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2010年11月23日 (火)

食料自給率40%という怪しげな数字がまたTPPで出てきたぞ

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「TPP時代」の到来と共に、「食料自給率」という分かったような分からないような数字がまた大きな声で叫ばれ始めました。

私、この食料自給率という概念自体にあまり意味がないと思うようになって久しいのです。その最大の理由は、農水省の言う食料自給率は、カロリーベース算定だからです。

このカロリーベース食糧自給率が、「日本農業を守れ」の数字的根拠で出てくるから困ります。もし、この根拠が崩れたら一転して日本農業なんか知らないよ、となるんでしょうか。

私はこのカロリーベース算定方式は、統計の取り方としてあまりに恣意的であるために、今の日本農業の実態を映し出していないと思っています。この算定方式は、あくまでもカロリーベースなために、カロリーが低い作物はいくら国内自給率が高かろうと,総合食料自給率には反映されないという致命的な欠陥をもっています。 ですから、果物の糖度が高い年や、砂糖が豊作の年には食料自給率が高めに出るという馬鹿なことになります。

米と並ぶ重要な品目であるはずの野菜が、まったくこの統計数字に反映されていないのです。

野菜は6割以上を国内で自給しています。この6割という数字は奇しくも、販売ベース食料自給率とほぼ同一です。また、私の家業である畜産に至っては、ケンモホロロの扱いです。

畜産の食糧自給率上の数字は、もはや失笑するしかないほど不当に低いといえます。たとえば、鶏卵などは96%の国産自給率を持ちながらも、わずか5%しかカウントされていない有様です。豚肉も同様でほとんどノーカウントといった扱いを受けています。

いわば、私たち畜産農家は、この日本での自給率に限っていえば、「国内に存在しない」のも同然ということになります。

しかし、これはいくらなんでもバーチャルじゃないかと思われませんか?フードアクションジャパンのCMで石川遼クンが「ボクは自給率60%」なんて言ってますが、君がいくら国産の野菜や卵、豚肉を食べようとほとんどノーカウントなんだぜ。

じゃあ、なにを食べたら石川クンの自給率が上げられるか?そう沖縄産砂糖ですよ。ですからご飯には砂糖をたっぷりまぶして食べて下さい。農水省のお役人が泣いて喜びますよ。

沖縄の農民も野菜畑など潰して、自給率向上のためにサトウキビをもっと植えて下さい。ついでにタンカンなども糖度が増す取り組みをすれば、自給率向上、めでたしめでたし。むしろ、私には沖縄県の食料の自立は、米をしっかり作ることだと思うんですがね。減反で農水省が許しませんか。

あれぇ?でもあのCMには野菜や畜産品も登場していたような・・・。今度しっかり見て、もし野菜、豚肉、卵が出ていたらおおらかに笑ってやって下さい。

さて悪タレはこのくらいにして、この畜産品が自給率に入らない理由は、農水省の「国産であっても飼料を自給している部分のみを自給率に参入する」という方針があるからです。

たしかに、国際的に数字を比較する場合は、穀物自給率を元に算定します。これはFAOも使う方法で、農水省もこの穀物自給率で計算をしていますので、その限りにおいては国際的な統計方法を採用しているとは言えます;

この時問題となるのはこの飼料自給率とは一体なんだ?ということです。

私たち日本人は牛の粗飼料の一部を除いて、ほとんどの飼料を外国に頼っています。それは過去ログでも記事にしました。日本畜産の致命的な欠陥であることは認めます。

その原因については、長くなりますので簡単にしますが、日本の風土が牧草を作るよりはるかにに米作りをすることに向いていたために、歴史的に牧畜ではなく、米作を主体に発展してきたからです。

うちの女房殿がかつてイギリスの汽車旅行をした時、車窓からは行けども行けどもなだらかな牧草地。30分で飽きるよ、とは彼女の感想。

こんな「異常な風景」は、日本ではありえません。褶曲に満ちた里山を中心に展開する農地、わずかな平地には、米と蔬菜が中心となる風土の特性があったわけですし、それを十二分に活かしたのがわが日本のお百姓でした。

日本の食生活は大きく洋風化していきます。その端緒となったのが学校給食のアメリカが過剰に作りすぎた小麦によるパンと、本来子豚の餌であった脱脂粉乳でした。私たち昭和30年代育ちは、なんのことはない米国の余剰放出の(しかも有償で!)豚のコロ用飼料で育ったというわけです。

