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2010年10月 8日 (金)

宮崎口蹄疫事件 その118 なぜワクチン接種・全殺処分方針がとられたのか? 「現役養豚家」様投稿第2回

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私は、「現役養豚家」様との議論を丁寧に行いたいと思っています。というのは、これは単に口蹄疫を追及しているふたつのブログ間の意見の違いを超えて、口蹄疫に今後どう対処していくべきなのかを考える重要なことを含んでいるからです。

今回の宮崎口蹄疫事件は、いわば殺処分中心型対応の最大規模のものでした。ワクチン接種は日本で始まって以来大規模になされましたが、それはウイルス抑制を狙った遅滞効果のためにすぎません。

そしてワクチン接種後、直ちに無条件全頭殺処分という方針が取られました。ある種の焦土作戦です。家畜のいない無家畜ベルト地帯を作り、ウイルスをくい止める方法です。これをリングカリングと呼びます。

この方法がいかにしては発想され、提案されて、農水中枢の山田大臣(当時副大臣)が自らの方針として宮崎県に持ち込んだのか、かねがね不思議に思っておりました。

というのは、ワクチン接種、ましてや十数万頭にも及ぶ大規模ワクチン接種など、農水省はやったことがなかったからです。かつて、茨城トリインフル事件の時も、業界団体(日本養鶏協会)は緊急ワクチン接種を許可せよ、と陳情しましたが、すげなく拒否されています。

農水省は官僚組織である以上、非常に保守的な集団です。前例踏襲が命です。彼らが自分の意思で防疫指針や家伝法から離れられるはずがないのです。

その彼らが大規模なワクチン接種の道を選んだことは、疾病小委員会のクッションは経たとしても、私には驚きでした。ですから、私はこれは官僚組織内部から出たのではなく、「どこからか」の外部注入的な提案があって、山田大臣がそれを「政治主導」で採用したからではないか、と思い始めていました。

それが裏付けられることとなったのは、この「現役養豚家」様の投稿を読んでからでした。

この詳細な動向がこの投稿には書かれていて、非常に興味深いものがあります。たぶん養豚業界内では知られたことなのかもしれませんが、和牛農家や一般の人たちにとって初めて接する情報ではないのでしょうか。

このワクチン接種・全殺処分方針を提案した主体は、「日本養豚協会」(JPAA)と「日本養豚関連開業医師協会」(JSVA)、そして「みやざき養豚生産者協議会」(MPC)の三つの団体だと解りました。

日本養豚協会は4月の発生の翌日に素早く対策本部を立ち上げ、山田大臣に激しい陳情活動を行っています。3団体は、この状況が極めて伝染力が強い口蹄疫であり、パンデミックの様相を呈しているという厳しい情勢認識を持っていました。

これはてんやわんやの宮崎県行政とも、そこから東京に上がる過少報告を鵜呑みにしてよきに計らえ的な農水省とも異なった積極的な方針の具申でした。

今まで防疫はうまく行っています、というようなのどかな報告しか知らなかった山田大臣は、これらの陳情団体から聞かされた宮崎の惨状に驚き、彼らの具申を採用します。

その具申された陳情内容こそが、ワクチン接種・全殺処分方針でした。ワクチン接種により感染スピードを遅くし、接種後に無条件殺処分にすることで、事実上の大量予防殺処分となります。

接種後の殺処分が加えられたことで、旧来の防疫指針とも整合し、農水官僚が最も心配した清浄国復帰も3カ月間で済ますことが出来ます。このようにしてこの方針は、3段階のものから、農水省ぐるみの方針へとなっていったのでした。

一方、日本養豚協会とみやざき養豚生産者協議会は、地元宮崎県内の根回しを開始し、この方針が宮崎県に受け入れられる下準備に入りました。同時に日本養豚関連開業医師協会も、現地に会員獣医師を派遣し、現地入りした山田大臣(当時現地対策本部長)に共同させる態勢を作りました。

