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宮崎口蹄疫事件 その122 豚と牛の決定的な業態の差とは 「青空」様のコメント全文掲載

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「青空」様からたいへんに有意義なコメントをいただきました。改行は適時に行いました。内容的に省略をすることがもったいないので、全文を掲載します。非常に長文でしたので、2分割となります。

私もほぼ同一の見解をもっています。

私の家業の養鶏も畜産三羽ガラスの一角ですが、牛とも、豚とも異なっています。「長男は牛、次男が豚、トリは妾の子」という蔑視が、わが養鶏にはあるくらいです(ひでぇな)。

まず家畜単価が極端に安く、小型で、したがって大量飼育が可能となり、安価販売が前提となります。

肥育から産卵までが約6カ月間で、そこから約1年間で淘汰となります。非常に回転率が高く、故に経営合理化が極限まで進んでいる業態です。

飼育期間が短いために、そこでの病気、特に伝染病には極端なまでに神経を払っています。大規模になるほどバイオ・セキュリティは完全になされています。

もし罹患した場合も、治療よりも殺処分してしまいます。そのほうが早くて確実だからです。再建も産み出し寸前を中途導入すれば、短期に再建ができます。

「青空」さんもご指摘のように、養豚も養鶏に体質的に近い部分があります。大量飼育が前提なために、一頭ごとに舌を調べたり、ワクチン接種後にこれまた一頭ごとにNSP抗体検査を行うなどは緊急時にはナンセンスだと思って当然でしょう。

そして豚は最大3千倍のウイルス増幅家畜ですから、感染スピードも非常に速いために、ワクチンを打って多少感染スピードを遅らせたら、さっさと殺処分してしまうほうが安全だ、と思ってしまうのも頷けないわけではありません。

茨城トリインフルの時も、一企業農場100万羽単位で殺処分がかけられています。中途で、殺処分が追いつかなくなり、「ウイスル分離がされないならば、ウインドレスは殺処分免除」という方針に切り換えられたほどです。

仮に口蹄疫が鶏にも共通する伝染病だった場合、私たちの養鶏も養豚に近い対応となったと思われます。

このように考えると、まさに養豚経営特有の体質と一体となった方針が、この日本養豚協会のワクチン・全殺処分方針でした。

その意味で牛は、同じ畜産と行っても本質的に異なった業態です。家畜の単価は非常に高く、鶏や豚と比較するほうが愚かです。

また、飼育期間は繁殖と、肥育合わせて4年近くにも達します。当然のこととしてブランド化による差別化は、畜産3種でもっとも先行しています(現在は豚も相当にブランド化に力を入れていますが)。

また殺処分に伴う補償ひとつにしても、疑似患畜は5分の4補償ですから、一頭が高価な牛にとって、到底受け入れがたい条件であったと思われます。

また、ワクチン殺処分の場合は共済金が支給されません。とうぜんのこととして、再建にはかなりの資金と時間がかかってしまいます。

ですから、5月中旬に延々と続けられた県と国の補償交渉は、渋滞するべくして渋滞しました。これは養豚からみれば、知事のサボタージュ行為だと写り、種牛問題では、もはや裏切り行為というニュアンスで痛烈に知事を批判しています。養豚関係者で東国原知事をよく言う人は皆無なほどです。

まぁ、このような業態を一括して同一の防疫方針を取ったわけですから、摩擦が起きても当然でした。

4月の初期段階で台湾口蹄疫を見て危機感を募らせた養豚関係者が、真っ先にワクチン・全殺処分を提唱し、山田大臣直結で、自らの方針を政府の方針にしたことも、事態を複雑にしました。

いわば一業界団体の利害で、政府方針が定められてしまった印象が拭いがたくあるからです。

しかし現実には、牛、豚が混在して飼われているのが児湯地域ですから、なかなかそれを分離して別方針を立てるのは、現実には難しいものがあったことは確かです。

ちなみに、私のような平飼養鶏は近代養鶏の反省から生まれたもので、坪収容羽数の低減と、自然環境の取り入れ、長期飼育、ブランド化による高価格販売を基本にしていますので、感覚的には、豚より牛に近いものがあります。

                 ~~~~~~~~~~

青空です。先に長文になったこと平にお詫びします。
ここ数回の記事および「現役養豚家」様との議論については非常に興味を持たせて頂いております。
私は畜産関係者ではない一般消費個人ですが、こと仕事には無関係と言えないため、本災害の顛末には非常な興味を有しています。

