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2010年12月

2010年12月31日 (金)

韓国口蹄疫 殺処分数55万頭

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今年最後の記事も口蹄疫で終わることになってしまいました。残念です。

韓国口蹄疫は、江原道洪川郡で新たに1万3千頭の大規模養豚場にウイルスが侵入し、たことが判明しました。11月28日以来再発が続いている韓国口蹄疫は、殺処分数が54万9783頭にも達しました。

口蹄疫防疫の難しさを、私たちは宮崎口蹄疫事件で知りました。それは牛・豚混合感染だということです。これは私の家業である養鶏と比較してみれば分かります。

たとえばニューカッスル(ND)にしても、高病原性トリインフルエンザにしてみても、しょせんは鶏の伝染病です。厳密にはトリインフルは、豚とあるいはヒトに感染拡大する可能性はありますが、原則は鶏の病気にとどまります。

私たちは養鶏の範囲で守備を固めればいいことになります。しかし、同一地域で混在して飼われていることの多い牛、豚ではそうはいきません。

畜産とひとくくりにされていても、牛と豚ではあたかも「異業種」のようです。そして異業種間での共同の防疫は沢山の困難につき当たることになります。

防疫に対する温度差、家畜個体の価格差、経営規模の違い、経営の回転率の違い、出荷系統の違いなどは、防疫や殺処分に対する感じ方の違いとなって現れました。

そして何より豚の生物的特性として、口蹄疫ウイルスを千から最大3千倍にまで増幅して伝播させてしまうことです。このため、いったん牛、豚が混在している地域に口蹄疫が侵入すると、豚が感染を急速に増幅し続けてしまいます。

ですから、いったん地域で豚にウイルス侵入を許せば、ほぼ間違いなくその地域全体は牛、豚もろとも感染していくことになります。

韓国においてはこの豚への口蹄疫ウイルスの侵入は、既に各地で見られていますが、特に注目せねばならないのは25日の慶尚北道の種豚農場への感染です。もう既に、相当数のウイルスを潜伏させた豚が種豚として各地に拡散していっていると覚悟せねばなりません。時限爆弾です。

江原道洪川郡の1万3千頭の大規模農場への侵入と、この種豚との関わりは不明ですが、なんらかの関係があるのかもしれません。

韓国政府が25日からようやくワクチン接種を開始しました。しかし、在庫ストックの関係からか、あるいは防疫作業の遅滞を嫌ってか牛、豚同時接種せねばならないにもかかわらず、牛にのみの接種に限定されるという明らかな誤りをおかしています。

そして、慶尚北道の第1例が出たアンドンでは全市、慶尚北道イエチョン、京畿道パジュ、コヤン、ヨンチョン郡では、発生農場から10㎞圏内とするなど、ワクチン戦略が曖昧です。

その上に、ワクチン接種家畜の出荷まで認めてしまっています。他国の事情をあれこれ論評するのは差し控えたいところですが、正直に言って、韓国政府がなにを考えているのか理解に苦しみます。

また、情報が少ないので内情は分かりませんが、一般人の集会などの規制はあるのでしょうか。年末から正月で、一族で祝う風習のある韓国でこれを規制することは難しいのは分かりますが、宮崎県においては高校球児の大会応援すら自粛したのです。宮崎県人は他県に行くことすら憚られたのです。

どなたかが言っていましたが、「宮崎は引きこもりでしのいだ」のです。宮崎の人々には、頭が下がります。

韓国政府は、1日1万頭とも言われる高い殺処分能力と、従来の疫学調査の速度に頼りすぎた結果の陥穽に陥ったように思えます。

韓国は酷寒の地です。韓国北部の京畿道、江原道などは、平均最低気温がこの12月は-4℃、1月は-7℃、2月は-5℃の地域です。地盤は完全に凍結しており、埋却作業も熾烈を極めると思われます。

李明博大統領も各部署の業務報告会で「殺処分に当たる人員に特別な配慮が必要だ」と指示しました。

正月も返上して口蹄疫と闘う韓国の防疫関係者と、畜産農家にほんとうの新しい年がくるのはいつのことなのでしょうか。がんばろう、韓国!

さて、今年も沢山の方にお世話になりました。特に宮崎県の皆様、ほんとうにご苦労さまでした。皆様には人間の強さと涙の熱さを教えて頂きました。宮崎県でくいとめられたことを、後世は偉業と評価することでしょう。一日も早い再建をお祈りしております。

皆様がよいお年をお迎えになられることを心より祈念しております。

                                         濱田拝

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■ハンナラ党の鄭雲天(チョン・ウンチョン)口蹄疫対策特委委員長は26日、口蹄疫の拡散と関連し、「検疫検査庁を設立し、先進国型の常時家畜防疫システム構築を推進する」と述べた。

  鄭委員長はこの日、ソウル汝矣島(ヨウィド)党本部で記者懇談会を開き、「現在、検疫業務は獣医科学検疫院・植物検疫院・水産物品質管理検査員に分れているため、統合する必要がある」とし、このように明らかにした。 また「国民が口蹄疫汚染国に行ってくる場合に対応し、空港から食卓まで一連の過程を徹底的に管理できる機構がなければならない」と付け加えた。

  鄭委員長は「農林水産食品部では非常事態への対応がよくできている」と述べながらも「口蹄疫が広がっているだけに、政府全体レベルで対策を準備することを求める」と明らかにした。 さらに畜産農家を支援するため▽家畜伝染法予防法改正案の国会本会議処理▽畜産農家牧場用地の譲渡税免除▽畜舎建築に対する付加価値税免除--などを推進すると述べた。

  こうした中、京畿道(キョンギド)南部の驪州郡(ヨジュグン)でも口蹄疫が発生した。 京畿道は全国の肉牛の10%、乳牛の40%、豚の20%ほど飼育している。 特に驪州と安城(アンソン)・華城(ファソン)など京畿道南部地域には道内の飼育家畜の約70%が集中している。 江原道(カンウォンド)でも横城(フェンソン)に続き、最前方地域の鉄原(チョルウォン)にも25日、口蹄疫が発生した。

  慶尚北道(キョンサンブクド)安東(アンドン)・醴泉(イェチョン)、京畿道坡州(パジュ)・高陽(コヤン)・漣川(ヨンチョン)など5地域で25日から実施中の予防ワクチン接種は順調に進んでいる。

  口蹄疫が初めて発生し、被害が大きい安東は全地域、残りの地域は口蹄疫発生農家を中心に10キロ以内の韓牛が接種の対象。 予防ワクチン接種対象の家畜は▽安東1446農家・1万7000頭▽醴泉4106農家・4万7000頭▽漣川396農家・1万8000頭▽坡州723農家・3万1000頭▽高陽345農家・2万頭--で、計7016農家・韓牛13万3000頭余り。

  また政府は驪州郡加南面(カナムミョン)と北内面(ブクネミョン)、利川市大月面(イチョンシ・デウォルミョン)を中心に半径10キロ以内(京畿道楊平の一部を含む)1600農家の牛5万6000頭に対しても追加で予防ワクチンを接種することにした。

  一方、李明博(イ・ミョンバク)大統領は「畜産農家をできる限り支援するべきだ」と指示したと、洪相杓(ホン・サンピョ)青瓦台(チョンワデ、大統領府)広報首席が伝えた。 李大統領は任太煕(イム・テヒ)大統領室長から京畿道第2庁舎訪問の結果について報告を受けた後、このように指示した。
(中央日報12月27日)

■先月29日、慶尚北道安東(キョンサンブクド・アンドン)で初めて発生した口蹄疫が発生から1ヵ月が経ち、27日も、仁川市西区梧柳洞(インチョンシ・ソグ・オリュドン)の養豚場や慶尚北道靑松郡眞寶面理川里(キョンサンブクド・チョンソングン・ジンボミョン・イチョンリ)、京畿道楊平郡楊平邑新愛里(キョンギド・ヤンピョングン・ヤンピョンウプ・シンエリ)の韓国牛農場で、口蹄疫陽性と判明した。

これで口蹄疫は、4市道や26市郡区に拡大し、27日現在、計44万3442頭が殺処分された。

●忠清にまで広がるか

防疫当局は、京畿道驪州(ヨジュ)や楊平、利川(イチョン)などの京畿道南部地域で相次いで口蹄疫が発生したことを受け、すでに口蹄疫ウイルスはこの地域に蔓延している可能性が高いと見ている。特に、驪州の口蹄疫発生農場と利川の予防殺処分農場から、抗体の陽性反応が出たことに注目している。通常、口蹄疫ウイルスは感染期間が短ければ抗原からだけ陽性反応が出る。1、2週間以上経てば、抗原と抗体から全て陽性反応が出る。これを受け、国内乳牛の最大密集地域である京畿南部では、すでに口蹄疫ウイルスが相当期間、広範囲に渡り、広がっているという推測ができる。

農林水産食品部(農食品部)の関係者は、「従来の5ヵ所のほか、京畿南部の3ヵ所をワクチン接種地域に指定したのも、驪州と利川から、抗体の陽性反応が出たためだ」とし、「同地域は交通の要地である上、忠清地域と接しており、大変懸念している」と説明した。

京畿道北部地域である抱川(ポチョン)や金浦(キムポ)、高陽(コヤン)などで口蹄疫が発生したため、相対的に防疫は京畿北部地域に集中させた。京畿道地域は14日、京畿道楊州(ヤンジュ)と漣川(ヨンチョン)から口蹄疫が発生するまで、1ヵ所も詰め所が設置されなかった。

防疫当局の関係者は、「14日を前後にし、口蹄疫ウイルスが京畿道以外の地域へと伝播されたのでは、と懸念している」と話した。実際27日、忠清北道忠州市陽城面中田里(チュンチョンブクド・チュンジュシ・ヤンソンミョン・チュンジョンリ)の韓国牛農場から、口蹄疫疑いの申告があり、防疫当局は緊張している。陽城面は口蹄疫が発生した驪州や江原道原州(カンウォンド・ウォンジュ)と隣接している。これまで、忠清北道では、口蹄疫による疑いの申告は1件もなかった。

●「最長期間の発生」を更新するか

これまで発生した4回の口蹄疫のうち、最も期間が長かったのは02年の52日間だった。しかし、発生から1ヵ月目を迎える今回の口蹄疫が、今のようなスピードで拡散することになれば、最長期間の発生記録を塗り替える可能性も高い。今回の口蹄疫は、発生地域や被害額においてもすでに、02年の口蹄疫規模を上回っている。

02年の口蹄疫は、発生地域が2道と4市郡で、殺処分規模も計16万155頭だった。被害額も同様に今回の口蹄疫の現在までの被害額(約4500億ウォン)が02年(1434億ウォン)より圧倒的に多い。

一方、農食品部は同日の業務報告で、慶尚北道や京畿、江原道地域の口蹄疫の拡散と関連した大まかな疫学関係を明らかにした。防疫当局は、京畿道坡州(パジュ)にまで広がった口蹄疫のウイルスは、飼料の出荷車両を通じ、高陽(コヤン)と楊州に伝播されたものと見ている。さらに、京畿道周辺を走り回る畜産関連車両が、加平(カピョン)や高陽、漣川はもとより、江原華川(ファチョン)まで、、ウイルスを伝播させた。

「韓国牛のメッカ」である江原橫城(フェンソン)は、加平の発生地域に立ち寄った稲わら供給車両によって、口蹄疫ウイルスが伝播されたと防疫当局は見ている。
(東亜日報12月28日)

2010年12月30日 (木)

韓国口蹄疫 韓国政府警戒レベルを最高度に引き上げる

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日本での韓国口蹄疫の報道は「日本農業新聞」を除き皆無に等しく、またあったとしても非常に貧弱な内容です。電波媒体に至ってはまさにゼロであり、日本のメディアのレベルが改めて問われます。

日本メディアは韓国口蹄疫が日本に無関係だとでも思っているのでしょうか。日本全国の畜産農家がかたずを呑んで見守っていることを彼らは知るべきです。

ちなみに、年末旅行は韓国が第1位で約2万人が訪れます。官庁もメディアもなんの注意も喚起していません。

韓国のメディアも自国の大災害な割りには低調で、トップ記事はまぁどうでもいいようなぬるい記事ばかりです。

宮崎口蹄疫を知っている私たちにはなんともはがゆいことばかりです。せめて農水省はどうかといえば、さっさと仕事納めをしてしまったためか、まったく更新されていない有り様です。

農水省は危機感を持って仕事をしているのでしょうか。それとも、もうこたつでミカンでもむきながらボーナスの使い道でも考えているのでしょうか。

さて、韓国政府は警戒レベルを「深刻」に上げ、「中央災難安全対策本部」を設置しました。これは関係閣僚で作るもので、日本の内閣府にあたま行政安全部に設置され、同長官が本部長に就いていています。

国防部(防衛省に相当)、国土部、農林水産食品部の関係省庁と共に防疫作戦をすることになります。

このあたりの韓国の国家危機管理体制はさすがのものがあります。農水省動物衛生課だけで対応したにも等しいわが国とは次元がちがうものを感じます。

また、今まであった「中央口蹄疫防疫対策本部」は「口蹄疫収集中央収拾本部」に改組され、ワクチン接種や農家支援などの防疫業務に特化します。

一日も早い終息をお祈りしています。ガンバレ、韓国畜産農家!
日本の畜産農民は君らの味方だ!

以下、韓国メディアを中心としてスクラップ゚いたしました。

゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■ 口蹄疫警報「深刻」に格上げ、災難対策本部を設置へ

政府は口蹄疫が5大市道に拡散したことを受け、危機警報の段階を「警戒」から最上位段階の「深刻」に格上げさせた。汎政府レベルの「中央災難安全対策本部(中対本)」も立ち上げた。

政府は29日午前、政府中央庁舎で口蹄疫関係機関対策会議を開き、このように決定した。家畜の伝染病によって、政府の危機対応警報が深刻段階へ格上げされたのは初めて。このため、政府は行政安全部(行安部)、農林水産食品部など関係省庁の公務員が参加する中対本(本部長=孟亨奎行安部長官)を立ち上げた。

中対本は中央政府と地方自治体の公務員はもちろん、警察力まで動員し、口蹄疫防疫に取り組むことになる。中対本は口蹄疫が発生していない自治体に対しても、発生地域と同一のレベルで、口蹄疫防疫対策を推進していく計画だ。

また、全国244の自治体も、市道知事および市長・郡首・区役所長を本部長にする「地域災難安全対策本部」を設置し、口蹄疫の拡散に対応することにした。自治体対策本部は状況発生に応じて埋没、移動統制、消毒などの活動を展開する。

孟長官は同日午後、16の市道知事と映像会議を開催した後、忠清北道(チュンチョンブクド)に設置された忠北災難安全対策本部と忠州市(チュンジュシ)の防疫現場を訪れ、関係者を励ました。

同長官は、「政府が口蹄疫拡散防止に向け、政府をあげた諸対策に乗り出すため対策本部を設置しただけに、良い結果が出ると期待している」とし、「自治体を中心に、防疫や移動統制の強化などの案を、積極的に推進するように」と訴えた。
(韓国・東亜日報 12月30日)

■口蹄疫の拡散に歯止めがかからず、政府が危機対応警報段階を最高レベルで高めることにした。

  匿名を求めた農林水産食品部(農食品部)の関係者は28日、「口蹄疫に対する危機対応警報を現在の‘警戒’から最高レベルの‘深刻’に高めることにした」と明らかにした。政府は29日、関係部処合同会議でこれを確定した後、劉正福(ユ・ジョンボク)農食品部長官と孟亨奎(メン・ヒョンギュ)行政安全部長官の合同談話形式で発表する予定だ。

  政府の危機対応警報が「深刻」段階に引き上げられたのは、昨年の新型インフルエンザ拡散当時以来。家畜の伝染病のため「深刻」警報が発令されるのは今回が初めてだ。

  このため政府は中央災難安全対策本部を設置し、政府全体レベルで対応に乗り出す方針だ。全国の行安部公務員と警察を動員し、口蹄疫の防疫と伝播防止作業に取り組む。農食品部レベルの防疫対策に比べて、はるかに多くの人材と組織が動員されるということだ。口蹄疫が発生していない各地方自治体も対策本部を構成し、防疫体制を整える。また海外旅行客に対する検疫が強化され、予防接種対象地域が拡大する。

  慶尚北道から始まった今回の口蹄疫はこの日、忠清北道(チュンチョンブクド)まで広がった。農食品部は忠清北道忠州市仰城面(チュンジュシ・アンソンミョン)の韓牛から口蹄疫ウイルスが検出されたと明らかにした。これで口蹄疫発生地域は5広域市・道の29市・郡に増えた。

  一方、政府は28日、青瓦台(チョンワデ、大統領府)で李明博(イ・ミョンバク)大統領の主宰で国務会議を開き、「災難及び安全管理基本法改正案」を議決した。改正案は家畜伝染病の拡散を防ぐための緊急対応と復旧に災難管理基金を使えるようにしている。
(韓国・中央日報12月30日)

■ ハンナラ党の鄭雲天(チョン・ウンチョン)口蹄疫対策特委委員長は26日、口蹄疫の拡散と関連し、「検疫検査庁を設立し、先進国型の常時家畜防疫システム構築を推進する」と述べた。

  鄭委員長はこの日、ソウル汝矣島(ヨウィド)党本部で記者懇談会を開き、「現在、検疫業務は獣医科学検疫院・植物検疫院・水産物品質管理検査員に分れているため、統合する必要がある」とし、このように明らかにした。 また「国民が口蹄疫汚染国に行ってくる場合に対応し、空港から食卓まで一連の過程を徹底的に管理できる機構がなければならない」と付け加えた。

  鄭委員長は「農林水産食品部では非常事態への対応がよくできている」と述べながらも「口蹄疫が広がっているだけに、政府全体レベルで対策を準備することを求める」と明らかにした。 さらに畜産農家を支援するため▽家畜伝染法予防法改正案の国会本会議処理▽畜産農家牧場用地の譲渡税免除▽畜舎建築に対する付加価値税免除--などを推進すると述べた。

  こうした中、京畿道(キョンギド)南部の驪州郡(ヨジュグン)でも口蹄疫が発生した。 京畿道は全国の肉牛の10%、乳牛の40%、豚の20%ほど飼育している。 特に驪州と安城(アンソン)・華城(ファソン)など京畿道南部地域には道内の飼育家畜の約70%が集中している。 江原道(カンウォンド)でも横城(フェンソン)に続き、最前方地域の鉄原(チョルウォン)にも25日、口蹄疫が発生した。

  慶尚北道(キョンサンブクド)安東(アンドン)・醴泉(イェチョン)、京畿道坡州(パジュ)・高陽(コヤン)・漣川(ヨンチョン)など5地域で25日から実施中の予防ワクチン接種は順調に進んでいる。

  口蹄疫が初めて発生し、被害が大きい安東は全地域、残りの地域は口蹄疫発生農家を中心に10キロ以内の韓牛が接種の対象。 予防ワクチン接種対象の家畜は▽安東1446農家・1万7000頭▽醴泉4106農家・4万7000頭▽漣川396農家・1万8000頭▽坡州723農家・3万1000頭▽高陽345農家・2万頭--で、計7016農家・韓牛13万3000頭余り。

  また政府は驪州郡加南面(カナムミョン)と北内面(ブクネミョン)、利川市大月面(イチョンシ・デウォルミョン)を中心に半径10キロ以内(京畿道楊平の一部を含む)1600農家の牛5万6000頭に対しても追加で予防ワクチンを接種することにした。

  一方、李明博(イ・ミョンバク)大統領は「畜産農家をできる限り支援するべきだ」と指示したと、洪相杓(ホン・サンピョ)青瓦台(チョンワデ、大統領府)広報首席が伝えた。 李大統領は任太煕(イム・テヒ)大統領室長から京畿道第2庁舎訪問の結果について報告を受けた後、このように指示した。
(韓国・中央日報 12月27日)

■口蹄疫:忠北・忠州でも発生

 慶尚北道、京畿道、江原道、仁川広域市に次いで28日、忠清北道忠州市でも、牛や豚の伝染病である口蹄(こうてい)疫が発生した。口蹄疫が国土中央に広がる中、全国的に拡大する懸念が高まっている。

 農林水産食品部はこの日、「忠清北道忠州市仰城面中田里の韓牛(韓国伝統の肉牛)農家で、鼻の頭がただれ、よだれを垂らすなど、口蹄疫の症状がみられる韓牛を発見し、殺処分後に精密検査を行った結果、陽性と判定された」と発表した。この農家は最近口蹄疫が発生した京畿道利川市と14キロ、江原道原州市文幕邑から17キロ離れている。防疫当局は、この韓牛農場から半径500メートル以内にある牛・豚農家の家畜270頭を殺処分した。

 農林水産食品部はさらにこの日、江原道春川市東面、洪川郡洪川邑、横城郡隅川面などの韓牛農家と、慶尚北道栄州市長寿面の養豚場など4カ所で新たに口蹄疫が発生したと発表した。前日、大田西区鳳谷洞の韓牛農家から口蹄疫の疑いがあるという通報があったが、これは陰性だった。

■出国ラッシュ:中部国際空港は30日ピーク

 中部国際空港(愛知県常滑市)で29日、年末年始を海外で過ごす人たちの出国ラッシュが始まった。空港会社は出国ピークが30日、帰国ピークは1月3日と予想。今年はピーク時期を避けて旅行を計画する人が増え、例年と比べて出入国が分散しているという。

 29日は約7000人が出発。国際線出発ロビーは午前中から、大きな荷物を持った人たちで混雑した。家族5人で3泊4日のタイ・バンコク旅行に出かける名古屋市昭和区の女性(53)は「タイ式ボクシングを見て、象にも乗りたい」と話していた。

 空港会社によると、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突問題などで中国旅行が敬遠されたことなどが影響し、年末年始(23日~1月5日)の国際線利用者は前年比9.4%減の15万9000人。旅行先は韓国が最も多く1万9500人。次いで東南アジア、台湾・香港の順だという。
(毎日新聞 12月29日)

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2010年12月29日 (水)

韓国口蹄疫拡大止まらず  47万頭に!

