるのか、知らないのですが。。

投稿: りぼん。 | 2010年9月23日 (木) 00時57分

このブログの(その88)のコメントでomizoさんが書かれているように、
>>>>これを、再度、読み直す限り、このワクチンでは、殺処分する以外に、無かったようですね。

アシュバンドと言う抗原強化添加薬は、食品衛生上、危険なんですね。

投稿: りぼん。 | 2010年9月23日 (木) 01時08分

なんだか私がバカなこと言って盛り上がってしまったようで、すいません。
以前に完全に否定されたことばかりでした。

りぼん。さんスゴいっす。

投稿: 山形 | 2010年9月23日 (木) 06時34分

「りぼん」様。Hさんのブログは私も読んでいます。非常に丹念な検証がされて勉強になるのですが、初めから結論を決めてから書いているようなかんじなので、少々割り引いて読んでしまいます。
あれだと、ユダヤ陰謀論みたいな一種の謀略論となりかねない気がします。丹念な考証があるたけ危険です。
私はいっさいの予見を省いて見ることにしています。極端に言えばデータだけ出して、後は読む人が自分で考えるほうがいい。まぁもっとも、データの出し方で、いくらでもバイアスはかけられますが。

投稿: 管理人 | 2010年9月23日 (木) 08時10分

> アシュバンドと言う抗原強化添加薬は、食品衛生上、危険なんですね。

食品として危険かどうか、というと、おそらく危険性は低いと思います。
(今回使用された備蓄ワクチン(メリアル社製Aftopor、抗原O型)に添加された油性アジュバントの成分がわかりませんので、あくまで勝手な推測です。)

食品添加物としての安全性テストを行っていないので、食品として流通できないということでしょう。

ちなみに口蹄疫とは関係ありませんが、昨年、新型インフルエンザが流行したとき、緊急輸入されたワクチンにアジュバント(国内未承認)が添加されていたため、議論を呼びました。

投稿: コンタン | 2010年9月23日 (木) 18時46分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/515571/49525325

この記事へのトラックバック一覧です: 宮崎口蹄疫事件 その104 「殺処分を前提にしないワクチン接種」は現実に可能であったのか?:

« 宮崎口蹄疫事件 その103 やめちゃうの、東国原知事! | トップページ | 宮崎口蹄疫事件 その105  疾病小委員会は確信をもってワクチン戦術をとったのか? »