宮崎口蹄疫事件 その132 現地識者座談会を読む第3回 県家畜試験場ではシャワーイン、シャワーアウトが励行されていなかった!
いきなり涼しくなってきました。最高気温が20℃を超えない日もたびたびです。村はいっせいにジャガイモ、カボチャやサツマイモの収穫に入っていますが、秋作は、夏の異常高温と降雨不足で播種が大幅に遅れたために苦闘しています。
米は全国的にそのようですが、惨憺たる有り様で、乳白米や実割れが出て、1等米が大幅に減ったところに、米余りによる米価の低迷が響いて、往復パ゚ンチとなっています。こんな年がもう一年続くと、米作りから離れていく農家が急増することでしょう。
というわけで、あまり明るくない黄金の秋となってしまいました。
さて、岡本嘉六鹿児島大学教授、宮崎大学の末吉益雄准教授、S獣医師、地元養豚家のK氏による「ピッグ・ジャーナル」誌9月号での対談を読んでいます。
4月28日は、この宮崎口蹄疫を後に振り返る時に忘れられない日になってしまいました。、10例目の宮崎県畜産試験場川南支場で豚が発症したのです。
岡本先生は、こう述べています。
「県の畜産試験場の施設は常識的に、民間農場よりも防疫体制がしっかりしていると考えられています。そういった県の施設で豚の感染が発覚したということは、そのほかの民間の農場でもかなりの感染が拡がっていたと考えるのが自然ではないでしょうか」。
これは私も考えていたことでした。たぶん児湯地域において豚の感染は既にあり、それに管理者が気がつかなかっただけなのではないか、というのが私のかねがね持っていた疑問でした。
もしそうならば、、本来初動段階の疫学調査(サーベイランス)でそうとうなところまで摘発されていなければなりません。しかしそのような報告は、県からまったくないわけです。
となると、いきなり県家畜試験場でドンっといったことになります。ありえないとまでは言いませんが、そうとうに考えにくい。(*追記参照のこと)
おまけに県試の施設はSPF施設です。民間のSPF農場ですら、バイオ・セキュリティには細心の神経を使っています。郵便ポストすら農場のはるか手前に置いてあるくらいで、外来者がズカズカ入場することなどもってのほかです。
となると、そこに出入りする何者かがシャワーイン・シャワーアウトをせずに感染を持ち込んだ、ということになります。これが誰かですが、疫学報告書には記されていません。県の調査もしてはいると知事は言いますが、さっぱり結果は伝わってきません。
そのあたりに対して末吉先生はこう応えています。
「10例目の畜産試験場川南支場が豚での1例目ということになってはいますが、感染時期が一番最初なのかどうかは判っていません。実際、疫学調査を進める中で、抗体の上がり具合から見て、同じ地域で同じ時期に感染していたと思われる農場が複数あります」。
末吉先生は、国の疫学調査チームのメンバーでもあります。先生の調査でも、同地域、同時期に既に同じような抗体値が上がっていたなると、複数の豚に既に感染が侵入しており、なんらかの原因で、県試に持ち込まれた可能性が高まります。
続けて末吉先生はこう語ります。
「しかし、この4月下旬ではの時点では、感染の拡がりはまだ面ではなく点状でした。今回、明らかな空気感染の確証は得られておらず、(空気感染が)起きたとしてもごく限られた時期と、一部の地域内のことと考えられます」。
この空気感染の証拠はなかったというのが、中間報告書にもあります。末吉先生を疑うわけではありませんが、私にはにわかには信じがたい気がします。あれだけ狭い川南地域で、牛、豚が混在して大量に密集して飼われている状況で、ただ人の動きと共同施設の利用が原因で、あれだけの感染拡大をするものなのでしょうか。
ここが北海道ならば、いやわが村でもそうですが、農場間が最低数キロ離れているならば空気感染はない、というのも頷けます。しかし、この川南地域は全国有数の家畜密集地域でした。私には川南町の畜産団地化した密集構造が、今回の悲劇の原因のひとつであり、空気感染によるウイルス拡散があった、と思えてならないのです。
ところで、この県試への感染はどのようになされたのか、末吉先生は続けます。
「県試はSPF施設ということでシャワーイン・シャワーアウトを課してきましたが、従前、従業員(県職員)はシャワーイン・シャワーアウトをしていなかったそうです。これは一例で、そのようなバイオ・セキュリティのほころびからウイルス侵入したのではないでしょうか」。
続けて、地元養豚家のK氏も証言します。
「私が聞いているのは、畜産試験場では来客ても、出入りの業者には、最初の1、2回はシャワーを浴びるように厳しく言っても、何回か行って顔見知りになるといいよ、いいよと言われたそうです。電気工事や畜産機械関係の業者等、畜産を中心に回る業者も多い中で、そのようにしてウイルスが媒介された可能性はあると思います」。
う~んですね。職員も、出入りの業者もシャーワーイン・シャワーアウトをさぼっていたのか・・・。ありえない弛みぶりです。