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ニッポン農業一般常識の答え合わせをしようと思いましたが、韓国で感染拡大が続いている記事に差し替えます。

もはやコメントする気力も失せます。この拡大ぶりでは100万頭に達するかもしれません。ワクチン接種の不徹底が響いています。南部地域にi侵入しないことを祈るのみです。

韓国畜産農家に海峡を超えて激励の言葉を送ります。

日本政府は国際空港のある仁川での拡大を受けて、真剣に韓国への渡航自粛を検討すべき段階に入りました。

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【ソウル=箱田哲也】韓国で家畜の伝染病、口蹄疫(こうていえき)がすごい勢いで広がっている。韓国の農林水産食品省の調べでは、28日午前までに牛や豚45万頭以上が殺処分された。韓国政府は拡散防止のため、関連法の改正を急ぐが、発生数は連日増え続け、沈静化の兆しすら見えていない。

 「法を改正してでも、防疫に関する国民の認識を変えねばならない。私も海外から戻れば、率先して検査を受ける」。韓国大統領府によると、李明博(イ・ミョンバク)大統領は28日、年内最後の閣議でこう述べ、拡散防止への協力を訴えた。

 今回の口蹄疫騒動は、11月下旬に慶尚北道・安東で見つかったのが最初だった。だが、簡易検査で陰性と出たことなどから対策が遅れ、安東から人や車が自由に出入りするうちに、またたくまに広がった。

 韓国国内は先月、大延坪島(テヨンピョンド)が砲撃を受けて以来、ほとんどの報道が北朝鮮関連で染まった。だが、北朝鮮の軍事挑発がその後おさまっていることもあり、トップニュースは猛威を広げる口蹄疫問題に入れ替わった。

 政府によると、28日午前現在、畜産農家から88件の申告を受け、うち60件が口蹄疫と確認された。日本の県にあたる道や、規模の大きい広域市のうち、発生が確認されたか疑いが強い地域は、韓国本土の約半分を占める。

 中部の忠清北道では殺処分された牛から陽性反応が出た。政府は発生地域に入れていないが、韓国メディアは、畜産が盛んな忠清北道にまでついに広がったことで、「初動のまずさが招いた人災だ」などと批判を強める。また、一部地域では当初、埋却作業にあたっていた兵士が吐き気などを訴え、これに兵士の親が抗議して撤収させるなど、ちぐはぐな対応が指摘されている。

これまで最も被害が大きかったとされる2002年でも殺処分は約16万頭。現段階で45万頭を殺処分した今回は、はるかに悪化した事態だ。

 政府は25日から、2000年以来というワクチン接種に踏み切った。韓国は今年春の口蹄疫発生を比較的早期に抑え、9月に国際獣疫事務局(OIE)から「清浄国」と認定されたばかり。清浄国はワクチン接種をしなければ3カ月間、接種すれば半年間、口蹄疫の発生が確認されない場合に付与されるが、猛威の前に選択肢はなく、「早く清浄国としての名誉回復を」(李大統領)と実施した。

 安東で最初に口蹄疫が発生した詳しい原因は解明されていないが、海外渡航者がウイルスを持ち込んだ疑いが強まっている。このため、韓国政府は、家畜伝染病予防法の改正で流入防止を図る。

 畜産農家自身が家畜病の発生国を訪問する際、出入国時の届け出や検査、消毒を義務化。これを怠れば、1年以下の懲役または500万ウォン(約36万円)以下の罰金を科すほか、外国人労働者の採用を届け出なければ、500万ウォン以下の科料に処すよう、同法の改正を急いでいる。
(朝日新聞 2009年3月13日更新)

2010年12月28日 (火)

ニッポン農業一般常識テスト 答え合わせ第1回 食料輸入額

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皆さん、なかなか苦しんでおりますな (*^ω^*)ノ彡(←今ごろ年甲斐もなく絵文字にハマっているワタクシ)。

それにしても、いかにわが農水省の刷り込みがスゴイか分かりますなぁ。

なんせ農水省の「農業保護論」は、ひたすらニッポン農業衰亡論一色ですから。例の悪名高いカロリー自給率40%から始まって、高齢化、農地の狭隘、農業機械の非合理的な装備・・・と来ます。

その上に、コメの関税800%弱などと聞かされては、たぶんニッポンの農産物って高関税でブロックされてんとちゃう、それってメチャ消費者に損じゃん(←ああ、若者言葉を使ってしまった;)

農水省、「保護」したいのか、それともオレたち農業者をコケにしたいのかつうの。「保護」とやらをするためには、ともかくニッポン農業がひたすら哀れな弱者でなくてはならんのでしょうな。

農学部出身の山形さん、現役農家cowboyさん(早くよくなってくださいね)のお答えもさることながら、青空様の若い高教育の諸君らの回答を興味深く読ましていただきました。

いや、ご安心ください。実はこの倍の10問形式で某国立大学農学部の現役農学部生に出題したところ、正解率なんと1割! 全問ハズレも続出。( ̄◆ ̄;)

入試で私に農学部の試験問題書かせたら、えらい低い合格点となることが発覚してしまいました。それにしても、なにを農学部教授たちは教えているいるのでしょうか。

では、お待たせしました。ニッポン農業一般常識クイズの答え合わせをすることにしましょう。

●[ニッポン農業一般常識クイズ その1]
日本の農業は食料自給率が4割だから、6割は外国から輸入しているような食料輸入大国である。イエスかノーか?

答えはノー。ちょっと驚きましたか?

農産物輸入額は先進5カ国で順に大きいほうから並べてみましょう。根拠はFAO2007です。

まず、輝ける農産物輸入額トップは、ジャ~ン、なんと747億ドルで米国!米国は世界の穀倉というイメージが強烈なので、おどろかされる順位です。

第2位は、なんと703億ドルのドイツ!ドイツ農業大好きの篠原孝副大臣にお聞かせしたい順位です。ドイツもイメージとしては拡がる田園、広大な牧草地、おお麗しのドイツの黒土、というイメージがあるのでびっくりします。

ついで、英国が535億ドルで第3位に入ります。よく中学校あたりの社会科の先生から習いませんでしたか、「英国は自給率を回復したが、日本は大きく落ちた。英国エライ、日本ダメ」と、わが国となにかと比較される英国です。

しかも、英国の人口は日本の半分以下の6千万人強ていどしかいないのですよ。それでいて食料輸入額はわが国より多い。

そして惜しいことに銅メダルを逃して、わが国が460億ドルで第4位に滑り込みます。

第5位には445億ドルのフランスが入ります。あのヨーロッパ最大の農業大国と自他ともに認めるフランスの食料輸入額とどっこいわが国は変わらないことになります。その差、わずかに14億ドル!

なにかと言えば、経済評論家や政治家たちが言っていませんか。
「日本の食料は自給率4割だから6割を外国に依存している」だの、「世界一の食料輸入国」だの、果ては「世界の食料と水をあさり尽くしている貪欲国家日本」などという自虐的アジテーションまがいのことを言う人すらいます。

あの人たちはちゃんとデーターを調べてモノを言っているのかしら。日本は先進各国の中で、しごく常識的水準に位置していることが分かります。

ではもう少し別のデーターを見てみましょう。まずは下の図表をご覧ください。根拠はFAOです。

これは国民一人当たりの食料輸入額です。これを見ると、食料輸入の実体がより鮮明になります。これは人口で輸入額を割った数字です。二通りに数字がしめされています。

輸入額は単純に人口で割ったもので、ひとり当たり食料輸入額がどのていどになるのかが分かります。輸入総額が多くても、人口が多ければ必然的に一人当たりの輸入額は減少していきます(あたりまえだ)。

ちなみに、人口は米国が3億1千万人、ドイツが8千200万人、フランスが6千500万人、英国は6千万人、日本は1億3千万人です。少子化といわれても、世界の人口大国トップ10位入りしている一億人クラブのメンバーです。ちなみに先進国で1億人クラブのメンバーは、米国と日本しかありません。

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上図を見れば食料の依存度がよく分かります。
では第1位をご紹介しましょう。880ドルの英国です。あれ?食料自給率が長年の国内農業の育成でV字回復したんじゃなかったっけ。。

続いて第2位は、851ドルでドイツ!評論家でなにかとドイツに学べという人は実に多いですなぁ。エコ大国ドイツ、黒きメイサではない森に覆われた田園国家、にしては食糧輸入が多いですなぁ。

そして第3位は722ドルであの世界に冠たる農業大国のはずのフランスが続きます。国土面積は64万キロ平方メートルで、わが国の3千7百キロ平方メートルのざっと17倍(広いなぁ!)にもかかわらず、人口は半分しかいないフランスがです。 

わが日本は、第4位の360ドル。第3位フランスのわずか半分にすぎません。常識的水準と言えるでしょう。国土と人口からみれば、もっと買えと諸外国に言われるのも分かるような気もします。

先進国のドンケツは244ドルの米国です。国土面積は、937万キロ平方メートルでわが国の248倍とバカっ広くて勝負にすらならない米国との差は116ドルにすぎません。

このようにデーターを読むと、必ず返ってくる反論が、「「日本が関税を高くしているので、輸入食料が入りにくい。安い飼料用穀物ばかりなので、金額が落ちて表示されるのだ」というものです。

日本の食料関税は先進国で高くありません。むしろ最低に近い平均16%ていどです。野菜,、果樹などは無関税に近い。コメがあまりにバカな高関税なので、イメージが引きずられてしまっています。関税問題はまた別の機会に詳述します。

金額ベースがイヤなら上図の薄いグレイの棒で表示されているひとり当たり輸入量(㎏)で見ればどうでしょうか。

ひとり当たり輸入量の第1位は、660㎏でエコ大国ドイツの頭上に輝きました。
続いて第2位は555㎏で自給率先進国の英国です。残念なことに食料輸入額では首位だったのに順位を落としましたね。
第3位は、農業大国のフランスの548㎏です。プライドが高いフランス人は地団駄踏んでくやしがるでしょう。
そして惜しいことに入賞を逃して第4位が427㎏の「食料輸入依存世界一」の日本です。
最下位はやはり米国でした。177㎏です。

もう一丁いきますか。輸入食料の対GDP比率をみます。ここまでデーターを見ると、おのずと答えが出てくるでしょうが、第1位はドイツの2.6%、第2位が英国の2.4%、そして第3位はフランスの2.2%となります。

で、わが国はというとここでも第4位の座を守っています。どの程度の数字か当ててみてください。2.0%?、1.5%?いいえ、0.9%です!ドイツの3分の1ていどの対GDP比率です。

ここまで読まれて、いまだ日本が「輸入食料依存だ」と思われた人はそうとうにひねくれていますな。

私が繰り返して食料自給率40%という数字がいかに現実とかけ離れた数字で、故意に日本農業を弱く見せるトリック数字だと主張している理由があるていどお分かりいただけたと思います。

むしろ先進国中において強力な農業国、それが日本です。

次回は第2問の答え合わせをしましょう。

■写真 わが家のニューフェースの小犬の「モカ茶丸」くん。オシッコをちびりながらお腹をだしてじゃれついてきます。やや迷惑な甘え方です。

2010年12月27日 (月)

ニッポン農業一般常識クイズをやりま~す!

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上の写真はあんこう鍋セットです。まぁ、わが茨城では、この季節はどこのスーパーにも置いてあります。珍しくもなんともないというか、むしろ他県にはないの?というのがわが県民なんじゃないでしょうか。

テレビの番組で「ケンミンショー」(ちがったかな)というのを見ていたら、わが県の3大特長として、一にデカイ家だそうで、50坪超えはザラとのこと。そういえば、そうか。30坪の新築なんか見たことないもんな。まぁ農村部の話でしょうが。

二番目に、ケンチンそばがある。え、ないの?他県は。フツーでしょう。お雑煮もケンチン汁です。鍋でもなんにでも、ごぼう、ニンジン、大根がガッポリ入ります。だって日本で有数の産地だもん。

三番目が、あんこう鍋はどの家でもあたりまえに食べている。ええ、そうですよ。あんこう鍋セットどころか、あんこう鍋の素といってスープまであります。あれはわが県向けだけだったのかぁ。あんこうってそんなに珍しいのかぁ!

というわけで、あんがい常識というのは危うい。ここで日本農業常識テストでもやってみますか(←強引な展開だ)。

というのは、「日本農業なんて趣味の農業だ。なぜなら、外国の大規模農業と比べれば、カトンボのような家族農業が主体だからだ。日本の農家なんか自営業やサラリーマンと違って、国が保護して食べさせてやっているような連中だ」なんて言う人が絶えません。

どこぞの掲示板に行くと「嫌日本農業板」みたいなものがあるそうで(行ったことないので噂)、日本の農家を嫌いなあまりにそんなことを言い散らして、あげくはこんな結論になるようです。

「だから消費者は高い農産物を買わされることになっている。日本農業も早く大型化、企業化するか、農産物が自由化されてほしい。TPP、早く来い!」

こんな連中のネタ本は神門(ごうど)善久明学大教授らしいですが、あの人にかかるとわれらが農民は皆「偽装農民」で、土地の値上がりを待っているだけのヤカバラで、年中農地の違法転売をして大金をせしめているそうです、はい (* ̄ー ̄*) ←絵文字使ってみました。

で、日本農業常識クイズを作ってみました。批判するにもされるにも、まずは常識押えておこうね、というわげです。ヽ(´▽`)/←わぁ、絵文字って楽しいなぁ!

●[ニッポン農業一般常識クイズ その1]
日本の農業は食料自給率が4割だから、6割は外国から輸入しているような食料輸入大国である。イエスかノーか?

●[ニッポン農業一般常識クイズ その2]
では、一人あたりの農産物物輸入額を比べて世界の主要国である英、米、独、仏、伊、カナダ、オージー、韓国の中でうちの国どの辺?

●[ニッポン農業一般常識クイズ その3]
国内GDPに占める食料輸入比率を先進5カ国の英、米、独、仏の中で並べて下さい。

●[ニッポン農業一般常識クイズ その4]
さて、次は難問だぞ。日本農業の総生産高を主要国で並べて下さい。

●[ニッポン農業一般常識クイズ その5]
国内GDPに占める日本の農協の割合は1.5%ですが、これは他の主要国でダントツに低い、イエスかノーか?

さて皆さん,どのくらいできます。答えは明日に。

■写真 あんこう鍋セット。パックの右隅にあるのが、アン肝です。これを鍋に炒りつけてから割り下を入れて、味噌仕立て。例によって茨城お約束のごぼう、大根、ニンジン、白菜、シイタケなどががっぽり入ります。

あんこう自体は骨にプルプルの皮がついた淡白ななんて言うことのないお味。水戸に行くと、よく飲み屋の表に吊るしてあります。吊るし切りといって吊るしたままざーっと包丁で豪快に切るんですなぁ。

あんこうは茨城ではどこでもとれて、霞ヶ浦の漁獲は日本一です(ウソに決まってる)。

2010年12月26日 (日)

韓国口蹄疫 種豚にまで拡大

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韓国口蹄疫は絶望的状況に至りました。慶尚北道の種豚場にウイルスが侵入したようです。所もあろうにという場所です。いちばん侵入を許してはならない場所です。

既にウイルスを持った豚は各方面に出荷されているとのことで、これで全国化は確定的になりました。おそらくは30万頭というわが国の規模を軽々と超える大災害に発展すると思われます。

牛と地域を限定したワクチン接種政策を直ちに変更し、ありとあらゆる手段でワクチンを各国からかき集めて、豚とすべての汚染地域に緊急接種せねばなりません。それしか方法はありません。

これで韓国畜産の壊滅は決定づけられたと考えていいでしょう。胸が痛みます。わが国としては備蓄のワクチンを提供するていどのことしか出来ないと思われますが、わが国への伝播の可能性も濃厚になった以上、それも難しいかもしれません。

外務省は韓国渡航に対して自粛勧告を出すべき時期です。

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(「日本農業新聞」12月26日)

私はあまりネットを見ない、というか記事を書くために最低限のものしか見ません。ましてツイッターなど触ったこともないという石器時代人であることを誇りにしているヘンクツ男ですが(←ならブログなんかやるなと女房殿によく言われますが)、「青空」さんによれば韓国への心ない書き込みがネットに出てきているそうです。

困ったものです。韓国が反日的言動をくりかえしていることは誰でも知っていることですが、口蹄疫防疫においては、おかしな対抗感情を出さないでほしいものです。

口蹄疫は単独の国家では防ぎようがありません。なぜなら、ウイルスに国境はないからです。いかに嫌悪しようとどうしようと、歴史観や価値観を共有できまいと、伝染病との戦いにおいては人類は共同の戦線を張らねばならないのです。

具体的には、三谷先生がご指摘のようにアジア独自のワクチン・バンクの創設が早急に必要です。アジア地域の口蹄疫やトリインフルはほぼ株を共有しています。この情報共有センターや対処ワクチンを東アジア独自に作る必要があります。

韓国も日本も、もはやワクチンなくして口蹄疫対策がありえなくなった以上、単なる殺処分の補助材料としてだけではなく、真正面からワクチンを使用した防疫方法を検討すべきです。

■お断り 午前アップした記事の後半部分は誤解を招く可能性があるので削除いたしました。

■写真 北浦の舟溜まりの早朝です。

2010年12月25日 (土)

韓国口蹄疫 恐ろしい想像3つ

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三谷先生、コメントありがとうございます。先生の仰せの韓国が緊急ワクチンに踏み切ったという理解でよろしいのでしょうか。

ならば、ひとつの前進であることは間違いないと思われます。確かに韓国は、米国と口蹄疫の国際的安全保障体制である世界口蹄疫研究同盟(Global Foot &Mouse Disease Research  Al liance  )に加盟しています。

今回の一件に関しても、研究同盟を通じて米国の指導があったと見てよいでしょう。というか、ここまで感染拡大している状況を、眼前の北朝鮮との政治・軍事的緊張関係が高まる中、なおかつ、米韓FTAが視野に入った米国が看視するはずがないと考えるほうが自然です。

私は、今回の韓国の対応は、感染爆発による泥縄的なワクチン接種だと考えています。韓国政府には、ワクチン接種による防疫の準備も覚悟もなかったように見えます。

準備がなかったのは、備蓄ワクチンが非常に少なく、牛に限定して接種する、それも地域を限定して接種することで精一杯の状況から察せられます。たぶん日本の在庫量の半分に満たなかったのではないでしょうか。

そう考えると、これ以上の感染拡大が拡がるとなると、韓国当局は口蹄疫ワクチンの在庫が早晩底をつくと思われます。

このような事態になったのは、韓国のリング・カリング(*一定の範囲内の患畜、疑似患畜を問わない全殺処分方式)政策の明らかな失敗だと私は考えます。韓国は発生農場から半径500mを初動で無条件に殺処分する政策の実施国として知られていました。

このような苛烈な初動処分方式は世界でも唯一ではないでしょうか。韓国はこの方式に非常に自信を持っていたはずです。

しかし、今年に入り、韓国で口蹄疫の発生が立て続けに起きます。1月と4月、そして今回11月末の慶応尚北道アンドン市から始まる前代未聞のアウトプレイクです。

このリング・カリング方式が万全でないことの徴候は既に現れていました。4月には実に11回のリング・カリングと2回の農場全殺処分を行った結果、395農場で約5万頭の牛、豚、羊、鹿を殺処分にしました。

宮崎県東部の事件でパニンクになっているわが国をよそ目にして、その都度、韓国はいち早く清浄国復帰をなし遂げたように見えました。しかし、どうやら実体は違っていたようです。感染が止まらなかったのです。

口蹄疫ウイルスは、リング・カリングによって当該地域から排除されても、他の地域に遷移したにすぎませんでした。

2010年1月~3月の京畿道ポンチョン事例が終息するやいなや、同じ京畿道インチョンのカンファで発生しました。その発生と並行して東に隣接する忠清北道忠州に飛び火します。

次いで、京畿道の南に隣接する忠清南道の青陽郡で4月末から6月初めに移っていきます。あたかも口蹄疫ウイルスが京畿道⇒忠清北道⇒忠清南道へと「巡回」しているようです。

そしてこの11月末からは、忠清北道の東に接する慶尚北道アンドンから火を吹き、慶尚北道全域で猛威をふるい、再び元の忠清南道に戻り、北東部の江原道まで急拡大し、今や全土に広がる懸念も出ています。

つまり、京畿道⇒忠清北道⇒忠清南道⇒再び京畿道・江原道へと循環したわけです。

この韓国における口蹄疫ウイルスの「巡回」はなにを現しているのでしょうか?

■第1にそれは、韓国独自の往年の英国を思わすリング・カリング方式の明らかな破綻です。もし、この事件が終息した後ににもなお、韓国政府が自らのリング・カリング政策を正しかったと言うなら、正気を疑わねばなりません。

■第2に、口蹄疫ウイルスは国内から消滅することはなく、発生地点周辺部の徹底した殺処分と消毒によっても、場所を変えて発生する可能性が極めて高いということです。

どこかの外国から持ち込まれると考えるより、いったん侵入を許せば、場所を変えて、国内のどこかに潜伏し続けていると考えるべき対象だと認識したほうがいいことを教えています。

むろんわが国も例外ではありません。私は今年の宮崎事件によって微弱ではあるがウイルスが各地域に持ち出されていると憶測しています。ただ、発症に気がつかず自然治癒していて管理者の目にとまらないだけかもしれません。

■第3に、もうひとつの恐ろしい想像をしなければなりません。韓国においては野生動物に感染した疑いがあります。今回の事例で、とんでもない山奥での集落で発生が見られることです。

韓国は脊梁山脈が深く険しい山岳地帯となっています。ここに多くの野生、イノシシが生きています。もし野生動物の感染が生じた場合、対応は更に混迷を深めることでしょう。

家畜でさえ手一杯の状況で、しかも険しい山岳地帯のどこにいるのかわからない野生の鹿、イノシシをも看視し、時には殺処分対象にせねばならないからです。

そして、アフリカのインパラなどに例がありますが、野生偶蹄類への口蹄疫の感染は、ウイルスの土着化を意味します。根絶は絵空事になります。まさに最悪の事態です。

私は口蹄疫を初動殺処分だけで制圧することは不可能だと思っています。今回、韓国当局がどのような意思決定をしたのかまだ分かりませんが、緊急ワクチンを事前に準備しておく時期に突入たような気がします。

私は韓国もわが国も、口蹄疫ウイルスは常在しているという前提に立って対応すべき時代になったと思います。緊急ワクチンが効果が危ぶまれるのは、一回だけの不活化ワクチンのみでは限定された力しか持たないからです。

これは私自身、ニューカスル(ND)と闘って身に沁みている教訓です。緊急ワクチンを盛期に接種しても遅いのです。ワクチンは、NDの場合1カ月刻みで接種し、仕上げでのブースター効果(*ワクチネーション・プログラムの最後に抗体値を押し上げること)を狙って不活化ワクチンを接種します。

口蹄疫のような悪性海外伝染病に対して、いかなるワクチネーション・プログラムも持たず、緊急時の治療薬もなく、消毒一本でどうやって畜産家に闘えというのですか。

しかし、このワクチネーション自体が、現在のOIEの「ワクチン接種・清浄国」ステータスへと転落し、貿易上の不利益を生むのならば、せめて緊急ワクチン接種をわが国の方針とすべきではないでしょうか。それによっての損失する時間はわずか3カ月でしかありません。

それを拒否し続けてきた唯一の理由は、「発生とワクチンが識別できない」だったはずです。そのドクマは既にNSP(非構造タンパク)ワクチンの登場で打ち消されたはずです。

韓国当局は今回のワクチン接種に関して、「畜産農家の安心のため」と言っています。しかしそれだけではないはずです。国家と国民の安心のためワクチン政策を抜本的に見直す必要があることを、今回の韓国口蹄疫事件は教えてくれているようです。

■写真 農家は畑の淵などに菊をさりげなく植えています。仏壇のお花は自分の畑からというわけですね。

■追記 「今年1月に京畿道抱川で発生した口蹄疫でも、最初に発生した農家の中国人労働者が中国に帰省し、戻ってすぐに勤務を開始していたことが分かった」(朝鮮日報)

■追記2 民主党政権は農家戸別補償を法制化することを、今期断念しました。野党の反対が大きく、法制化に手間取るために予算執行を優先することにしたようです。これでこの悪法が恒常的になることは避けられたわけです。

2010年12月24日 (金)

韓国口蹄疫 ワクチン接種13万3千頭対象に始まる・よく理解できない韓国のワクチン方針の謎

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「日本農業新聞」(12月24日)によれば、韓国口蹄疫拡大牛防止のためにワクチン接種を明日25日から開始するそうです。いよいよですか。感染が拡がる慶尚北道と京畿道の2道から開始します。

慶尚北道ではアンドン市全域の牛に接種市、他の地域では発生農場から半径10キロの牛に接種し、慶尚北道イエチョン、京畿道パジュ、コヤン、ヨンチョン郡では、発生農場から10キロ圏内に接種します。

