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宮崎口蹄疫事件 その127  寺門疾病小委員会代表代理はワクチン輸入元社員であった?!     付録 ELA緊急提言全文

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6月7日の欧州畜産協会(ELA・European livestock Association)の農水省農水省動物衛生課川島室長宛の文書全文掲載します。これはELAのサイトのトップに掲載してあり、ELAとして、日本での事態を重く受け止めていることが伺えます。
http://www.ela-europe.org/

詳細な分析は次回以降にいたしますが、ELAはこの農水省へのこの緊急提言文書で、「殺すためのワクチン接種から、生かすためのワクチンへ」と提言しています。

そしてELAは、日本でとられているワクチンの使用方法が明らかな誤りだと厳しく指摘しており、「イギリスの失敗を繰り返すべきではない」と言っています。しかし、日本はイギリスの轍を踏んでしまいました。

このELA緊急提言にある「殺すワクチンから、生かすワクチンへ」という言葉は、山内一也東大名誉教授が自らの予防衛生協会の講座の中で使われている表現です。

私はこの新しいワクチン接種による防疫方法、つまりマーカーワクチンによる防疫方法の概念を、終結宣言が出た後に知ります。いや、正確には、7月23日の「朝日新聞」記事が最初でした。

当時の私は、民間種牛問題が終結してしまった後であり、いまさら何をご託を並べて。象牙の塔の住民は困る・・・という気分に覆われており、山内先生の趣旨を理解することなく、恥ずかしい話ですがブログ記事において一蹴してしまいました。不明を恥じます。

ところが、山内先生のこの提言は、既に民間種牛問題が生じる以前に出されており、農水省はそれを読んでいないはずがなかったのです。なぜか、まったく顧みられることはありませんでした。

朝日新聞もどのような理由からか、一切の問題が終わった後になって、後出しジャンケンよろしく山内インタビューを掲載したことになります。この記事が、民間種牛以前に公表されていたら、世論の動向に少なからず影響を与えたはずです。

一般国民はさておき、当時この問題で知事を激しく批判する日本養豚協会が畜産関係者の世論形成をしていましたから、それに対しての「もうひとつの道」の提案は大きな波紋を呼んだと思われます。

既にこの時期、政府は5月22日からワクチン接種・全殺処分の方針を実行に移していました。この政府方針は、4月段階からの日本養豚協会の働きかけがあり、5月以降山田大臣と直接に結びつくことで、大臣の「政治主導」により実現したという側面もあります。

そしてもう一方の側面は、寺門誠致(のぶゆき)農水省疾病小委員会委員長代理の動向でした。寺門氏は防疫関係者に知らぬ者とていない高名な人物です。動物衛生研究所(当時家畜衛生研究所)の所長を努めた後に、共立製薬の先端技術開発センター所長に就いています。

この共立製薬こそが、この宮崎県で使用されたワクチンの輸入元だと知ったら、驚かれるでしょうか。

ワクチンの輸入元であった共立製薬の重要な研究ポストの人物が、そして農水省に大きな影響力を行使できる立場の人物が、このワクチンをマーカーワクチンであると知らないはずもありません。そしてそれを農水省に伝えていないはずがありません。

たぶんこのワクチンが購入されて備蓄された1年前に、検討委員会の席で農水省動物衛生課はそれを知ったはずです。

当然、寺門氏は現在ヨーロッパで主流になりつつある「殺さないワクチン接種」の技術も熟知し得たはずです。

多くの現場畜産関係者は知らなかった「殺さないワクチン」による防疫方法を、たぶんこの段階の日本で最も知っていたのは寺門氏のはずでした。

そして農水省は、寺門氏を元々疾病小委員会のメンバーではないにもかかわらず、4月20日の確定後、急遽臨時メンバーとして参加させています。

疾病小委員会の内部議論は公開されません。しかし寺門氏は記者会見において、「ワクチン接種した家畜を残す議論はしていない」、と述べています。

どういうことでしょうか?頭がグルグルします。マーカーワクチンをである情報は、疾病小委員会内部に伝えられなかったとでも言うのでしょうか。私はそれはありえないことだと思います。もし、そうならば、防疫の権威者として、あるいはワクチン輸入元の社員として、寺門氏はたいへんな情報隠蔽、いや情報操作を計ったことになりかねません。

素直に考えるならば、元々農水省はワクチン・全殺処分方針を温めていたと思われます。そして、寺門氏と懇談し、氏とも防疫方針の一致をみたのではないでしょうか。だから、寺門氏を突然に疾病小委員会に突っ込んだのです。そして委員長代理というポストまで与えています。

そしてどこかで、疾病小委員会内部にこのワクチンはマーカーワクチンであるということが伝わったものだと思われます。

あるいは、今書いたこととはまったく正反対に、農水省は寺門氏を通じて「殺さないワクチン」防疫を聞いており、マーカーワクチンを使用した新たな防疫方法を模索していた、と考えられないことはありません。しかし、ならばどうして「ワクチンを打って残す議論はしていない」などと記者会見で言ったのか、整合性がとれません。