このような噂は聞いていました。やはりそうだったのか、という感じです。私もある県(わが県ではない)の養鶏試験場にお邪魔したことがありますが、実にのどかというか、靴こそ専用ゴム長に履き替えたものの、車両などはまったく消毒されなかった記憶があります。
末吉先生も言うように、「ほかの民間農場でも電気、機械の修理業者の人や車両の出入りなどが防疫上適切でなかった可能性がある」事例が浮かび上がってきたそうです。
この県畜産試験場と同様のバイオ・セキュリティの弛緩が、後に全国を揺るがす種牛問題に発展する県畜産事業団でも起きた可能性が非常に高いことがわかってきました。
しかし、それにしても県の指導機関が感染爆発の引き金を引いてしまったことはシャレもなりません。しかも不可避ではなく、自らの弛みが原因とあっては、県は被災農家に対して幾重にも謝罪すべきでしょう。
■追記 コンタン様の情報提供で中間報告には以下のようにあるそうです。
12例目(豚1,473頭、4/29通報、4/30感染確認(PCR+))は、4/19に発症と推定されています。
この12例目が豚の初発、ということになります。これによれば、県畜試川南支場(10例目、4/26発症、4/28感染確認(PCR+))は、12例目より1週間遅れた発症した豚の2例目ということになります。
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わたくし、20年以上前に山形県養豚試験場を見学する機会がありましたが、
SPFの研究中で、豚舎は双眼鏡で覗く程度で、最短で50メートルほどの規制線からは近付けませんでした。
県内有名養豚牧場でも、全身シャワーに防護服と消毒は常識です。
宮崎の県養豚試がイマドキそんな杜撰な体制だったとは、にわかには信じ難い話ですが、事実なら由々しき事態であり、批難は避けられないでしょうね。
投稿: 山形 | 2010年10月24日 (日) 09時40分
「私が聞いているのは、畜産試験場では来客ても、出入りの業者には、最初の1、2回はシャワーを浴びるように厳しく言っても、何回か行って顔見知りになるといいよ、いいよと言われたそうです。電気工事や畜産機械関係の業者等、畜産を中心に回る業者も多い中で、そのようにしてウイルスが媒介された可能性はあると思います」。
>>>>>これは、ありえる話で、構造的に、そこを通らず侵入できる構造になっているものと推測します。パソコンの集積回路工場など、絶対、エアーシャワーを通らない限り、役職が上位でも、中には、入れません。
そうでないと、もし、事故が起きれば、会社が潰れますから。。汚染区域、清浄区域、グレーゾーン、すべて、床を色分けしてるのが、普通です。
モデルになる試験場の構造が、そのレベルなら、一般農家のレベルも、おしてしるべし。。。
基本的に、食品衛生法やHACCPは、そんなこと、当たり前のこと。。畜産業がいかに、衛生概念が遅れているかってことですね。
投稿: りぼん。 | 2010年10月24日 (日) 09時42分
失礼します。
エース級種雄牛6頭の顛末や薦田さんの種雄牛の防疫を目の当たりにしますと、「シャワー」「衣類」以外の感染にも留意しなければならないのでは?と気になります。
同じ施設に、感染した家畜と、非感染の家畜が時を同じくして飼育されています。
目に見えないウイルスですから、外部から持ち込まれて、感染を受けるのは仕方がないことだと思います。初発や発症は、「仕方がない」ことかもしれません。
しかし、「感染を受けて、家畜が発症しても、近隣の施設には感染させずに封じ込んだ」ということができれば、良いと思います。
発症が確認される前から、ウイルスが排出されている以上、「平素の所作」が問題となります。
口蹄疫の有無にかかわらず、平素から、「自分の施設の口蹄疫のようなウイルスは近隣に感染させない」という姿勢が必要なのではないでしょうか。
今回、初発は間違いなく海外に起因しています。しかし、他の、多くの施設の発症は国内施設間のウイルスの感染(交流)が原因です。
感染した家畜の糞尿は発症前からウイルスが存在します。診察や注射のために家畜に近づき、触れることが、ウイルスがいる糞尿を拡散しているのかもしれません。勿論、杞憂と思いますが。
ただ、平素から夫々の施設のウイルスが、近隣の施設に伝搬していない状況を生みだすことが必要だったように思います。
そこで、気になるのが「堆肥化装置」の「送風装置」です。素掘りや野積みを止めて「きちんとした堆肥化装置で処理する」という方向で2004年から家畜排せつ物法で糞尿処理設備が整備され、基本的には、送風装置を備えた堆肥化装置の設置が励行されました。
その送風装置が、口蹄疫発生のある時期から、送風を停止していました。殺処分と埋却完了後の糞尿や堆肥の殺菌のため「高温殺菌」ができませんでした。
堆肥の好気性処理のための送風が、ウイルスの飛散になるからでしょうか?