江原道では、新たに感染が確認され次第、ワクチンの使用に踏み切る考えです。その他の地域では、従来どおり発生の羽状から500m以内の全殺処分で、対応し、発生状況時代でワクチン接種を決定するとしています。

また、ワクチン接種地域で発生した場合は、発生農場のみの家畜を殺処分するに止めるそうです。

接種対象は牛に限定されるそうです。対象頭数は現在7016戸の13万3千頭に登ります。

現在殺処分数は1462戸、27万8530頭に達しました。あまりの膨大な数になんと言ったらいいのか分かりません。ワクチンでこの感染拡大の行き足が止められないとなると、もはや打つ手がなくなります。いい結果を祈るばかりです。

                   ・-・-・-・-・-・

さて、疑問がいくつか残ります。
■まず第1になぜワクチン接種対象が牛に限定されたのか分かりません。宮崎の事例においては、豚が増幅動物として感染拡大を拡げました。豚の感染拡大を阻止しなければ、地域での感染拡大に歯止めがかからないはずです。

この豚に接種しないという方針は、明らかな誤りに私は思えます。いかなる理由なのか早急に知りたいと思います。

■第2に、ワクチン接種範囲がまちまちなことです。慶尚北道の第1例が出たアンドンでは全市、慶尚北道イエチョン、京畿道パジュ、コヤン、ヨンチョン郡では、発生農場から10㎞圏内としています。

半径10㎞は日本と一緒ですが、なぜ他の地域で接種しないのか分かりません。つまり、半径500mの全殺処分地域と10㎞ワクチン接種地域、全市対象地域、そして無接種地域の4種類の区分けをしています。

宮崎県を知っている私たちから見れば、宮崎県と同規模災害に近づきつつあるこの時期に、この微妙な区分は何だと思いたくなります。

たぶん、韓国政府は自らの疫学調査に非常に重きをおいており、日本のような遅れまくった疫学調査のようなな失態はしないと思っているのでしょうか。

だとすれば、非常に危ういと思います。ここまで感染拡大したのは、韓国政府の疫学調査に漏れる何事かが連続して発生しているからであり、韓国政府も感染伝播経路を抑え切っていないはずです。もし完全に抑えているのなら、とうに感染拡大は停止しているはずですから。

私はこのようなあいまいな区分けに基づくワクチン接種方針は禍根を残すと思えて仕方がありません。

■第3に、ワクチン接種地域で発生した場合は、その当該農場のみの殺処分で済ませるという考え方です。ということは、韓国政府は、ワクチン接種家畜を殺処分しないということになります。

やや唖然とする方針です。ということは、韓国政府は例のOIE清浄国ステータス復帰の方法に、日本とは異なって6カ月間を選ぶということになります。まぁ、それならそれでいいのですが・・・。

殺処分数をこれ以上増やさないという経済的動機と、ステータス回復の道のりを天秤にかけたということでしょうか。自由防疫国の韓国としては思い切ったことを考えたものです。

■第4に、ワクチン接種した牛で、抗体検査でマイナスならば、肉用としての流通・販売を認め食肉とする方針だそうです。

これもう~んですね。抗体は接種後すぐに上がりません。宮崎では接種後10日以上たって発生が出たケースもあります。ワクチンは万能ではないし、潜伏期間内に接種を受けてその直後に抗体検査をされてもプラスにならないケースもあります。

ここでその牛を出荷してしまったらどうなるのかは明らかです。ウイルスの食肉による伝播です。今、どうして日本で水際で韓国産の牛肉、豚肉をチェックしているのか、韓国政府は判っているのでしょうか。

わからないことだらけです。他国の防疫方針をことさら批判するのは憚られますが、韓国政府が宮崎県の事例を研究していないことだけはよく分かりました。

■写真 白八重の椿が散って、薄桃色の椿が咲き始めるとお正月です。

■ 鹿児島出水市で出ているツル種のトリインフルエンザの感染が拡がっています。どうも東アジアで土着化してしまったような気がします。わが霞ヶ浦、北浦一帯もも厳戒体制に入っています。本業から言えば、韓国口蹄疫どこじゃないんですが(苦笑)。

             

2010年12月23日 (木)

韓国口蹄疫、22万頭超へ!アウトブレークに突入! 韓国政府、 ワクチン接種を決断!

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韓国口蹄疫が、手もつけられない状況となってしまいました。もはや完全なアウトブレークです。ここまで感染が拡大して、防疫の戦線が伸びきってしまうと、もはや南部地域に侵入するのも時間の問題のような気がします。

韓国が日本の4分の1の面積しかないことを考えると、わが国で置き換えた場合、北海道を除く全域が口蹄疫の感染地域と化してしまったことになります。

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(出典 農水省資料による)

下のグーグル・アースの東アジア地図で、宮崎県の大きさと今回の韓国の感染地帯を比較していただければ、その広範囲なことがお分かりになるでしょう。単純な面積でも、宮崎県事例が宮崎県東部地域に限定されていたことに対して、韓国はほぼ九州全域に等しい面積が口蹄疫の汚染地帯に入ってしまったことになります。

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(出典 Google Earth)

これを受けて、「日本農業新聞」(12月23日・最上段を参照下さい)によれば、韓国政府は22日ワクチン接種を決断しました。韓国農水食品部・劉正福長官は22日、国会の答弁で「口蹄疫の発生農場を中心にもっとも小さい範囲でのワクチン接種が必要」と述べたそうです。

韓国の言う「発生農場から最小の範囲」とは、たぶん半径500mをさすと思われます。ワクチン・全殺処分懐疑派の私が言うのはなんですが、どうせやるのならこのような狭い範囲でのワクチン接種の効果はいかがなものでしょうか。

宮崎県で苦渋の判断としてのワクチン接種が効果を現したのは、それが思い切った広範囲で接種されたからです。広い範囲でのワクチン接種は、タイミングが遅きに失しなければ感染を遅らせる有効な方法です。

日本においては、4月末か5月始めにワクチン接種、あるいは予防的殺処分に踏み切っていればここまで大きな被害を宮崎県で出さなかったでしょう。ここでわが国は県との補償問題ででもたついて、結局、実施が5月中旬まで引き延ばされました。
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(出典 岡本嘉六教授作成の図による)

この半月の遅れが宮崎では致命傷になりました。
現在の韓国が置かれた状況は、まさにこの宮崎県の5月中旬の160例目代から200例目代までの発生時期に重なっています。

遅い!致命的に遅い!ワクチン決断が遅すぎます!やるならやるでもっと早く決断せねば!

現在の感染盛期にワクチンを接種することは、遅すぎるばかりか、かえってワクチン接種に家畜防疫員がとられることによる防疫活動の遅れを招きます。しかも「最小限範囲」で接種しても、効果は高が知れているではありませんか。

いったい韓国政府は燐国の口蹄疫事件を学ばなかったのでしょうか?検証委員会の中間報告も読まなかったのでしょうか?

想像するしかありませんが、22万頭超えの処分対象で、おそらくはその半分も処分しきれていないのではないでしょうか。(*コンタンさんから殺処分が95%進捗しているとの情報がありましたので追記します)
間違いなく韓国では軍隊は出動しているはずですが、22万頭というとほうもない殺処分対象を抱えてしまっては想像に余りあります。

となると、韓国では当然のこととして、宮崎で見たあの悪夢の光景が再現されているはずです。 (*殺処分が95%進捗しているとなると、待機患畜は私の予想より少ないことが考えられます)

初動の失敗
   ↓
埋却地の決定的不足
   ↓
待機患畜によるウイルスのさらなる拡散
   ↓
防疫ロジェスティクの限界
   ↓
防疫資材と要員の不足
   ↓
処分現場の混乱
   ↓
指揮系統の混乱
   ↓
感染爆発の拡大

目を覆いたくなります。宮崎県の終結宣言と軌を一にしてのこの大惨事には声も出ません。一刻も早い終結を望みます。

しかし韓国は、自由貿易「先進国」ですから清浄国ステータスを守る以外に、ここぞとばかりに押し寄せる輸入牛肉、豚肉から国内畜産を防衛する術はありません。韓国はワクチン接種した後の全殺処分の補償問題などで決断が鈍ったものだと思われます。

わが国では二カ国間交渉で引き延ばしが可能ですが、自由貿易国は待ったなしで下位ステータス国の牛豚肉が流入してくることでしょう。清浄国の復帰はわが国以上に死活問題だと言えます。

ましてや年末年始のもっともプルコギが食べられるお祝いの時期です。数カ月後には国産肉の備蓄はたちまち切れ、清浄国ステータスに復帰申請する来春の頃には、韓国畜産は市場を輸入肉に制圧されてしまっているかもしれません。

しかし、それにしても韓国はいいときにG20をやっておいたものです。もうひと月遅れていたら開催も中止に追い込まれていたでしょうから。

東アジア地域で立て続けに起きた口蹄疫パンデミック、私たちはここから多くを学ばねばなりません。韓国がここで感染拡大をくい止めることを心から祈ります。

            ~~~~~~~~~~~~~~

韓国で11月以降、口蹄疫(こうていえき)の感染が拡大し、殺処分対象の家畜は計約18万1000頭に達した。県内で今年発生した口蹄疫のウイルスは、韓国などアジアから侵入した可能性が高いとされており、県を中心に日本の畜産農家は不安を募らせている。(甲斐也智)

     ■韓国での再発

 「やっと再建に取りかかろうという時なのに」。口蹄疫被害者協議会(約600人)の吉松孝一会長(54)は、隣国の発生状況が気になって仕方がない。

 川南町で牛約500頭を飼育していたが、口蹄疫で全頭殺処分された。来年1月に家畜の飼育を再開するつもりだが、韓国での再発を受け、迷いも生じた。

 農林水産省によると、韓国では県内より約3か月前の今年1月に発生。約5万頭の家畜が殺処分され、6月にいったん終息した。しかし11月29日、同国南東部の慶尚北道(キョンサンプクト)の養豚農家で発生。今月15日にはソウル近郊まで広がった。20日現在、発生は5市5郡の43農場(豚7、牛36)で、939農場の家畜が殺処分対象になっている。

    ■国内再発の恐れ

 日本の畜産農家が敏感になるのには訳がある。農水省の検証委員会が先月まとめた最終報告書で、約29万頭が殺処分された県の口蹄疫について「アジアの発生国から人あるいは物を介し、侵入した可能性が高い」と指摘されたからだ。感染ルートの特定には至らなかったものの、宮崎空港と韓国・仁川(インチョン)との直行便(週3便)などによる人や物資の移動の可能性が取りざたされた。

 17日、吉松さんら農家は県の農政水産部長らと面会し、防疫対策として、主要な交通網への消毒ポイントの常設などを要望。「国内の農家は戦々恐々としている。特に家畜を失った農家は、再発したらもうおしまいだ、とおびえている」と訴えた。

      ■様々な対策

 不安の声を受け、宮崎空港ビルは、一般用の全出入り口と国際線の搭乗通路に、農家が使う靴底消毒用の強化マットを敷き、韓国語など4か国語で協力を求める看板も掲げた。消毒効果を上げるため、来月には長さ10メートルのマットも導入する。

 また、修学旅行でソウルなどを訪問する予定だった県内の3高校は、旅行先を国内などに変更。県も、韓国人観光客が多いホテルやゴルフ場に消毒を呼びかける文書を配った。

 福岡市の博多港国際ターミナルでは、韓国・釜山(プサン)との間を運航する高速船の下船用通路に消毒マットを常設。10年前に口蹄疫が発生した北海道では、家畜に異変が出た場合はすぐ届け出るよう、道内全農家に通達した。鹿児島県も急きょ、消毒方法などを記したパンフレットを作成し、今週中にも農家に配る。

(2010年12月22日 読売新聞)

韓国、口蹄疫感染が急拡大 勢い止まらず「非常事態」
2010.12.22 19:57
 韓国南東部で先月末に豚の口蹄(こうてい)疫感染が確認され、首都圏や北東部の江原道まで急拡大し、全土に広がる懸念も出ている。政府は防疫に全力を挙げるが感染の勢いは止まらず、韓国メディアは「非常事態」と危機感を強めている。
 農林水産食品省によると、先月29日に慶尚北道安東の養豚施設で感染が確認された後、周辺部に次々と飛び火。今月15日には約200キロ離れた北部の京畿道楊州などの豚の飼育施設でも見つかった。政府は家畜疾病の危機レベルを「注意」から「警戒」に引き上げ防疫体制を強化したものの、22日には江原道平昌の牛の飼育施設でも発生が確認された。
 発生場所は22日現在で計44カ所。防疫当局は発生地点から少なくとも半径500メートル以内の家畜を殺処分し、既に牛や豚など計20万頭以上が処分された。
(ソウル 共同)

2010年12月22日 (水)

農家戸別補償で一致した民主党農政の顕教と密教・同床異夢の果てに

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作日の「日本農業新聞」(12月20日)によれば、行政刷新会議が設置した政府・規制改革分科会の検討項目に、JAがあれだけ強く反対していた「JAからの信用・共済事業の分離」が登場しました。ワーキングチームでもんだ後に21日に検討の方向性を示し、各省の政務3役との折衝を経て、年度内には政府方針とするとのことです。

とうぜんのこととして、既におおよその方向は決まっているはずです。6月の第1期検討会で不発でしたから、今回は決めたいと思っていると思います。

いよいよ来たなという気分ですね。この「改革」は准組合員の組合員資格の廃止もともなっています。准組合員、要するに非農業者は、今やJAバンク・共済事業の重要な対象ですから、JAからの事業と同時にその「お客さん」までもをもぎ取るわけです。JAにとっては計り知れない打撃になると思われます。

さて、民主党という党は「面白い」ですね。右手と左手がまったく違うことをしています。国家安全保障や農政といった国の形を決定する重要な事柄に党内できちんとした綱領が存在しません。

思えば、今回のJA弱体化路線を打ち出した行政刷新会議の初代行政刷新担当大臣はかの仙谷官房長官その人でした。そして彼が指揮する事業仕分けでバサバサと「無駄」を切りまくったわけです。なにか遠い昔の様な気がするのが不思議ですね。

そのとき、いちばん被害を受けたのが農水省関係で、私自身「有機農業モデルタウン」の事業を5年継続の2年目で打ち切りという悲運に泣きました。当時農水大臣だった赤松氏は、この事業仕分けチームの横暴には、同じ社会党時代からの仲間である仙谷氏に、「こるらぁ、ふざけんなよ!必ず復活折衝すっからな!」てなことを吠えていました。

一方、当の仙谷さんは、レンポー氏や枝野氏を現場監督にして、民間から大量の人材を投入しました。このメンツが興味深いのです。

川本裕子氏、土井丈朗氏、そしてあろうことかゴールドマンサックスのロバート・フェルドマン氏たちです。この民主党に選ばれた首切り役人は、「小泉-竹中-ホリエモン路線」(←現農水副大臣・篠原孝さんの命名)を推進した当事者たちでした。私が秘かに恐れていた小泉-竹中-ホリエモン路線、言い換えれば新自由主義の復活の兆候ととられてもいたしかたないでしょう。

民主党政権は、市場原理主義を否定し、小泉-竹中-ホリエモン改革の行きすぎでおかしくなった日本を「友愛」で再生するということで、国民の期待を得たはずでした。それが政権成立早々に、かつての小泉-竹中-ホリエモン災厄を引き起こした当の亡霊たちを呼び寄せたわけです。民主党内部のある潮流の存在がよくわかりますね。

そして今年突如、菅首相が言い出したTPP路線が浮上します。シンガポールなど4カ国のFTAが参加することを表明しています。既にシンガポール、チリ、NZ、ブルネイで発足し、オーストラリア、ベトナム、ペルーが参加を表明し、「盟主」米国も参加を表明しました。これに米韓FTA(未締結)が連動しますから、このままでは日本は、完全に環太平洋自由貿易経済圏のカヤの外となるという危機感が政財界にありました。

さて、どうやら民主党にはふたつの潮流があるようです。このふたつの潮流が反映してふたつの農政を作り出そうとしているように見えます。

ひとつはいわば「顕教」である「農民の生活と生産を守る」という道です。「安心して作ってくれ、農業を応援するぞ」といういわば国家保護型農政です。

これが農家戸別所得補償制度に代表されるように「農家が安心して生産に励める」仕組みを生み出しました。

選挙目当てのバラマキと言われようがどうしようが、減反制度を自由参加にして、参加した農家には直接に金を出します、という制度です。従来の自民党農政以来連綿と続く、「農民保護」政策のニューバージョンだと思えばいいのかもしれません。

2年前この発案者の篠原孝氏と話たことがありますが、氏のドイツ農業型直接支払い制に模範を置いたこの制度は、ダイレクトにJAを迂回せずに農民に国家が支援をする制度だと聞きました。

篠原氏の脳裏には、JAを介さねば何もできない日本農業を、国家が農民に直接に所得保障をすることで政策誘導する意図があったように見受けられました。

野党時代の篠原氏は明確にふたつのことを言いました。ひとつは、この農家所得保障制度はFTAなどの自由貿易の痛み止めではない、まったく無関係な制度だということがひとつ。

そしてもう一点が、この制度はJAを介さないということでした。実際、氏のブログには氏が長野のJA社屋の前で宣伝活動をしている写真があります。篠原氏の構想では、すべての農業範疇を含むはずでしたから、おそらくは数兆円規模の膨大な直接支払い金が、JAを介さずに流れるという仕組みになります。

実際に政権を取った後には、篠原氏は赤松大臣時代は無役であり、山田大臣に起用されて副大臣、そして宮崎口蹄疫現地対策本部長で活躍しますが、野党時代の理念から農家戸別補償制度がどんどんと逸脱していくのが、鋭敏な氏には見えていたはずです。

支払い分野は米作中心となり、額自体もはるかに少額になりました。ようやく麦、大豆に手を伸ばそうかというところですが、果たして財務省がウンと言いますかどうか。菅政権の財政政策は緊縮財政型ですから、そうきうにきついでしょう。

そしてなにより、農家戸別補償制度はやはりTPP、FTAと連動しているのではないかと思わざるを得ないTPP参加表明がなされてしまいました。副大臣以前の氏が、ブログで「こんなものはほんとうの農家所得保障制度じゃない!」と叫んでいたことを思い出します。TPP参加表明時にも、篠原副大臣は大反対だと新聞に語っていましたね。

今あれから2年、私はあらためて、この民主党農政「顕教」の代表者とでも言うべき篠原副大臣の現在の声を聞いてみたい気がします。

ところで、民主党農政にはもうひとつの別な側面があります。いわば「密教」とでも言うべき流れです。この密教の考えはこうです。

・・・農業には未来がない、どうあがいでも国際競争力がない、滅亡産業部門だ。ならば、もう終末処理を考えたほうがいい。成長戦略など農民は自分で考えつかないのだから、企業家に新規参入させろ。そうすれば米価は半分になり、国際競争力をもった日本農業となる。

農村の使い道は都市生活者のレジャーランドにするか、定年退職後の団塊世代の老後の癒しの場とするかていどで、いずれにせよ、農民を主体とした農業の時代は終わりだ、これからは企業農業だ、という考えです。

さぁ日本農業の幕引きの10年が始まったぞ、というわけです。・・・ああ、なんか書いているだけでムカムカしてきた(笑)。

この密教の信仰する偶像は、国際自由貿易と市場原理主義です。グローバリゼーション、あるいは新自由主義的路線と言ってもいいでしょう。

日米FTAをするには「農業が障壁になって、国益を阻害している」(経済同友会レポートの表現)ので、国益の名の元に農業には安楽死してもらう。苦しんだあげく、ムシロ旗なんぞを納屋から持ち出されても困るので、そのセーフティネットとして農家戸別所得保障制度を作ろう、というわけです。

理念において、このふたつの流れは本質的にまったく相いれないにもかかわらず、政策的には農家戸別所得保障制度で一致してしまいました。まさに同床異夢の典型ですね。

前者の顕教は、やはり農業や農民に寄り添って発想します。なんとかしたいという気分も大いにあります。まぁ農業への思いがあるというのでしょうか。山田さんや篠原さんなどはこの流れでしょう。赤松さんはそもそも農政と関係ありません。

宮崎口蹄疫事件の時も、山田氏のこわもての顔の下に、五島の牛飼のつらい表情が見え隠れしていました。日本養豚協会の「直訴」に即断即決したのも、彼の中にある農民魂のような部分に火が着いた結果でしょう。あの時、山田さんは泣きながら訴えを聞いていたそうです。薦田さんに最後面接を求めて拒否された彼は気の毒でした。

私は決してこの人物を嫌いではありません。むしろポビュリズムに流れかねない危うさを持った県知事より、自らの職責をわきまえていました。あの嵐の口蹄疫事件において、彼の「悪役」にもなれる強さは為政者として貴重でした。そのうち「山田大臣・危機のリーダー論」とでも題して書いてみたいですね。

それはさておき、一方後者の密教は、日本農業をとうに見限っています。同じ農家戸別所得補償を言っても、彼らの農民を見る眼はまるで死人を見るような視線です。日本農業は「国益の阻害物」につきるのです。果たしてこの「国益」が一体何ものなのか、誰のための「国益」なのかは分かりませんが。

このふたつの流れは今後も絡まりあいながら葛藤を続けていくことになるでしょう。かつての自民党農政もまったく同じでした。しかし、彼らは農村という人質をとられていたが故に、意思決定が致命的に遅れました。

石破農政のような改革派は自民党農政のまさに末期にしか現れず、しかも農民はそれを理解しようとはしませんでした。しかもその間に、小泉-竹中-ホリエモン路線の後遺症により農村が荒廃の度を深めました。そして伝統的な支持基盤だったJAすら単協の離反が相次ぎました。

さて、民主党があとどのていどわが国の舵を握っているのか分かりません。そう長くはない気もしますが、民主党農政は最後のお土産でJA弱体というとんでもない爆弾を残して去っていくのでしょうか。それは間違いなくJAという日本農業の背骨に打撃をあたえることでしょう。

■写真 私は空の写真が好きなのですが、これは今朝の嵐の直後の空です。太陽が雲間から覗いています。ああ、仕事時間前でよかった。セピア色ですが、着色していません。ほんとうにこの色でした。

■追記 韓国口蹄疫が燎原の火のように拡大し続けています。忠清南道、江原道でも疑似患畜が発見されました。処分対象の家畜21万頭畜を超え22万頭に達しつつあります。宮崎県の事例と酷似してきました。
このままでは30万頭規模になるかもしれません。しかも範囲が宮崎とは比較にならない全土規模です。大変なことです。韓国政府はワクチン使用を検討しはじめたようです。日本も最大限の警戒が必要です。
詳報は次回に。

2010年12月21日 (火)

TPPとワンセットになった農家戸別所得補償は、農家への手切れ金か?!