私のスタンスは、「宮崎県の復興の応援」です。かつてわが国で家畜伝染病や各種災害で自力で復興に成功した例はありません。いずれも不当な風評被害で復興できず
(但し発生農家およびその周辺に限定されましたが)市場からの退場や辛辣な結果となっています。

神戸大震災ですら街は復興できましたが、重要な産業が3つ(靴・革・港湾)消滅・壊滅の危機に瀕する結果となり、復興としては不十分な形態です。
今回も当然その確率は低からずと思い応援を続けていますが、図らずも復興が成功する可能性も高いと感じてきております。

さて、私はこの口蹄疫禍の当初より極めて強い違和感を持っておりました。最近の議論にてようやく腑に落ちたと感じています。

発生当初特にGW明けぐらいから、現地及び他県関係者でも様々な団体や専門家らかのコメントにおいて、特に牛・豚で大きく意見が食い違い議論になる光景を見てきました。

養豚業者からの視点論点では主に批判的な意見が中心となり、こと種牛対応については唾棄すべき問題と極めて難色を示していました。大概に知事がなんらかの発言をすると
団体の総意として痛烈に「非難する」といった声明が上がっていたと記憶しています。

また、現地の養豚家であると思われる方のツイッターでもその経緯を見ていくと5月中旬以降意見が180度転換していく様が見え、不自然さを強く感じたのを覚えています。
厳しい疫病拡大期に身内での抗争の発生は私は意味がわからず、思案しかねていました。

最近までそれらの意味はよく理解できませんでしたが、最近の議論でそれが畜種間の相違によるものと感じております。
その業種内容は徹底的と言っていいほど異なっています。現役養豚家様のご主張をひも解くとそのような気がしております。

それぞれがおかれた国際競争影響度・ブランド戦略の有無・そして圧倒的な(これは養鶏でも言えますが)生産期間の相違の問題であると感じました。
養豚農家、繁殖・肥育牛農家は同じ畜産ではありますが、まったく別の業種であるということです。

一頭ずつの管理を前提とした和牛生産と群での管理を前提とした差異は徹底的です。当然養豚養鶏では一頭づつの検査、観察期間設定、出荷見合わせは生産コストが販売単価が上回ることは自明の理です。そういった非合理的なルールが作られるほうが、今後の経営の重い足かせとなる意味で反対する意向は理解できます

ワクチネーション、予防的殺処分は養豚・養鶏では経済合理性に見合った対応であり、全頭処分は前提条件とならざるを得ない管理状況なのだと理解しています。
例えば仮に養豚家で一頭単位での検査体制を持つといった場合、一農場で3,000頭以上いる養豚農家では、数週間で数百頭の子豚が生まれる、生産サイクルは数カ月、といった環境下でそもそも口蹄疫発症症例を一頭づつ管理することなど、不可能ではないかと。

一頭5分で休みなく口をこじ開け、熱を測り、蹄の異常を確認するとすれば、3人で作業したとしても一回当たり83時間を要します。顕在化する期間が一週間前後であるのに都合良く把握できるなど不可能です。

また、養豚はブランド戦略を主軸にはおいていません(もちろんありますが)。店頭にならぶ豚の表示はせいぜい「国産」もしくは「~県産」です。
スーパーに並ぶ豚は基本的に隣県です。したがって値段の格差も特にない。種豚等の希少性は薄いといってよいでしょう。種豚が同列に殺処分されたとしても和牛程のダメージはありません。

むしろ豚にとって最大の致命傷は粗利益が低い分、稼働期間の減少が最大の問題点であると感じます。全頭処分をしたほうがむしろ再開するスピードがあがるのであれば
そのほうがメリットがあると考えるのは比較的正常な判断でしょう。

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口蹄疫問題」カテゴリの記事

コメント

蛇足ですが、同じ豚でも、出荷養豚肉豚とペット豚は、まったく治療方針がちがいます。
ある病気に罹患した場合、治療費が、肉豚の卸価格(せいぜい3万円)を超える治療は、ありえませんから、淘汰ですが、ペット豚は、その豚がすべてですので、10万円以上の治療費を掛けて手術するのが、当たり前になってしまいます。淘汰による経済性優先の養豚専門獣医さんでは、そういう手術経験は、ありませんので、エキゾティックアニマル獣医さんの仕事になります。ペット豚は、群れでなく、個を重視する牛に、似ています。
ですから、養豚専門獣医さんとは、衝突は、しょっちゅう起きます。つまり、病気の初診判断は、経験豊富な養豚獣医さんですが、実際、麻酔を掛けて手術になれば、まず、麻酔方法すら、細かな作業については、エキゾティックアニマル獣医さんの範疇です。そのような経験が、ゼロな訳ですので。。種豚の治療など、経験があれば、参考にはなるのですが。。