つまり、日本養豚協会やみやざき養豚生産者協議会以外の農家は、なにひとつ相談に預かっていないのです。養豚協会からすれば、あまりに和牛農家は対応が遅いということに写り、一方、それ以外の当事者たちからすれば寝耳に水の出来事でした。

しかし、山田大臣が農水方針とした瞬間から、宮崎県行政当局、あるいは和牛農家、搾乳農家、家畜保健衛生所や共済組合、民間の獣医師たちなどをつんぼさじきに桟敷に置いたままで、この「壮大な実験」はスタートすることになったのでした。

このような緊急時にはいた仕方がないとはいえ、その合意形成の手法には問題が目立ちます。素早い行動力は敬意に値しますが、時としてそれは養豚業者だけの密室の中での独りよがりにもなりかねません。特に肝心要の県行政との協議があまりも強権的な押しつけと取られてしまいました。

何も聞かされてこなかった県にとって、膨大な殺処分を生むこの方針に簡単に納得できるはずもないし、補償問題もこじれにこじれました。

また説得にあたる山田大臣が、「ワクチンしなけりゃ知事失格だな」的な傲慢な態度だったために、県知事の執拗な抵抗に遭遇することになります。

そしてこの国と県の補償問題をめぐっての協議があまりに長期化したために、ワクチン接種は5月22日に大幅にズレ込むことになってしまいました。まさにパンデミックの最盛期です。

そのために5月の初期に行われたのならば、ウイルス抑制の効果も得られ、殺処分数を極小化し得たかもしれないこの方針が、まさに感染まっさかりに発動されたために、十数万頭の膨大な殺処分数を出す結果となっていきます。

                  ~~~~~~~~~~~~~

以下養豚関係の動きを時系列的に記します。

以下、日本養豚協会はJPPA、日本養豚開業獣医師協会はJASV、みやざき養豚生
産者協議会はMPCと略します。
なお、JPPAの会長・副会長・常任理事のほとんどは養豚経営者であり、正会員のす
べてが養豚農家です。
JASVは、主に豚をメインとする民間開業獣医師の団体です。
MPCは宮崎県内の養豚農家をメンバーとする組織です。

①JPPA独自の口蹄疫対策本部設置…4月21日設置。
養豚関係者は1997年の台湾口蹄疫で、一国の産業が瞬時に崩壊する様を目の当たり
にしているので、危機感が非常に強かった。
対策本部はJASV・MPCと密接な連絡を取りながら以後積極的に活動していく。
また独自の義援金募集も開始し、最終的に約7000万円を発生地の養豚農家に配分し
た。

②山田副大臣および農水省関係部局、国会議員への要請…4月23日以降連日のように
要請活動
要請活動の他、各都道府県や地域養豚団体、養豚農家、関係業界への連絡調整活動が迅速活発になされ得たこれらの活動に当たってはJASV・JPPA・養豚事業協同組合他生産者有志が参加。

③JASVからの支援獣医師派遣申し入れ…4月28日発生地地元で開業している会員獣医師(当時防疫活動に従事)2名からの要請を受け、石川代表理事らが会員派遣を申し入れ。
すでにこの時点で両団体はパンデミック状態であるとの認識を示している。
派遣獣医師は5月5日朝に三名が現地入り。以後5月10日にかけてさらに4名派遣。
この派遣は以後、交代する形で続けられ、県庁内での相談室開設や、防疫アドバイスを
積極的に行う。

④リングワクチネーションの提案…5月2日
5月2日、両団体の幹部と農水省担当者間で意見交換
このなかで、石川代表理事は獣医師派遣について、宮崎県との調製を国に求めた。
どういう訳か、宮崎県は支援申し入れに消極的であり、また同県内の共済組合所属獣医
師約100名にも声をかけていない。
また、JPPA志澤会長からは、九州の生産者集団の声を踏まえ、十分な補償措置を講
じた上での限定的リングワクチネーションを提案

*⑤以降は次回に掲載します。

(続く)