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日本農業の悲劇は、日本農業が自らの手によってその累積した矛盾をときほぐせないことです。

自民党農政は確かに愚かではありましたが、土着的でもありました。その泥臭い矛盾は日本農業の苦悩する姿そのものだったような気がします。ま、褒めてやればの話ですが(笑)。

旧来の農業や農村の基盤そのものである農民層を生かそうとすれば、農民の過半数が兼業化している以上、農業が産業部門としてなりたたず、それどころか「自由貿易体制という国益の障害となっている」(「同友会提言」)わけです。

かといって農民や農地を強引に整理大型化しようとすれば、自由経済社会の基本である私所有権とぶつかってしまい、農村の崩壊現象を招きかねない社会問題と化すおそれすらあります。水田の改良工事が、多くの反対や怨嗟を浴びながらとりあえず出来たのは、水系によって生産を握られている稲作の特殊性があったからです。一般にはそう簡単にいきません。

農業委員会は耕作放棄地の一般への情報開示すら拒んでいるのです。こんな状態下での農地の集約化は、伝聞と貸す話の持ち込み、あるいは競売物件といった有様です。JAや行政の土地バンクも未だ限定的な存在です。

昨今、よくいわれる農業のトレンドに「所有権と耕作権の分離」という考えがありますが、それをするためには透明性をもった行政権力が中に立つ必要があります。それなくして、農民の利害代表者であるJA農協の合意を得るのはなかなか難しいようです。

というのは、そのようにして集約化した農地が、農業外の法人などに買われてしまっては元も子もありません。

JAにとって、自分を迂回する農産物の集散をする団体が大きく成長することは、自分たちの一元的な農業におけるパワーの源泉の衰弱を意味してしまうからです。ですからとうぜんのこととして、「所有権と耕作権の分離」によって成り立つ農業法人には本能的に警戒感を持っています。

このような日本農業の自縄自縛、言い換えれば自己解決能力の欠落を尻目にして、黒船よろしくTPPやFTAというカタカナの津波が、黒い壁のように水平線に現れているのが見える時代となってしまいました。

農業の危機は食の危機です。そしてその危機が深ければ深いほど、解決は簡単ではありません。もし簡単で明快な答えを、今の日本農業に出す者がいたら眉にツバをつけて下さい。

つまりと、片方を解決しようとすれば片方が成り立たず、その双方を立てようとすれば政策があいまいになってしまい、政策たりえずなのです。まるで堅くねじれあってしまった糸玉のようです。

かくして、なまじ農村に長年根を張ってきた自民党にはそれをときほぐせないままに手をこまねき、とうとうその本質において都市型政党である民主党に政権の席を譲ってしまいました。

民主党農政は今は形も理念もない状態ですが、TPP推進派の次期首相の声も上がる前原外相が主導すれば、間違いなく財界の農業改革政策に酷似してくるはずです。

たとえば、農地法の改正により土地流動化を促し、集約化を進めながら異業種を農業市場に参入させ、大型化のための基盤整備を国の力でしていきます。、そしてゆくゆくは外国資本の農業市場参入、GM品種の導入まで展望に組み込んでいるはずです。

それらの民主党農政の障害となる農家には社会保障的な痛み止めを打って余命をまっとうしてもらう。それが農家所得補償制度です。TPP締結まで最短で5年。そしてセンシティブ農産物であるコメの移行期間が10~15年、とすれば直接所得補償の期間は最大で20年間。今平均で60歳の農家が、80歳。いわば掛け金なしの農業年金です。

はっきり言えば農家個別所得補償金とは農家への手切れ金、慰謝料のようなものです。

民主党はJA農協が衰退し、解体の道に進む政策を打つでしょう。まずジャブとして2009indexという選挙向けの政策集で農協を批判し、JA農協=農政連の自民党支持を揺さぶりました。

JA全農こそ、TPPを締結をめざす財界型農業改革を断行していく時の最大の障害物だからです。またJAの抱え持つ巨額のJA系金融も魅力なはずです。誰にとってですかって?もちろん米国にとってですよ。郵政民営化の真実の標的が簡保や保険業であったように、その巨額の預金資産の自由化は米国にとって垂涎なはずです。

これが、今まで自民党すら言い出せなかったどぎついまでの本音です。自民党は片足を保守王国とまでいわれた農村に置いている故に農政すべてが中途半端でした。となれば、これそが民主党でなければ出来ない「農業改革」ではないでしょうか。

先ほど私は、日本の農と食の病はねじれた糸球のようなもので、簡単な答えを持って来る者には眉にツバをつけて下さいと言いました。その簡単な回答の一例が、TPP自由貿易体制とワンセットになった農家戸別所得補償制度です。この制度を単純な選挙目当てのバラ撒きととらえると本質を見誤ります。それはあくまでTPPに対する農民層への手切れ金なのです。

かつて 日米FTAを民主党マニュフェストに書き込んだ張本人である小沢元代表は、「安心しろ、FTAを締結しても農民の生活は所得補償で守る」と言いました。

なるほど彼は嘘はひとことも言っていません。ただし老いたわが日本の農民が生きているあと20年間限りは、ですが。

■写真 朝焼けにカラスが一羽飛んで行きました。

2010年12月20日 (月)

兼業農家と小規模農家は違う

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まずは、米子市のトリインフルの野鳥の発生の情報から。先日からのテーマをお読みになりたい方は、波線から下をお読みください。

やはり野鳥の営巣の場所にかなり濃厚な感染源があるようです。伊藤寿啓(としひろ)鳥取大教授(獣医公衆衛生学)は韓国や中国の発生地でウイルスが野鳥に定着し、家禽に発生しようとしまいと、毎年渡り鳥経由で日本に伝播すると考えています。

参ったな。ということは、韓半島や中国大陸では野鳥にトリインフルが土着化してしまったということですか。中国の青海省には土着化しているという情報はかねがねあったのですが、韓半島までとなると、近隣だけに毎年トリインフルが上陸する可能性があるということになります。

非常に強い警戒が必要です。

■ 今年10月以降、野鳥や養鶏場などでの高病原性鳥インフルエンザの感染確認が各地で相次いでいる。鳥取県は19日、米子市で見つかったコハクチョウから強毒性のウイルス「H5N1型」が検出されたのを受けて見回り調査を行い、衰弱状態や死骸の野鳥計31羽を回収した。死後長期間が経過し検査できないものなどを除く23羽の死骸を鳥取大で調べる。また、富山県は19日、高岡市で死んだコブハクチョウを検査した結果、強毒性の高病原性鳥インフルエンザウイルスを検出したと発表した。島根県や北海道で感染が判明したウイルスと「極めて近縁」としている。

 農林水産省などの調査では、シベリアなど北方の営巣地から渡り鳥がウイルスを国内に運んだ可能性があるという。伊藤寿(とし)啓(ひろ)鳥取大教授(獣医公衆衛生学)は「今までとは違うパターンだ」と指摘する。

 北方の営巣地を飛び立つ渡り鳥には2種類のパターンがある。10~11月ごろ、営巣地から直接日本に飛来するパターンと、中国や韓国を経て12月~翌年1月に飛来するパターンだ。

 伊藤教授によると、過去に北方の営巣地でH5N1型は確認されていない。そのため、これまでは中国や韓国のH5N1型発生地を経由して感染した渡り鳥が、ウイルスを日本に持ち込んでいると考えられてきた。だが、今年は渡り鳥が北方から日本に直接飛来する10~11月に初めてH5N1型の発生が確認された。韓国や中国では今秋、この型の発生報告はない。農水省は前年に発生地から営巣地に持ち込まれたウイルスが定着し、日本に運ばれた可能性もあるとみている。

 伊藤教授は「もし営巣地にウイルスが定着しているなら、渡り鳥は毎年ウイルスを運ぶと警戒しなければならない」と懸念する。

 農水省は「乾燥した冬場はウイルスが広がりやすい。養鶏場が家畜を野鳥と接触しないように注意するのはもちろん、一般の人も死んだ野鳥を見つけたら触らないで通報してほしい」と呼び掛けている。
(産経新聞 12/19)

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農水省や自治体農政課は兼業農家のことを「自給的農家」、あるいは「零細農家」と呼んでいます。こういう言葉遊びはやめてほしいものです。本質を分かりにくくする日本人の悪い癖です。

「零細」という語感からはまるで戦前の小作農のような過酷な貧農を連想します。食うに食えずに泣いているという語感です。
また「自給的」というに至ってはなんなのでしょうか。自家の畑や田んぼていどしか作っていないということなのでしょうが、「自給」という言葉からはまるで的循環的自給的生活を送る古典的な農民のようなイメージがあります。

では果たして兼業農家とは、農水省がイメージさせたいような「零細農家」なのでしょうか?私は違うと思います。

なるほど、かつての昭和40年代までの兼業農家は農業だけで食べられずに、冬場の出稼ぎに行ったり、次男、三男が街に勤めに出たりで糊口をしのいでいました。いよいよとなると親父までもが、カァちゃん、ジィちゃん、ばぁちゃんに田畑の手入れを任せて稼ぎに出ました。

私は減反以前、減反以後では兼業農家のあり方が大きく変化したと思っています。減反以前は、その時の農産物価格や景気、あるいは天候などにより生み出されていた兼業農家が、減反以後では農政に由来する構造によって生み出されるようになったからです。

私は減反政策で生み出された新規の兼業農家層を、「人工的兼業農家」といういう表現をしたいくらいです。それは戦前の地主制度下の貧農とはまったく違い、農水省自身が作り出した新たな農民階層なのです。

この「零細農家」という表現には、戦前から連綿と続く農水省内の小農保護派の哲学が見え隠れします。彼らがGHQの「農地解放」のお先棒を担ぐようにして終戦直後、各地の農民組組合と共に官民上げての土地分割をした歴史があります。

戦前、地主はおおむね20町歩以上を保有していました。山林まで入れれば40町歩ていどは所有していたのではないでしょうか。これはヨーロッパのイタリア26町歩などとほぼ同一の水準です。これを占領軍と農水省は、二束三文で1町5反前後に分割し、小農に配分しました。封建制の温床とみなされたからです。

余談ですが、これが小作の収奪を伴わない近代化をしていけば、現代の日本農業は素晴らしく強力になったことでしょう。しかし、歴史はそうは進みませんでした。

私は農村に来て、なんでまぁ1.5hで農地が揃っているのか不思議に思ったことがありますが、それはGHQによるこのような人工的な農地分割政策があったからです。今思うと、小作解放という理念は理解できますが、よその国の農業構造に手を突っ込むとはまったくよーやるよ、というかんじです。

米国のブッシュ大統領は、イラク戦争を開始するにあたって「日本占領という成功モデルをイラクにもやる」とのたまうていたそうです。無知が栄えた試しがないとはこのことでしょうね。アメリカ人には永久にアジアは理解できない。私はこの部分は反米です。

さて、減反以降は景気や天候とは無縁に常に一定の割合で兼業農家が存在するようになりました。狭い農地を、正味5月から8月までの3カ月間だけの労働で、しかも機械化が極度に進んで、そしてなんと言っても価格補償が政府によりなされるという、ある意味「おいしい」業態をいったん作ってしまえば、辞めるはずがありません。

また、同じ農家に貸すのも、親父や長男に死なれたりした土壇場の場合で、農地を貸すことにより耕作権が優先することを恐れてめったにしなかったことでしょう。

耕作権はそれなりに強力な権利で、いったんよその人が田んぼや畑に作物を入れてしまえば、潰して元の現況に返せとはなかなか言えないものです。ましてや、貸す相手は同じ近隣の農家だったり、親戚だったりするケースが圧倒的ですから、ほとんどノーリターンでしょう。もちろん地代は入りますが。

かくして、農地は極度に流動性がなくなりました。私が農村に入った1980年頃は、バブル期到来の頃だったのですが、農地はまったく誰も貸してくれないありさまでした。ようやく、お百度をして借りた田んぼは、原野に戻ってしまったような谷津田でしたっけね。

結果、日本の農業には極端に流動性を欠く性格をもってしまいました。それは農地のみならず、新規の農業参入を拒否したがるというもうひとつの閉鎖的体質にもつながりました。

減反初期は涙を飲んで減反に従い、食えずに街に働きに出た農民も、既に40年、1世代半です。親父の悔しさは息子には伝わりません。ましてや孫には。こんな国家生産カルテルをして、そしてそれを護持することこそが最大の日本農政のテーマだなどということを続けていれば、やがて農民は生産意欲を失い、国家に寄り掛かる気持ちが強くなってしまいます。

一方、私たち小規模農家はやせても枯れても専業で歯を食いしばって生きている自立した農家層です。
特にわが畜産農家では兼業は存在しえません。日常的な管理が365日あるからです。正月も家畜の世話をしてからお屠蘇を飲みます。そしてシャワーを浴びて酔いをさまして白ゴム長を履いて、午後の仕事に取りかかります。いくら正月でも、酔って家畜には触りません。

この両者をひと括りにして「農家」と呼ぶことにはいささか無理がありませんか。兼業農家はよき村人、よき隣人であることは確かですが、私たちとは違う階層です。

ところで、かつての石破農政の品目横断政策、簡単にいえば集積を指向した農政に対して、JA全農は激しい反発をしました。それは「零細農家が切り捨てられる」という不安感でした。品目横断政策はこれ自体独立したテーマになりえるので詳述は別な機会にしますが、「零細」、つまりは兼業の切り捨てを許さないというのが、現在のJA全農の考えでした。

そのときに、一般国民に対してJA全農は「零細農民に死ねというのか」というような言い方をしました。事情をよく知らない都会の消費者は、自民党が富裕な農家ばかりに補助金を出して、苦しい「零細」を潰そうとしていると考えました。当時野党だった民主党も批判を繰り返しました。

とんでもない言葉のマジックです。「零細農家」は町の収入で食べているのですよ。米の収益など余祿に過ぎませんよ。
小規模農家こそが、「零細農家」の手に余っている農地を集めてがんばろうとしているわけです。ようやく日本農業の宿題だった、土地の所有権と耕作権の分離という古くて新しいテーマの解決の曙が見えてきたのにその芽を摘み取るとは!

兼業農家に土地を手放せとは言いません。所有権を移転しろとも思いません。ましてや企業に売れとも思いません。第一、農地法が現実いまだはまっていますから事実上不可能ですけど。

兼業農家はやる気のある農家に貸せばいいだけです。一年に10数日しか使わないトラクターやコンバインは機械ごと借り主に貸し出せばいいのです。今の米価なら、働く手間をかんがえたら、収益的にはいい勝負でしょう。ならば、有為の村の農業者に貸せと言いたい。

私の村の友人は、その方式で20町歩ちかくを集めてエコファーマー認定をとり、大規模米作りを始めました。そのための消費者の受け皿も作りました。インターネットでの販売も始まりました。そして田植えや、かかし作り、稲刈り、味噌作りなどのイベント企画も考えました。食味を科学的に分析して、肥料配分を考えたり、機械を効率よく運用する研究会も作りました。

ところがこれに対しても約3割の減反がかかる、お上はやれ、米粉にしろ、飼料米にしろと言ってきます。
そのまま食べれば素晴らしいモチモチのコシヒカリの新米を泣く泣く米粉にしました。しかし米粉だけではとうてい売れません。しかたがないので、試行錯誤の上にうどんやスパゲティにしました。すると、今度はうどんの製造所許可と、スパの製造所許可は違う、別に建設せよとの無理無体。

あげくに民主党の農家個別所得補償とやらで、黙っていても所得保障されるならこっちのほうが楽だべぇと思う貸し手が増えて、どうも来年は下手すれば4割は耕地が減るかもしれないと忘年会でボヤいていました。この冬、彼は一軒一軒、酒ぶら下げて夜に頭を下げて回るのでしょうね。地代も色をつけねばならないでしょう。まったく民主党はくだらないことをやる。

ひとつ農水省に聞きたい。あんたらは一体どっちの農業を伸ばしたいんだ。兼業農家なのか、私たち専業農家なのか。

農水省はその決断がつかぬままに、護送船団よろしく兼業農家というパートタイム農家を温存したままTPP時代を迎撃しようとしています。

■写真 おぼろな早朝の靄に浮かぶ野原。

■追記 けい様。すいません。後継者を馬鹿にするつもりはまったくありません。むしろ頼もしい日本農業の若武者たちです。

■追記2 文字が小さくなりました。今まで大きな文字も使えたのですが、急にニフティの都合で使用できなくなってしまいました。私自身、見えにくいのですがいたしかたありません。ごめんなさいね。

2010年12月19日 (日)

兼業農家問題というボトルネックを解決しないで自由貿易などに対抗できない

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私はやせても枯れても専業農家だし、27年前に農家になりたくて都会から来たわけですから、兼業に対して理解が及ばない部分があります。私にとって農業とは、文字通り一から土地を買い、家を建て、鶏舎を建て、農業機械を揃え、畑や田んぼを野原から作ることだったわけです。自慢話ではなく、それしか知らなかったのです。

それに対して先祖代々の大きな家を持ち、広い整備された畑や田んぼ、ありとあらゆる農業機械がズラリとあり、後継者ともなろうものなら親から新車とバカでかいトラクターすら買って貰える(←う~ん、だんだんひがみっぽくなってきたことを自覚)境遇で、農業が出来ないと言うのは、この口か、この口かと思ってしまいます。

しかし、現に今の村ではそうなのです。グラフがありますので見てみましょう。

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先進国で農家戸数が減少する傾向にあることはどの国も一緒です。喜ばしいことではありませんが、それ自体は致し方のないことなのかもしれません。世界共通の流れです。

しかし日本の場合の農家の減少パターンは、世界の中の異例中の異例の形をとっています。1960年代と比べて農業就業人口が4分の1になったのはわかりますね。1196万人から、252万人へ、各種の就業人口の中で、農業の占める割合はわずか4%弱です。

ここまではいいとしましょう。問題はその先です。農家戸数は同じく606万戸から、285万戸と約半分にしかなっていません。となると、なんと2006年には、農家戸数が農業就業人口を上回るという椿事が発生してしまいました。
農家戸数だろう、問題ないじゃんって。そうではありません。、農水省の作る農業統計では「農家戸数」とは農業を専業とする農業者がいない戸数を指すのです。まさに役人用語の典型。実態を隠すためのカラクリ数字です。

このグラフで分かることは、今や週末や田植え、稲刈りの時のみ農業をするパートタイム農家、つまり兼業農家(*所得より他の収入が多い第2種兼業農家のこと)が、本職を上回ってしまったことを示しています。

パートタイム農家数が本職農家数を上回るという「不思議の国ニッポン」の風景です。

この兼業が異常に増えて、専業を追い抜くという構図は、実はわが国独特のものです。他の先進国、たとえばフランスあたりと比較してみるとわかります。

同じように60年代から農家数は減少する傾向がありながらも、農業生産は伸びています。とうぜんのことですが、パートタイム農家などというあいまいな存在は極小です。足腰がしっかりとした根性のある農家が育ったのです。これをして「フランス農業栄光の半世紀」と言うそうです。「日本農業衰退の半世紀」とはえらい違いです。

普通に考えるとフランスのほうが常識的な姿だと言えるでしょう。もっとも機械化の進んだ稲作においては、手植えがなくなり、機械植え一本となりました。肥料も化学肥料に、農薬も田植え前の除草剤と数回の殺虫剤、殺菌剤ていどに変わりました。たぶん稲作の実働は2週間を切っているのではないでしょうか。

というわけで、単位面積あたりの労働は大幅に軽減されたはずで、この労働の余剰を使って、通常の国ではより大きな面積を耕作管理していくことになっていきます。ところがわが国では、そのような農地の拡大、経営体質の強化にとつながりませんでした。

その最大の理由は減反政策です。1970年から始まる減反政策は、減反をベタ均一に集落や地域に割り当てるということをしました。ですから皆、少しずつ田んぼを減らしてしまったわけです。デコ山さんはどこそこの谷津田の奥の方、ボコ山さんは水はけの悪くて困っていた田んぼという具合に捨てていったのです。

それでなくても村の中でアッチコッチととっ散らかっている農家の田んぼに、一律減反を強制すればそのようになります。

さて、この減反政策を進めた農水省の中には、ふたつの考え方が存在しました。ひとつは小農(小規模農家)維持派で、今ひとつの派は日本農業の経営強化を目指す「集中と選択」派です。この二派の確執がこの減反政策の背後にあります。

小農維持派はベタ一律減反をすることで、痛みを分かち合う方針を考えたのだと思います。村と字(あざ)の共同体でそれを背負って、皆んながんばって米価を維持しようや、と言うところでしょう。ある意味、農村共同体には収まりのいい考え方ではあります。

一方、「集中と選択」派は、この減反のプロセスをやる中で、必ずふるいにかけられるようにして弱い農家は田を手放して、それがやる気のある農家かそれを借り受けて集積化していくとかんがえたと思います。そして時間をかけて農地はやる気のある農家の元に集約されていく、と構想しました。

そして、笑えることには両派ともその目論見は破れました。なぜなら農家は田を手放さなかったからです。そして農地を保有したままで、街の仕事をしながらの兼業農家にドーっと走り去っていってしまったのです。

小農はただでさえ少ない農地が削られては食えないので小農のまま真っ先に兼業に走りました。一方やる気のある農家も減反で営農意欲を削がれて、これもまた農業から去っていきました。

本来なら、この田んぼのこの部分を1ヘクタール、ここを1ヘクタールと計画的に整理し、それをやる気のある農業者に一括して貸し出すような農政であれば、70年代の終盤には農家体質はそうとうに強化されていたはずです。

しかしそうはならず、一律減反をし、しかも減反の痛み止めとして減反奨励金という飴までつけた結果、どうなったのでしょうか。農家は揃って体質強化には向かわず、減反奨励金の飴を頰張りながら町に働きに出てしまって農業の兼業化が完成していったのです。

こんなことをやっていて、しかもクルクルと3年ごとに思いつきのように変化する猫の目農政を半世紀やってしまえば、まぁ日本農業は弱体化して当然すぎるほど当然でしょう。農水省は日本で最低レベルの脳死官庁です。あのような官庁に3万人もの役人はいりません。30人程度の農業企画庁のようなシンクタンクにしてしまえばいいのです。

それはともかく、かくして、今でもまったく状況には変化ないどころか悪化の一途を辿り、とうとう票ほしさに兼業農家の所得補償までしてくれるという民主党の政策まで登場する始末です。

今までの自民党農政は、とりあえず生産にかかるコストを助成したものでしたが、民主党は「すべての農家」の財布にお金を直接入れてくれるのだそうです。ありがたくて涙が出そうです。民主党にとって農家はもはや乞食に見えるようです。農業は福祉分野か、安楽死をさせたいのでしょうか。

この民主党の農業政策は、米価の固定化を狙った減反政策の落とし子だったにすぎない兼業農家の永久固定化にすぎません。コメント欄でどなたかがおっしゃっていましたが、日本農業は強くもあり、弱くもあるのです。

私は、兼業問題は日本農業のボトルネックだと思っています。この問題を直視して、しっかり解決していかねば日本農業の自由貿易に向けた強化はありえないのではないでしょうか。

■写真  とうとう最低気温が0℃になりました。強霜が降りました。本日寒さに震えて書いております。


2010年12月18日 (土)

日本の農産物が高いというのはホントなのか?

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たくさんのコメントをありがとうございます。しっかり読んで後ほどお答えさせていただきます。「りぼん」様、おひさしぶりです。お目付役がいないと寂しかったですよ。cowboy様、山形様、回復されましたか?