当初は、豚=養豚獣医と言う図式をイメージしてましたが、群れを1単位にする養豚獣医さんでは、結局、ペット豚のことは、難しいと後日、認識しました。

睾丸を取るにも、やはり、停留睾丸が降りてきてから、麻酔をかけ、切除しますし、人間を見て、恐怖を与える治療方法は、まず、しません。
治療方針が、まったく違うのです。

投稿: りぼん。 | 2010年10月14日 (木) 08時53分

県試験場の豚に感染が確認された時点で、台湾の事例を思いだし、宮崎の畜産が終わってしまう恐怖を感じました。もし、養豚業会の圧力がなければ、宮崎においてワクチン接種が実施されたでしょうか?その可否は別において、和牛中心の県畜産関係者では、おそらくワクチン接種と言う意見に到達するには、もう少し時間が掛かったのではないかと推察します。
ワクチン使用具申⇒特措法制定⇒ワクチン実施の流れの中で、ターニングポイントとなったのは、どこなのでしょうか?その時点を境に、和牛関係者もワクチン容認の姿勢に転じた気がするのですが。

投稿: 一宮崎人 | 2010年10月14日 (木) 15時04分

青空さんのコメント中

>ワクチネーション、予防的殺処分は養豚・養鶏では経済合理性に見合った対応であり、全頭処分は前提条件とならざるを得ない管理状況なのだと理解しています。

これこそ大きな誤解であり、30万頭を処分せざるを得ない状況まで対処が遅れた最大の理由です。
あ、けっして青空さんが原因と言うことではありません。
誤解無きよう。

投稿: 現役養豚家 | 2010年10月14日 (木) 18時03分

管理人様お疲れ様です。
推測するに、仕事しながら、口蹄疫問題に対して、思索されてないでしょうか?
足かせ半年にも及びますね、。信長流の「。。。殺してしまえ」の赤松、山田も、そして当事者の東も、去ろうとしています。
要するに、奴等にとっちゃ、過去の事なんですよ
こうして、畜産農家は、石を積み上げるというのに。。。
賽の河原の鬼どもに訴えますよ。
鹿児島で、起こった暁には、お前らの言う通りにはいかない。政治主導の悪しき工程、今更ながら、嘆いてます。

投稿: D | 2010年10月14日 (木) 22時31分

こんばんは。
実は遅い強制夏休みで、家族サービスをかねて北海道に来ております。釧路の大自然は圧巻の一言、大自然の前にいかに人間が無力かを思い知らされます。

旅行のもうひとつの目的は他県、特に畜産大国の現時点の防疫体制を見たいとの思いです。
新千歳から富良野、十勝を抜け釧路湿原に来ています。驚いたことが3つ。ひとつは空港のノンズルさでしょうか。ポスターは貼ってありますが・・。やや残念でした。

もっと驚いたのは中国人のツアー客の多さです。
さすがに自国での状況下、十勝方面ツアーないだろうと箍を踏んでいましたが、多いこと多いこと。
平日、紅葉シーズンというのもあいまってでしょうがトマム(十勝手前)での中国人観光客の多さにはびっくりしました。また釧路でも多くの中国の方々を拝見しています。いくぶんか学生時代中国語をやった杵柄で、数人の家族と仲良くなり(通訳の方がいたのでラッキーでした)がその仕事や経緯等をお伺いできたのました。われわれサラリーマンと違い、上海で成功を収めた方を中心とした一族郎党での旅行でした。
当然、事業家の方は畜産とのかかわりは皆無のようでしたが、成功した資金で一族の一部に畜産業を行わせているようで少しぞっとしました。
彼らが十勝方面にある中で牧場なしというツアーが存在しているのかやや微妙ですが。
彼らは北海道から上陸ではなく、最初は東京、その後北海道との流れです。成田の検問は彼らに注意を促していることを祈るばかりです。

