• S-009_20240906024801
  • S-017_20240904054601
  • 20240906-004039
  • S2-003_20240904055201
  • S3-037
  • 20240901-044354
  • 20240901-044623
  • 20240901-044830
  • 20240901-051549
  • 20240901-052008

« 宮崎口蹄疫事件 その98 今後来るであろう未来についての哀しい予想 | トップページ | 茨城トリインフルエンザ事件 第2回 茨城トリインフル事件、謎の中途方針転換について »

2010年9月12日 (日)

茨城トリインフルエンザ事件 第1回  2005年茨城トリインフルエンザ農水省報告書にみる大企業優遇政策とは

014

今朝は燃え上がるような朝焼け雲が拡がりました。朝ガラスが東の空に飛んで行きました。長すぎた夏が終わり、もう早朝の空気はすっかり秋です。

さて、doll24さんからわが茨城トリインフル事件の国の報告書についてご質問を受けましたので、お答えしましょう。

茨城県のH5N2型インフルエンザは、単に被害農場26農場、殺処分数が148万羽にのぼって戦後最大級の畜産災害になったただけではなく、人獣共通感染症の可能性があるために被災地の私たちを恐怖に陥れました。

「感染したら真っ先に死ぬのはオレらだ!死んでたまるか!」と変な気合を入れて、遺書を懐に毎日下着をきれいにして(←ウソ)日々送ったものです。

宮崎県と異なるのは、茨城県では当初から家保の発生動向調査が徹底して行われたことです。徹底した農場立ち入り調査による血清学的検査と遡及調査がされた結果、次々に感染農場が明らかになっていきました。

当初水海道市で発生したのですが、後にこれは廃鶏(中古鶏)の移動による「もらい感染」だと判明しました。以下小文字は農水省究明チーム中間報告書(2005 年10 月31 日)です。茶色文字は引用者です。

鶏の導入は、1 例目農場は、M農場(県内)から中雛(60 日齢)で導入し、成鶏舎とは別の敷地(5 例目農場から50m の距離)で育成後、成鶏舎へ移動していた。2~5 例目農場は、中古鶏(強制換羽をしていない500 日齢前後の鶏)を導入している農場で、導入元は4 農場の飼養羽数約10 万羽のうち7 万羽程度は判明しているが、残り約3 万羽は判明していない」。

にもかかわらず、中間報告書においては第1例は初発ではないとされながらも、初発は判らないという奇怪な結論を出しました。

これまでの調査の結果、必ずしも水海道市で発生した第1 例目の農場が初発農場というわけではなく、いずれかの農場から感染が拡散したものと考えられる。しかしながら、どの農場が初発農場かは判明していない」

つまり、「いずれかの農序から拡散したものだが、初発はわからんということですね。やれやれ。ではまったく判らないのかといえば違います。私たちが家畜伝染病の検証において「初発」にこだわるのは、ウイルス侵入のインプット経路が明らかになるからです。

特にわが茨城トリインフルでは、この初発が最大関心事でした。なぜでしょうか?それは宮崎県口蹄疫の初発が、人為的にウイルス導入をしたものではないことは明々白々であるのに対して、わが県の場合はウイルスが「H5N2亜型弱毒型」だったからです。

Nは毒性の強度を現しますから、N2とは2009年の新型インフルエンザ(豚インフル)のN1N1型と違い、明らかに毒性が低い飼い馴らされたウイルス・タイプで、ワクチンなどで使用されるものに近かったのです。

そう、ここまで言えば賢明な皆さんはお分かりでしょう。茨城県トリインフル事件は、人為的ワクチン由来だったのです。はっきり言えば、初発とは、たんなる最初の発生例にとどまらず、わが県にトリインフルエンザ・ウイルスを意図的に持ち込んで、わが県の畜産に壊滅的打撃を与えた「真犯人」だったわけです。

ですから、「初発が不明」と農水省究明チーム中間報告書に書かれてしまった瞬間、真犯人はほっと胸をなでおろしたことでしょう。祝杯のひとつも上げたことでしょう。かくて、原因は不明、迷宮入りとなりました。