日本農業ほど誤解されている産業分野はないと私は常々思っています。このブログにも、かつて農産物完全自由化論者が上陸してきて議論を吹っ掛けられました。

ただ、彼らは相手が悪かったですね。私が「日本農業を守れ」とか、「自由化断固阻止」と言っていると勝手に決めつけていたらしいのです。

私は日本農業は今でも強いし、政権党と農水省がおかしな農政をせねばもっと強くなれると思っている人間です。だから別に「守ってくれ」などとまったく思いませんし、むしろ、危ない外国農産物の洪水をせき止めて国民を守っているのはオレたちだろう、と思っているくらいです。

「自由化阻止」を言ってどうにかなるなら叫びましょう。私たち有機農業業界は、いち早く10年前に有機JASというグローバリズムをまともにくらっていますから、グローバリズムの正体はよく知っています。有機JASが上陸するとわかった時に農業者はふたつに別れました。

研究し、対応を考えて備えた者。一方、多くの仲間は背を向けて住み慣れた個人産直の世界に戻るか、有機農産物の表示そのものをあきらめました。

私は前者でした。このことについては、長くなりますから別の機会にお話するとしましょう。有機以外の分野の方にも多少参考になることがあるかもしれません。

さて今日は、うちのブログに来襲された農産物完全自由化論者の方が言っていた、日本の農産品を頭から高いと思う錯覚について考えてみましょう。

FTAの議論の時もこういった論法がありました。FTAを結べば安価な輸入農産物が大量に入ってきて、市場価格はさらに下がり、それによる国民の経済的な利得はA円であるのに対して、一方仮に日本農業が潰れてもその損害は彼らの老後の年金をみてやればいいくらいなのでB円。

A円>B円=輸入農産物に門戸を開放したほうか国民にとって利益。だから「開国」すべし、という論理です。

日本国民が不当に高い価格の食料を買わされていて、多大な出費を強いられているという話は、どうも都会では「常識」みたいになっているようですね。こんなことをのたもう人たちは、日本の農産物が皆、米価のように決まり、野菜も卵も高関税でブロックしていると思っているらしい。まぁ強烈な印象なのはわかりますが、実証的じゃないんだな。

ではほんとうにそうなのでしょうか、そこでデーターを調べてみることにしました。

具体的な数字を出して比較してみましょう。まず、2003年に総務省統計局が出した「世界の統計2003年版」に家計消費支出の食料支出の占める割合のデーターが出ています。

日本は25%弱です。この数字はカナダ、ドイツ、イタリア、イギリスとまったく一緒です。特に日本の食卓が不利益をしているという証拠はありません。先進国としてはいたって妥当な水準です。現在はこの統計の2003年時よりデフレが進んでいますから、たぶんもっと下落した数字が出るはずです。

次に、ドイツと比べた野菜の価格を調べてみました。ゲッチンゲン市の青空市での価格調査のデーターがあります。青空市で生産者自身が売っていますから、流通コスト(卸と小売)が省かれているので、実際のスーパーではこの2割増していどとお考えになればいいと思います。こちらの道の駅などの直販所などと比較するのが適当だとは思いますが、まぁいちおうの目安にはなります。

ドイツ・ゲッチンゲン市では、ピーマンが300㌘ひと袋で156円。卵が1個36円。平飼卵は1個42円。トマトは300㌘で95円。ブロッコリーが1個で246円。カリフラワーが1個150円。この価格をご覧になって、ドイツって農産物が安いと思われる方があれば、ハイ、手をお挙げ下さい。

ものにもよりけりですが、ほとんど同じ価格水準か、品物によってはもうオレ、ドイツに移住したいと思いましたもん。平飼卵が42円ですぜ、俺なんかより高いじゃないか、ウルウル(泣く)。

たしかに農地一戸あたりの耕地の広さはドイツは20倍ですが、だからと言って20倍安いなんてことはまったくないのは、今のゲッチゲン市の調査でお分かりになりましたね。もしそうならば、日本では耕地の大きさに比例してドイツの20倍のピーマンひと袋を3千円強で売っていることになりますからね。ああ、やってみてぇ。すぐに蔵が建つっぺよ(笑)。

欧州の耕作面積は確かに日本の平均20倍程度ありますが、大半は歴史的に牧草地や穀物畑、休耕地として利用されており、実際に畑として利用されているのはその4分の1以下程度にすぎません。ですから額面だけの耕作面積で農業の生産効率を計るのは勘違いの元です。

この日本農業の耕作面積が狭いということも、日本農業非効率論者が好きな論点ですが、ヨーロッパ農業の実態見てから言えよというかんじです。そして日本の農家の耕作面積が狭く見えることの原因には、兼業農家まで含めてやたら農民数が過剰に出る統計のとり方にも一因があるのです。
このことは別の機会に論じるかもしれません。

話を戻しましょう。さて、国産「高級」ということの筆頭によく上げられているコメですが、スーパーで流通するコメの最も安い相場が2000円/5㌔で、1合換算にすると60円、1合で茶碗3杯分ですから、一杯で20円となりますね。
魚沼コシヒカリはこの約倍ですから茶碗一杯あたりで40円。これが高いですかねぇ。日本最高、つまりは世界最高級のお米が、お茶碗3杯で120円、缶コーヒー1本120円と同じ価格です。

1食3杯魚沼コシヒカリを腹いっぱい食べて120円、これを高いと言われると・・・なんともかとも。カリフォルニア米だと100円切ることは確かでしょうが、だからなんだと言う気分です。魚沼米食べて120円のところを、カリフォルニア米で90円になって幸せですかね。私には理解できませんです。

高いと思うのはコメ一回の購買支出が最低5㎏単位だからで、5㎏あれば小家族でそうとうに持つでしょう。それはコメが保存がきく特性があるからで、パンを一時に5㎏買えば同じことです。同じ国産「高級」といってもホンマグロの大トロの「高級」とは同次元の問題ではないのです。

牛肉にいたっては和牛という自他ともに認める世界最高級の牛肉を、オージー・ビーフやブラジル・ビーフごときと比べること自体ナンセンスです。次元が違うものを較べているからです。ホンマグロとビンチョウマグロとを比較して、ホンマグロが高いと言っているようなもので、バッカじゃなかろか。

欧米でグレードの高いステーキを食べれば、それなりに高いのです。品質のグレードを無視して価格を論じても仕方がないと思いますがね。

さて、この農産物価格問題を論じる時にもっとも注意しなければならないのは、輸入農産物を日本円に換算する場合、その時々の為替レートに大きく左右されることです。

今のように80円台まで円高が進んだ時と、かつてのような固定相場制の時のように360円台とは比較にもならないでしょう。今の80円相場で輸入農産物を買えばなんでも安い気がしますよ。輸入農産物が「安い」と言う人は、この為替相場が生きものであることを都合よく忘れているような気がします。

大手商社が海外駐在員に、コメの現地価格の統計を出してもらったデーター(「データーブック世界の米」)があります。北米での価格差が面白いのでご紹介しましょう。1986年に1217円/5㎏だったものが、99年には3200円にと倍になっています。同じ北米コメの価格がどうして円換算するとこれまで違うのでしょう。

中国が元高になった場合(たぶん遠からずなりますが)、今の価格が3割、5割値上がりということもありえます。

なぜこんな大きな変動が起きるのか、答えは簡単。為替相場の上下です。輸入に頼ると上下し続ける為替相場によって食料価格が上下してしまいます。まったく品質と関係がないところで国民生活が左右されてしまうのです。もし、またもや円安にふれて170円にでもなったらどうするんでしょうか。一挙に食品価格が2倍になるんですよ。これは国民にとって「利得」でしょうか?

自由貿易というのは為替というフィルターを通して流通します。このことを農産物完全自由化論者の皆様はお忘れのようです。

現代はデリバティブマネーが為替相場を左右する傾向がありますから、今がたまたま極端な円高だからと言って、こんな水モノの為替相場に国民の命の糧を預けていいとは思えません。

さて皆さん、ここであらためてお聞きします。よく言われるように日本の農産物は果たして「高い」のでしょうか?


■写真 お仕事シリーズ第2回。わが農場の鶏舎と給餌車。鶏舎はすっぽり防鳥ネットで覆われています。うっとおしいだな、これ。作業効率悪くなるし。風ですぐ穴が開くし。島根の方のように2カ所程度の穴でとやかく言われたくないですよ。


2010年12月17日 (金)

グローバリズムを、日本農業は自分流の方法で受けて立つしかないのです

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韓国口蹄疫が慶尚北道から、とうとうソウルや仁川のある京畿道に侵入しました。発生地は京畿道百鶴面の養豚農家の農場です。これを受けてこの発生農場500m以内にある23農場1万8300頭が殺処分されました。

これで累計850戸の家畜15万2千頭が殺処分されたことになります。この京畿道では4月にも発生しておりこの疫学的関連を調査しているそうです。(「日本農業新聞」12月16日による)

さて、この何回かTPPとグローバリズムが日本の農業にどんな影響を及ぼすのか、少しずつ考えてきました。まず、日本のTPP推進派の人たちがよく「見習うべき例」として引き合いに出す韓国を検討してみました。

ハッキリ言って、韓国はまったく参考になりません。あまりにもわが国が置かれた状況と違うからです。人口は約4千万人とわが国の半分以下、国土は4分の1、ひとりあたりGDPは1万7千ドルとこれまた日本の半分以下です。

となると、国内市場があまりに狭いために韓国企業は国内だけでは食っていけないわけです。だから必然的に外需依存になったわけです。

日本は1億3千万人という先進国では最大規模の単一市場をもっています。しかもひとりあたりGDPは3万4千ドルであり、所得水準もユーロ安もあってEUよりやや多めの世界最高水準をキープしています。

私はなにもバブル期のジャパン・アズ・ナンバーワンなどという気はさらさらありませんが、日本人はいたずらに卑屈にならないで自らの姿を素直に見た方がいいと思います。

試しにちょっと数えてみましょう。、日本には自動車企業だけでいくつあります?トヨタ、ホンダ、ニッサン、スズキ、ダイハツ、富士重工、あ、そうそう三菱と日野もあったっけ。なんと8社ですよ!こんなに一国に自動車会社がひしめきあっている国など、世界にありません。これらが潰れることもなく、シノギをけずりながら過当競争を繰り広げているのがわが国なのです。

続いて、家電メーカーはどうでしょう。願いましては、パナソニック、シャープ、東芝、日立、サンヨー、忘れちゃいけないソニー、まだなんかあった気がしますが、ざっと6社が壮絶バトルをしているのがわが国です。

カメラ・メーカーはどうです。キャノン、ニコン、オリンパス、リコー、ペンタックス、富士フイルムとあり、その上に家電メーカーのソニー、パナソニックや電算会社のカシオまでが参入して行くバトルをやっています。9社ですか。もうほとんど日本の会社だけで世界のカメラ・メーカーを網羅したようなものですね。

米国にはもはやテレビすら作る家電メーカー自体がなくなりました。ヨーロッパでさえもフィリップスだけに絞られてきてしまいました。欧米の自動車会社すべての数を合わせても日本一国とどっこいくらいの数しかないのです。

たしかに韓国はがんばっています。日経新聞などはしょっちゅう韓国を見習えと叫んでいます。しかし、日本人が思いつく韓国企業はいくつでしょうか?サムスン、LG電子、ヒュンダイ(現代)、鉄鋼のポスコ、あと辛ラーメンの農友もあったっけ。

これらの韓国企業は、たしかに巨大で米国市場にしっかり食い込んでいます。液晶テレビでは日本企業は後塵を拝したくらいです。しかし、これらの企業以外に聞いたことがありますか?たぶんないはずです。なぜなら、ありませんから。

韓国は1997年のデフォルトを出しそうになったあげくIMF管理になって以降、財閥を解体し、一極集中的な巨大企業独占の形になりました。経済学でいういわゆる「ガリバー型独占」ですね。小人の国にガリバーひとりというわけです。

では日本は何型かといえば、マジンガーZ・バトル型とでも言いますか、日本という世界一苛烈な消費市場で、巨人たちが日夜国内戦を戦い続けているという国なのです。

これもそうとうに変わっています。断言しますが、こんな国は世界で日本だけしかありませんよ。私たち日本人は生まれたときから見慣れているから、あたりまえに見えるだけです。

ではひるがえって、この「不思議の国ニッポン」の一産業部門の農業がタダモノであると思いますか。日本農業だけが、この世界一競争が激しい国の消費市場で、ひとりぬくぬくと安穏と浮世離れして生き延びてきたのでしょうか。ありえません。

私はよく財界の連中から日本農業だけが国家庇護の元に生きてきたような言われ方をするとムっとなります。
日本農業が補助漬けで、楽をしても生きてこられたんだろう、というような言い方をされると、なにくそっと思います。
日本農業は老人だけで、もう先はないだろうと言われるとカチンっときます。

あげくに財界が、お前ら農家がやっているからダメなのだ。オレたち企業に農業をやらせてみろ、生産効率が一挙に上がり、米を半値にして、余ったら輸出してみせるぜ。お前らは農地を明け渡して企業に貸してしまって集合住宅に住み、年金を貰って生きろ、などといわれるとブルブル震えるくらいに怒りが込み上げてきます。

冗談ではない。甘く見るな。私たち農家も、あんたらと同じくらい激しい競争をしているのだ、と叫びたくなります。日本農業は、家電メーカーや自動車メーカーと一緒の、世界一すさまじい日本市場で生きているのです。私たち農業だけが安穏としていたわけではない。

間違いなく、世界でいちばんおいしい牛肉、豚肉、鶏肉、リンゴ、なし、イチゴ、モモ、スイカ、大豆、コシヒカリ、アキタコマチ、あ、いかん忘れてた、わが家業の卵(笑)。まだまだあります。というか、むしろ日本農産物で味で負けたという記憶があるもののほうが少ないくらいです。

しかもこれらが、規格はうるさいときています。、ちょっとサイズが違うと共選でハネられるわ、出荷時期を誤れば産地間競争で負けるわ、さんざん。他の産地が天候でつぶれると、よその産地は喜ぶ。ああ、我ながらせこい。

私は日本農業を、日本産業のなにか別のカテゴリーに入れることはやめてほしいと思います。私たちは、しっかりと自分の足で立ち、自分の力と才覚で生きています。なにか社会的弱者のように言うのはやめてほしい。

時折、都会の連中に向けて叫びたくなります。
哀れみの目で私たち日本農業を見るな!
そして見下げたような視線でオレたち見るな!オレたちはしっかり生きているぞ、この土の上で、と。

日本は韓国のように自国の農業を生贄として差し出す必要はありません。なぜなら、世界一食味に優れ、しかも規格が世界一厳しく、常に品種改良を重ね、市場調査をせねば自国内部の産地に負けるというような農産物は世界広といえど私たち日本農業しかないからです。

あえて言いましょう。日本農業は強い。ある意味世界一強い農業かもしれない。
なぜなら、この世界一苛烈な国内市場を生き延びてきた日本農業がひ弱であるはずがありませんから。

グローバリムは来ます。残念ながらやって来ます。菅政権がその方向を定めました。いまさら、千葉に行ってトマトを食べても遅い。国家として管首相はグローバリズムの道を選択したわけです。

あとは条件闘争が残るのみです。JA全農や農水族は抵抗するでしょう。しかしそれも、グローバリズムを軟着陸させるための時間稼ぎでしかありません。

ならば、受けて立つしかないでしょう。日本は日本なりの方法で受けて立ち、さらに強くなるしか途はないですかすから。


■写真 われらが畜産農家の象徴、白ゴム長。百姓はいろいろありますが、白ゴム長は私たちだけです。前のがあんまりボロだったんで、新しいの換えました。

2010年12月16日 (木)

もしEUが日本だったら、関税外障壁を使いまくるだろう

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私が小規模農家であり、有機農業界の住人だと言うと、必ず言われる誤解を解いておかねばなりません。私は日本農業開放否定論者ではありません。むしろどちらかと言えば、「世界の時流の流れの中でいつまでも関税障壁をやっている場合じゃないだろう」という考え方です。

ですから、貿易自由化論者が言う「ならば関税自由化してみたら、いかに国産農産物が競争力がないことが証明されるだろう」という意見には半分賛成です。、

この自由化論者の言う前半分「完全自由化」はいいとして、後ろ半分はうなずけません。「いかに国産農産物が強いかが証明される」と私は思っているからです。

その前に前提としての「農産物完全自由化」などというのはありえない空論だと私は考えています。なぜなら、国内の農業という自国の基盤的部門を軽々に「完全」自由化して喜ぶ国は、かの米国 まで 含めて皆無ですから。

米国は輸出補助金という悪名高いWTOイエローボックスの反則技を繰り出し、一方、EU諸国は関税外的障壁の常連さんです。

EUが米国相手にやっている遺伝子組み換え農産物の輸入拒否は、農業の理念的な問題であると同時に、というかそれ以上に、関税外障壁の一部です。米国産の農産物をブロックするということにかけては、EUは日本の人後に落ちません。いや、日本など足元にも及ばないタフ・ネゴシエイターですから。

そもそもが、EUという地域国家間連合体は、米国の津波のような農産物輸出に対するブロックとして生まれました。美しい平和理念で飾っていますが、実態はヨーロッパのブロック経済圏を作ることにあります。

安全保障だけなら既にNATOがありますでしょう。あえてEUを屋上屋をして作らねばならない動機の最大のものは、なんといっても農業でした。

EC時代から、小はマーマレードから、大は牛肉、ワインまで恐ろしいほどの時間をかけて基準、規格をすり合わせて今のEUがあります。ですから、その手練手管において、欧州ほど手強い国家群はないでしょう。

さて、現代の世界では自由化論者の言う「完全自由化」という概念自体が、ありえない空論なのです。他国に対しては「自由化」という鉾を使い、自国の楯としては関税「外」障壁を使い分けているのが世界の国々なのです。しょせん農産物の市場自由化といっても、仮にFTAなりTPPなりで国内市場を開けてしまっても、防ぐ手段はゴマンとあるわけです。

たとえばかつてわが国は中国の雪崩的な農産物輸入に苦しめられました。あの苦い記憶が、日本の農業関係者にトラウマとなっています。いったん国内市場を開けてしまったら瞬く間に市場を安値で制圧されてしまうのではないか、という恐怖です。

では立場を置き換えてわが国がEUだったとしましょう。そしてかの中国が欧州にFTAをいいことに雪崩的な農産物輸出をして、欧州農業を圧迫する構えをみせたとします。まぁ現実には、あんな遠くまで農産物の輸出攻勢はかけられませんけど。

EUは日本のコメのように関税という方法を使わずに、たとえば農産物の安全性と環境破壊問題を楯にして輸入禁止措置を取るでしょう。「冗談じゃない、シロアリ駆除剤をかけたホウレンソウなど入れられるか」というわけです。港でストップ、市場にたどり着けることもできません。

一度この手は日本の海産物がやられました。たしかカキのような貝類だったっけな。EUは日本の海産物加工場の衛生基準がEU基準に照らして劣悪だとして、輸入を拒んだのです。EUの検査官が来日して、重箱の隅をつつくような立ち入り調査をしたそうです。

わが国の基準には適合していても、EUの基準ではダメだというのですから、やってくれるなぁ、です。たぶんノルウェイあたりに焚きつけられたんでしょうね。

これは立派な関税外障壁です。しかし、いくらWTOに提訴しても勝てません。自国民の健康の保護はなにより崇高な国家の存在理由ですから。

もし中国の毒餃子の相手国が、柳腰ニッポンではなくEUだったら、そしてあのような「知らぬ存ぜぬ、毒はそちらの国で入ったんだろう」というようなふざけきった態度を中国がEU相手に取ったとしたら、大使召還ていどは辞さないでしょうね。

自国民の健康の保護、食品テロからの防衛の視点から見て当然の措置です。

あるいは中国農民の置かれた悲惨な状況を、「飢餓輸出のためのダンピング行為」だと指弾するでしょう。欧州人ならぜったいそうします。そしてマスメディアで叩きまくります。

EUにとって農産物に人権問題をからませるくらい平気の平左なのです。もちろんOIEの清浄国ステータスなどあたりまえすぎるほどあたりまえの関税外障壁の武器です。

つまり、FTAを結んだとしても、「農産物市場は開放していますよ。原則はいささかも変えていませんよ。しかし、こんな危険で非人道的な農産物は、自国民の保護と人権上の観点から改善が見られるまで輸入禁止とします」という論法です。

市民語に訳せば、「オレの所の物はしっかり買え。しかしお前の国のものは難癖をつけて買ってやらんぞ」というわけです。

お分かりになりましたでしょうか。農産物交渉はジュネーブだけでは決まらないのです。よしんば農産物「完全自由化」となってしまっても、やりようはいくらでもあります。

■写真 畑の上に広がる空って、どうしていつもすがすがしいのでしょうか。


2010年12月15日 (水)

韓国口蹄疫事件を通し見えてきた韓国の「開国」の現実とは

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Aさん。
お身体の調子はいかがだろうか。少しは食べられるようになっただろうか。

私のほうは相変わらず、口蹄疫を追いかけている。なんだまだやっているのか、というあなたの声が聞こえてきそうだが、今なんとなくだが、宮崎口蹄疫事件を別の目で眺められるようになったんだ。

私のブログは元来農業全般をあれこれを考える場所だった。こんなひとつのテーマで8カ月間も費やしたのは初めてだった。今や老舗の口蹄疫ブログとなってしまった。といっても、口蹄疫を考えるブログなんて今や5本の指くらいになってしまったんだけどね。

さて、今、私は口蹄疫問題を単独の事象に終わらせずに、もっと広い日本農業の問題や経済とリンクさせてみたいと思うようになってきた。

こんなふうに考え出したのは、TPPと韓国口蹄疫の爆発というふたつの事態が同時に起きたことがきっかけだった。韓国と日本を比較する中で、なにか見えることがありはしないかと思っている。
少しおつきあいしてもらえるかな。

ところで韓国という国は、非常に変わっている国家なのだ。GDPの40%が外需依存という世界でも稀なる異形な経済をもっているんだ。だから自由貿易政策こそ彼らにとって生き延びる唯一の途だった。

韓国が、1997年にアジア 通貨危機をまともに浴びてデフォルトの断崖絶壁まで追い詰められたことは覚えているだろうか。そのとき、韓国はIMFの緊急支援をもらってようやく亡国の危機から救われた。ちなみに日本も唯一の支援国だったが、彼らは忘れちゃったみたいだな。ま、いいか。

IMF管理の下に入り、韓国はIMFの事実上の主人である米国の言うがままに財閥を解体したり、金融市場の自由化に踏み切ったりした。ここで韓国の新しい経済体質が生まれた。それが、極度の資本の自由化と市場を外国に依存するという体質だ。

今まで韓国経済の大黒柱だった財閥を解体するなどは、誇り高いコリアンにとって受け入れがたい屈辱だったと思われるが、彼らはラッキーにも災い転じて福となすような追い風に恵まれていたんだ。

資源が安かったことが第一。
石油はアジア通貨危機以降の7年間も原油価格が低迷するという幸運が続いた。ウエスト、テキサス・インターミディエート(WTI)という原油先物市場は1バレル30ドルという低位安定をしていた。昨今の100ドル超えなどウソのような安さだ。当時、まだ中国経済は今の隆盛ではなかったので、韓国はその前のひとときの原油や鉱物の安値市場を味わうことができたというわけだ。

また90年代末から21世紀にかけて米国は空前のITバブルと不動産バブルに沸く。これがなんと言っても、韓国の起死回生の最大原因となった。

安い原料で作ればバカバカと米国で売れる。そして韓国政府はウォン安に為替相場を固定しようとした。資源安、米国の好景気、ウォン安、この三つが揃ったので、韓国はIMF管理なんていつのはなしかという気分に酔いしれることができた。

さぁ、作れ、さぁ輸出しろ!輸出こそ韓国のエンジンだ!という強気が韓国を支配した。シャンパン開け放題で21世紀に突入したというわけだね。

ところが2004年を境にして、これらの韓国経済バブルを支えていた要因がどんどんと消えていったんだ。韓国ウォンはいくらウォン売りをしても支えきれずに,とうとうウォン高に転じるようになった。もうウォン安・ドル高を武器にした価格競争力が通用しなくなってきた。