そうれあれば、法律に基づいて整備した堆肥化装置が、被害の拡大に寄与していたかもしれません。何故なら、口蹄疫の拡大に際して、送風装置が停止されたからです。
クリーンルーム(半導体、医薬等)では、腕の上げ下ろしだけで微細な粉塵が大量に発生することは自明であり、人がいるだけで粉塵発生器と考えます。堆肥の曝気は、火山の大噴火のようなものです。
2000年の口蹄疫の時には、この法律の堆肥化装置は未整備かもしれません(1999年成立。2004年施行)。
種雄牛が防疫できたことを考えると、「接触しない空間」「糞尿の伝搬」を留意すれば、かなりの確率で防疫できるように感じます。
少なくとも隣接する施設に対して防疫することは可能に思えます。
平時か糞尿を完全に殺菌して、施設外へウイルスを出さなければ、口蹄疫とて、さほど怖くはなく対処する術はあるように思います。
少なくとも、家畜も口蹄疫ウイルスも昔から存在していたものです。同じウイルスでもA型肝炎のように糞便を介する場合には糞便を始末すればあまり問題はありません。
インフルエンザのようなものではないように感じます。
発症前にウイルスをまき散らすのであれば、「感染した施設の全滅」は覚悟しても、隣地への飛散を防ぐ手立てはあるように思います。
他所へ感染拡大をさせなければ、被害は単発で終息します。
ワクチンとかウイルスの型とか判定は判りませんが、ただ、平素の防疫がなされていれば、夫々の高度な専門知識を利用して、ルートの調査や、感染域の調査など有益な知見が集積されると思います。
被害が小さければ、完全な再建までの支援も可能になると思います。
平素からウイルスが隣地へ行かなければ、被害は自ずと単発になり、全てが良い方に回転するように思います。「誰が初発か」というよりも、「ほとんど際限もなく近隣の施設へウイルスが飛散していた」という現実が重いように感じます。
豚肉も牛乳も牛肉も(卵も鶏肉も)、今の生活には不可欠な食材です。その産業が不安定では困ります。
10kmも離れた場所が原因で、長い年月をかけて築きあげたものが、ゼロにリセットされる生業など考えられません。
投稿: 松井 | 2010年10月24日 (日) 11時21分
その送風装置が、口蹄疫発生のある時期から、送風を停止していました。殺処分と埋却完了後の糞尿や堆肥の殺菌のため「高温殺菌」ができませんでした>>>>>
根拠ははっきりしないが、ウイルスを空気中に拡散させる元凶と言われたためでしょう。(そういう実験結果があるのかどうかも不明ですが)
まことしやかな空気感染説が、支配してますから。。(何%の可能性なのか知りませんが)
投稿: りぼん。 | 2010年10月24日 (日) 12時32分
大体、純粋種豚飼育場では、一般養豚場に、2週間以内に出入りしたものは、入場禁止ですね。豚に接触したものは、入っちゃ駄目ってことでしょ。
申告書に書かされます。
もちろん、全身、着替えも当たりまえ。。
投稿: りぼん。 | 2010年10月24日 (日) 12時37分
>その送風装置が、口蹄疫発生のある時期から、送風を停止していました。殺処分と埋却完了後の糞尿や堆肥の殺菌のため「高温殺菌」ができませんでした。
この送風装置は、おそらく、通称「ブロアー」と呼ばれる装置のことだと思います。ブロアーを堆肥舎外部に設置し、送風管を堆肥舎の床部から糞内に空気を噴出せるようにした設備だと思います。従って、通常の運用であれば、空気(ウィルスを含んだ)が外部にかなりの量、飛散することは、ないと考えます。
では、何故、ブロアーを停止したかということになりますが、恐らく、
▼口蹄疫発生による移動制限下では、堆肥を運び出したり、撒いたりすることができないので、堆肥化しても、いつ処分できるか分からない
▼ブロアーは結構、電気代がバカにならない
などの理由からではないでしょうか。
私の農場には、ブロアーはありません。何故なら、電気代が高いから。それと、結構、騒音がうるさい。ということは、小規模の農場には、ブロアーは設置されていないと考えるのが普通です。(いくら法律で励行されても、設置は難しい。)
ちなみに、糞に対して、(大型ファンなどで)外部から風を当てても、表面が乾燥するだけで、堆肥化の促進には殆ど結びつきません。それから、切返しを行いながらファンなどで送風しない限り、糞(堆肥)からウィルスが空気伝播することは、考えられないと思います。まぁ、そんな愚行をする人は、いないと思いますが。