■写真 ホオズキがスケルトンになりましたこれもかわいいですね。

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口蹄疫問題」カテゴリの記事

コメント

昨日は私が火種になってしまって失礼しました。
意見や見解・知識は様々でしょうが、「論争で盛り上がる」ならブログ主さんも望むところでしょうし、有意義だと思います。

私は農家・畜産家の方を尊敬してますし、「お肉大好き!」です(大抵の人は肉好きでしょ?肉は絶対ダメって人は、私の生涯で1人しか会ったことないです)。

職種ごとに団体があるのは分かりますが、「畜産団体」といっても当然ながら分野が別れていて、それぞれ違うわけですね。
それだけでも勉強になります。

口蹄疫に関しては牛・豚とあるために複雑なわけですね…。

まず、JPPAとMPCの関係ですが、JPPAの宮崎支部=MPCと考えていいのでしょうか?

>4月28日発生地地元で開業している会員獣医師(当時防疫活動に従事)2名からの要請を受け、石川代表理事らが会員派遣を申し入れ。
すでにこの時点で両団体はパンデミック状態であるとの認識を示している。

ということは、この時点で、リングワクチネーション実施を提案しようという動きが既にJPPA内には、あったということでしょうか?

>JPPA志澤会長からは、九州の生産者集団の声を踏まえ、十分な補償措置を講じた上での限定的リングワクチネーションを提案

「十分な補償措置」という文言は、全殺処分前提という提案であったということと解釈してよろしいですか。

連投済みません。
>4月28日発生地地元で開業している会員獣医師(当時防疫活動に従事)2名からの要請を受け、石川代表理事らが会員派遣を申し入れ。
すでにこの時点で両団体はパンデミック状態であるとの認識を示している。

この両団体とは、JPPAとJASVということだと思うのですが、この時点(4/28)で、宮崎はパンデミック状態にあると認識できた具体的な事柄があれば、ご教示下さい。
4/28といえば、えびの市へ飛び火が確認されんとする状況、当時は報道などしか、得る情報がなかったせいか、どう見てもパンデミックとは思えませんでした。無論、現場に行かれた獣医師さんの認識ですから、疑いようは無いのでしょうが。

>②山田副大臣および農水省関係部局、国会議員への要請…4月23日以降連日のように要請活動

発生直後、どういったことを要請されたのか、ご教示ください。

牛飼いCowboy様、さっそうと登場だ!
若き牛飼いさんのCowboyさんは、ひそかに尊敬しておりました。
無知な私にでも結構ですから、思うところぶちまけて下さいよ!
ここにはブログ主さまはじめ、優秀な方々があつまってます。
騒ぎが行き過ぎたら主様からストップかかるでしょうし。意見の主張・交換をしてぶつけ合うことこそが最も大切なことだと思います!

濱田さん。「お前らやり過ぎだ」とおもったら、ストップかけて下さい。他人のコメ欄をジャックする気はさらさらありませんから。
あなたの庭先でああだこうだと言い合うどころか、ドンパチ状態にもなりかねませんから…。

でも、私ここに来られる方々は大好きです。

立場はちがいながらも、同じ問題をしっかりと考えよう、という共通項が前提にあるからです…。
シロートの私が無知で馬鹿馬鹿しいことを書いたら、バシバシっと論理的に否定してくれるし…それはそれは一般人には大変勉強になることなんですよ。

私は過去にも馬鹿なこと言ってたし(我ながら酷いのも多いと自覚してます)、昨日も現役養豚家さんに怒怒られました。
いいじゃないですか!
どんどん活発な意見交換しましょうよ!
私(あくまでというか、所詮素人です。)
全力で叩いて貰って構いません。
それでだけでも一般的な人々に、現状を知らしめる効果があるんですよ!