おまけに原油価格や資源価格は、中国などの新興経済諸国の追い上げにあってたちまち国際市場価格が高騰するようになった。つまり原価がどんどん上がっていくというわけだ。

そしてとどめの一撃はなんといっても2008年9月15日のあの世界的大災厄だった。覚えているかな、リーマンショックさ。サブプライムローンの危機をきっかけとする金融破綻で、米国を初めとする各国は大変な経済危機を迎えるようになった。世界同時不況の到来だ。

4割ものGDPを輸出、それも対米輸出が主力でまかなってきた韓国にとって、これはサンリンボウにテンチュウサツ、ついでに厄年がいっしょに来たようなものだった。輸出激減、通貨暴落の津波が韓国を一瞬にして呑み込んだ。

こんな時期に日本の経済評論家は、韓国経済を手放しで褒めたたえて、韓国企業に学べ、サムソンはソニーなど目じゃないなどとと叫んでいたのだから、脳味噌の中を見てみたいものだよ。

それはともかくとして、対米輸出が激減するとなると、内需頼みにシフトするしかなくなるわけだが、そうはいかなかった。もともとコリアの人口は4800万程度だから国内市場が小さすぎる。

わが国のような、ややビンボーたらしくなったとはいえ、1億3千万人スケールで、内需が基本の、しかも成熟した目と舌が肥えた市場とは大違いだ。

話はちょっと逸れるが、日本は世界で有数の内需依存型経済をもっている。外需依存率はGDPのわずか16%でしかない。あくまで内需が基本。輸出は相手先のご当地で作っていただいても平気なわけだ。米国で販売される車は全部メイドインUSAだ。日系米国法人の工場で、アメリカ人が作っている。

ともかく、なにがなんでも輸出しないことには韓国という国が自転車から転げ落ちて坂の下まで落ちていってしまう。IMF危機以降、外資をしこたま導入して、ほとんど外資に乗っ取られたような韓国企業にとって、借金を返すためにはともかく外国に売ることしか生き延びる方法はなかったのだ。

今の韓国経済はなんとスワップで借りた金を、スワップで返済してなんとか持っているというありさまだ。なんか宮部みゆきの「火車」みたいな話だね。小説は個人だったが、韓国の現実は国家経済単位だから大変だ。

話は長くなったが、これが韓国がFTAを国是とする理由だ。与党も野党も、農民が喚こうと暴動まがいのデモをしようと、自給率がグチャグチャになろうと、ともかく輸出、輸出、輸出、これしかテなかった。

そこで韓国は国際競争力をつけるために、昨日の記事でも書いた通り、世界中の国々や地域と自由貿易協定を締結するに至った。これが韓国の「開国」した理由だ。果たしてめでたいことなんだろうかね。

どこかの大学のセンセーが、韓国は「開国」の先見性があってすごい、日本も韓国に見習って「開国」すべきだと言っているのを聞いた時には、この人はすぐに大学を辞めて、吉本興業に再就職すべきだとおもったね。

それはともかくとして、韓国はこの時点で自由貿易国家、言い換えればタックスフリー(無関税)国家になる途を選んだわけだ。タックスフリーによる輸出競争力の強化。

これは逆に言えば、関税という普遍的な武器を捨てたノーガード国家になることを意味する。

とうぜんのことだが、タックスフリー国家は、輸入農産物の攻勢を覚悟せねばならない。
普通の国なら国内農業を防衛する武器は三つある。安価もあるが、輸出攻勢に来るほうが高いというのは考えにくいので省く。

●ひとつめは、関税障壁。古典的だが非常に有効だ。ただし、WTO体制下ではいつまでも今までどおりではいかないのも事実だ。
●二つめは、国産ブランドに対する市場の信頼。
●三つめは、やや邪道だが有効な関税外障壁である清浄国ステータス。

ところが、韓国は関税という最大の武器を自分で捨ててしまった。そして、国産農産品のブランド力は低いときている。韓国牛肉は和牛とは比較にならないのだ。うまくない上に安くない。韓国人が日本に来て、牛肉とはこんなに美味いものかと土産に買い込んだという話はどうもホントらしい。プルコギの本場がこれでは困るね。和牛の種牛の精液盗難事件があるたびにいつも韓国が犯人扱いされるのも気の毒。

となると・・・参ったね。これではもう清浄国ステータスしか「武器」が残ってないじゃないか。

しかも、わが国のように発生国に転落しても、後は二国間交渉で時間稼ぎという奥の手も使えない。発生国に転落したら最後、韓国はFTA締結国からいっせいにメッタ打ちに会うだろう。

今まで韓国に怒濤の輸出攻勢をかけられて国内産業をメタメタにされてきた国々が、清浄国から転落した瞬間にどどっと来る。アルゼンチンやチリなどの南米諸国は牛肉をさぁ買えと言ってくるぞ。こわいぞ。味は同じで、しかも韓国牛よりずっと安いんだから。

ひょとして口蹄疫発生国も輸出攻勢かけるのではないか。拒否する理由がないもの。もはやたまらない悪夢が始まる。韓国牛は市場から一掃されてしまう危機に直面しているのだ。

これが自由貿易の現実だ。

私にはTPPを手放しで礼賛する気にはとうていなれない。ただし、国がその方向に舵を切ってしまったのなら、それに耐えられるだけの力を日本農業が身につけねばならないと思っている。韓国の農業を見ているとつくづくそう思う。

宮崎口蹄疫事件は防疫の大切さを教えてくれた。これはTPP時代に、大きな国際競争力となる私たち農民の「武器」なのだ。

とうとう今日の新聞読むと、韓国の殺処分は15万頭に達しそうだ。韓国農民にエールを送りたい。防疫は国境を超えてやるものだから。

話が長くなってごめん。なに途中は読まなかったって(笑)。


■写真 北浦の湖岸の揚水風車です。


2010年12月14日 (火)

韓国の口蹄疫対策はFTAと一体だ

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韓国の今回の口蹄疫を見ると、韓国の今までとって来た防疫方法が根本的にどこかで過っていたのではないか、という思いにとらわれます。

今回の韓国は10万3千頭の殺処分を出しながらも,、江原道を除く京畿道、忠清北道、忠清南道、慶尚北道、江原道にまで拡大を続けています。広さにおいては宮崎事件など取るに足らないほどです。これを防疫の壊滅的失敗と言わずしてなにをそう呼ぶのか、というほどの失敗です。

韓国の口蹄疫防疫政策の特徴は、世界でも類を見ないは徹底したリング・カリング(ring-culling)政策でした。リング・カリングとは、無理に訳せば「リング状選別政策」、あるいは「リング状殺処分政策」とでもなるのでしょうが、発生点から一定の半径内(韓国の場合3㎞)を無条件で疑似患畜、患畜を問わず、全殺処分にする方針です。

いや~、苛烈ですな。うちの農場にモニタリングに来た家保の獣医師も、「あんなことが出来る国はそうそうないですよねぇ」と呆れるというか、感心していました。

この韓国産檄辛トウガラシのような防疫方法はどうして生まれたのかを少し考えてみたいと思います。私はこれは韓国のFTA政策と不可分であるように思えます。そう、「貿易対策としての防疫対策」なのです。

現在、韓国と相手国の議会で批准されて発効したFTAは、願いましては・・・チリ、シンガポール、EFTA(欧州自由貿易連合=スイス、ノルウェー、リヒテンシュタイン、アイスランド)、ASEAN(東南アジア諸国連合)、インドとの5件です。

韓国は東南アジアの全域、EU地域の一部、南米の一部、インドが既に自由貿易圏となり、次いで、発効ここそ至らないが交渉が妥結した国々は以下です。

まず筆頭はなんといっても世界一の消費市場である米国を筆頭にして、EU(欧州連合)、ペルーとなります。米国、EUという荷台地域で既にFTAが発効するのはもはや時間の問題というわけです。

そして交渉中のFTAは、カナダ、GCC(湾岸協力会議)、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、コロンビア、トルコなどがあります。

ちなみに、日本とは交渉が中断されており、中国、ロシアとは共同研究が行われている状態です。
(以上、韓国外交通商部の資料による)

つまり、韓国はTPPなどという環太平洋規模いうケチな話ではなく、北米、南米、中東、EU、東南アジアといったほぼ全世界と自由貿易協定体制に既に突入しているわけです。

これを「開国」の進んだ韓国、「開国」の遅れた日本という表現をする人がいますが、私はまったくそう思いません。
韓国経済の宿痾は、非常にいびつな形をしています。極端な外需依存、輸出シフトなのです。

韓国経済の実に40%弱が外需に依存しています。しかも韓国国内での完成品生産率が高く、同じ輸出品といっても日本のそれが、たとえば自動車などにしても米国で売られる日本車のほとんどが米国製であり、部品もまた日系米国法人が生産しているのと対照的です。

このような輸出先の経済や雇用になんら貢献しない韓国の消費財の雪崩的輸出は、とうぜんのこととして激しい貿易摩擦を引き起こします。米国で全米自動車労組が゛米韓FTAに強硬に反対したことは記憶に新しいことです。

そしてこのFTAによりてヒョンダイやサムスンなどの製品を無関税で輸出殴り込みをかけられる反面、これらの対象国と地域で生産される農産品が、韓国でも同じように生産されており、しかも韓国の価格競争力が弱いとなると、とうぜんのこととして韓国農業が大打撃を受けることになります。

このFTA路線は、盧武鉉(ノムヒョン)政権が始めたのですが、農業部門の抵抗はすさまじくく韓国農民が国際会議の開かれる香港まで出ばって現地の警官隊と乱闘になるという珍しい光景が繰り広げられました。おいおい、他人様の国で暴れるんじゃないよ。これじゃあ農業フーリガンってよばれるぞ(笑)。

まぁそれはともかく、韓国はこのような農民の激しい反対運動を蹴散らして、大統領制という日本国首相などは及びもつかない強大な権限集中によって与党を賛成につけ、国是と化したように自由貿易体制になだれ込んで行ったのでした。

前置きが長くなりましたが、この韓国のFTA路線の強行とほぼ同時期に現れるのが口蹄疫のリング・カリング政策です。これは偶然ではないと私は考えます。

韓国はGDPの4割を外需に依存するという体質のために(ちなみに日本の外需依存率は16%ていどですが)のために取った、というか取らざるを得なかった世界規模のFTA政策の結果起きた韓国農業の無関税状態に対する防衛手段としてこの檄辛口蹄疫方針を取ったのです。

これが関税外障壁としての口蹄疫対策です。つまり清浄国であることを死守するために、仮に発生したとしても速やかに清浄国ステータスに復帰するためにいかなる形でもワクチンを使用せずに、容赦なく全殺処分をかけていくという方法です。

日本はFTAを国是としているわけではありませんので、韓国のようなタックス・フリー国でない分だけ対処の余裕があります。日本は仮に清浄国復帰が多少遅れたとしても、結局は輸出国との二国間交渉で清浄国復帰までの数カ月間をだらだらと時間稼ぎしていでいればいいのです。

一方、韓国はそうはいきません。発生国に転落した瞬間、南米諸国などの「ワクチン接種・清浄国」の牛肉にまで輸出攻勢をかけられるハメになります。

このときに韓国牛肉の品質の低さが問題となります。行ってみればわかりますが、韓国牛肉はうまくないんだな、これが。韓国人旅行者が日本に来ると和牛の焼き肉を必ず食べて帰るといわれるほどです。和牛のような国際ブランドではないだけに、単純な価格競争になってしまうのです。

まさに待ったなし。常に尻に火がついている状態だと思えばいいでしょう。

私は今回の韓国口蹄疫を見ていると、たぶん清浄性確認が甘いのではないかと思わせられます。清浄国復帰を焦るあまりに、藁、堆肥などの中のウイルス処理が甘く、家畜関係車両の消毒も同じく甘いように思えます。

早期発見-初動リング・カリングに頼るあまり、ウイルス制御が失敗し、いったんウイルスが漏れだして貿易網をかいくぐってしまうと、とてつもない広域がパンデミックに陥ってしまいます。

私は今回の韓国の口蹄疫事件は、無理なFTA体制を維持するために敷いた、これまた無理なリング・カリング政策の結果だと思えます。私たちは、TPP問題を考えるときに、口蹄疫対策とからめて考えていかねばならないのではないでしょうか。


■写真 もう紅葉もおしまいです。雨に濡れたもみじの葉はひときわ美しいですね。

2010年12月13日 (月)

「日本農業壊滅論」と「日本経済、農業によって壊滅論」はメダルの表裏だ

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昨日のわが茨城県議会選挙は、民主党が4分の3を落選させて現有6議席に止まる惨敗に終わりました。自民党との1人対決区ではすべて敗北です。自民党は現有議席を割り込んだものの、議会の過半数を制しました。

これは言うまでもなく、1年2カ月前の衆院選で民主党がすべての1人区で勝利するといった構図がまったく逆転してしまったことを意味します。

民主党の敗因はもううんざりするほどあるでしょうが、ことわが農村部においてはひとつしかありません。TPPです。

あまりにも唐突に、なにひとつ下準備もなく、最大の被害者となりうると考えている農業界との何の相談もなく、APECの議長国として成果を上げたいというみみっちい野心にとらわれての菅「仮免」総理(←自分で言ってりゃ世話はない)のTPP方針の発表でした。はっきり言って馬鹿としか言いようがありません。

第一民主党内で完全に意見が二分されているありさまです。
地方選出議員、言い換えれば農村部を地盤とする民主党議員は「TPPを慎重に考える会」を作りました。その会長は誰あろう、宮崎口蹄疫で名を馳せた山田正彦前農水大臣です。同じく口蹄疫を宮崎現地で戦った現副大臣の篠原孝氏も同じく矛先を揃えました。

いわば「TPP農業壊滅論」と言っていいかと思います。

そして実にこの「慎重に考える会」に集まった民主党議員はなんと200名!与党議員のほぼ半数弱が反対ということになります。身内が半分も反対していて、TPP政策ができると思うほうが変です。例によって党内議論などまったくなかったことがわかります。

安全保障政策や農政という国の形の原則にかかわることに、民主党は統一された政策を持たない弱点が、またまた出ました。

一方、前原誠司外相を中心とする推進派も同じ数だけ民主党内にいるようで、このようなことを言います。
「GDPに占める農業の割合は1.5%でしかない。こんな農業を守るために残りの98.5%を犠牲にするというのか」。

こんな意見は別に前原氏のオリジナルというわけではなく、私たち農業者はまたかい、というほど耳にタコができそうなほど聞かされたフレーズです。原型は経済同友会や経団連のこのような認識にあります。前原氏はそれを口移しにしたに過ぎません。

米倉弘昌・経団連会長はこう言います。
「TPPに参加しないとなると、日本は世界の孤児になる。競争力なき日本農業の構造改革を促進するべきである」。

経済同友会はかねがね、「農業は日本経済の障害となっている」とまで極論していました。その財界の考えの先に出てきたのが今回のTPP積極参加論だとみていいでしょう。いわば「日本経済、農業によって壊滅論」です。

では農業界はといえば、JA全農は毎日その準機関紙の「日本農業新聞」を使って、大反対の声を張り上げています。大規模デモも何回も行われました。

今回の茨城議会選挙もJAはひさしぶりに反民主で統制をかけたのではないでしょうか。前回の衆院選では、JAになびく単協が多かったのとは大違いです。

それはさておき、この「日本農業壊滅論」とそのメダルの裏側の「日本経済、農業によって壊滅論」はほんとうに今の日本農業の姿を映し出しているのでしょうか?

私ははなはだ危うい議論だと思っています。私は日本農業はそんなにひ弱だとは思わないし、TPP推進派の財界や前原氏が言うようなまるっきり国際競争力に欠けるものとも思わないからです。

結論から言ってしまえば、日本の畜産ほど高度でおいしい畜産製品を作る国はないし、野菜や果樹においては品質の高さ、品種の多さにかけては世界一級のレベルに達しているでしょう。

うそだと思うなら、横浜中華街の料理人に聞けばいい。口を揃えて、世界でいちばん美味い中華街は横浜で、その理由は日本の食材が世界最高だからだと言うことでしょう。どうしてこんな国の農畜産業がお荷物なわけがありますか。馬鹿にするなと言いたい。

JAがTPPに反対しているのは、今800%弱の関税をかけて「保護」している米の自由化が主な原因でしょう。
ではここでお聞きしたい。
日本民族が2千年にわたって磨き抜いてきた米に勝てる輸入米など、世界のどこにあるのでしょう。あったら教えて下さい。カリフォルニア米ですか?それとも中国東北部ですか?まさか東南アジアなどといわないで下さいね。

米輸入が問題だと言うならば、どこの国のどの銘柄が日本市場で国産米にとって脅威となるのかを言うべきでしょう。食味的に日本米にもっとも近い(それはあたりまえ。日本人が作ったんですから)カリフォルニア米はロッキーの雪解け水の量に規定されているために生産の限界があります。米国の国内需要をまかなうことで需給バランスが取れています。

むしろ日本からの対米輸出がJA全農の視野に入っているほどです。価格問題だけをクリアすれば、日本米は全米を席捲するでしょう。

中国東北部も日本の商社が種をもって行って作らせていますが、いい水が少ないことと中国沿岸部市場の高品質化に合わせて国内需要で消化しきっているようです。安全性という中国農産物最大のネックを別にしても、中国にわが国の米市場への参入する力はないと思います。

この両国とも、とうてい1億3千万人の日本市場など狙う余力はありません。つまり、仮に関税をゼロにしても、日本の米市場に新規参入してくる度胸のある国は考えにくいのです。

実はかつて米国は、コメの輸出業者が日本政府に圧力をかけて来たことがありました。アメリカン・アップルやチェリー、オレンジの対日輸出攻勢の頃です。しかし、すぐに断念しました。理由は関税ではありません。

アメリカン・アップルやチェリーはそのどぎついレッドにふさわしく驚嘆するまずさで、瞬く間に日本市場から蹴りだされました。米国のオレンジ業者は、その安さでたちまち温州みかんなど蹴散らせると思っていたようですが、まぁご覧のとおりで、日本のみかん業界がかえって高品質になって強力になったことを手伝ってしまったくらいです。

では、関税ゼロとなったら野菜がどとどっと入ってくるでしょうか?よく日本農産物は高い、それは国が補助金漬けにして高いコストをかけているからだ、なんて知りもしないことをわけ知りに言う評論家がいますが、そもそも野菜なんて関税かかっていませんったら(笑)。

いい意味でも悪い意味でも(やりすぎの弊害もありますが)野菜などの日本農産物は、ジャパン・プレミアムといって世界屈指の高水準の品質、規格が維持されているのです。

価格面においても、今年の夏場のような異常気象時は例外として、私はドイツなどで現地価格調査をしたことがありますが、品目ごとのデコボコはあってもほぼヨーロッパ諸国と同一水準です。日本農産物が高いと言う人が私のブログを攻撃してきたことがありましたが、その人が比較していたのは確か東南アジアでしたっけね。反論するのも馬鹿げていますが、所得水準を考慮せずに食品価格を比較しても何の意味もありません。

だいたい日配の青菜や根菜類をどうやって毎日輸入するというのでしょう。日本市場に輸出するためには、四面海を渡ってこなければならないのですよ。一把の出荷価格が5、60円のホウレンソウを毎日空輸でもしますか(苦笑)。

巷によくいる日本農産物自由化論者の錯覚は、日本の農業にかけられている平均関税率はたかだか16%にすぎず、超高関税はコメ単独なのだということを意識的に見ないことです。米だけ見ていると、かえって分からなくなります。米は農産物の中で非常に特殊な位置にあるのです。これはそのうち詳述します。

そして、日本はEUや北米ではないことです。EUや北米のようなトラックや鉄道輸送で安価な輸出入ができる地域とは違うのです。

ですから、日本に輸出できる野菜類は一握りに限定されてしまいます。これは関税でブロックしているからではなく、そんなものしか輸出できないからです。可能なものは船便を使っての大量に輸出でき、保管がきくものだけです。たとえば、日本の端境期を狙った南半球NZのカボチャやニンジンなどですね。

私は日本の農畜産物は大いに競争力がある力強い存在だと思っています。根拠不明な40%自給率などという自虐的な数字を司令部の農水省やJAが垂れ流すからかえってしおれているだけです。

私たち農業者は農水省の言う「TPPになれば自給率は16%に下落する」というプロパガンダにまどわされずに、しっかりと自分たちの農業の姿を見据えていかねばなりません。

今日本農業に必要なことは、いたずらに危機感を煽ることでもなく、強い点はさらに強くし、弱点を弱点として認めて対策を立てて、さらに強くなることです。

「日本農業壊滅論」も、「日本経済、農業によって壊滅論」も、実は同じ根っこなのです。日本農業が弱く、他の産業に寄り掛かって補助金で延命治療されているような存在だという誤った認識から始まっています。

日本農民はもっと自分に自信を持つべきです。このテーマはもう少し続けます。


■写真 カミさんの誕生祝いの薔薇をドライフラワーにしています。


2010年12月12日 (日)

韓国はウイルス相手にモグラ叩きをやっているように見える

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韓国が空前の口蹄疫大発生をみています。既に10万頭を超え、この感染拡大をどこかで止められなければ、宮崎県のような膨大な被害を出してしまうような気がします。海峡を超えて韓国農民にがんばろうの声を届けたいですね。

さて、なぜこのような大発生を引き起こしたのでしょうか。私たちは宮崎の事例を知っているだけに、今回の事件を他山の石とせねばならないでしょう。

実は韓国における口蹄疫の発生は今年だけで3回目になります。ご承知のように1月と4月で、4月には実に11回のリング・カリング(*一定の範囲内の患畜、疑似患畜を問わない全殺処分方式)と2回の農場全殺処分を行った結果、395農場で約5万頭の牛、豚、羊、鹿を殺処分にしました。

しかし、韓国は一見早く清浄国復帰をなし遂げたように見えても、実は広範囲に口蹄疫ウイルスをなんらかの媒体を通じてばらまいたのではないかという可能性がつきまといました。

つまりこういうことです。OIEに「清浄性(FMDFree)を回復した」と言う時に、eradication「根絶」jlと訳される用語を用います。しかし、ほんとうに口蹄疫ウイルスが一国から「根絶」できるなどということがありえるのでしょうか?