松井さんへ
ご意見、ごもっともという部分もありますが、
①エアレーションして堆肥化することにより、高温殺菌してウィルスを不活化したほうが良い
②エアレーションにより、火山爆発の如き、ウィルス拡散を助長するので、エアレーションは、すべきではない
のどちらを主張されているのか、よく分からない節があります。ご教示下さい。
投稿: Cowboy | 2010年10月24日 (日) 14時18分
「口蹄疫の疫学調査に係る中間的整理(概要)」(8/25)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/pdf/20100825-chukan.pdf (pdf 505KB)
の最後のページの表で、
12例目(豚1,473頭、4/29通報、4/30感染確認(PCR+))は、4/19に発症と推定されています。
この12例目が豚の初発、ということになります。
これによれば、県畜試川南支場(10例目、4/26発症、4/28感染確認(PCR+))は、12例目より1週間遅れた発症した豚の2例目ということになります。
投稿: コンタン | 2010年10月24日 (日) 15時13分
12例目から10例目の間には、たくさんの養豚場があります。そこを飛び越して、10例目に感染した理由は、何か、あるのでしょうか?
12例目は、7例目など、牛の初発群に非常に近いので、その可能性は充分でしょうが。。
やはり、10例目が、初発でなくても、県試験場らしい防疫を実行していれば、もっと、遅らせることは、可能だった。つまり、防疫の見本とは、言えなかったのでは?
投稿: りぼん。 | 2010年10月24日 (日) 15時36分
②エアレーションにより、火山爆発の如き、ウィルス拡散を助長するので、エアレーションは、すべきではない
>>>>>この話は、聞いたことがあります。だから、堆肥は、42時間静置して、10000分の1まで、ウイルスが減少してから、作業せよとの、指示だったと思いますが。
もちろん、ブロアーを使えば、早く高温になり、不活化域温度に安定到達することは、わかっていましたが、そのことで、ウイルスが拡散すると言われれば、止めざるを得ないでしょう。
投稿: りぼん。 | 2010年10月24日 (日) 15時41分
ブロワのこと
Cowboy様:
エアレーションの何れが正しいかは、データを持ち合わせていません。
ただ、法律(家畜排せつ物法、7条)では「送風装置」とわざわざ条文に文言があります。
さらに、その送風装置が適切に作動するように、適切に管理することも、記載されています。
いうなれば、国が設置を励行したことであり、当然、電気代はかさみますが、スイッチを入れることを示唆しています。
それが、むしろ被害を拡大したとなれば、現地の方々ばかりか、畜産に関連するすべての人が、驚愕します。
ちなみに、2004年の施行にあわせて、畜産関係の出版社から糞尿処理の仕方を解説した書籍には、堆肥の風速を「0.05~0.3m/分」というようにあります。台風が堆肥の中から上方に貫通するような感じです。
法律の定めに従って設置したものが、口蹄疫の時に「止める」というのであれば、腑に落ちません。大変な負担をされて導入した施設だと思います。
むしろ、2000年あるいは、もっと古い時代で、或いは後進国の飼育形態で「ブロワ」のような高級設備がない形態の方が、ウイルスを飛散していなかった、ということかもしれません。
同じウイルスでも、肝炎ウイルスのように飛沫ではほとんど感染せず、体の接触でないと大丈夫なものもあれば、インフルエンザのように一気にバスや電車の車内が感染するものまでいろいろです。
薦田氏やエース級のように同じ施設内で感染しないので、インフルエンザのようなものではなく、糞便にウイルスが出るA型肝炎のようなもので、豚や牛は、糞尿を気にしないので罹患しやすいのでしょうか。
勿論、素掘りや野積みを改善するために「強制通気の立派なもので、短時間に温度を上げる」という見方は、口蹄疫さえなければ普通の高速堆肥化で何も問題になっていない所作とは思います。
何れにしても試験や研究ができない程の危険な疫病に立ち向かうのですから、いろいろな体験は仕方がありません。できるだけ、経験が後日役立てば良いと思います。
2000年は見事で、2010年が爆発したという事情の違いの一つに「通気式の堆肥化装置の整備」があったものですから、気になったのです。