どんと来いですよ。

私の投稿文については今回保足説明にのみ止め、論評は極力避けます。
数日中に私のほうに全文アップしますので、なにかあればそこで受けます。

まず、COWBOYさんの質問

MPCとJPPAはそれぞれ独立した団体で、中央地方の関係はありません。
会員は一部重複しています。

要請活動の内容は、口蹄疫を迅速に封じ込めるための極一般的な物です。
記者会見等ですべて説明されています。
概要でしたら、JPPAのHPに出ています。

発生直後から地元で防疫活動(殺処分)に当たっていたJASVの会員2名(高鍋町在住)から、ワクチン接種の必要性を訴える声が連休前にJASVに対して発せられています。

パンデミック状態の認識は
現地が牛豚混在の超密集地である
農水確定発表の前に現地から多数の情報が寄せられていること
口蹄疫ウイルスの実態を理解していたこと
ウイルス侵入から発生報告まで二ヶ月弱かかっていること
上記の理由から、相当数の潜伏感染・通報遅れ農場の存在が予測できたこと
豚への感染が判明したこと
現地会員から、殺処分埋却が発生に追いつかないとの
訴えがあったこと
発生確認直後からの防疫体制がメチャクチャで、相当ウイルス拡散が予想されること

などです。

>「十分な補償措置」という文言は、全殺処分前提という提案であったということと解釈してよろしいですか。

はい、間違いありません。
ワクチンを【常用しない】清浄国ステータス【早期】回復の必須条件だからです。

東国原知事のTwitterより

「薦田氏の種牛の抗体検査の結果は、全て陰性だった。」

朗報です。
畜産農家さんとして誇りに思います。

薦田さんの衛生管理と疫病対策が正しく評価されることを期待します。

現役養豚家さんへ、
丁寧なご回答ありがとうございます。
そして、客観性を失わない為、補足説明に終始される姿勢は、流石だと思います。

口蹄疫初発の発表当時、豚への感染がどれほどの意味を持つのか、和牛農家では、知りえないことでした。(一部の人間は知ってたかもしれませんが。)
「豚への感染=パンデミック状態へのトリガー」という図式を、全ての養豚家が周知していたということが、当初の防疫に対する意識の温度差となった気がします。

済みません、細かいことで恐縮ですが、
>ウイルス侵入から発生報告まで二ヶ月弱かかっていること

このことを4/28の時点で、知り得たということがどうにも、腑に落ちないのですが。
もし、このことが4/28時点で、知りえない情報であるとすると、「相当数の潜伏感染・通報遅れ農場の存在が予測できたこと」に対する説得力が薄れる気がするもので、どうしても確かめたく思います。


済みません、この後、しばらく(明日の午前中まで)、投稿できないと思われます。夜の部の仕事が、月金土に入っているもので。

山形さんへ
そんな尊敬されるに値する牛飼いではありませんよ。(汗)
経験も浅いし、それほど、若くもなし。
しかし、やはり、議論すべきは、とことん、議論すべきですよね。
今後とも、よろしくお願いします。

>>ウイルス侵入から発生報告まで二ヶ月弱かかっていること

3月31日に採材された水牛農家…第6例目…の検体が、4月23日に陽性で確定しています。
最大潜伏期間21日から逆算して、3月初旬になります

私的には2月末頃のウイルス侵入と推定しています

>「豚への感染=パンデミック状態へのトリガー」という図式を、全ての養豚家が周知していたということが、当初の防疫に対する意識の温度差となった気がします。

全ての養豚家が周知していたとはとても思えません。
豚・肉牛・酪農で比較すれば、平均的には業界の意識は高かったとは言えるでしょうが。

補足
養豚団体の陳情だけでワクチン接種が決まったわけではありません。
農水担当部署・小委員会とも連休前に「ワクチン止む無し派」と「消極派」で意見が割れていました。

皆さん、その点誤解無きよう。

最高決定権者の2人は、海外旅行と、地方公演で忙しかったです。

おっと、補足から脱線しました
管理人さん、怒らないでね。

農水の公式発表だけ見ていても危険水準に近づきつつあることは、十分認識できたと思います。、

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