宮崎口蹄疫事件 その144 最初の豚へのウイルス侵入 12例目疫学報告
ウイルスの豚への侵入がもっとも早いと思われる12例目農場の疫学報告です。
豚は牛の千~2千倍(FAOによれば最大3千倍)のウイルスを気道から排出します。そのために豚への侵入は、大きな感染拡大の起爆剤となってしまいました。
当初は10例目(県試)が最初の豚感染だと思われていましたが、後の疫学調査でそれ以前にこの12例目に侵入していたことが判明しました。
この企業グループ農場は川南町にあり、4日前に7例目大型農場(「A牧場」4月25日発生)に訪問した死体回収業者がウイルスを持ち込んだ可能性が指摘されています。
同じく8例目の隣に12例目農場の従業員が住んでおり、その通勤車両による侵入の可能性もあるとされました。
また12例目が使用する共同堆肥施設が10例目(畜産試験場)と13例目の裏手にあり、ここから伝播させたことも指摘されています。
12例目からの拡大ルートは、発症した4農場(12、42、298、281例目)が同一の飼料輸送業者であることからその飼料運搬車が可能性が高いと指摘されています。
12例目から系列の39例目(ウイルス侵入4月26日)に豚を出荷しており、これによって伝播した可能性が高いとされました。
12例目はグループ企業であり、学習会が開催された4月20日に26例に伝播した可能性があるとされています。
所在地は川南町の道路が交差する角地にあり、発生農場が集中する地域から川南市内への道と、死亡獣処理業者が通過する道のクロスする地点にあったことから、ここを通過する車両による侵入の可能性もあるとされました。
川南町のような牛と豚の農場が密集している地域は、いったん感染が起きると道路や堆肥場を導火線として火薬庫となりかねないことが分かります。
なお、読みやすくするために改行とゴチックは適時に施しました。また下図も疫学報告から引用させていただきました。解像度が悪いので、そのうちしっかりとスキャンして掲載する予定です。とりあえずご勘弁下さい。
原文はこらからどうぞ。
http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/pdf/ekigaku_matome.pdf
■12例目(ウイルス侵入推定8番目)
所在地:川南町
飼養状況:豚1,473頭
発生確認日:4月30日
推定発症日:4月19日
推定ウイルス排出日:4月16日
推定ウイルス侵入日:4月12日
■〔要因ごとの調査結果〕
1 家畜関連
① 豚の導入
【侵入】
4月8日に24頭を系列農場から導入していたが、導入元の農場では異常は確認されておらず、ウイルス侵入の要因となった可能性は低いと考えられる。
② 子豚の出荷
【伝播】
系列農場へ毎週月・水・金曜日に出荷しており、この出荷先のうちの一つが39例目農場(5月7日発生)である。
出荷は4月19日まで続けられていたが、当該農場でウイルスが排出されていた時期(推定ウイルス排出日:4月16日以降)と考えられること、また、39例目農場にウイルスが侵入したと考えられる時期(推定ウイルス侵入日:4月26日)に近いことから、この出荷が39例目農場へのウイルス伝播の要因となった可能性
は否定できない。
③ 死亡豚処理
【侵入】
死亡豚の処理業者は4月11日に当該農場を訪問していた。この車両は当該農場を訪問する4日前に、飼養牛がウイルスを排出していたと考えられる別の発生農場(第7例目:4月25日発生)を訪問しており、このことがウイルス侵入の要因となった可能性は否定できない。
2 飼料関連
【侵入】
同一の飼料運送業者が他の発生農場にも立ち入っていたが、これらの発生農場でウイルスが排出されていたと推定される時期よりも早く、ウイルス侵入の要因となった可能性は極めて低いと考えられる。
【伝播】
飼料運送業者は、4月に入ってから当該農場に2回搬入しており、最後の訪問日である4月22日は、当該農場でウイルスを排出していたと推定される時期(推定ウイルス排出日:4月16日以降)と重なる。
また、訪問した順序は不明ではあるが、この日に同じ飼料運送業者が訪問した農場のうち、4農場(当該農場、42例目、278例目及び281例目)で発生が確認されており、このうちの42例目農場(5月7日発生)にウイルスが侵入したと考えられる時期(推定ウイルス侵入日:4月27日)に近いことから、ウイルス伝播の要因となった可能性があると考えられる。
3 敷料関連
【侵入・伝播】
敷料を搬入していた業者については、他の発生農場との関連が認められないことから、敷料がウイルス侵入及び伝播の要因となった可能性は極めて低いと考えられる。
4 人関連
① 従業員
【侵入】
従業員のうち1名が8例目農場(4月28日発生)の隣に居住し、当該農場へ車で通勤していたことから、このことがウイルス侵入の要因となった可能性は否定できない。
【伝播】
当該農場はグループ企業の1農場であり、グループ内の勉強会が毎週開催されていた。この勉強会が最後に開催された4月20日は、当該農場で既に発症していたと推定される時期であり、また、出席者が勤務していた26例目農場(5月6日発生)にウイルスが侵入したと推定される時期に近いことから、このことがウイルス伝播の要因となった可能性があると考えられる。
② 獣医師
【侵入】
当該農場を訪問する前に、ウイルスを排出していたと考えられる農場は訪問しておらず、ウイルス侵入の要因となった可能性は低いと考えられる。
【伝播】
4月に入ってから獣医師が当該農場を訪問したのは7、14日であり、ウイルスの排出が開始されたと考えられる時期に近い。
しかしながら、当該農場訪問後に獣医師が各発生農場を訪問した日は、それぞれの農場にウイルスが侵入したと推定される日とずれていることから、ウイルス伝播
の要因となった可能性は低いと考えられる。
5 野生動物
カラス、スズメ、タヌキ、ネズミ、ゴキブリが確認されている。
6 その他
【伝播】
系列農場で共同利用するためのふん尿置場が、10例目農場(4月28日発生)及び13例目農場(5月1日発生)の裏手に設けられており、これらの農場への伝播の要因となった可能性があると考えられる。
【侵入】
当該農場は角地にあり、一方の道路は初期の発生農場が集中して所在している地域から川南町市街へ向かう幹線道路、もう一方の道路は死亡獣畜処理業者に向かう道路であることから、これらの道路を通過する車両等を介してウイルスが侵入した可能性も否定できない。
〔まとめ〕
■通常、豚は牛と比べると感染しにくいものの、いったん感染した後は、牛の百倍~2千倍程度のウイルスを排出するため、豚にまで感染したことが今回発生が拡大した大きな要因になったものと考えられる。
(ウイルス株の病原性の強さは、株によって異なるため、(独)動物衛生研究所において感染実験を行い、今回分離されたウイルス株の病原性を確認する予定。)
豚の発生農場のうち、最も早い時期にウイルスが侵入していたと推定されるのは、当該農場であると考えられる。
■12例目農場は、2~7例目農場(6例目農場を除く)を中心とする発生農場が密集した地帯に近接し、死亡獣畜処理業者や飼料運送業者等の畜産関係車両が日常的に当該農場の近接道路を通行しており、かつ、発生農場の目前にある自宅からの通勤者がいたことも確認されている。これらのことから、車両及び人の移動に伴いウイルスが農場内に侵入した可能性は否定できない。
■写真 このところ紅葉の写真にはまっています。真紅の紅葉も美しいのですが、このような緑葉から変移していくグラデーションの紅葉も美しい。ちなみにこのもみじは、裏山から小さい苗の時に移殖したものです。もう大木になりました。
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