なお、堆肥の通気による粉じんの飛散は調査の公募があったと思います。
投稿: 松井 | 2010年10月24日 (日) 20時02分
こんばんは、青空です
私は従来から感染拡大の原因に非常な興味があります。人・車輛であるとの報告はありますが、一体、人や車輛の何によってなのか。
当初からネット上では様々な検証がなされています。
飛沫・よだれ・糞尿・乾燥した糞尿の粉末・・・。
媒介も様々です。
しかし、ネット上でも、各種の学者さん・獣医師・専門家・県・国行政サイドからも明確に示されていません。やや理解に苦しむのはいずれも今持っても具体論に発展できていません。研究する気があるのかと疑問に思うことさえありますが、今は静観するしかありません。
恐らく、一般の方で一番核心に近づくことができるのは発生当初から地図を睨み、頭数を追っておられたコンタン様ぐらいではないでしょうか。
ここからは完全な私見での仮説です。私は今回の災害をもとにより効果的にこのウィルスを駆逐できてる作戦を科学的な裏付けも何もないのでそのつもりで、お聞き流し下さい。
私は空気感染や黄砂によるとは思っていません。
恐らくは乾燥した糞尿に含まれるウィルスではないかと思っています。媒介は恐らくは飼料会社・消毒薬を扱う農協物流拠点・ホームセンターの所有する車輛が中心ではないかと。
既に各関係者や農家の方々、様々のブログでの記事やコメントで、4月20日時点で、農場に閉じこもるに必要な当面(2~3カ月分)の飼料や、当然消毒薬もなかったことは明白でした。
20日時点で一斉に各農場が注文し、受注業者が事態の深刻さをしっていたとすれば、とにかく早期に各農場に配ることを優先するでしょう。当然同じ車輛で。
残念なことにこの時点で数個の農場に疫病は浸透していたはずですし、有効な車輛消毒は徹底されていなかったはずです。
防疫に必要な消毒薬他は農場が独自に実施する(方法は各県家保が指導するのでしょうが)のですから、まさに同じ場所に同じ時間それこそ被災農家全てが集約されたようなものでしょう。
当然、畜産関連業者ですので、車輛の消毒は行ったでしょうが、感染拡大期、全車両への徹底的な消毒を実施している中、且つ各農場も実に最低限の外出、外部人員のシャットダウン、近隣住民の協力があった中でも感染はあざ笑うかのように徐々に拡大していましたので、私は一回付着したウィルスは、消毒ポイントを通り、踏み込み消毒をいくらしても、完全にウィルスを駆逐ができない。効果はかなり薄かったのではと感じています。やはり、消毒方法の有効性の検証がなされていないのは実に残念です。(これこそ今後のために徹底的に科学的に分析・研究し、どのような具体的な消毒方法がもっとも効果的か所見を示すことが必要不可欠と思っていたのですが。)
正直、ウィルスという変異可能な、目に見えず、生き残るために必死の存在、文字通り生存戦争を片方が完全勝利するためには、生半な科学やマンパワーはなんと無力であるのかと感じもします。
最終的に完全な防疫・感染防止の方法は、「地域畜産・畜産農家単位で数カ月引き籠る準備をする」が唯一絶対の方法ではないのでしょうか。
千年の昔から唯一の疫病への防疫方法から抜け出せないというのは残念ですが、真理でもありましょう。
現役養豚家が言うとおり完全に公平に非情に行うことの必要性も十分理解できます。
最終的に今の科学・知見・行政システムではどうともならないという残念な結果となるかもしれません。ただ私はこの惨事を教訓により、この疫病、もしくは来るであろう未知の疫病にさえも、より効果的な前進をできるようありとあらゆる可能性を精緻に検証すること切望しています。
投稿: 青空 | 2010年10月24日 (日) 23時21分
先程のコメントですが他の作業をしながら書いてました。
読み返してその乱文に恥ずかしくなります。
濱田様申し訳ありません。
投稿: 青空 | 2010年10月25日 (月) 00時09分
松井さんへ
「家畜排せつ物法」と「家畜伝染病予防法」とが、お互いの整合性を考えて、条文を作成(改正)したとは、到底思えませんね。だって、口蹄疫移動制限下において、溢れ出そうな尿溜めの処分を市役所に相談したところ、「防疫員の指示に従い、敷地内に素堀りして、石灰を散布後、埋設してください」との指示でした。家伝法のためなら、排せつ物法は無視ってことでOKということでしょう。