アメリカ型食生活洗脳第1世代としては、まことに慙愧の念に耐えません。本来日本人の食生活になかった畜産が、木に竹を接ぐようにして発生していくわけです。

そのために日本の畜産はとてもいびつな形になってしまいました。欧米が、牧草地というバックヤード(後背地)が存在して畜産があるのに対して、それがなくて、畜産を作るということをやらかしたのです。

したがって、牛の粗飼料の一部を除く、ほぼすべてを外国、特にアメリカに依存せざるを得ませんでした。

好むと好まざるとを問わず、これが日本の伝統です。有機農業界に身を置く畜産屋の私など、年がら年中、ラジカルな食育運動家や有機農業者から、「加工畜産はやめてしまえ!」と言われて、農薬耐性がついたカメムシのようになっておりますです、はい。

ことほど左様に、国によってその農業のあり方は千差万別です。ヨーロッパと米国ですら大きく異なっています。ニュージーランドやオージーとアメリカとも違います。

例えばNZやオージーなどでは、牛肉、羊肉などは非穀物から作っています。なんせ放牧主体ですから。NZなんて放牧の羊や牛のほうが、人口より多いんですから(ほんとらしい)。それに対してアメリカは穀物飼育が主体です。

先進国間ですらこれだけ違うのに、まして発展途上国においておやです。穀物のように人間と競合する食料を家畜にやるはずもありません。

となると、飼料の自給率という概念自体が千差万別であって、穀物自給率一本の単純な尺度で計ることは不可能だということがおわかり願えたでしょうか。

FAO自身もこう言っているほどです。「飼料に関しての歴史的データは、摂取量のデータよりも信憑性に乏しい」。

要するに、こう言うことなのです。日本でカロリーベースの自給率計算は確かに可能です。しかし、それを外国と比較するとなると、一国ずつの飼料事情がまったく異なるために、統一された基準を作りようがないのです。

ですから、一見農水省が作った食料自給率を国際比較表の根拠自体がはなはだ危うい憶測の上に成り立っている、農水省制作の官製プロパガンダなのです。

次回も、もう少し食料自給率について続けます。

■写真 朝の北浦の河口ふきん。

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コメント

よく知りませんが、カロリーベースと言う計算方法は、日本独特のもので、欧米では、一般に使われないと聞いていますが、他国は、どういうデーターを発表しているのでしょうか?

りぼん様。そもそも食料自給率という概念そのもので農業の強弱を測定することをしているのは、日本と韓国くらいなものです。
EU諸国は食料自給率という概念そのものを採用していません。
たぶん日本には戦中の食料とエネルギー輸入を遮断されての飢餓という国民の経験がDNAのように残っているので、この食料自給率や食料安全補償という概念がすっと浸透したのではないかと思います。

かつて食料の多くを輸入に頼り、かつ潜水艦でシーレーンを破壊されても、
特に飢えなかった島国がヨーロッパにありましたな。
そのまま日本に当てはめるわけじゃないけど、数字ってわかんないなあ…。

ただ、アジア・アフリカなど人類自体が大幅に増えていることや、日本が決して金持ち国じゃなくなりつつあり、大豆やマグロで「買い負ける」ケースも出てきてる状況は考慮すべきでしょう。

「食料自給率」なる数字が、戦乱等によって海外から資源輸入が途絶えた時でも、純粋に国内で自給できる食糧の消費割合を意味するのだとしたら、40%はウソ八百ですね。日本の繁栄を支える自動車、電機等の製造業ですが、決して自動車や家電製品を自給しているわけではありません。原材料はすべて海外からの輸入です。
 米作にしても国内の原材料のみで生産されていると思っているのなら、それは実際に農業をやったことのないド素人です。トラクターやコンバインを動かすための石油、農業用ビニールシート、肥料、さらには灌漑用ポンプの電気などすべて、海外からの輸入です。
そもそも日本のエネルギー自給率はたったの4%であり、石油輸入がストップした瞬間、農作業用のコンバイン、米を運ぶトラックさらに炊飯器も壊滅です。
それを考えれば、「食料自給率」なる数字が砂上の楼閣に過ぎない、無意味な数字であることがわかると思います。

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