• 20241211-032939
  • 20241211-154712
  • 20241211-160322
  • 20241210-023508
  • 20241210-023758
  • 20241210-031101
  • 20241208-145048
  • 20241208-151315
  • 20241208-154842
  • 20241209-005811

« 宮崎口蹄疫事件その135 なぜ「早期出荷」を認めてしまったのか? | トップページ | 宮崎口蹄疫事件 その137 なぜ清浄性確認の過程で血清学的抗体検査をしなかったのか? »

2010年11月11日 (木)

宮崎口蹄疫事件その136  「ワクチン接種10㎞」はいくらなんでも乱暴だ

008_edited1

ワクチン接種の是非は別として、口蹄疫特別措置法が出来、即日施行され、そしてワクチン接種が5月22日に早くも開始されるという流れは、本当にめまぐるしいものでした。

口蹄疫特別措置法についてはこちらからご覧ください。http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/pdf/tokusoho_gaiyo_0618upd.pdf

法律というものは必ず周知期間というものがあって、その間に不満や疑問を出してもらって、それを丁寧にヒアリングするのが普通の法律施行のあり方です。

施行と同時に実施というのはいくらなんでも乱暴です。もちろん言うまでもなく、その理由は可及的速やかにワクチンを打って感染をくい止め、その間に殺処分をせねばならない焦燥感が防疫当局にありました。

しかし、この焦りが後々まで特に牛農家にしこりとして残ったことは確かでしょう。何がなんだかわからないうちに、感染がどこから来たのか、どこまで何が原因で拡がっているのかといった重要な情報も満足にない環境で、法律が出来ましたよ、これであなたの家畜を殺す法的根拠ができたので、ワクチン打って殺処分させて下さいでは、はい納得しましたという方がおかしい。

そしてその時に唐突に飛び出したのが「ワクチン接種10㎞」でした。ワクチン接種するということは、すなわち殺処分するということですから、この範囲にかかった農家はたまったものではありません。

そもそも「ワクチン接種10㎞」の科学的根拠はどこにあるのでしょうか?誰が言い出して、疾病小委員会でも検討されたのでしょうか?

5月18日に疾病小委員会は開かれています。そこで今回の事件のエポックとなる「ワクチンの使用が検討されるべき時期にきている」という答申が出てきます。しかし同時に疾病小委は、「その使用は慎重にされるべきである」という付帯を付けています。

疾病小委は「ワクチンをやってもいいよ。しかし、慎重にやりなさいね」と言っているわけです。

ところがそのわずか4日後に実施されたワクチン接種・殺処分は、いきなり「ワクチン接種10㎞」を実施し始めるのです。誰が、どこで、どのような手続きで政策決定したのかまったく判りません。

これは修辞疑問ではなく、ほんとうに情報がないのですから困ったものです。おそらくは農水省消費・安全局動物衛生課と、動物衛生研究所の派閥の誰か(たぶん寺門氏でしょうが)が協議したのでしょうが、まさに不透明の限りです。

もうとっくに忘れてしまったようですが、民主党が野党時代に言っていた「政策決定過程の透明化」がないがしろになっています。

こんな「識者に聞きました。決定したのは専門家です」という言い逃れに使われるだけなら、疾病小委員会など初めから作らねばいいのです。ここまでコケにされて疾病小委の人たちは怒らなかったのでしょうか。

それはさておき、韓国ではすっきりと殺処分の範囲は決められています。初動において半径500mです。

初めからそう決めておき、それに対する補償を5分の4などとケチイことを言わず、全額補償とし、休業補償などの再建費用まで視野に入れておけば、財産権の問題も含めて初動が取りやすかったと思われます。

それをまさに泥縄的に、口蹄疫が起きてから新法を作る、作るに当たっては現地農家の意見も聞かない、そして即日施行、あげくに疾病小委に諮りもせずに「ワクチン処分10㎞」と勝手に決めてくる、これで不満が残らないほうが不思議です。

このようなことは、確かに切羽詰まったところでのやむをえない判断であったというのは分からないでもありません。しかし、このようなことを「これだけが正しかったのだ」と言い、うやむやにしていくのなならば、今後口蹄疫が出ても潜行してしまうかもしれません。

なぜなら、「口蹄疫らしき家畜が出ました」と申告しようものなら、最悪の場合半径10㎞まで全殺処分される可能性があるからです。この恐怖は全国の畜産農家にしっかりと焼き付けられました。怖くて言い出せない。

自分だけのことならまだしも、ひとつの地域の畜産業を丸ごと壊滅させることになるわけですから、大いに悩むでしょうね。

私の経験したニューカッスル病の時は、届け出法定伝染病であるのに、ほとんどの農家が家保に届け出ず、夜に死んだ家畜を焼却して埋めていたと地元獣医から後に聞きました。

口蹄疫は2週間ていどで自然治癒してしまいます。致死率も非常に低い。それを発見した農家が隠蔽することも可能です。言い出したばかりに近隣の同業者から恨みの的になるより、そう考えてもおかしくはありません。

このようにして一度、発生が潜行してしまえば後は気がついた時には、地域丸ごと蔓延していたという悪夢となるかもしれません。

そうならないためにも、おかしいことはおかしいと言い、後の教訓として共有化していかねばなりません。単に届け出義務の厳罰化だけすればいいというのでは片手落ちです。

■写真 わが家の郵便ポスト。こう見るとまるでアイビーでも絡んでいるようですが、ただのカラスウリです(笑)。

« 宮崎口蹄疫事件その135 なぜ「早期出荷」を認めてしまったのか? | トップページ | 宮崎口蹄疫事件 その137 なぜ清浄性確認の過程で血清学的抗体検査をしなかったのか? »

口蹄疫問題」カテゴリの記事

コメント

半径10kmという数字には、科学的根拠はそれほどないでしょうね。韓国の半径500mであっても、科学的根拠があるとは思えません。ただ、ワクチン打つからには、範囲を決めないと実施できない。だから、移動制限10kmという範囲に倣っただけでしょう。
口蹄疫に関する数字(特に、距離)には、科学的な根拠がそもそもあるのでしょうか。そこまで、科学的な結論が出ているのでしょか。どう見ても、ざっくりとした経験値としか思えません。
それから、口蹄疫発生の届出の問題ですが、このことは、これから、きちんとルールを作らないと、いけないと思います。記事では、10km圏内殺処分の可能性に言及されていますが、これは、あくまで、最悪なシナリオで、疑わしい家畜がいたとき、一体どうするのか。特に、えびの市では、9月初頭、そういったことが実際にあったのですが。
疫病での人の心理に関しては、人の疫病だけでなく、家畜の疫病も同じであると、現役養豚家さんのブログにもありました。このこと、かなり的を射ていると思います。誰だって初発になりたくないという心理です。勇気とか正直とかいった生半可なことでは、片付けられない。
うちで、口蹄疫の症状を出している牛がいたら、届け出ますかといわれれば、口では、「はい」ですが、かなり、迷うでしょう。そして、荷造りをせねばならないでしょう。

リングワクチンは擬似患畜の増加の抑制とウイルスの蔓延地帯の拡大を一定の範囲でブロックするためだと思います。また大量に残っている擬似患畜の処分を追い付くための時間稼ぎもあると思います。半径10kmは処分が終えるまでに感染拡大を確実に抑えられる範囲と決めたと思います。最小より確実性を取ったと思います。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« 宮崎口蹄疫事件その135 なぜ「早期出荷」を認めてしまったのか? | トップページ | 宮崎口蹄疫事件 その137 なぜ清浄性確認の過程で血清学的抗体検査をしなかったのか? »