ブロアーが原因で、ウィルス拡散が助長された可能性があるのであれば、口蹄疫発生から清浄国復帰後もブロアー使用禁止ということになり、そのための法改正が必要で、おそらく大型企業型農場には、糞尿処理のための新たな設備投資や専従者など、大変な出費を強いることになりますが・・・。
それと、済みません、細かいことなのですが、
>薦田氏やエース級のように同じ施設内で感染しないので、・・・
薦田氏の施設内に感染牛(種牛、母牛、子牛、肥育牛)はいなかったと思うのですが・・・。県所有の種牛「忠富士」が感染した事実ならありますし、他の5頭には感染が見られないことも事実です。
>2004年の施行にあわせて、畜産関係の出版社から糞尿処理の仕方を解説した書籍には、堆肥の風速を「0.05~0.3m/分」というようにあります。台風が堆肥の中から上方に貫通するような感じです。
まず、「堆肥の風速」とは、堆肥内を通過する(浸透していく)空気の流速という意味でしょうか?もし、そうだとしても、0.05~0.3[m/分]がどうして、台風並みの貫通なのでしょう?台風なら、最大瞬間風速50[m/s]として、3000[m/分]ですよね。この風速の風を堆肥に当てると、堆肥の抵抗により、堆肥内を0.05~0.3[m/分]で空気が移動(浸透)していくという意味なのでしょうか?
それと、「堆肥の風速を『0.05~0.3m/分』」という推奨値があるということは、技術的に、堆肥内の空気の流速を調整することは可能だということでしょうか?
投稿: Cowboy | 2010年10月25日 (月) 12時06分
Cowboy様
「家畜排せつ物法」と「家伝予防法」>
私は、前者しか目を通していませんでした。後者は、話が専門すぎて、専門家の世界で、存在することすら確認したことがありません。今もって、条文の1行も確認していないのです。
家畜排せつ物法では、飼育規模の規定があり、それ以下であれば法律の対象となりません。
ブロワが駄目だと、別の設備が・・>
家畜排せつ物法は、「素掘り」や「野積み」は止めてキチンとしよう、とする趣旨で、それには誰もが納得できるのですが、口蹄疫はほぼ1世紀ぶりの出来事で隕石みたいなものです。暑い夏、糞尿や堆肥の殺菌のための送風装置が作動できないなら、別の糞尿の始末を考えた方が良いと思います。
薦田さんのこと>
申し訳ありません。私が仔細に現状を確認しておらずに書きました。
薦田さんとエース級6頭のこと、県境の防疫など、仔細に公表してほしいと思います。
堆肥の通風速度0.05~0.3m/分>
「空塔速度」といわれるもので、堆肥施設の平面を平均してどの程度の空気が流れているかを示します。床全体としてこの風速で空気が通過しています。
堆肥の堆積厚は1~2mはあります。その堆積層をこの風速で空気が貫通するのは大変です。堆肥の1~2mの壁で台風の風をよけると無風になります。
ブロワの能力に「風圧」があり、150mmH2Oとか300mmH2Oとかいうように、機種を選定しています。
堆積層が厚い程、高い圧力を選定します。
ちなみに、床面のパイプは、10~30m/秒の平均風速で計画します。
0.05~0.3m/分の空塔速度であれば、土の隙間は少なく、狭いので、小さな穴をかなり高速で空気が流れることを意味します。
粉じんを巻上げる量は大変なものと思います。
人のし尿は、昔は樽に溜めて地中で10年以上の嫌気醗酵で肥しにしていました。
今は、ブロワができて、電気もありますので、好気性醗酵(呼吸)で約20倍の速度で分解しています。早くて良いのですが、疫病となれば困ります。
糞尿処理のための新たな設備投資や専従者など>
口蹄疫のことを考えたら、新しく考えた方が良いと思います。「家伝予防法」に議論が集中していますが、「糞尿法」も怪しいと思います。
以前にも記しましたが、30年も前に補助金を受けた糞尿処理に「生石灰の殺菌」があります。水分90%程度で生石灰を混合します。但し、キチンとした反応機です。生石灰は外部に出ません。見えません。10分の混合で殺菌は終了して、コンクリートの床に展開して通風乾燥します。pH12のドロドロの状態です。全ての生命現象が断たれます。蛋白の骨格Nが除かれます。分子量200以下になります。核酸のリン酸がカルシウムで除かれます。核酸もバラバラになります。生体膜のリン脂質はリン酸基が露出しているため、リン酸が除去され、生体膜が消失します。全部、露呈して処理されます。生化学検査はできませんが、ウイルス、プリオン、蛋白、核酸がバラバラです。乾燥するまでpH12なら完全に無菌になります。
