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« 宮崎口蹄疫事件 その124 私の心に澱のようにたまっていくもの 規模の問題 | トップページ | 宮崎口蹄疫事件 その126 10年間歩みを止めた口蹄疫対策 »

2010年10月17日 (日)

宮崎口蹄疫事件 その125  欧州は大量殺処分政策を捨てつつある。しかし、日本の現実は・・・

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「現役養豚家」様、豚が牛の3千倍の感染スピードを持つ、という昨日の私の表現は誤解を招きます。そのようなウイルス排出量と感染スピードが正比例することを示すデータは私も知りません。筆が滑りました。お許しを。

ただ、豚のほうが牛よりもはるかに速いスピードの感染を示すことは疑いようのない事実である思います。であるなら、頭数も少なく、経済的な単価もはるかに高く、感染スピードの遅い牛と豚が同一の防疫方法で果たしてよかったのか、というのがこの間、私のブログで取り上げているテーマです。

あともう一点。
健康な家畜はウイルスを排出しません。ですから感染拡大の要因にはなりません。何をあたりまえなことをと、言われそうですが、初動期においてはいかに健康な家畜においても、予防的に殺処分をかけるしか術はないのは確かでしょう。

問題は、初動制圧に失敗し、感染が拡大する時期の殺処分の判断です。宮崎県では、大量無差別殺処分が行われました。サーベイランスにかけることもなく、ワクチン接種した家畜は、牛も豚も一律に無条件殺処分となりました。

私はこれに疑問を抱き始めています。

5月29日、FAOの首席獣医官のフォン・ブロス氏はこう言っています。
「殺処分は、感染拡大した今は長期的な視野を持って慎重な姿勢を持つ必要がある」(「日本経済新聞」5/29))。

この5月下旬の時期は、第160~250例台が連日出た時期で、まさにブレイク・アウト最盛期でした。

このフォン・プロス氏は続けて、「われわれは多くの経験を口蹄疫で持っているので、来日したい」というということも同時に述べています。農水省がなぜか拒否しましたが。

また7月10日、ヨーロッパ家畜協会(ELA)は、農水省動物衛生課長の川島敏郎氏に対して書面で、「大量殺処分ではなく、迅速な遺伝子検査とワクチン併用を促す」内容を申し入れています。

これらFAOやELAの申し入れは、日本の口蹄疫防疫に対しての異例の批判と受けとめるべきでしょう。

これには背景があります。現在ヨーロッパでは、殺処分は口蹄疫防疫の主流の座から降りつつあります。いや、大量殺処分のみに頼るという防疫方法は、もはや過去のものだと言ってよいでしょう。

2010年6月24日、EU屈指の畜産国であるオランダは、「今後の口蹄疫防疫においては、殺処分は二度と行わない」という政府声明を発表しました。

また、2010年5月、EUの欧州委員会(European commission)は、ワクチンと迅速な遺伝子検査を駆使した新たな口蹄疫対策案を提出しました。

2001年、700万頭という史上最大の口蹄疫禍を出した英国においても、「明らかに健康だと思われる牛に関しては、殺すか殺さないかの判断は農家の決断に任せる」、という見解を出しています。

こう見る限り、欧州を中心として大量殺処分政策は時代遅れとなりつつあるのは確かなようです。

しかし残念ながら、私は現在の日本が、ヨーロッパの防疫関係者が言うような「遺伝子検査の迅速化とワクチン接種の組み合わせ」ができる体制を持っているとは思っていません。

ご承知のように、わが国において口蹄疫を遺伝子検査できる施設はなんとただの一カ所(*宮崎大学に研究用としてもう一カ所あるともいう)、小平市の海外疾病研究部があるだけにすぎません。

OIEの清浄国ランクのトップにあるワクチン未種清浄国とは思えない貧弱さです。しかも独立行政法人となってから、支所は中国、北陸、赤穂、難病と続々と廃止される憂き目にあっています。

今後、宮崎県の二の舞をさせたくないのならば、大幅に拡充する必要があります。いわゆる道州制の一カ所には遺伝子検査施設が必要です。

また家畜保健衛生所も、地方自治体の小泉改革以降の財政難のために、縮小の一途を辿り、宮崎県は畜産王国をでありながら、他県と比較してもわずか3カ所しか支所がなく、家保獣医師の数も不足していたことも現実です。

今後、宮崎県はお隣の鹿児島県並の家保体制を持つべきです。

このような状況下で、もしほんとうにFAOの首席獣医官が来日したとして、どのようなことになったでしょうか?

