防疫体制作りにTPP対策費を使え!
「TPP時代」が来るという予感が、今、日本農業に暗い影を落としています。
ある意味、米はこう言ってはなんですが、その700%超の高関税は年中ヤリ玉に上がっていたのですが゛、今回は畜産も含めた自由化が行われるだろうという点が異なっています。
しかもそれが、日米FTAすら小さく見える環太平洋規模ですから、わが国農業が受ける影響は計り知れないものがあります。
ここで私がどうしても考えてしまうのが、口蹄疫防疫がTPP、EPA農業対策に含まれていないのではないかという疑問です。
現行では、農水省の念頭にあると思えません。TPPPは貿易問題、口蹄疫は防疫と局の縦割りで考えているはずです。また、残念ながら民主党政府に、口蹄疫を貿易問題と絡めて考える柔軟な発想があるとはとうてい思えません。
自由貿易圏において、防疫の水際作戦はほぼ不可能となるでしょう。観光客によるウイルス持ち込みすらコントロールできていないのに、農産品や外国人労働者流入などにまで及ぶ状況などどうかできるはずもありません。
現に、喉元過ぎればなんとやらで、もう地方空港での消毒マットすら姿が消えているではありませんか。こんな防疫意識でどうして自由貿易圏時代の海外悪性伝染病を防げるのですか。
不吉なことを言うなと言われそうですが、私は口蹄疫ウイルスは未だ潜在していると考えています。あそこまで拡大した伝染が終息宣言をもって消滅したと思うほうが危険です。
仮に環境中に残存するウイルス検査が陰性と出たとしても手放しで安心できません。それは検出値以下だったかもしれないからです。ですから、私たちは口蹄疫ウイルスが「常にある」という前提に立って考えるべきなのです。
それは宮崎県内のみならず、県外に持ち出されていても不思議ではありません。つまり宮崎口蹄疫事件は遍在するのです。
その上に、畜産の門戸開放をしてしまえばいったいどうなるのか、民主党政府の無思慮ぶりに私は暗澹とする思いです。
「TPP時代」にこそ、二度と口蹄疫などの悪性伝染病を起こさせない防疫体制の徹底化が要求されます。
考えておくべきことは、現行の家伝法や防疫指針の枠内でも山ほどあります。ざっと書き出してみましょう。落としたものも多々あると思いますのでご教示ください。
①誰が責任を持って初動を命令指揮するのか。
②通報の迅速化はどうしたら出来るのか。
③通報者保護はどうあるべきか。
④遺伝子検査施設の拡充はどのようになされるべきか。
⑤簡易検査キットの導入は何をどのていど配置すべきか。
⑥生産者への発生通知の迅速化はどうあるべきか。
⑦殺処分はどの範囲で、何時間以内にするのか。
⑧そのための人員確保と資材はどう手当てするのか。
⑨発生動向調査はどのようにどの範囲でなされるべきか。
⑩緊急の応援体制はどうあるべきか。
⑪民間獣医師や共済会獣医師との連携はどのようにあるべきか。
⑫殺処分の方法をどうするのか。
⑬埋却地の準備は誰の責任でどのような規模で用意しておくのか。
⑭殺処分に伴う補償は現行でよいのか。
⑮各級現地対策本部のあり方はこのままでいいのか。
⑯交通の遮断、消毒ポイントの設置はどうするのか。
⑰警察、消防、消防団、自治会などとの連携体制はどうあるべきか。
⑱他県への連絡、連携はどうあるべきか。
初動段階でもまだまだありますが、今日はこのくらいで。
いずれにせよ、このような今回のことを教訓にした日本の口蹄疫マニュアルの徹底的な見直し作業が必要です。
そして国レベルの防疫体制、県レベルの防疫体制、地域レベルの防疫体制、個人農場レベルの防疫体制に、国や自治体がいかにコストを支出していくのかが問われています。
ここにこそ行政はTPP対策費を投入すべきです。
この防疫こそが、畜産にとってのTPP対策の重要な課題なのです。これなくして、自由貿易圏構想など机上の空論にすぎません。
■写真 もうすっかり紅葉の真っ盛りです。
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コメント
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OIEは、
▼国家を一つの単位として考える
▼何らかの地域を一つの単位として考える
の両方、あったと思います。TPPが、国家を超えて、関税を撤廃する方針であるのなら、複数の国家を一つの地域として考えることに繋がる気がします。つまり、TPP(環太平洋)に属する国の一つで、口蹄疫が発生した場合、その国だけではなく、TPPに属する国家すべてが、非清浄国となる。
そういった概念の導入も今後出てくるのではないでしょうか。そうなれば、TPPに属する国家間の貿易(防疫)の在り方も、より呉越同舟的な状態に変わってくることは必至ですが。
投稿: Cowboy | 2010年11月22日 (月) 14時20分
OIEの地域主義は、EUを一つの国家と考えた時に旧国家単位での国家主義が地域主義に変わったものと考えます。
その点で考えれば、TPPはあくまで経済的繋がりであるので、OIEの地域主義が馴染むかどうかは不透明な気がします。
自由貿易協定は、第一義的には、自国の経済発展のために、その国が取りたい政策であり、根本的には、自国の繁栄という国家エゴが存在するのではないでしょうか?
韓国がTPPに積極的に参加するのも、自国だけでは発展が見込めない(人口等の問題)為に、どうしても海外にその活路を見出す必要があった為であることは皆さんもご存じかと思います。
そのような国家戦略の上に、しっかりとした国内対策(農業に対する補償等)を行っています。
一方、日本は、どうひいき目に見ても、何の国家戦略を感じません。今回のTPP参加表明も、場当たり的感がぬぐえず、一番のネックになるであろう農業に対してのビジョンも示されないままです。
国民の問題なのか?国家の問題なのか?
本当に、第3の開国と言われ所以が、大河ドラマの坂本竜馬を見ていて、良くわかるこの頃です。
投稿: 一宮崎人 | 2010年11月22日 (月) 16時34分
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投稿: bet365 | 2010年11月27日 (土) 16時31分