杜撰ではなく、適正に運用すれば、「処理設備・処理費用・人件費」は残渣のリサイクルで充当されています。
最初と初期は別として、7年とか10年とか普通の事業の期間では、全収支は「+」になっています。
畜産は肉乳卵を製品としています。道楽で飼育している訳ではありません。全部、消費者のために必要なものばかりです。
ならば、同時に発生する糞尿の始末は「公」が適切に支援して良いと思います。「私は肉が嫌いだから」と駄目出しする人はいないと思います。
予想外かもしれませんが、糞尿を適切に生石灰処理している事例では、耕種農家、ひいては、消費者に多大な恩恵(利益)を齎しています。
これは、分子量が200以下になると、作物に直接吸収、同化され、今の耕地の光合成(作物の生育)に加算される形で作物の増産になっているようです。
いうなれば、「糞尿のエネルギーが作物のエネルギーに付加されている」ということでもあります。
もっと言えば、「家畜は餌を沢山食べる」と陰口をたたかれますが、実は、糞尿も低分子量化(完全殺菌)すれば、作物に転換でき、家畜が消費しているのは代謝エネルギーだけになります。
まして、牛はセルロースでも分解して蛋白に移管しますので「食糧生産機」みたいなものといえます。
鶏でいえば、卵で食べるか、糞を活用して作物で食べるか、肉で食べるか・・そんなに早く殺さなくてもいいだろう・・という言い分もあるかもしれません。
常識と反しますが、30年前に判ったこととして、家畜は「排せつ物」の方に遥に大きな経済が潜在しています。30年前からせっせと糞尿を生石灰処理しているのは、儲かるからです。処理で困ることがないからです。いささか浮世離れしている話ですが、現実です。
投稿: 松井 | 2010年10月26日 (火) 08時35分
Cowboy さま。
「家畜排せつ物法」と「家畜伝染病予防法」は、憲法と法律、特別法と一般法(特別法が上位)のように、
はっきりとどちらが上位とされているわけではありませんが、
伝染病の流行時には、「家畜伝染病予防法」が上位法として優先されることは間違いないと思います。
ところで、スラリーの処理法ですが、農水省の指示(7/1)とはちょっと違うような。
http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/pdf/fmd_haisetsu_butsu.pdf
投稿: コンタン | 2010年10月26日 (火) 10時49分
松井さんへ
大変、丁寧な説明ありがとうございます。とても、ためになりました。
ところで、その生石灰による糞尿処理の反応器、お話から、所謂、バッチリアクターと思われますが、1回の反応で、どのくらい(㎥)の処理が可能なのでしょうか。
今回の口蹄疫禍において問題視されている糞尿の処理に利用可能と思われますか?初期設備投資は県が出すとして。
投稿: Cowboy | 2010年10月26日 (火) 13時50分
コンタンさんへ
スラリーの処理の指針ですが、まず、日付が気になりました。農水省の指示の日付は7月1日ですが、私が、防疫員から指示を受けて作業したのが、5月20日です。この間に、きれいな紙になったのでしょう。
「これは、あくまで、一時保管です。」という訳の分からない説明でした。どう見ても地下浸透すると思うんですが・・・。
投稿: Cowboy | 2010年10月26日 (火) 14時15分
Cowboy様へ
バッチリアクター>
ご指摘の通りです。円筒状一軸多翼型撹拌機に分類される形です。
1バッチ150~1000kg(原料重量)程度です。
これは、設置した施設の規模のためかもしれません。
個人的には2t程度はありと思います。
これは水分90%程度の処理直前の糞尿(原料)の状態です。牛豚鶏の糞尿は全部処理対象になります。
鶏は水分が低いので、加水してドロドロの水分状態で処理します。
しかし、牛や豚では施設の管理方針で、糞尿を合算した物の水分が90%を超える場合があります。その場合には、その状態で処理します。
「適正に」としたのは、処理を考えて、悪戯に洗浄水を無駄に使用しない、という意味です。処理量が洗浄水で無駄に増大すると、処理費用がかさみます。
ちなみに、糞尿を合算してそのまま処理して、水分の全量を蒸発させますので、排水はありません。