横道にそれましたが、現役養豚家様のコメントこそ私が数ヶ月来待ち望んでいた、養豚業者、関係者様のコメントでした。
防疫に人間の経済的、その他諸々の事情は通用しない、ということは私も理解しております。
畜産業として一括りにするには、業務内容等大きく異なる中で、共通の疫病が発生し、スピードを最優先する疫病対策で、今後の事業再生その他を議論することは不可能であり、徒に時間を弄する原因となる。そのためには酷薄と写ってでも非道な選択を躊躇なく実施する必要がある、と。

しかし、そのことについて議論もしくは明確な説明と実施方法の提示はどれも奥歯にものが挟まったようなあいまいな表現のものが中心でした。
明確に説明しきるのであればすればよいと感じましたがそれがなされるのは現時点を置いてもほとんど見受けられません(少なくとも直接関係者からはです)。
スピード優先の感染期であればやむを得ないと思います。ただ現時点をおいても行政からその施策の十分な説明がないことに納得がいきません。

その結果、あたかも同業者間の抗争というように一般人からは見え、不要な混乱の根源となっているのではないかとすら感じます。
異なる利益創出の構造である牛・豚・鶏でまったく同一の防疫、対処方法しか想定してなかった、また保障内容等についてもそれぞれの実情のあったものにしておかなかった従来の手抜きがここで爆発し、その結果説得と関係者情報の浸透に時間がかかったのであればそれは従来からの施策の失策の結果としか見れない思いがあります。それを宮崎県のみを非難するのはいかがなものなのか。それとも宮崎県特有なのか。
そこが知りたいと思っています。宮崎県特有であれば現時点までの論調は理解できますが、各県共通であったのであれば必然的な話で、同情はあっても非難は生きすぎなのではないかと感じます。
その原因が、各都道府県(私としてはどの県でも発生してれば結果は変わらないと感じていますので)の行政に問題があったのか、あるいは宮崎県特有の問題であったのか、はたまた農水省の問題であったのか、あるいは家伝法が定める、家畜主の責任意識の問題であったのか。そここそが肝なのではないかと。

私が各法律、マニュアル、指針等が不備であったと思う点はそれらの丁寧さに欠けている点とシュミレーション不足、それらを各農家に徹底してなかった点にありしと思っています。

本来、現役養豚家様のブログにて議論すべきコメントかもしれませんが、現役養豚家様のブログでの現時点での争点ではややずれる気がしましたので場をお借りしてしまいました。

濱田様、返す返すも無礼な振る舞いご容赦くださいませ。あなた様のブログに無用な混乱を作っていると自覚しております。
現役養豚家様、私の意見は奇麗事であり、現実離れしたものとの自覚も重に持っております。あなた様の論点は常に明白、深い洞察と本質と戦う姿勢には高い敬意を持っております。いつも無礼な意見、不快に思うこと大と思いますが、門外漢の戯言、どうか寛大に見て、厳しくご指導ください。今般の議論を煮詰めることが今回の件の各種部門での誤解や平行線化の空しい議論を解消するきっかけになる要素があるのではと思っています。長文申し訳ありません。

投稿: 青空 | 2010年10月14日 (木) 22時53分

青空様北海道ですか・・・・北海道もかなり寒くなってきたので、日中でも15度前後かな?
私は逆に北海道から東京に来ています。北海道人にとって半袖でちょうどよい気温で、メタボの私でも汗をかかないで歩きまわる事が出来ました。
さて、青空さんが仰る通り北海道にも中国他台湾・韓国の観光客が大勢きています。
多分それなりの収入を得ている方がほとんどと思いますが、発生国の人たちである事には変わりません。
私が関係している団体が、米国の共進会(現地酪農家視察含む)視察研修ツアーを計画していたのですが、受け入れ予定酪農家から難色を示されたため、中止しました。先般国が清浄国復帰の申請したのを受けて北海道庁が空港や港での水際侵入対策をやめる事を決定した事をコメしましたが、危機感というか認識が甘いというか・・・力が抜けました。
農家の入り口が石灰で真っ白になっていたのも、段々薄くなってきました。
国は国内にウイルスは存在しない・・との判断で復帰申請を行った様に聞いていますが、畜舎周辺にはいなくなったかもしれませんが、発生地周辺にはウイルスが存在しないとは言い切れません。
今後散発する可能性は否定できないと思っています。
とりとめのない話になって申し訳ないです。

投稿: 北海道 | 2010年10月15日 (金) 07時07分

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