実は「根絶」したつもりでも、ほんとうは発生地域からelimination「排除」したにすぎず、他地域、あるいは他の種へmove「移転」したに過ぎないのではないかと、私には思えてならないのです。

今年の韓国の発生事例を時系列でみてみましょう。12月10日に掲載した地図を一緒にご覧ください。
まず今年の最初の発生は、2010年1月~3月の京畿道ポンチョンでした。これが終息するやいなや同じ京畿道インチョンのカンファで発生しました。

これが4月いっぱい続き、その発生と並行して東に隣接する忠清北道忠州に飛び火しました。
そしてめまぐるしいことには、京畿道の南に隣接する忠清南道の青陽郡で4月末から6月初めまで発生しました。

ここまでが今年の上半期です。京畿道⇒忠清北道⇒忠清南道へと発生が遷移し続けてているのがわかります。

そして下半期です。これは上半期に発生を見た忠清北道の東に接する慶尚北道安東で11月26日に発生して以降、慶尚北道全域で猛威をふるっています。

これを見る限り、韓国のこの一帯の京畿道、忠清北道、忠清南道、慶尚北道、江原道の中で、唯一感染を免れているのは江原道だけだとわかります。

そうです、たぶん韓国においては一見徹底したリングカリングを敷き、3㎞以内を全殺処分にするという防疫方法をとりながらも、実態はその地域の清浄性が確保されただけで、隣接する地域にウイルスを遷移させていたにすぎないのではないでしょうか。

ひとつの地域から口蹄疫ウイルスをelimination「排除」したにすぎず、ほんとうは口蹄疫ウイルスは国内からeradication「根絶」jされていなかったのです。

まさにもぐら叩きです。

どうしてこうも簡単に再発を許してしまうのか、その原因は理解できないでもありません。「日本農業新聞」(12月10日)は、慶尚北道の家畜衛生試験場の確定検査までの申告の遅れを指摘しています。

また、新たに上半期の発生を受けて作られた口蹄疫緊急行動指針(SOP)の見直しが、かえって現場の混乱をもたらしたとの説もあるようです。

新しいSOPに馴れていない地方自治体の現場の公務員が右往左往してしまい、情報伝達が遅れたケースもあるようです。

殺処分現場でも、重機などの機材があっても人員がいないなどの事例も報告されているようです。

防疫警戒も甘く、安東市の場合、口蹄疫が確定された3日後によやく中央高速道から安東市へのICで消毒ポイントが設置されたそうです。

ああ、なにか5月の宮崎県の児湯地域を見るようです。情報伝達の遅れと殺処分の遅れ、まさに宮崎で起きたことと瓜二つです。このような中、畜産農家はどれだけ不安におののいていたのか、胸が痛みます。

かえって、飼料運搬業者などの民間のほうが自主的に情報を収拾し、防疫処置を取ったようです。ににもかかわらず政府発表では、伝播した原因は飼料車などとされています。

確かに疫学的にはそうであったとしても、私はもっと深い部分で韓国は過ちをおかしているのではないかと思えてなりません。


■写真 わが村、湖水地帯の夜明け。

2010年12月11日 (土)

韓国の口蹄疫は殺処分10万3千頭となる!トリインフル同時発生!年末韓国旅行予定の皆さん、ウイルスを持ち込まないで下さい!

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韓国の口蹄疫がとどまることを知らないようです。すでに発生地点から全方向に飛び火し、口蹄疫発生初期2万3千頭余りであった殺処分対象家畜は、この9日午前現在10万9千匹余りで4.7倍に増えました。

にわかには信じがたい拡大のペースです。もう既に宮崎の事件の3分の1に達する処分数です。そして同時になんとトリインフル強毒型(H5N1)も発生しました。

韓国の防疫当局は、すさまじい拡大を続けて止まる様子も見えない口蹄疫と、トリインフルという二重の戦争状態に入ったわけです。しかも、もっとも人口移動が多く、旅行者が溢れるクリスマスと年末においてです。

韓国はつい先だって念願の米韓FTAを締結し、農業を犠牲にしての輸出産業重視政策に転換しました。その直後、このような口蹄疫の津波が全土に吹き荒れています。私はTPPは、畜産にあっては防疫態勢の抜本的な強化なくしてありえないと思っています。

それが証明されてしまった形になってしまったのが韓国の事態でした。今後とも注視していかねばなりません。

そして年末に韓国を訪問する予定の皆さん、発生地には絶対に近づかないで下さい!とくに慶尚北道の慶州(キョッジュ)に旅行される方は厳重に注意してください。慶州は有名な古都の観光地で、よく日本人観光客が訪れる場所です。

旅で履いた靴は、帰国時に履き替えて、ビニール袋に入れてゴムバンドで厳重に縛って帰国してください。衣類も着替えてくださればなおいいと思います。

そして日本政府にお願い。直ちに韓国への旅行注意勧告を出してください。さらに拡がるのならば、渡航自粛勧告を出すべきです。また各空港は厳重な警戒体制を敷いて下さい。入国時の申請、消毒マット等は最低限必要です。

黄色信号が赤に変わろうとしています!今までの口蹄疫とトリインフルの多くは韓国からの伝播が原因でした。
もう二度と宮崎の悲劇は見たくありません!


殺処分家畜10万頭突破、軸山農'パニック'
(大邱(テグ)=韓国聯合ニュース)ホン・チャンジン記者

慶北(キョンブク)の口蹄疫事態が発生10日を渡しながら北部権に続き東海岸圏まで移って拡散一路を歩く局面だ。

先月29日安東(アンドン)で発生した口蹄疫は国内代表的韓牛産地の'永住-安東(アンドン)ベルト'を含んで慶北(キョンブク)北部権5市・郡の畜産農家をさらったのに続き、9日東海岸圏霊徳(ヨンドク)まで移った。

これに伴い、口蹄疫発生地域は全6市・郡に増え、発生件数は31件に集計された。

防疫当局は口蹄疫拡散を防ぐために殺処分と消毒などを施行しているが、地域では畜産業基盤が崩壊になるかも知れないという憂慮まで出てきている。

●慶北(キョンブク)北部権焦土化
 今回の口蹄疫は慶北(キョンブク)、安東市(アンドンシ)、臥龍面(ワリョンミョン)養豚団地で発見された疑い豚が陽性判定を受けながら始まった。

 引き続き、去る5日初期発生地から21km離れた慶北(キョンブク)、醴泉(イェチョン)の韓牛農家で去る7日26km離れた慶北(キョンブク)栄養の韓牛農家で口蹄疫が各々確認された。

 事態は終わらないまま、去る8日これら地域と触れ合った慶北(キョンブク)永住、のろしでも口蹄疫が相次いで発生して被害地域は慶北(キョンブク)北部権5市・郡に増えた。

 ここに初期発生地から60km余り離れた慶北(キョンブク)、東海岸圏霊徳(ヨンドク)の韓牛農家で口蹄疫が追加で発生するということによって畜産農家の憂いはより一層深くなっている。

 幸い前日疑い申告が入ってきた慶州(競走、傾注)の韓牛農家疑い申告は陰性判定が出たが、霊徳(ヨンドク)の韓牛農家2ヶ所を含んだ疑い新高値はずっと受け取られている。

●殺処分家畜試料で'陽性'判定
 のろし.永住の口蹄疫は今まで疑い症状を見せた家畜を検査して陽性判定が出たことと違い拡散防止のために予防的次元で殺処分した家畜試料の検査結果という点で差を見せる。

 のろしの韓牛農場は口蹄疫事態が本格化する以前に、先月25日安東(アンドン)危険地域内韓牛農家から牛を買いとって入植した永住農場は、先月27日安東(アンドン)の口蹄疫発生農場で韓牛を買ってきたと分かった。

 防疫網が本格構築される前に家畜が売買されながら、口蹄疫ウイルスが無差別的に広がった可能性が提起されたのだ。

 防疫当局はのろしと永住の口蹄疫拡散を防ぐために半径500m以内すべての偶蹄類(牛、豚、鹿などひづめが二つの動物)家畜を殺処分して農家消毒を実施した。


醴泉(イェチョン)地域も口蹄疫非常(醴泉(イェチョン)
=聯合ニュース)キム・ヨンミン記者
 慶北(キョンブク)、安東(アンドン)で発生した口蹄疫が近隣醴泉郡(イェチョングン)に広まった中で醴泉(イェチョン)のある移動統制警戒所で防疫作業が進行している。
 2010.12.7 yongmin@yna.co.kr

●防疫当局.地方自治体'遮断防疫'
 防疫当局は口蹄疫感染豚に対して発生地から半径3km以内、狭い半径500m以内の危険地域で育てるすべての偶蹄類家畜を殺処分することにした。

口蹄疫発生初期2万3千匹余りであった殺処分対象家畜は9日午前現在10万9千匹余りで4.7倍も増えた。

当局は今まで8万8千匹余りの殺処分および埋没作業を終えて、80.7%の推進率を記録したが霊徳(ヨンドク)韓牛農家の陽性判定により、対象家畜がより一層増えることになった。

しかし、先月26日被害農場主から弊社家畜申告を受けて二日過ぎてこそ試料採取を実施するなど初期対応に不十分だったという指摘を受けている。

また、口蹄疫が発生した安東(アンドン)養豚農場主が、他の軸山仁(サニン)らと共に先月初め口蹄疫発生国に分類されたベトナム旅行してくるなど
口蹄疫頻発地域の旅行者管理にも弱点があらわれた。

口蹄疫事態と関連して
海外旅行を行ってきた畜産農家や旅行客が国内入国時徹底した検疫を受けるようにする法律案が発議されたが国会に係留中の点も問題点と指摘された。

◇畜産農家"根本的対策"要求
 地域の畜産農民らは"口蹄疫事態が一日も早く解決されて安定をさがしたら良いだろう"として当局は紛争が起こった時はんだ付け式処方でなく、根本的な解決策を提示しなければならない」と主張した。

道口蹄疫対策本部は「口蹄疫発生地域内殺処分をしながら、移動統制警戒所を追加設置して拡散を防いでいる」としながら「被害農家に殺処分補償金総額の50%を先に支給して、発生農場力学関連農家を把握して防疫措置を取る中」といった。

韓国で強毒性鳥インフル 口蹄疫も

 【ソウル共同】韓国農林水産食品省は7日、同国西部の全羅北道益山で、捕獲した野生のマガモ1羽から強毒性の鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)を検出した。聯合ニュースが伝えた。

 同省は捕獲地点から半径10キロ以内を管理地域に指定し消毒などの防疫作業を始めた。同地域内には鶏とアヒル計約282万羽が飼われている。

 同省は同日、南東部慶尚北道英陽の牛の飼育施設で口蹄疫の発生を確認。近くの同道安東を中心に感染を確認した飼育場は30カ所を超え、殺処分した家畜は10万4千頭に達した。口蹄疫の疑いがあり検査をしている飼育施設は増え続けており、さらに拡大することが憂慮されている。

韓国の口蹄疫での家畜の殺処分と経済的被害が過去最悪に

口蹄疫の拡散が「破竹の勢い」、政府も当惑
Yahoo! Korea 2010年05月02日


仁川で始まった口蹄疫が史上最悪の水準に向かっている。 政府機関の畜産研究所まで口蹄疫にやられている状況であり、政府は当惑を隠せずにいる。
農林水産食品部は口蹄疫が全国的に拡散するのではないかと心配している。

農食品部によれば、口蹄疫が発生した畜産技術研究所では、5月2日現在も家畜の殺処分が進行中だ。 政府は研究所近隣の忠南大動物資源研究センターをはじめとして半径500m以内の農家の牛と豚など1914匹を殺処分している。

政府は先月、忠清北道忠州で口蹄疫が発生した後、口蹄疫危機警報水準を「最高レベル」で維持してきた。 だが、これをあざ笑うかのように口蹄疫は拡散し、金浦、忠州、青陽などの地に広がっていった。

今回の事態が、中部内陸を経て南部の畜産農家にまで拡散した場合、その被害は想像出来ないほどのものとなるとされていて、農家と防疫当局は非常に緊張している。

京畿道漣川の疑われる事例は、幸い陰性という判定が出たが、忠清北道丹陽市と忠清南道でも疑われる事例が相次いでおり、懸念が大きくなっている。

農食品部の関係者は、「仁川で始まった今回の口蹄疫は3週間ぶりに金浦、忠清北道忠州、忠清南道青陽に続き、忠南、青陽まで4つの市と道に広がった」として、「これは坡州と忠州、洪城など3道で発生した2000年の記録を越えた状態」と話した。

経済的被害も史上最悪となる見通しだ。

畜産研究所の分も合わせると、処分された家畜は4万8700にのぼり、殺処分の補償金額は歴代最大であった2002年の531億ウォンを越えることになるものと見られる。 ここに政府買い入れ費用と防疫費用まで加えれば費用はより一層大きくなる見通しだ。

政府はひとまず共同支援団体を設けて、防疫体制の問題点を点検するなど拡散防止に総力を傾けることにしている。

しかし、問題は、防疫当局がまだ感染経路を発見できていない点だ。 特に忠北道丹陽市と忠南道礼山市など、新たな地域での疑いが相次いでいて、全国的な拡散に対する憂慮が大きくなっていことも防疫当局の悩みを深くさせている。

季節的にも口蹄疫の伝播に最適の時期であり、被害を計るのは難しいという分析も出てきている。


■写真 不吉な朝焼けの空。

■cowboyさん。お身体は大丈夫ですか?心配です。

2010年12月10日 (金)

農業なんて、なにが美味いかということに尽きると思う

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私は子供の頃から大の卵好き。ラーメンにまで卵を落とすガキだった。
ま、自分の好物が家業とはありがたい。

卵黄がビシャと潰れる卵のことをなげいた声を聞いた。

ええっとね、卵屋として回答させていただきます(笑)。黄身がすぐペショと破れるのは、卵黄を包んでいる卵膜が弱いからだ。
卵というのは宇宙でしてね、生むトリからすればヒトに食われるために生んでいるわけじゃない。

卵は幾重にも防御されている。種の保存のためだから。卵殻、その下の卵膜、そして卵白、そして卵膜だ。

じゃあ卵黄とは何かっていうと、卵黄の中にある胚を孵化させるための栄養たっぷりの弁当なんだ。
では卵白はっていうと、この弁当と胚という本丸を守るための防御バリアーなんだな、これが。知らなかったろう。

卵白はリゾチウムという溶菌物質をもっている。大方のウイルスや雑菌はこれでやられて、ゴール、つまり卵黄にたどり着けない。

おまけに卵白は、ゲル状になっているために、ちょうどカタクリのトロトトロの海を泳ぎ渡るようなものでウイルスなんかもそうとうに筋力がなけりゃあダメだ。だから、私たち卵屋は、この卵白が強いか弱いかをいい卵の判断基準としている。

襲い来るウイルスが次々にそれらを突破してきたとして、卵黄と胚の本丸を守る最後の薄い防壁が卵膜なんだね。

ダメ玉は卵白がダレる。つまりパワーがない。もう細菌攻撃に耐えられないんだね。
一方いい卵は、濃厚卵白といって周辺部の白身(水様性卵白というのだが)から、もう一段盛り上がった白身がプリプリしているかどうかに着目する。

濃厚卵白の上に卵黄が鎮座ましましていれば健康でうまい卵の証だ。

そして、この黄身がペショとなるということは、それを包む卵膜が弱い、つまりゴールキーパーがダレているということだ。
ウイルスに軽く突破されて卵黄に突入され、一挙に腐る。あるいはサルモネラなどの感染症をドカンっといくことになる。

そのうち「究極の親子丼」とか、「至高の水炊き」を食べさせてしんぜよ。
なんのこたぁない、みんなうちの食材なんだけどね(笑)。

主役はとうぜんのこととして、わが農場の放し飼いの卵。生んでから4日目の常温保管(夏を除く)が食べ頃。
言っておくけど、生み立てがうまいと思うのは日本人の刺身幻想だよ。
経験的な日数だがね。

ついでに、生み出しのたまご(初卵という)が生涯いちばん美味いなんて「美味いんぼ」に書いてあったが、雁屋哲さんどこで聞きつけたのか。ありゃ卵屋のホラだ。「ホラれたり、雄山」。

生み出しはたしかに卵黄の盛り上がりはすごいが、味にコクがなくて淡白。しょせんは習作の域を出ない。
ほんとうにおいしい卵は、むしろ熟女のみなさんのぽてっとした大きな卵だ。だいたい3日に一個ていどでしか産まないせいもあって、黄身の粘りや味の深さが違う。

さてね、鶏肉もうちのシャモ肉でいこうか。
通常のブロイラーの倍の120日飼っている。

ブロイラー、つまり若鶏ってやつだが、あんなのは女の子で言えば中1。毛もはえてない(下品で失礼)。
それをブクブク太らせて超デブにする技術を使って、なんと2~3㎏もの肉をつけるという魔改造。
ちなみに、同時期のうちの女性従業員(候補)は、その3分の1くらいのスリムな体型だ。

このブロイラーという鶏に対する魔改造は、第2次大戦の時に豚肉が足りなくて、いかに促成で肉をつくるかという兵站の要請から生まれた。

ニワトリが一番美味いのは、これはうちのトリ従業員には秘密だが、生み出しだね。
卵を生み出して1カ月以内。まだ柔らかくて、プリプリしていて、翼も艶を帯びていて、お尻も小さく、目もキラキラ輝いていて、ほのかに咲いたトサカもピラピラと風にそよぎ、ああ、まさに青春(←なんか官能小説みたい)。

こんな生み出しから少しくらいの時期に食うと、ホントにうまい。
う~ん、なんか変態ジジィみたいだがホントだぞ。

われら採卵屋はこれからしっかりと生命力を開花させてがんがん生んでもらう予定なので、とうぜん食えない。
そのうち食ってみたいと思うが、ケチ根性でなかなか出来ない。

親子丼のネギは、有機栽培。今の冬の始まりの頃のネギは特にうまい。
うちの田んぼのセリもいれてみよう。鍋が香り立つぞ。

唐揚げにするなら、わが家製の菜種油を使おうか。
これを語ると長すぎるので、今回は省略。

そしてアイガモ農法のコシヒカリをゼータクにもカマドの薪で炊く。
これもウンチクを垂れ始めると長いので略。

水は森の湧き水。水神さまの祠の横からこんこんと沸きだしている。水についても話たいことはたっぷりあるけど略。

醤油は私の友人の弓削田醤油。これ絶品。高いけど。

味噌汁には、これまた友人の涸沼のシジミでもいかが。
味噌は自家製2年ものと新味噌とのブレンド。
私は若い時には味噌屋になる気もあったので、これも話しだすと長いので、略す。

出汁は那珂湊の網元のダチから貰ったジャコ。
彼との関係もおもしろいけど略。

漬け物は何にしようかな・・、そうだよく漬かった大根の糠漬けはいかが。
この糠床は年季が入っていて、毎年古いのを入れて、新しい糠床とブレンドしている。

略してばっかりだけど、うーん、自分で書いていてよだれがでたぞ。

私、農業なんてなにが美味いかということに尽きると思うもん。
美味いもののイメージがない奴が農業やるなって。

食うこと拒否したらダメだ。
食うのは基本だ。
食うのは楽しい。
食い尽くして死のうぜ。味わい尽くして死のうぜ!

■この記事は体を壊している友人に宛てたものを加筆修正したものです。友人が一日も早く回復することを祈ります。

2010年12月 9日 (木)

韓国口蹄疫が拡大 また灯った警戒信号!

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アジア随一の厳しい口蹄疫防疫態勢を誇る韓国で、またまた口蹄疫発生のニュースです。先日、うちにモニタリングに来た家保の獣医とも話たのですが、「なんであの国、あんなに防疫の戒厳令みたいなことしているのに、毎回毎回口蹄疫が出るんだろうねぇ?」・・・。

半径500mを初動殺処分、幹線道路での厳重な消毒をしているにもかかわらず、過去の事例を見ると必ず飛び火しています。その飛び火もハンパではなく、各所にボンボンと飛び火しています。

正直に言って、なぜか理解できません。農場での防疫レベルが低いのでしょうか。
非常に気持ちが悪い。
なぜなら、この韓国の防疫方針に何か問題があるとしたら、今後日本でも取られるであろう初動殺処分の根拠が揺らぐからです。

韓国の再びの口蹄疫発生は、また警戒信号が灯ったことを意味します。日本でも水際の空港や港の消毒レベルを上げる必要があります。上記の口蹄疫の発生図(農水省発表)は、クリックしていただければ拡大します。

喉元過ぎればはまだまだ早いですよ!

■韓国における口蹄疫発生に関する情報
http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/FMD/korea_2010.html
動物衛生研究所

韓国における口蹄疫の発生
2010年1月7日韓国で、2002年以来の口蹄疫の発生が確認された(下図)。
185頭の乳牛を飼養している農場で6頭の発症が確認された1)。
防疫措置は摘発淘汰および予防的殺処分とし、ワクチン接種は行っていない
1月11日までに発生農場の185頭および半径500 m以内の農場の感受性動物324頭が淘汰された2)。
遺伝子解析により流行ウイルスは近年東南アジアおよび中国で流行しているAタイプウイルス*と近縁であると報告された3)。
13日、疫学的に関連のある農場で2例目の発生が確認された4)。
1例目の感染経路については調査中。2例目については人の移動による伝播の可能性が示唆されている。
16日、3、4例目の発生が確認された5)。
20日、5例目の発生が確認された5) 。本発生は初発の農場から9.3 km離れ、初めてのサーベイランスゾーン外での発生である。
30日、初発の農場から3.8 km離れた乳牛を飼養する農場で6例目の発生が確認された6)。


■韓国における口蹄疫の発生について
農水省消費安全局動物衛生課 11月30日

昨日、韓国政府は、同国の養豚農家において口蹄疫の発生が確認されたことを公表しました。
【発生の概要】
異常確認日:11月26日、28日
確定診断日:11月29日
発生場所:韓国南東部慶尚北道(けいしょうほくどう)安東(アントン)市
飼養状況:養豚農家2戸(それぞれ5,500頭、3,500頭飼養)
防疫措置:発生農家の飼養豚の殺処分、発生農家から半径3km以内に所在する偶蹄類家畜の予防的殺処分、車両及び人等に関する移動制限等を実施しました。
その他:ウイルスの血清型等については、現在確認中です。
2 我が国における対応

農林水産省は、韓国における今般の発生を踏まえて、口蹄疫に対する警戒をさらに強める必要があると考えています。具体的には、従来からの措置に加え、口蹄疫対策検証委員会の意見等も参考に以下の対応を行いました。
(1)全都道府県に対して、
畜産農家に
ア 人・車両の出入りに際しての消毒を徹底すること
イ 発生国に滞在していた人等を農場に近づけないこと
ウ 疑いがある場合に、直ちに家畜保健衛生所に連絡すること
の指導を徹底するとともに、
口蹄疫を否定できない家畜については、写真と検体を直ちに国に送付
することを要請しました。
(2)動物検疫所に対して、
韓国等からの入国者の靴底消毒、車両消毒の徹底
検疫探知犬を活用するなど、韓国からの入国者の手荷物を中心とした持ち物の検疫強化
関係機関・団体と連携し、偶蹄類の動物及びそれらの動物由来の肉等の輸入禁止措置及び船舶又は航空機内で発生した厨芥残さの適正な処理の徹底
することを指示しました。
引き続き、韓国における本病の発生状況等を注視し、全都道府県及び生産者に丁寧な情報提供を行い、発生の予防と、仮に発生した場合の早期発見、早期防疫に努めてまいります。
3 その他

韓国では、本年1月に口蹄疫が発生し、9月に国際獣疫事務局から清浄国に認定されましたが、今般、再発しました。
我が国は、本年1月の韓国における口蹄疫の発生を受けて、同国からの生きた偶蹄類の動物(牛、豚等)及びそれらの肉等の輸入を禁止しており、引き続き、輸入禁止措置を継続します。
口蹄疫は、牛や豚等の偶蹄類の動物の病気であり、人に感染することはありません。
口蹄疫発生国から偶蹄類の動物及びそれらの肉等の輸入を禁止するのは、我が国の偶蹄類の動物がウイルスに感染することを防止するためであり、食品衛生のためではありません。

■韓国の豚肉の輸入停止について
農水省消費安全局動物衛生課国際衛生対策室

韓国からの豚肉等の輸入手続きの保留について

韓国において、口蹄疫発生の疑いが確認された旨、在京韓国大使館から情報提供がありました。
これを受け、農林水産省は本病の我が国への侵入防止に万全を期すため、韓国からの豚肉等の輸入手続を本日付けで保留しました。
経緯

