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2010年9月28日 (火)

宮崎口蹄疫事件 その109 東国原知事の手記を読む第3回 もしサーモグラフィがあったら

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東国原手記を読んで、彼がどのようなことに怒り、哀しんだのか手にとるようにわかります。彼の熱血の人柄も伝わってきます。ただし、新しい情報はほとんどありません。

いただいたコメントにもありましたが、これが彼がこの時期に「書けた」理由です。フツーの天下り官僚上がりの知事ならば、書かないでしょう。まだ灰塵がくすぶっている時期にヤバイもん。下手すりゃ訴訟を被災者から受けますもん。

ですから、具体性を極力省いて、事件の大枠と宮崎県の立場だけを書く、というのが知事が採った手記の方法でした。たぶん、この手記でも触れている県の検証委員会が細部を埋めていくことになるのだと思われます。

さて知事は手記で、「簡易検査キットやサーモグラフィ、写真判定などあらゆる方法を駆使して早期発見、早期措置に努める必要がある」と述べています。

まったくそのとおりで異論はないのですが、サーモグラフィの判定確率は未だ信頼性に難があります。

ここで知事が言うサーモグラフィというのはIRT: Infrared thermography(IRTカメラ)のことですが、これは米国の口蹄疫研究のメッカであるプラム島動物疾病センター(PIADC)で開発されました。

よく勘違いされるのは、サーモグラフィ(IRTカメラ)が検査を代行するもののように思われていることです。これはとんでもない勘違いで、サーモグラフィはそんな万能の利器ではありません。

サーモグラフィの仕事は、あくまでも、「検査前にリスクのある家畜を仕分ける」ことです

たとえば、今回の宮崎事件でも、ひとつの農場に5千頭近くが飼育されている大型農場がありました。これを一頭ずつ各種検査の検体を採るとなると、たいへんな時間がかかります。ですから、各群から抽出してのサンプリング検査ということもありえるわけです。

すると精度がとうぜんのことながら非常に落ちます。サンプリングから抜け落ちた個体が陽性だったりすることは大いにありえるからです。

そこで登場するのがサーモグラフィです。これは家畜の発熱部位が34.4℃以上あれば口蹄疫の疑いがあることを利用して、発熱部位のヒズメなどを橙赤色に発色して教えてくれるものです。

発症していない家畜は、青緑色になります。この視覚的な違いで膨大な数の家畜の群を素早く分別していきます。

この34.4℃という体温設定は、88%の信頼性で、48時間以内に臨床徴候を現すことが予測できる温度だそうです。この48時間のマージンというのが大きいとPIADCの研究者は言います。

というのは、潜伏期間の最終時期は、臨床徴候はほとんど判別がききません。わずかの潰瘍と涎が出ていればよし、それすら判別しにくいほど小さいケースがザラにあります。宮崎の第1例、第6例などまさにそうで、ベテランの医師が細心の注意してようやく見つかる程度の徴候にすぎません。

ですから、他の家畜が同様の発症をしてようやく伝染病である疑いが出てくるわけです。具体的に記せば、第1例で最初の流涎、小さな潰瘍が見られたのが4月8日、複数の家畜に症状が出たのが7日後の4月16日です。

ですから、48時間、2日以内という限界があるサーモグラフィですので、この8日の時点ではひっかからなかった可能性もあります。しかし、医師は毎日往診に行っているわけですから、13日か14日にはヒズメの温度上昇を発見できた可能性があります。

伝染病の初期制圧にとってこの数日の差が決定的です。

また第6例は3月31日に家保の獣医師が検査のために来診していますが、搾乳20頭と種牛1頭を追い込み柵に入れて採血しようとしましたが、牛が暴れたためにわずか3頭しか検体を採取できませんでした。

家保が来訪したのが午前10時半でしたから、もう一回夜間にパドックで寝ている時にでもサーモグラフィを使用していれば反応が出たかもしれません。

とすると、この3月31日の時点で口蹄疫の疑いありと分別ができて、動物衛生研に遺伝子検査を送付していれば、最速で4月2日か、遅くとも3日に確定ができたのです。

いうまでもなく、これは最良のシミュレーションにすぎません。現実にはそうそううまくはいかないでしょう。しかし、現にこれを実用化している米国では使用頭数がハンパではないために、サーモグラフィを使った大型家畜群の分別技術は非常に進んでいるといいます。

あくまでも検査の代行をするものではないことを念頭において使用すれば、サーモグラフィは安価であり(約30万円ていどといわれています)、家保は当然のこととして、共済組合や民間の獣医師にも普及することが可能です。

ああ、今日はサーモグラフィ談義で終わってしまいました。次回はもう少し読み進めます(汗)。

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コメント

獣医さんの早期発見の援助や手がかりになるなら、サーモグラフィー導入は、大賛成です。ひとまず、各団体の事務所に設置して、普段、定期的に、牛舎全頭の振り分け作業訓練と映像チェックを練習しておけば、助かるのでは?
また、先進国の米国の実践を見学しておくことも、参考になるでしょう。柵があったりするので、どういう手順で、撮影するのか。慣れておかないと、実際、短期間で、使いこなせないかも。

典型的な高温部が写ってなくても、牛舎全頭を見て、異常に気がつくかもしれないし、、可能性がある機器は、県に1台は、まず導入して、使ってみるべきでしょう。

これも、発生中に試していたら…、って思います。
感染家畜を使った研究は、厳重な隔離施設でないとできません。

口蹄疫に感染している牛・豚の蹄部の発熱が、特徴的であるならば、口蹄疫の症状が出る48時間以内にサーモグラフィーを使っての、検体送付の判断には、使えると思います。少なくとも蹄部に基準値以上の発熱があれば、検体送付する。
ただ、サーモグラフィーを使うトリガーですが、症状が出る48時間以内をどうやって判断するのか。
▼軽い下痢
▼わずかな乳量低下
▼わずかな乳質悪化
▼少し食欲が無い
▼何となく動きが鈍い
といった、非常に分かりづらいものであるならば、気軽に使えるように、各農場に1機サーモグラフィーがないとだめでしょうね。
また、この辺り、畜種によっても違いがあるでしょうし、月齢によっても違いがあると思いますので、細かいデータが欲しいものです。
コンタンさんの言われるとおり、今回の口蹄疫禍は、そういったデータの取れるケースだったのに。今後は(不吉ですが)、こういった観点からのデータ収集部隊も現地に赴く必要があるでしょう。

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