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« 宮崎口蹄疫事件その134  現地識者座談会を読む第5回 宮崎県の現地の「壁」とは | トップページ | たまには私の養鶏法の話など »

2010年10月27日 (水)

現地生産者の感情の内側まで知りたい  doll24様のコメントにお答えして

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doll24様からお叱りのコメントを頂戴しました。

> 月刊WILL11月号の東知事の手記を数回に渡り、検証された濱田さんは、「あの言い訳と、肝心なことがまったく書かれていない東国原手記よりはるかに面白いことは確かです」と言い放ちながら今度の「ピッグジャーナル」は大絶賛でしょうか?
私の読解力不足なのでしょうか?読み手が振り回されているような気がします。

別の方からもメールで、あなたはいつから今まで批判してきたワクチン・全殺処分の推進派を持ち上げるようになったのか、というお叱りも頂いております。

コメントが短いのでよく趣旨がつかめませんが、いい機会ですので、私の気持ちを書いておこうと思います。

私は物事の両面から見たいのです。そして内側から見たいのです。是々非々で見たいのです。そのためには現地の生の声に耳を傾ける必要があります。当事者の声を聞かねばなりません。その意味でこの座談会は、私に大きな視野の拡がりを与えてくれました。

さて私の立場は、ワクチン・全殺処分方針に疑問をもつことからまったく動いていません。それはもう少しこの「ピッグジャーナル」誌の座談会を読み進めれば、いやでもそのことに触れる予定になっています。

私はその中で、日本養豚協会やJASV、ひいては政府-農水省とも違った、私の対抗軸を立てるつもりでした。この座談会は時系列で進んでいますから、しばらく待っていただくしかありません。

なんというのでしょうか、いわゆる路線対立というのは抽象的にやってはいけないと思います。
ワクチン・全殺処分を是か否かを抽象的に論じ合ってみてもしかたがない。なぜなら、現実に修羅場をくぐり抜けて来た宮崎の養豚家や現地獣医師にはそんなことを言っても、「そんなことわかりきっているだろう!」のひとことでおしまいだからです。

今、まだリングワクチンの効果は客観的に確定されていませんし、あれだけの屍の山を築く必要があったのかなどと、まだ誰にも判っていないのです。処分された家畜の検査記録もほとんど出ないようですし゛座談会の中で全殺処分賛成の岡本嘉六先生すらリングワクチン接種は効果がよく分からない、と言っているくらいですから。

今回の事件で、いわば確信的なワクチン・全殺処分推進派は、日本養豚協会とJASV、疾病小委員会の寺門氏、そして山田大臣、農水動物衛生課など少数でした。それは疾病小委員会が真っ二つに割れたのを見れば判ります。

県外組はともかくとして、養豚関係者が県の防疫方針の主導権を握ったからこそ、この方針が成功したとも言えます。現地に賛成する者がひとりもいなかったら、今回の方針は実施することさえ不可能だったでしょう。

また、現地の処分の混乱を救ったのはJASVでした。JASVの一団の民間獣医師が5月4日に現地に投入されなければ、もう手もつけられない大惨事になっていたことは火を見るより明らかです。

その意味で、彼らは今回の殊勲者でした。それは正当に評価されるべきです。

doll24様、私は別に「ピッグ.ジャーナル」誌を「大絶賛」しているのではなく、このJASVの緊急救援活動を絶賛しているのです。お間違いないように。

さて、ここなんです。この養豚関係者の感情をしっかり県外者も理解しないとなにも議論は進みません。

養豚関係者はワクチン・全殺方針が正しかったと思って当然という立場にありました。行政からは見放され、情報も届かず、続々と感染拡大をしていくのを目の当たりにすれば、当然すぎることです。状況は、すさまじいまでの急迫性がありました。

この彼らのひりひりする感覚と憤りを共有しないで、路線談義をしてもしかたがありません。

その時に、果たして私が言うようなある種理想主義的にNSP抗体検査することなど、誰が頭に浮かびますか?毎日殺処分をして、くたくたの獣医師や被災農家には無理です。私は茨城トリインフルで、被災農家の現場の「空気」はいやってほど知っていますから。

仮にそれがマーカーワクチンであることを知っても、NSP抗体検査⇒摘発淘汰=殺処分の極小化、という防疫図式は、現場から見れば高見の方針であるかもしれないのです。それは百も承知です。

戦時中のことを、平和な時代の人間がこうもできたろう、ああもできたろうと暢気に言うようななものです。

ですから私が思うのは、その「高見の方針」が百分の一でも可能だったかという検証です。それがわかってくれば、
その事件当時無理であったとしても、今後に活かせるのではないでしょうか。

また、宮崎県行政に今までお前は同情的だったじゃないか、という声もありますが、それと客観的な初動対応の失敗の検証はまったく別次元のことです。

宮崎県で起きたことは、他の府県においてもまったく同様の経過を辿ったことでしょう。私は辛くもそれを防ぎ得るのは、鹿児島と北海道ていどだと認識していますから。かつて巨大トリインフル災害を経験し、その経験者が家保の現場幹部に残っているわが茨城県でもかなり難しいでしょう。