この間の事情は、当人たちが語らない限り永遠の闇となります。

いずれにせよ、マーカーワクチンの情報が疾病小委員会に伝えられたのはどの段階かはわかりません。おそらくは4月28日の第3回委員会ではなく、その後の5月19日の第4回であったと思われます。

そしていもうひとつのベクトルである日本養豚協会は、5月9日に山田大臣に直接陳情し、山田大臣は5月10日に議員会館で養豚協会トップと面談しています。議員会館を使ったのは、農水省官僚に秘匿したかったからでしょう。

しかし、その必要はありませんでした。農水省も、彼ら官僚の方針として、ワクチン・全殺処分方針を寺門氏と温めていたはずでしたから。

そして5月19日の疾病小委員会の会議で山田大臣の意向は農水省の意向としてなんらかの形で伝達されたはずです。

当然、紛糾したと思われます。寺門氏の記者会見でも、「自信がない」と氏自らが言うように、第4回疾病委員会はそうとうに紛糾したことと思われます。

しかし、山田氏の強力な(彼は従わない官僚は左遷するくらいのことをしますが)「政治主導」が功を奏し、ワクチン・全殺処分方針が決定されました。後はワクチン接種の答申が出た5月19日の翌日の20日夜、宮崎にワクチンが到着し、流れが形づくられていきます。、

FAOは口蹄疫専門家チームの受け入れを 5月21日以前の段階でしていますが(5月21日共同通信)、日本政府はこの方針を覆されることを恐れて拒否しました。

このような、日本養豚協会と農水省防疫官僚の意思が2本の糸のように絡まるようにして、事態は進んでいったように思えます。

              ~~~~~~~~~~~

2010年6月7日
 農林水産省(消費・安全局)動物衛生課(国際衛生対策室長)川島俊郎医師へ
 (写)OIE Bernard Vallat医師
 EU消費・安全委員会(欧州議会議員)John Dalli,

 欧州家畜協会(ELA)は、畜産システムを永続させることを目的としていて、口蹄疫の分野で著名な科学者がいます。日本でとられている口蹄疫対策について、ELAメンバーは、次に掲げる緊急提言を行ないます。

 ワクチン接種で口蹄疫は根絶できないという日本の専門家の声明は正確ではありません。
 日本が2001年にイギリスとオランダで起きた口蹄病の管理における間違いを繰り返し、日本の畜産業や地域社会が経済的社会的に似たような帰結に終わるとしたら、それは最も不運なことです。

 日本の当局の主たる目的は、病気の蔓延を抑制し、流行を制御して、できるだけ早く口蹄疫のない状態に戻すことです。ELAは、次の Q&A をよく検討されることを重ねて助言します。

 上記の目的(できるだけ早く口蹄疫のない状態に戻す)は達成できますか?
 答:はい。ワクチン接種と殺処分によって達成できるでしょう。しかし、それではイギリスのように、感染している家畜が(ほとんど)淘汰された後、ただ単に目的を達成したというだけにすぎません。
 この政策の問題点は次の通り。
 ・ウイルスの拡散を止めるために相当数の動物が虐殺される。
 ・社会経済的、実際上の影響。
 ・虐殺に起因する人間と動物の、広範囲にわたる福祉問題。

 より効果的な別の選択肢がありますか?
 答:はい。殺すためのワクチン接種から生かすためのワクチン接種に置き換えるべきです。

 ・殺処分を前提とした正確な診断は困難。
 ・バイオセキュリティを維持するのは困難。獣医や殺処分担当チームの不足、
 たまに非協力的で、どうしようもない家畜のオーナーとディーラーの存在。
 ・価値ある遺伝子その他の損失。
 ・消費にはまったく問題のない家畜の殺戮を受け入れるという倫理問題。


 感染をすばやく確かめることができ、前駆・臨床前段階であっても、即座に診断できるような、より新しい診断テストを用いてできるだけ速く病気を追すること。

 感染した家畜はただちに殺処分。
 同心円状のワクチン接種(感染してない地域から、感染が確認されている地域に向かって)。
 口蹄疫を発症しているか、潜伏期にある動物が、不注意でワクチン接種を受けたとしても、ウイルスの排出量は減るだろう。これがワクチン接種の明らかな長所。
 農場のバイオセキュリティの維持と、家畜の移動制限。

 上記を考慮して、以下のように提言したいと思います。
 ワクチン接種する地域の広さは、一般的な非常事態計画に基づいてではなく、口蹄疫が勃発した時のタイプに基づいて見積もらなければならない。すなわち(2001年に英国で大流行した口蹄疫のように)はじめは口蹄疫かどうか分からなかった多地点発生型か、それとも(2007年に英国で発生した口蹄疫のように)すぐに口蹄疫と分かった一地点発生型か、の違いである。