もう既に、ワクチン接種・全殺処分は5月22日に始まっていました。一頭一頭の家畜をまめに遺伝子検査にかけるために東京小平に送るよりも、目視と、農家からの申告に頼り、一律ワクチン接種しては殺すしかないという思い詰めた「空気」が圧倒的でした。

今でこそ牛と豚を分けて対処できなかったのかとか、NSP検査をなぜしなかったのだ、などと言えますが、当時の「空気」の中では、それを言い出せる者はただのひとりもいなかったのです。それが実情です。

つまり、日本はFAOの首席獣医官の言うことなど、聞く耳を持たなかったのです。だから、呼ばなかった。呼べば、先進国とは思えない恥を世界にさらす、と農水省は思ったのでしょう。ただそれだけです。

今、私は今後のことを考えています。今のままでは、宮崎の防疫政策を指して、あれが正しかったどころか、あれだけが正しかったになるでじいう。それが果たして、日本の畜産の前進につながるのか、私は深く疑っています。

私は「現役養豚家」様との議論に気が進まなくなりつつあります。その最大の理由は、養豚関係者にはその人なりの真実と正義があり、その合理性においてあのような政策を進言されて、政府案となりました。

それがいけなかったとまで言う気はありません。しかし、今後において、「それだけが正しかった」のか、と言う議論に踏み込むべきではないのでしょうか。今がその時期なのです。

■写真 北浦の湖です。秋空にさわやかな湖面が拡がります。

■cowboy様。牛に全部名があるの知ってますよ。いちおう私も研修生時代丸一年間、牛と豚の研修をやりましたもん。牛に蹴られてアバラにヒビも。あの黒毛和牛はたしか「姫子」って言ったっけ。豚はアグーで、止せばいいのに名をつけて、「ピー」っていいましたっけ。ただし、もう20年前ですが。

 

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コメント

牛、豚、鶏と言う動物種の違いだけでも、様々な思惑の違いがあるのは当然なことであるのに、その中でも採卵とブロイラー、種豚と肉豚、酪農と肉用(その中でも、和牛繁殖、和牛肥育、乳牛F1肥育)、観光牧場や動物園、ペットとしての山羊や豚と飼養形態、損益分岐点等々、あまりにも多くの違いがあるモノの伝染病に対する法律が、家伝法一つであることがそもそも無理があるのではないでしょうか?
今回の宮崎口蹄疫で、家伝法や防疫マニュアルの不備が指摘され、今後の改正が俎上に上がっては来ていますが、今回のワクチン接種に対する動物種間の温度差などに対する疑問点等は、どのようになるのでしょうか?家伝法の中に、それぞれの種に対して細かく規定することは、恐らく無理であり、やはり、そこは防疫マニュアル等で調整するのでしょうか?
人の狂犬病予防法や新型インフルエンザに対するような、個々の伝染病に対する法律を作ったほうが良いのではないでしょうか?特に、口蹄疫みたいな深刻な経済損失を招くような疾病や、鳥インフルエンザ、BSE等の様に人体への影響も勘案される疾病については、その疾病に対するだけの法律を制定して、対象動物を絞り込み、それに対して現時点で考えられ得る全ての対策を盛り込んだほうが、スッキリするような気がします。
防疫や処分に関しては、科学的知見を基として、一切の政治的思惑の入り込まない法律を制定し、それに基づいた防疫マニュアルにより全ての行動がなされる。
そのような体制が出来れば、今回のような悲劇は、少しは減るのではないかと思います。

家畜種間の問題、飼育規模の問題、生育スピードの問題、一貫飼育と分業飼育の問題、個飼育か群飼育かの問題、繁殖や種牛問題、遺伝子問題など、多様な問題が、存在しながら、10年前の口蹄疫禍から、分析技術や飼育ルールや地域指定など、しなければならない宿題や問題をそのままにして、口蹄疫ウイルス研究に、10年の遅れをとっている日本が、素直に、最新のウイルス学や、対病原菌に対する飼育方法を、学ばず、ストップしてしまっていることに、残念な思いは、してます。分析機器を開発しても、塩基配列の大量のデーターが無ければ、分析も難しいのでしょうから、もっと、国際的に情報交換して、データーを集めて、ウイルスの根源に、迫らないかぎり、当面、予防的殺処分は、なくならないでしょうし、現場の家畜種ごと、規模ごとの実践飼養実態を、研究者が知らない限り、おおきな制度変更は、ないのでしょうね。

養豚家、牛飼いさん、大規模牛農場、ペット家畜、いのしし屋さん、などなど、それぞれ、飼育方法を開発していますので、意見が違って当然なので、議論は、大事でしょう。養豚だって、放牧型、デンマーク型、云々と、飼育システムは、多様ですから、どの飼育方法ですと、どうすべきかというのは、まったく違ってきて当たり前でしょう。SPF豚とか、ぜんぜん、放牧飼育豚とは、違うシステムもありますし。。

ただ、非常に、目に見えにくい、口蹄疫ウイルスですので、もっと、議論し、研究すべき問題でしょう。

感受性とか、暴露量とか、もっと、ウイルスの発病メカニズムを、分析する必要を感じますし、そういう意味では、RT-PCRもエライザも、実際どういう風に、分析しているのか、各国でも、違いがあるようですので、しっかり、情報公開して、お互い勉強すべきで、ある意味、牛農家さん、豚農家さん、鶏農家さんが、お互いの違いが、よく解った事例でも、あると思います。

少なくとも、もっと、口蹄疫については、もっと研究する必要があり、その研究次第では、予防的殺処分を減らすことは、可能であると、信じております。
時間あたりの暴露量と、自己増殖必要暴露量なんかもわかれば、良いのだと思います。抗体反応自体、しっかりと説明されていないように思います。
サンドイッチ法というのが、主流なんでしょうか?