それは牛と豚というまったく性格の異なる経済動物が、同時並行で感染し、絡み合うようにして感染拡大をしたからです。これから見ればトリインフルなど単純なものです。トリだけマークしておけばいいわけですから。

この牛と豚の違いをさらに複雑にさせたのは、JA系統と民間の商系の生産者の立場の違いでした。さらにそれに、JAと一体化した農政をする県行政がからみ、その上に日本養豚協会の方針の直訴を受けた国と対立します。 しかしこの複雑な迷宮のような構造は、日本のどこにでもあるあたりまえの風景です。だから、問題をひとつひとつ切り分けておかないとダメなのです。

doll24様に「経済連に多くの畜産農家が関わっていることがおかしいのでしょうか」と言われましても、そんなことは私は初めから問題にしていませんから答えようがありません。

ただ、どこの県でもあるあたりまえの農業構造であり、それが防疫作戦を遂行する上で大きな「溝」となったということを指摘しているだけです。ウイルスには「溝」はなく、平等に侵入するのですから。

宮崎県の非JA系や民間獣医師に対する対応には明らかに問題があります。私は座談会を読んで、そう思ったと感想を言っただけです。そのどこが「不謹慎」なのか、首をひねるばかりです。

この「溝」の狭間に落とされた商系養豚家の県やJAへの恨みつらみが、今回の事件で彼らに主導権を取らせた原動力でした。

こんな「感情」は、検証委員会の総括などにはぜったいに出てこないものです。しかし、それこそが現実を動かしたマグマだったのです。「不謹慎」と思おうとどうしようと、それがこの宮崎の事態を動かした一方の力だったのです。

1週間も確定から遅れて通報してくるような県行政を、信じろと言うほうが無理でしょう。口蹄疫防疫訓練に声もかけこない県行政を信じろと言うのは、どだい無理な相談でしょう。たぶんこの時には確実にJA系には伝達が素早くなされていたはずでしょうしね。

だから私は、民間商系養豚農家の「こなくそ!」と言う反骨の気持ちには思わず拍手をしました。そしてその彼らが先頭に立ってJASVとコンタクトを取り、救援を呼び寄せ、山田大臣に直訴したという心理には共感しました。

だからと言って、JA系の畜産農家が悪い,牛農家が悪いなどと言っているわけでは絶対にありませんので、念のため。

逆に、こちらを評価したり、共感したりすると、もう一方の側を否定したように思うdoll24様の感じ方のほうが、なにかおかしいのではないかと思いますが。現実はそんなに単純じゃないと思いますが、いかがてでしょうか。

私は、この宮崎口蹄疫事件でリーダーシップを取った集団である日本養豚協会、JASV、そして宮崎養豚生産者協議会が、なにを考え、なにに怒り、どのような方針を立てて、状況を牽引していったのかを、感情の内側まで入ってもっと知りたいと考えています。

私は今後、彼らの真情を充分に知った上で、彼らの推進したワクチン・全殺処分方針の是非を検討していきたいと思っています。

一方、東国原手記ですが、途中で打ち切りました。なぜかと言われれば、はっきり言ってつまらなかったからです。

こちらが聞きたいことは、見事にはぐらかされています。

たとえば初動の4月段階での県行政内部での判断や動き、政府への情報がどのようになされたのか、伝達された国への情報はいかなるものであったのか、いかなる判断で国に早期に救援要請をしなかったのか、処分の遅れはどうして出たのか、などにはいっさい触れられることなく、国民の感情に訴えるような表現にはややうんざりしました。

あの東国原手記は、今後自分が中央政界に出るために、政治家としての自分経歴が傷つかないための政治的な手記にすぎません。これは氏にとっても損ではないでしょうか。

この両者を比較して、私が現地座談会の方を高く評価するのはおかしいでしょうか?


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コメント

批評めいた言い方はしますが、批判はしません。
濱田さんのブログです。御自身の意見存分に綴られたらよろしいと思います。
ただ、私が「不謹慎」と指摘したのはあくまで
濱田さんが酒宴の席を例えた類です。そこは誤解のないようお願いします。
東知事が、あれほどまでにもめた薦田さんの抗体検査が陰性公表されようとも、ブログでも一切触れないのは、御自身の今後の政治活動への配慮だとわかりきっています。
ただ、思うに、一言余計だったんです。つまらない手記を、つまらないと断罪すべきか、触れずに葬り去るかです。
俺は、養豚業界が訴えたワクチン接種に異議唱えた
人間、探し回ってる人間ですから、今後もここで申し立て行うかもですが、批判ではない、批評です。
感情的になりご迷惑おかけした経歴もつ俺です。
濱田さん、検証、続けてください。お願いします。

ご指摘の前回の酒席の部分は、不愉快に思われる方がいらしたことがわかりましたので修正しました。

cowboy様。香川氏に共感したのは、JAと一体化した県行政」という部分です。これは私自身の民間出荷団体の代表理事としての経験から、よく理解できました。
鐘牛などの問題に対してではありません。

Cowboyさんもdoll24さんも、たぶんちょっとした齟齬なんですよ。「主たる対立軸」じゃないんです。
ネットでやりとりしてるとありがちな。(私も気をつけなければ…何度も失敗してますから^^;)

みんな仲間です!
お二方とも、お身体には気をつけて今後も頑張って下さい。

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