侵入経路は不明だと言いながら、農水省疫学チームは分裂する内容を展開しています。

11~13 例目農場の疫学関連農場は、関東、東北を中心に約20 農場ある。10 例目農場発生以降、これらの疫学関連農場は抗体検査・ウイルス分離検査が行われ、今回陽性になった10~13 例目農場以外は陰性が確認されている。
飼養衛生管理は、鶏舎周囲の環境整備状況も含め鳥インフルエンザを始めとする疾病の侵入に対しては万全の体制で行われていた。また、H社はISO9001 も取得しており飼養管理状況の記帳も整理されていた。特に11、13 例目農場はウインドウレス鶏舎で農場全体を見渡しても衛生的な防疫レベルの高さが窺われた。
12 例目農場も開放型の鶏舎ではあるが、鶏舎周囲の環境整備も含めて極めて衛生的な管理が行われていた」。

「生農場等に関与している7 施設10 名の管理獣医師等から聞き取り調査を行った。発生農場に獣医師がいる会社は3 社あり、うち2 社から聞き取り調査を行った。1 社の獣医師はアシスタントとともにグループ農場の定期的な抗体検査、サルモネラ検査、鶏卵の品質確保検査並びに病性鑑定を行っていた。通常のワクチン接種については農場長とも相談の上、この獣医師がワクチンプログラムを決定し、定期的に行う抗体検査の結果を受けて、ワクチンの追加接種等を指示していた。

ここに出て来る第11例~13例の農場は、ある系列養鶏企業です。この系列農場は使用衛生管理がISO9001も取得している非常に優れたものであることを絶賛しています。獣医師だけで4名もいて、完全に防疫管理をして、しかも各農場内に獣医療施設まであるというのだからたいしたもんです。

しかも外部から幾重にもウイルス遮蔽されているウインドレス(無窓鶏舎)が舞台です。こんな系列農場が軒並みに感染しました。もう笑うしかないですね。要するに超近代的な卵工場で立て続けにクロ・陽性が出て、それが別地区に中古鶏や鶏糞の移動で感染移動したのだと書いているのです。

ところで、上手の手から水が漏れるといいますが、興味深いのは巻末の本文ではない「参考」にちょっと出てくる「米国の研究者の助言」の部分です。

2 日本の弱毒型鳥インフルエンザ流行の疫学的特徴
発生地域に抗体陽性率100%の鶏舎が存在すること、また、その抗体価のばらつきが少ない点について自然感染では通常ゆっくりと鶏舎内に感染が広がるため、陽性率が100%になることはない。1997 年から98 年にかけてペンシルバニア州で発生したH7N2 亜型のLPAI の流行時の追跡調査においても100%になった鶏舎は一つもないその点で日本の発生例は興味深いとの見解」。

米国の疫学研究者は、この茨城県の第11~13例を見てこう言っているのです。発生鶏舎において、自然感染した場合には感染がゆっくりと拡がるために、陽性率が100%になることはなく、茨城県の事例のように100%陽性だということは自然感染ではないということです。

外部からウイルスが鶏舎内に侵入した場合、感染して抗体が陽性の鶏は、ちょうどポンボンと点を散らしたように出ます。あるいは初めに侵入した個体からグラデーションのように拡がります。

ところが第11~13例の大型農場においては、ベタ一面で舎内のすべての鶏の抗体検査が陽性でした。こんなことはワクチンを打った「可能性」以外に考えられないことだ、と米国研究者は言っているのです。

そして続けてこうサジェスチョンしています。

未承認ワクチンなど人為的なものによる伝播の可能性
未承認ワクチンが中米地域で生産され、使用されているという未確認情報は以前から多く存在する。

未承認ワクチンの使用が感染源であるとした場合には、生ワクチンが使用された可能性と不活化が不十分であったために不活化ワクチン液の中に含まれる感染性ウイルスが原因となった可能性の2 通りあるとの見解。メキシコ以外の中米諸国で生産されたワクチン、あるいは東南アジア発生国において中米株を用いたワクチンが生産され、使用された可能性も否定できないとの見解」。

米国の研究者は、「米国内でも中南米で作られた未承認ワクチンが出回っていて、それは不活化が甘かったりする粗製ワクチンが多く、米国でも手を焼いていますよ。おたくの日本もグアテマラ株ですから、これが原因の可能性もありますね」と親切に助言してくれたわけです。