連投済みませんが、このように、農家の方が、家畜伝染病予防法について、この法律が、交付された時代と、飼育方法も、変わってきている以上、さまざまな現地、実践のご意見が、出てくるのは、望ましいことで、どこまでを、あくまで、口蹄疫を早期撲滅するために、全家畜に、規制をするのか、どこから、方針転換して、より良い制度設計にしていくのか、このところ、口蹄疫禍について、意見を述べるブログが、少なくなったので、最終報告なり、宮崎の被災農家さんで、意見をまとめる団体も出来つつあるということで、連携していただき、経過のまとめで、終わるのでなく、新たな口蹄疫の防御ルールが出来上がることを、期待しています。特に、新たに出来るであろう被災農家さんの体験談を、吸い上げ、今後に生かせる法整備を望んでいますので、いましばらく、このブログも、お続け願いたいものです。すでに、このブログへ、コメントされる方は、固定しつつありますが、決して、これまでの、意見衝突が、無駄とは、思っておりませんし、養豚界も牛飼いさん達も、一般市民も、こういうブログのおかげで、家畜の飼育の実態がこれほど、よく一般人に発信されたのは、今回の宮崎事件が、最初かもしれません。ぜひ、もう少し、続けていただきたいのが、私の希望です。最終報告や、一部の学者のレポートが出れば、また、新たな発想が出てくるものと、信じております。

私も思い悩んでおりました。
現役養豚家さんのストレートな主張は尊重してますし、宮崎の牛飼いさんや青空さんのような考えも当然あると思います。
一言に「畜産」とはいっても、扱う動物や規模によって対処は違うかもしれない。(蔓延防止→撲滅のための一律処分が基本だと思ってましたから、私には衝撃的でした)
「技術論」からこぼれてきたようなことです。

これは、防疫体制やマニュアル改正につながる新たな道の在り方・突破口になるかもしれません。
畜産のより良き未来のために、まだまだ考えるべきことがあるのではないでしょうか?
国や県の専門家や大学教授や海外の防疫経験者の意見・見解が聞きたいです。

ひとつの悲劇がきっかけになり、法改正が行われた典型は、福岡県で起きた幼い子供3人の尊い命が一瞬にして奪われた飲酒運転による追突事故でした。
今回の未曾有の大惨事から、法改正が行われない事には、
犠牲になってしまった家畜の霊は浮かばれません。
個人的には、原因究明がなされるたびに浮上する、中国産
稲ワラの輸入を禁止しない事には再発の不安に怯えながらの毎日を送る事になると考えてます。
中国では現在も口蹄疫が蔓延しつつある状況なのに、きちんとした情報公開もなされていません。
そして、反日デモの報道を耳にする度に、この国の輩が、ウイルスに汚染された稲ワラを送り込んでくるのは、容易であり、可能なのではないか。。と危惧しています。
日本向け輸出の食品に農薬を混入させる国民を抱える国ですから。。。

http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20050527press_10.html

http://www.maff.go.jp/j/press/2007/20070809press_3.html

http://www.maff.go.jp/aqs/tetuzuki/product/pdf/heatlist-wara-h22.pdf

http://www.geocities.jp/japax_i02/japax/business/inawara/inawara-annshinn.html

http://www.maff.go.jp/j/chikusan/souti/lin/l_siryo/koudo/h180207/pdf/ref_data01.pdf

http://www.maff.go.jp/j/press/2007/20070809press_3.html

http://www.maff.go.jp/aqs/tetuzuki/product/87.html

http://www.maff.go.jp/aqs/tetuzuki/product/pdf/14-821.pdf

先日宮崎の都農町に行きました、農場は家畜はいなくて、ハエも臭いも無い養豚場ばかりでした。
近年豚価が安くて、5000円/頭の赤字だそうで、口蹄疫のおかげで出荷はゼロで赤字を免れた上に国の保証もあるので再建出来る上。国からの保証金や寄付は無税、現実を知らないパフォーマンス議員による法案が通る。かわいそうかわいそうとマスコミが報道する、商店街や建設業・削蹄師・獣医師・人工授精師・飼料販売業者・動物薬販売業者・等々関連業者は保証無しで廃業に追い込まれているが全く報道無し。アメリカ1万円デンマーク2万円日本3万円これは豚1頭の販売価格です、日本は世界一の高豚価の国です。
輸入される豚肉には、差額関税で課税されますので日本の豚価は守られます。これだけ手厚い保護がされた産業が他にあるでしょうか。
http://www.youtube.com/watch?v=GJklIXe754Y&feature=mfu_in_order&playnext=1&videos=E9dvIH4So0U

牛肉の差額関税は特別会計で、全額(+@)が牛業界に使われています。

豚肉の差額関税は一般会計に繰り入れられ、その三分の一程度が、養豚産業に回ってきます。

関税額は、牛の関税は豚の倍以上あります。

関税の使途から見れば、牛のほうがはるかに保護されています。

稲作はさらにその上をいきます。

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