最終的には、固体粉末の土壌改良材が生産されます。
「糞と尿を分ける」という見方もありますが、所有権者の方の好みだと思います。生石灰処理では糞尿をそのまま処理します。90%の水分は、頑張ればできるためです。別途排水処理を持つことは大変です。酸性にもしません。
生石灰の添加量は、原料の15%程度です。反応機から取り出される状態はスラリーです。生石灰とか原料は、配管内を通るため、見えません。ドロドロの反応生成物が出てくることになります。10分程の反応時間で、出し入れを考えると1時間3バッチ程度。
ただ、反応機の大きさは、施設の糞尿量で決まりますので何とも言えません。
そして、基本的には初期投資、処理費、人件費含めて、然るべき期間までの全収支は「+」となるようにしています。糞尿の殺菌処理が畜産の重荷になることはありません。
そのために、洗浄水で悪戯に増量させない、有害物を持ち込まない、というような飼育側の配慮も同時に必要です。そのような糞尿は大変きれいなものといえます。
口蹄疫との関連で>
そうでなくても、生石灰処理が良いと思います。一見、超高額な処理へ歩みを進めますが、誰も重いもしない方向に宝が置いてあった・・そんな感じです。適正に配慮すれば、糞尿の完全殺菌は畜産の経営の負担になりません。些少の利益になります。
また、口蹄疫や鶏インフル等を考えますと、生石灰処理が良いと思います。
畜産の排泄物の処理は、製品価格に上乗せできないので、ならば、一層、公が始末しても良いように思います。
ちなみに、その効果は耕種農業に出力されます。
美味しい農産物が多量に生産される効果となって現れます。
処理をする畜産と、農地の所有を法律で守られた耕種農家とで、費用を負担する側と、利益を得る窓口の経営が分かれています。
公が介在して調整するしかないと思います。
利用可能か>
通常の規模なら利用可能と思います。
1~2頭の規模が1か所というのなら難しいですが、糞尿量で日量500kg以上なら問題ありません。
仮に日量1トン(水分90%)とすれば、最終的に約300kgの固体粉末となります。年間100トンの粉末資材になります。畑や果樹なら5~10ha程度の耕地に利用できます。水田は15ha程度です。水稲は実り過ぎて倒伏するからです。
日本であれば、牧草以外の換金作物でなら有益な資材として利用できます。
日本は耕種農家が法律で守られているために、進まないのかもしれませんが、畜産の排泄物の持つ効能を発揮することが極めて重要と考えます。
今の耕地で生産性が倍増することをお考え頂ければ、どれほど社会が改善されるか推測頂けると思います。
糞尿のエネルギー(有機物)が、作物のエネルギー(有機物)に転換され、付加されるとお考え頂ければ良いと思います。
ただ、セルロース・リグニン・ヘミセルロースは利用されないのですが、「糞尿」なら、一番多いのが「細菌類」と思います。
糞尿が施設内で集められ、パイプで処理施設へ輸送されるのであれば、糞尿の施設外への拡散は少ないと思います。
移送先の生石灰処理は、処理作業は専属作業員、処理費用も畜産の負荷にはならないはずです。
あまりまじまじと見ることがない排泄物には、それこそ未来の社会基盤を支える程の絶大な効能があるように感じます。
投稿: 松井 | 2010年10月26日 (火) 14時58分
Cowboy様
ご参考までに、文字で表現しにくい部分をサイトに図示しました。
http://www.geocities.jp/cnpk_memo/
文字を補うためだけのものですが。
論旨は、全て、コメントに記しています。
投稿: 松井 | 2010年10月27日 (水) 10時21分
松井様。恐縮ですが、本コメント欄は掲示板ではありません。口蹄疫においては一定そのような使用法を認めておりますが、記事テーマから離れたテーマでの連投はそろそろご勘弁ください。
投稿: 管理人 | 2010年10月27日 (水) 10時28分
松井さんへ
大変、詳しい説明ありがとうございました。
導入には、行政を説得するしかなさそうですね。
私も、このプラント、興味はありますが、これ以上、掲示板的な使われ方をするのは、不本意ですので、この辺で。
管理人さんへ
私のコメントから端を発しているようで、主催者の意に反した使用は、控えるべきでした。申し訳ありません。
投稿: Cowboy | 2010年10月27日 (水) 14時21分