にもかかわらず農水省究明チームの出した結論はこうです。

「3.3 人等を介した侵入の可能性
時点で、未承認ワクチンの使用を裏付ける直接的な証拠は得られていない。」

つまり、外国から持ち込まれた違法ワクチン(*トリインフルエンザは口蹄疫と同様に予防的ワクチン接種は禁止されている)が感染侵入経路であり、感染ハブとなった可能性が限りなく高いが、証拠がないので特定できない、というわけです。なんか小沢一郎氏に対する特捜みたいな話ですな。

にもかかわらず、大企業に弱い農水省は「地域経済保護のため」と称してこのような特例をやらかしてくれました。

11 例目(*系列大規模農相を指す)は、鶏舎ごとの飼養管理が可能なウインドウレス鶏舎であり、万一ウイルスが存在していたとしても、厳格な飼養衛生管理がなされればウイルスを拡散させるリスクが低いと考えられた。
このため、一連の発生が臨床症状を示さない弱毒タイプのものであることも踏まえ、防疫上のリスクを高めない範囲内での合理的な措置として、
①ウイルスが分離された鶏舎については、ウイルスが存在する限り強毒タイプに変異するリスクがあることから、殺処分等の防疫措置を講ずる
一方、
②抗体陽性であっても、ウイルスが分離されない鶏舎(以下「ウイルス検査陰性鶏舎」という。)については直ちにとう汰を行わず、厳格な飼養衛生管理と継続的な検査により、監視を強化することとした
なお、ウイルス検査陰性鶏舎の鶏卵については、家きんへの感染を防止するための防疫上必要な措置を講じた上で、その流通を認めることとした。」

ウインドレス鶏舎は飼養安全レベルが高いので、仮に抗体検査で陽性が出たとしても流通を認めると!殺処分はしないと!

絶句!ここまであからさまな大企業優先政策は見たことがありません。小規模畜産農家は根こそぎ殺処分に合って、生活費にさえことかく経営危機に瀕しているのに、大企業は助けてあげるよ、と。

わが地域にはウインドレスなど、その企業の系列農場以外にありませんでしたから、事実上、農水省がなにを意図したのかは明らかです。

今でも、腹わたが煮えくり返ります。家保の獣医師たちも怒りで震えていました。防疫作戦の途中でルールを変更するとは!国家が平等に行うべき防疫原則を、大企業有利に勝手にねじ曲げてしまうとは!

このようにしてウイルス侵入経路も、初発さえ判明しないまま、防疫作戦のルール変更までした2005年夏の茨城トリインフルエンザ事件は、終幕を迎えました。

私は県知事の終息宣言を聞いた時、喜びより悔し涙が出たものです。

その後私は、有志を募って「茨城トリインフルエンザを考える会」を作り、農水省に質問状を送ることから始まる、彼らとの長い不毛な戦いを足かけ2年間にわたってすることになります。しかし、それは別の機会にお話しすることにします。

このような経験を持つ私にとって、宮崎県口蹄疫事件はまったく他人事とは思えませんでした。これが私がこのシリーズを99回続けてきた悔し涙という原動力です。

« 宮崎口蹄疫事件 その98 今後来るであろう未来についての哀しい予想 | トップページ | 茨城トリインフルエンザ事件 第2回 茨城トリインフル事件、謎の中途方針転換について »

口蹄疫問題」カテゴリの記事

コメント

かすかな希望ですが、もう。口蹄疫のことは、都市部では、まったく話題になりません。
一部のブロガーと地元新聞くらいが情報発信しています。宮崎県内の意見は、抹殺されるでしょう。

よって、こちらのように、4ヶ月、ブログで奮闘した、サイトが減ることを、残念におもいます。

家畜所有者自身に、検査結果を渡さないそうですが、本人が見ることは、個人情報保護条例、保護法いはんではありません。文書で依頼されない限り、電話では、決済表資料ができないので、無理なんです。

ぜひ何でもかまいませんから、配達照明、書留などで、文章を送ってくださいませ。
特に、申請者名だけは、宮崎県内の人にお願いします。文面作成の相談は、弁護士でも本人でも代わりません。