 前者の場合、ゾーンは広くとらなければならないが、後者の場合は比較的狭くてもかまわない。
 ・非常に効果的で、ほんの数日で抗体ができる、最新の高性能な緊急用ワクチンを活用する。
 ・予防接種の後は、適切なテストを行なって、ワクチン接種をした農場の血清学的ふるい分けにより、感染した家畜と、ワクチンを接種した家畜を区別する。(DIVA戦略)


 家畜類を飼育する地域社会の幸福のためにも、人々にとてもよく奉仕してくれる家畜類のためにも、21世紀の先端科学のツールにふさわしい家畜健康管理のより優れた方法を確立するのに貢献したいと思います。日本の皆さんが口蹄疫の発生を速やかに制御できるよう、成功を祈ります。
 敬具

■原田和明氏の翻訳に拠りました。ありがとうございます。なお太字は引用者です。

原文は以下です。PDFでご覧いただけます。

To: Dr. Toshiro Kawashima, CVO
Animal Health Division, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries, Tokyo, Japan
CC: Dr. Bernard Vallat, OIE
John Dalli, EU Commisioner Health and Consumer Policy
Members of European Parliament
Foot and Mouth Disease (FMD) Japan 2010
The European Livestock Association (ELA) is aiming towards enduring systems of animal husbandry. It has some well-known scientists specialised in Foot and Mouth Disease (FMD) among their members.
In relation to the FMD measures taken in Japan, the ELA members feel the urgency to state the following:
 The statement of the Japanese Authorities that FMD cannot be eradicated by vaccination is incorrect.
 It would be most unfortunate if Japan repeated the mistakes made in the management of control of FMD in the United Kingdom and in the Netherlands in 2001 and if Japan would suffer similar economic and social consequences for the livestock industry and the wider rural community.
The main objective of the Japanese authorities is to stop the spread of disease, bring the epidemic under control and return to an FMD-free status as quickly as possible.
ELA strongly advises to give careful consideration to the following questions and answers:
Can the above objective be achieved?
Answer: By stamping out/vaccinate-to-kill. Yes, however - like in the UK - that becomes only successful when hosts to be infected are (almost) no more available.
The disadvantages of this policy include:
- the considerable numbers of animals slaughtered in order to 'kill' the virus and stop its spread;
- the socio-economic and practical implications;
- the welfare problems in humans and animals caused by widespread slaughter;
- the impossibility of ensuring accurate diagnosis when the emphasis is on slaughter;
- the impossibility of maintaining bio-security (shortage of veterinary surgeons, slaughter teams - and occasional non-co-operative/rogue livestock owners and dealers);
- the loss of valuable genetic lines etc.;
- the ethical problem to accept the destruction of livestock that are perfectly safe to eat.
Are there more effective alternatives?
Yes. Vaccination to live should replace stamping out/vaccination to slaughter, in combination with:- tracing the disease as fast as possible by using newer diagnostic tests with which one can quickly confirm infection, even in the prodromal/preclinical phase, giving almost immediate ensurance;
- immediate slaughter of animals on infected premises;
- utilising ring vaccination (from uninfected areas towards the areas where there is the confirmed infection);
- even if animals incubating FMDV or animals with FMD are inadvertently vaccinated, they will subsequently shed less virus; an obvious advantage of vaccination.
- maintaining bio-security on farms and a ban on animal transports;
In consideration of the above we would like to advise the following:
- the size of the vaccination zones should not be based on a generic contingency plan, but must be estimated according to the type of outbreak: e.g.a multiple loci situation because FMD was initially unrecognised, (like the UK FMD epidemic of 2001), versus a single FMD locus that was quickly identified, (like the UK FMD outbreak of 2007). In the first case the zones must be large, in the last case the zones can be kept relatively small;
- to apply modern purified high potency emergency vaccines that are very effective and provide protective immunity in a matter of days;
- after vaccination, to differentiate infected animals from vaccinated animals (DIVA strategy), by serological screening of vaccinated farms using the appropriate tests;
We hope to contribute to a better way of animal health control, appropriate to the scientifically advanced tools of the 21st Century, both for the well-being of the rural societies and their livestock that serve humanity so well.
We wish you every success in bringing the outbreaks rapidly under control.
With kind regards,

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コメント

寺門氏は、東国原知事を子供じみた発言で批判してた方ですね。
ワクチン使用のコスト、どれくらいに及んだのか知りたいです。

りぼん様、前述の中国産稲ワラの情報提供ありがとうございます。

投稿: doll24 | 2010年10月20日 (水) 06時13分

それならなおのこと、徹底的なリサーチ体制敷きそうなもんですがねえ…。
なんとも釈然としません。

投稿: 山形 | 2010年10月20日 (水) 07時02分

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