宮崎口蹄疫事件 その102 「どの県でも起こり得る悲劇」としての宮崎事件
わたしが現役の畜産農家として口蹄疫を追いかけてきて、やはりもっとも大きな関心は感染侵入ルートと伝染経路でした。
既に出されている疫学チームの中間報告書、そして今回の検証委員会の中間報告においては、それはまったく明らかにされていません。たぶんこのまま県の調査がなされないならば、わたしが体験した2005年茨城トリインフルとまったく同じで「迷宮入り」となることは必至です。
ウイルス侵入ルートの特定なくしては、他県の畜産家は防ぎようがありません。リアルな問題としてこのことに対する検証は不可欠であると思います。
また初発が感染したと思われる3月段階から、確定した4月20日までの初期の経過についても整理しておかねばなりません。というのは、この時点で既にたぶん10例以上の感染拡大をみているからです。
初動のミスを国は県に全面的に押しつけて、それを最大の失敗と位置づけるようですが、なぜそのようなことになったのか、家伝法や、防疫指針の本質的な欠陥、そして現実の県レベルの防疫体制がどのようであったのかなどを検証していく必要があります。
この部分を明確にしないと、「どの県でも起こり得る」悲劇としての宮崎口蹄疫事件という側面が明らかになっていきません。
わたしは検証委員会の報告に対する一対一的批判は、彼らの土俵に乗ることであると思っております。あの枠組み自体がナンセンスであり、国主導の総括そのものです。いちおう概括的に触れることは無益ではないでしょうが、レベルが低すぎて批判する気にもならないシロモノです。
ある意味、私たちネットにおける口蹄疫検証のほうがはるかにレベルが高く、情報量も豊富です。これをどのように結び合わせて、生産的な検証作業にまとめ上げていくのかが、今度の課題ではないかと思う次第です。
最後に、ワクチン接種→殺処分問題は、現場の畜産農家のほぼ大多数の支持を得ています。わたしですら、ある時点まではそうでした。
これは種牛問題での知事の対応が、この問題に対する生産者の意識を国の側に押しやってしまったからです。あの種牛問題がなかりせば、もう少し公平な評価が下せたと思われますが、県種牛と民間種牛問題は、前回の2001年事件からなにも学ばなかった事業団の感染侵入という大失態から発しているために、どうしてもそれの政治的救済としてしか見えない県知事の対応に批判的になってしまいます。
わたし自身、種牛問題から離れて、ようやく殺処分を前提にしたワクチン接種問題に疑問を持つようになれたというのが実際です。口蹄疫事件は、ダイナミックな時系列で絡まりあいながら流れていきました。ですから、ワクチン問題だけを抽象的に切り離して、検討することはなかなかできません。
いまの終結をみた時点でテーマとすること自体に異論はありませんが、このあたりを解きほぐしていかないと、現場の畜産農家から現場を知らない机上の空論と言われかねません。
ワクチン接種問題は、一般的な国の防疫方針に対する批判ではなく、現実にほかの方法であの5月中旬の感染爆発を阻止しえたのか、ありえたとするならぱ何かを対置せねばなりません。
逆に言えば、なぜ発生動向調査をして、緊急ワクチン(第5世代マーカーワクチン使用)を接種する、ないしは陽性個体に対して摘発淘汰をかけるという「第3の方法」が現実にならなかったのかも明確にしていくことでもあると思います。
メーリングリストという手段が万全であるとは思っていません。また100回記事に掲載した呼びかけ文を書かれた「畜産システム研究所」の三谷さんとわたしが完全な意見の一致をみているわけでもありません。
ただ、現実において、ネットで細々となされている口蹄疫意事件の検証作業を結びつける機運は、現時点でここしかないのが実情です。
現実に、民間人がひとつのテーブルを囲んで宮崎口蹄疫意事件を議論し合うことは不可能に近いことです。それをなんとか可能とするひとつの手段としてメーリングリストの登録をお願いしている次第です。
なお、匿名使用は可能です。メルアドにご自身の名がある場合は、削除してハンドルネームとするか、他の第2アドレスをご使用ください。
■写真 葛の花が咲きました。地味ですが、美しいと思います。
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