個人的には、このまま終息し、OIEに清浄国とみとめられるのが、悔しいというか、悶々としています。

企業も衛生管理がISO9001は、マニュアルを依頼業者がつくり、工場が、そのマニュアルに沿って、仕事をしているかのチェックにすぎません。

HACCPは、企業に、衛生概念をつたえやすくするだけで、設備点数が、上位ですが、肝心のたえずアルコール消毒や、キャベツの洗浄は、葉っぱのままで、洗浄し、カット野菜は、毛管にウイルスが入るので、だめ。
とか、くらいで、もともと、NASAの2重安全構造のようなもの。人間が、ミスしたら、気づかないうちに、ウイルスは、でていまいます。

保健所で、机、調理代など、ふき取り検査しますが、HACCPだから、急激に成績が良いとも、おもいませんが。。

>防疫作戦の途中でルールを変更するとは!国家が平等に行うべき防疫原則を、大企業有利に勝手にねじ曲げてしまうとは

今回の口蹄疫でも、やはり同じ事が起きているのではないでしょうか?
大企業と言うより、その後ろにあるもの(人)と言う構図は、今回も同じでしょう。
法の下の平等などと言っても、結局、力のあるもの(人)の、御威光が一番と言う、昔からの体質は、変わらないものだと諦めています。

http://www.hkdnachips.com/publications/200307Serotype.pdf

ここの文章が、台湾での問題点を話してみえるようですね。

日本にも参考になるでしょう。

わたしもISO9001認証(そのまえにHACCEP認定は早々に諦めた)工場の顛末を現場で見てました。
「社員の教育」とかも「その時のためのシミュレーション」そのもので、実際には杜撰というか、まるで優秀とは言いがたいパートのオッサン(仕事ぶりはもちろん、性格や人格そのものが)とかはどこにでもいますね(本人はお荷物だと知ってか知らずしてか、上司への他人の根も葉も無い嘘を並べてゴマスリするやつ→それを丸飲みする阿呆な中間管理職も)。
あんなのザルですよ!

しかし、それにしても濱田さん、前回の茨城トリインフルエンザの公表データ提示、ありがとう。
たぶん思い出すのもツラく、大手に『ヤラレタ』悲しい思い、恐怖と無念さが伝わってきます。

あの時に戦い、その後も農水省と(不毛な)交渉を長くやった養鶏の人が今戦ってるからこそ!興味を持ちました。

それにしても、やりきれない・納得いかない玉虫色ですね。
もう、悲しいとしか言えないよ!

こんな経験や10年前の宮崎口蹄疫の経験を生かすこともなく、国やお役所は「あまり下手なことは言わずにウヤムヤ」にしとこうか…ってな姿勢は変わってませんな。出されたら困る人達がいるんでしょうねえ…。
前エントリの「絶望的な未来」が、目の前に見えてきて…暗い気持ちになります。
流通する食品の安全性など、CMの口当たりの良い言葉など無意味。企業が商売上『国際標準』を取得して現場に押し付けているだけですよ。それが現実。

管理人様お疲れ様です。御紹介してくださって本当に
ありがとうございます。

拝読させていただいて今回の宮崎県の口蹄疫問題と重なる
のは、やはり「大企業優先政策」の文字ですね。
農村部では、どこも企業農場の参入を行政も政治家も
推進するどころか誘致さえ厭わないのが現状かもしれません。それは、地元でコツコツと築き上げてきた家族経営型の農民の方々が一瞬にして犠牲に晒される危険性を含んでいると断言したいです。
こうした大企業農場の進出には「法的整備」による規制を設けなければ、再び悪夢は繰り返されると思います。
こちら鹿児島県では、年間30万頭出荷規模の超大型養豚場建設計画が報道されないまま、進められてる忌々しき事態です。
是非、法整備の必要性にまで展開してくださる事を期待しています。

>このような経験を持つ私にとって、宮崎県口蹄疫事件はまったく他人事とは思えませんでした。これが私がこのシリーズを99回続けてきた悔し涙という原動力です。

こうした管理人様の動機を知らぬがまま、以前推測で検証しないでほしいとか中傷誹謗してしまった事お許しください。

「Nは毒性の強度を現します」

えっ!?(笑)。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 宮崎口蹄疫事件 その98 今後来るであろう未来についての哀しい予想 | トップページ | 茨城トリインフルエンザ事件 第2回 茨城トリインフル事件、謎の中途方針転換について »