本日7日、在京韓国大使館より、韓国(抱川(ポチョン):ソウル近郊)において口蹄疫の疑いがある乳牛が確認された旨報告がありました。
対応

1.これを受けて農林水産省は、本病の我が国への侵入防止に万全を期すため、韓国からの豚肉等の輸入を本日付けで一時保留するとともに、当該発生について、韓国政府へ詳細な情報提供を求めました。
2.また、動物検疫所において、韓国からの旅客に対する靴底消毒等適切な検疫措置を徹底するとともに、本日、都道府県及び国内関係者に対し、防疫対策を徹底するよう改めて通知しました。
(参考)
口蹄疫は牛や豚等の偶蹄類の伝染性疾病であり、人へは感染しません。
口蹄疫発生国から偶蹄類の動物及びそれらの肉等の輸入を禁止するのは、我が国の偶蹄類の動物がウイルスに感染することを防止するためであり、食品衛生のためではありません。
これまで、済州島からの生鮮豚肉及び韓国本土からの加熱豚肉・稲わらのみ輸入が認められていました。

■農林水産省は7日、牛や豚の伝染病である口蹄(こうてい)疫にかかった疑いのある牛が 韓国・ソウル近郊の農場で見つかったとして、同国産豚肉の輸入を停止すると発表した。
加熱していない同国産豚肉は昨年8月、済州島のものに限って約5年ぶりに輸入を解禁したばかりだった。
在京の韓国大使館からこの日、連絡を受けたとしており、さらに詳細な説明を同国政府に求めている。
 口蹄疫は、口の内部の水膨れや発熱を伴う伝染病。まん延すると家畜への被害が大きいため、 家畜伝染病予防法の対象に指定されている。牛から豚に感染する事例もあるため、 農水省は今回、豚肉の輸入を止めることにした。韓国産牛肉は2000年3月以降、輸入停止となっている。
(時事通信2010/01/07-21:56)


2010年12月 8日 (水)

酢はあくまでも補助的対策としては有効だとする白井教授の意見

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一宮崎人様やcowboy様のご紹介の宮崎の畜産家たちの口蹄疫と戦う姿はほんとうにすごいですね。崇高ですらあります。ほんとうに頭が下がります。 

さてコメント欄で話合われている酢についてですが、以前にもご紹介しましたが、山崎牧場様のサイト(べぶろぐ 山崎牧場日記)にはこのように記されています。参考として引用させていただきありがとうございました。

この白井先生の提案ですと、あくまでもしっかりとした消毒をした上でのことですが、補助的手段としての酢はありえるとされています。
http://koji.air-nifty.com/cozyroom/2010/05/post-aa44.html

(以下引用)

東京農工大学 白井敦資教授 補助対策に提案
      (日本農業新聞より)

口蹄疫対策の補助的な防衛策として1000倍に薄めた酢を散布する手法を提案している。
口蹄疫ウイルスは酸に弱くpH5~6で死滅する。
酢は強酸性でpH3程度だが1000倍に薄めてもpHは4程度。

但し、通常での衛生管理(靴底や車などの消毒・畜舎を清潔に保つ)を徹底した上での補完的な対策である。

 参考:※農業新聞に載っていた酢(ミツカン穀物酢業務用)のpH
  原液×5・・・・・2.59
    ×10・・・・・2.84
    ×100・・・・2.95
    ×1000・・・4.13
    ×10000・・・4.78

具体的な使い方(提供:小林市口蹄疫侵入防止対策本部)

1.動力噴霧器を使って薄めた酢を散布(500倍から750倍)

・動力噴霧器で牛体、畜舎の内外及び周辺に散布。

・雨の日は牛舎内及び牛体に散布。

・牛体には毎日1回、午前中に前と後ろから散布(目に注意)。

・また、餌にかかっても大丈夫です。

2.ハンドスプレーで薄めた酢を噴霧(1000倍)

・朝夕に牛の顔に噴霧。

・車等で外出時には必ず持ち歩き、車の出入り時に噴霧。

・家に帰るときには十分に行う。

・新聞・郵便等を受け取るときもハンドスプレーで噴霧。

・あちこちにおいて体や靴の裏に噴霧。

・搾乳時には、バケツに酢を数滴たらして乳房を拭く。
  (ただし牛乳への混入がないよう注意が必要。)

参考 希釈倍率
500倍 酢20cc 水と混ぜて10リットル
750倍 酢13.3cc 水と混ぜて10リットル
1000倍 酢10cc 水と混ぜて10リットル

酢の種類によるペーハー

1.五倍酢(穀物酢)酸度22.0%
原液 2.0
250倍 3.6
500倍 4.0
1000倍 4.4

2.マルボシ酢(穀物酢)酸度4.2%
原液 2.5
250倍 4.6
500倍 5.2
1000倍 6.6

より低いpH値になるような希釈倍率が好ましい
(山崎記:松本大策獣医師は300~500倍を推奨)

ペーハーの変化、12時間後

矢印(→)の後が12時間後の測定結果。コップに入れて室内で放置。

1.五倍酢(穀物酢)酸度22.0%
250倍 3.6 → 3.5
500倍 4.0 → 3.8
1000倍 4.4 → 4.2

2.マルボシ酢(穀物酢)酸度4.2%
250倍 4.6 → 4.5
500倍 5.2 → 5.2
1000倍 6.6 → 6.7

五倍酢は、若干下がった。下がった理由がよく分からないがpH値は維持されている。
一般の食酢もほとんど変化がない。
半日ぐらいだったら作り置きしていても使えそう。

※踏み込み消毒槽への酢の使用は?

・酢は揮発性があるので、長時間放置するとpH値が上がる。

・希釈により口蹄疫ウイルスを不活性化できるpHは確保できるが「カビや細菌は生育できる」状態となる

・靴底に家畜の糞尿などが付着する事を考えると、アルカリ性の物質や微生物の影響で酢が中和される

上記の理由から、畜舎での踏み込み消毒槽への酢の利用は適さない。

(但し、まめに作り変えるなら一般家庭や商店での使用はできるのでは?)

(引用終了)


■私の農場の入り口です。朝日がこの角度で差し込むのは早朝のほんの5分ほどなので、がんばって待ちました。

2010年12月 7日 (火)

宮崎口蹄疫事件 その145 畜種横断的な「地域防疫協会」を作りたい

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宮崎口蹄疫事件を半年間追いかけてきました。その中でやはりこれだけはどうにかせねばならない、ここを改善せねばダメだ、ということがいくつか残りました。

その中のひとつが、「北海道」様もおっしゃる畜種間の温度差です。お恥ずかしい話ですが、私がこれに気がついたのは相当に遅く、既に終結宣言が出て、「現役養豚家」様の投稿をいただいてからのことです。

その投稿を読むことで、私は日本養豚協会やJASVの動きが、今回の事件の鍵だと知りました。この経過については何度も書いてきていますので簡単にしますが、要は民間の養豚協会と獣医師の団体が、山田大臣(当時副大臣)を動かし、ワクチン接種・全殺処分という大胆な防疫方針をとらせたことです。

当初、私はこの動きに批判的でした。一業界団体と農水大臣の癒着とすら考えていたほどです。その評価が変化したのは、やはりJASVの5月初旬からの現地防疫支援と、現地の宮崎養豚生産者協議会の献身的な動きを知ったからです。

彼らが県や農水省を通さずに、直に農水大臣に「直訴」するという手段を取ったのは、このままでは台湾口蹄疫のように宮崎県のみならず、全国の畜産が崩壊するというひりつくような危機感でした。この危機感こそが養豚業界の原動力だったのです。

それに対して牛関係の動きは鈍かったのは事実です。
片や養豚関係は県レベルでのワクチン・全殺処分に向けた意志一致をしている。片や牛関係は県の方針に従っているにとどまっていたわけです。つまり、養豚関係は既にワクチン・全殺処分が国の方針とされることを想定して組織的な態勢を整えていたにもかかわらず、牛関係はひとりひとりの農家が県と個別対応する所にいたのです。

この温度差こそが、宮崎口蹄疫事件の最大の矛盾、あるいは悲劇だと言っても過言ではないでしょう。県と国の確執以前に、既に畜産業界の中での亀裂が存在していたのですから。

このような養豚関係者と牛関係者との目に見えない確執が、狭い地域で演じられたらどのようなことになるでしょうか。それが現実になってしまったのが、今回の宮崎県の事例でした。

養豚関係は政府の新方針を全面支持し、一方牛関係は「全殺処分しか方法はないのか!」という悲鳴にも似た声をあげました。

私は東国原宮崎県と山田農水省の対立と巷間言われていることの背景には、この養豚業界と牛業界の畜産農家内部の温度差が存在すると思っています。

この問題は形を変えて口蹄疫を総括する時にも現れました。私や三谷先生のようにワクチン・全殺処分に懐疑的な者と、「現役養豚家」様や岡田先生のようにそれを全面支持する人たちとの間の落差です。

私はこれをマーカーワクチン論争のような空中戦で処理する気はありませんでした。そのようなことをやってもケリが着かず、かえって溝が深まるのは目に見えていたからです。私が卑怯とまで罵られても、ワクチン論争を回避したのはそのような理由からです。

なぜなら、宮崎県口蹄疫事件においては現実にはNSP抗体検査を導入する時間的余裕はなかったでしょう。かといって、ワクチン・全殺処分のみが正しい方針として今後の防疫指針になっていくなら、それは明らかに間違っています。

大事なことは防疫方針上のこともさることながら、ひとつの地域での牛と豚の壁を取り除き、地域の「面」としての防疫という新しい防疫概念を打ち立てることです。

好むと好まざるとに関わらず、狭い地域という船に互いに乗り合わせたことを自覚することです。現実の壁は絶望的になるほど厚いのは確かです。

個人でどうかできる範囲をはるかに超えています。これには地方行政がしっかりと中心になってくれないと不可能です。県家保と農業改良普及所、自治体農水課、そしてJAなどが指導する形で、畜種横断的な「地域防疫協会」のようなものを作らないと実現しません。

初期通報者保護もこの組織が対応することにしたらどうでしょうか。家保と民間獣医師の調整もできます。このような受け皿ができれば、宮崎県の蹉跌を再度踏むことは避けられると私は思います。


■写真 欅の樹もだいぶ散りました。ちょっと風が吹くと、桜吹雪ならぬ欅吹雪です。

2010年12月 6日 (月)

宮崎口蹄疫事件と島根トリインフル事件の教訓 地域を「面」としてとらえる防疫が必要だ

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「面」の防疫と「点」の防疫が対立する立場にあると、私は考えません。たとえばそうですね、例として挙げてまことに申し訳ないが、宮崎口蹄疫事件の時の川南町などが典型です。

川南町は全国屈指の畜産地域でした。言い換えれば、密集した畜産団地のような地域構造になっていました。これは川南町が開拓の町だからです。いわば牛、豚の家畜が住民の数より多いのです。

通常の地域においては、このような町ぐるみが畜産拠点となることは、一般住民との摩擦で不可能です。開拓からがんばって畜産を根っこにして出来上がった町だから可能だった光景です。

そしてある者は牛を選び、ある者は豚を選びました。養鶏を家業とする人もいただでしょう。その中にもいろいろジャンルがあって、牛だけでも繁殖、肥育、酪農ととりどりあります。豚も同じ、トリも同じです。

では、これらの畜産農家が「同業者」意識があるかと問われれば、たぶんないと思います。牛の繁殖農家が養豚農家を「同業」とはおもえないでしょう。そのくらい互いに異業種なのです。

私にしてもそうです。今回の口蹄疫事件で、初めて牛や豚の農家を「同業者」と感じることができました。

このようなある意味「点」の集合体の村に、強力な伝染病が襲いかかったわけです。しかも牛豚共通伝染病の口蹄疫でした。だから大変だったのではなかったのでしょうか。

牛屋は牛だけかんがえていればいいとはならなかった、豚屋も豚だけ考えていれば難を免れたわけではありません。牛も豚もなく、ましてや繁殖も肥育もなく地域の総力を上げて戦わねばなりませんでした。

だから、戦いの中でしか生まれない地域一丸となった「がんばろう、宮崎」という連帯感が生まれたのだと他県の者には見えたわけです。

しかし言うまでもなく、これはある種のきれいごとに過ぎる表現です。養豚専門誌「ピッグ・ジャーナル」には現地養豚家の赤裸々な声が収録されていました。JA系統と非JA系の違い、牛と豚の防疫に対する温度差、そして個々の農家の飼養衛生水準のあまりの格差です。

その方は防疫専門家を招いて、シャワーイン・シャワーアウトの設備などに代表される最新の防疫設備を導入しました。しかし近隣は必ずしも同じ歩調で防疫に熱心なわけではなかった。むしろ何もない時には、「変わっているなぁ。あんなことに金かけて」と心の中では思っていたことでしょう。

防疫とは、平時には作業効率を落とし、めんどくさく、ただの金食い虫に過ぎませんから。そして万分の一で発生する感染拡大という非常時に、初めて威力を発揮するものですから。

いや、この言い方も正確さを欠きます。万分の一の事態を事前に抑止することが、防疫の任務です。ですから、ちゃんとした防疫をやっていれば、何も起きない「はず」なのです。永遠の金食い虫であり続けることこそが、防疫の理想なのです。

ところが今回、起きてしまった。この養豚家の農場にもウイルスが侵入しました。シャワーイン、シャワー・アウトをしてすら空気感染までは防げなかったのです。全頭殺処分、そして従業員の一時解雇をせざるをえませんでした。血の涙がでたことでしょう。お察しします。

口蹄疫やトリインフルエンザなどの感染力が強力な伝染病(しかも予防ワクチンすら認められていない!)がいったん地域に侵入すると地域をなめ尽くします。口蹄疫においては牛、豚の違い、飼養衛生水準の差などなく、一切合切を破壊し続けます。これが県外者から見た今回の宮崎口蹄疫事件の総括のひとつでした。

必要とされるのは地域を「面」としてとらえた面防疫の概念です。牛は牛だけでやっていればいい、豚は豚だけではなく、ましてやJA系統がどうしたこうしたでもなく、「地域」を単位として策定されるべき飼養衛生水準の共有化です。

わが養鶏においては、平飼、ケージ、ウインドレスの区別なき地域防疫のすり合わせが必要です。できうるならば、そのためのシステム構築も必要となるでしょう。しかし、その前にともかくも、私たち畜産家は好むと好まざるとにかかわらず同じ地域という「船」に乗り合わせてしまったという自覚が要ります。

残念ですが、今その自覚すらありません。てんでんバラバラに自分の農場しかみていない。自分の農場さえ衛生的なら防ぎきれると思っています。それは幻想です。

私は20年前にニューカッスル(ND)で全滅し、わが手で殺処分までした記憶がありますが、近隣の若い養鶏家にはその記憶がありません。私が漁協とかけあって、中古の漁網を使って防鳥ネットを張っていても、奇異な目でみるだけです。情けない話ですが、わが地域では、湖岸地帯にかかわらず、まだまだ防鳥ネットは普及していません。

だから私は、島根県の発生農家をたかだか網の穴ていどでバッシングする人たちは、現実の畜産の現場を知らないと言うのです。あれが穴程度でなくて、まったく張っていなかった農家にウイルス侵入していたらあと3桁の死亡鶏ていどでは済まなかったはずです。

現実問題として「面」としての地域防疫をするならば、地方行政が全面的にバックアップせねば不可能です。単なる財政措置だけではなく、仮に牛屋が豚屋という「異業種」に対して「もう少し衛生レベルを上げてくれよ」と言えますか。無理だ。

これは地方行政が中に立って初めて可能なことなのです。「がんばろう、宮崎」の総括を、自分の地域に持ち帰って「がんばろう、わが村」とせねばならないのです。このようなことが出来なくて、畜産市場の全面開放を意味するTPPなど百年早いのではないでしょうか。


■写真 紅葉もそろそろおしまいです。欅はもう8割散ってしまい、もみじもだいぶ薄くなりました。その代わり、地面は綺麗です。

2010年12月 5日 (日)

島根トリインフル事件 その2  地域の面としての防疫がないから、発生農場がバッシングされるのだ

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私が今回の島根トリインフル事件をみて感じるのは、一体私たち農家がどれほどのことまで出来るのだろうかという諦観のような気分です。

そりゃ発生農場は防鳥ネットが破けていました。そこからウイルスを持った野鳥が侵入し鶏と接触して感染、というのが疫学調査チームの見立てです。

中海に近い側のシートが破れており、そこを中心に鶏が死んでいたとの報道もあります。たしかに因果関係はあるのでしょう。

早くもその農場主を批判する論調がブログなどで散見されます。「こりゃ出るわ」と、一種はしゃいだ声すら聞かれます。苦々しい気分です。思わず、あんたらに何がわかる!と叫びたくなります。

この農場主は不審な死亡鶏を見つけるとすぐに家保に通報しています。これもあたりまえだ、などと思わないでいただきたい。とてつもなく勇気のいることなのですよ。

宮崎口蹄疫の初期に侵入された第1例、第6例の農場主はいずれも隠匿しようとしませんでした。むしろ家保でしっかり検査をしてくれ、検査結果はまだかと催促しているほどです。結果どうであったのか?

宮崎家保には警戒感がなく、確定までに20日間もむだに使ったあげくに「あなたの所が初発だった」と県が言ってきました。そして全国規模のありとあらゆるバッシングの嵐。デマの洪水。

第1例の農家はとうとう再建を放棄しました。心労がたたったのです。第6例の経営者は人嫌いになったそうです。

世間は、この島根の農場主がただちに届け出たという勇気に共感するより、人は叩ける者を叩きたがるものだと改めて知りました。

このような社会心理が伝染病においてなくならないかぎり、以後、必ず農場主は隠匿に走るようになります。なぜなら、書いてよいものか迷いますが・・・感染家畜の隠蔽など技術的にはたいしたことではないからです。簡単です。

私がかつて遭遇した茨城のニューカッスル(ND)の大流行の時には、NDに罹った鶏を密かに処分する農場ばかりでした。私がそれに気がついたのは、私の風上1㎞にあるある企業養鶏場(現在廃業)から、夜間異様な匂いが漂ってくることからでした。その異様な匂いとは、忘れもしない、焦げたタンパク質の匂いでした。

燃やしているのです。それも人目につかない夜間に。大きな穴を堀り、死亡鶏に灯油をかけて焼くのです。そして消石灰をかけて埋め戻して何食わぬ顔をする。

この島根の発生農場の周囲10㌔にはわずか4軒の養鶏場しかありません。そして死亡羽数もわずかでした。こんなていどなら、自分でスタンピング・アウト(淘汰)し、燃やして埋めて、石灰をかけておけば誰にもわかりません。そして出たロットに抗生物質を緊急投与し、折りを見て淘汰を早めればいいのです。言うまでもなく、家伝法違反ですが。

悪魔の知恵です。そう、畜産家だったら誰でも思いつく悪魔の知恵です。

かつての京都で発生したトリインフル事件の農場主ご夫婦自殺事件のように、感染鶏を処理場(屠殺場)に持ち込もうとして発覚し、社会的に糾弾されて心中を選ぶ、という痛ましい悲劇も起きました。

あの御夫婦には隠匿して楽をしようという気持ちはなかったはずです。起きてしまった感染に驚愕し、従業員の生活を考えて、懊悩のあげく「悪魔の知恵」の誘惑に負けただけです。

初期通報者に対して、手厚い保護がいります。正直に通報したらバッシングを受けるでは、誰が初期通報をするでしょうか。

私は日本の防疫で抜け落ちているのは、「面としての防疫」という概念だと思います。「面」、つまり地域で伝染病対策を策定しようとしていません。家畜衛生協会も親睦団体にすぎず、家保は財政難と人手不足のありさまです。

しょせん最後は、自分の農場は自分で守る、という意識から一歩も先に進んでいません。だから、いつまで立っても「悪魔の知恵」が畜産業界から抜けないのです。

地域の「面としての防疫」をするには地方行政がしっかりと支援して、地域防疫総合計画とでもいうべきものを策定する必要があります。これがないから伝染病が起きれば、すべては農家が悪い、お前が馬鹿だったからだ、で終わってしまうのです。

発生農家の方に、遠い茨城の地から激励を送ります。
がんばって下さい。あなたは模範的な養鶏家なんですから!一日も早い再建をお祈りします。

2010年12月 4日 (土)

島根トリインフル事件 地域のバイオ・セキュリティ向上には財源がいる

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島根県安来市のトリインフル発生農家で、殺処分についで焼却作業が始まりました。
2万3千羽ですから、2005年の茨城トリインフル事件の時よりだいぶ規模は小さいといえます。このていどで抑えられたら、島根県はすばらしい前例を作ったと思います。

もちろんまだ安心は出来ません。同じようにトリインフルH5型のウイルスを持った水鳥が、ただ一羽だと考える方が不自然ですから。現在環境庁も協力して、付近の水辺のカモなどの水鳥の糞を調べていますので、追々わかってくることでしょう。とりこし苦労をしても仕方がありませんものね。

現在発生から5日たち、殺処分⇒焼却処分・消毒・鶏卵の破棄・石灰散布まで進んできています。この清浄化行程までほぼ1週間かかると予想されますので、来週の半ばからこれの終了を待って、周辺4農場の清浄確認が始まります。

焼却は報道のように長方形の巨大な鉄の箱の内部で焼いています。これが農水省の秘密兵器といわれて現地投入された移動式焼却装置なのかもしれません。

かつての茨城県トリインフル事件の際も、焼却処分が行われました。このような焼却炉を使わずに、確か掘って燃やしたと思います。そして完全に燃え尽くしたら、骨を砕いて堆肥化しました。

茨城県家保はこの経験から、鶏はいうまでもなく、牛や豚においてもできるだけ焼却処分することを考えているようです。ウイルスの徹底撲滅を考えるのなら焼却に勝る方法はありません。茨城県は地元自治体のゴミ焼却場と話会いをして、できるだけ焼却炉を使ってやることは出来ないかと模索しているそうです。

ただ一般ゴミをストップせねばならず、またあの独特のタンパク質を焼く悪臭が周辺住民から苦情が来るのではないかなど問題はまだまだ沢山あるようです。たぶん焼却処分は、埋却地をもたない人、掘ってもすぐ地下水が出る地域などに限定された対策となると思います。

それにしても、今回の宮崎県のように29万頭という途方もない数の大型家畜の処分となると、まぁ焼却は無理だったでしょうね。

この発生農場での処分が終わり次第、周辺4農場の再検査が始まります。初動の発生動向調査で行ったのと同様に抗体検査、PCR遺伝子検査、ウイルス分離検査の3点セット検査です。なぜ2回やるかといえば、殺処分と焼却処分、消毒作業をやっている1週間のうちに再びウイルスが飛び火した可能性も考えられるからです。

周辺農場の検査と並行して、清浄化が済んだ発生農場にはおとり鳥が置かれて監視に入ります。定期的に検査して新たな感染がなければ、晴れてこれで清浄性確認がなされたことになります。ここまでやっぱり2カ月間はかかるでしょうね。終了したら、心からご苦労様と言いたい。

ところで、発生農場の防鳥ネットに2カ所穴が開いていて、そこからウイルス・キャリヤーの野鳥が侵入したと批判されています。同業者の私からみれば、防鳥ネットがあるだけまし。ネットがない農場なんてゴマンとあります。ネット設置は法的強制力はありませんから、大枚の金をかけてやる養鶏家はかならずしも多いとは言えないのが実態です。

私規模(3千羽規模)の農場ですら30万円ほどかかりました。しかも中古の漁網を使って自分の手でやってです。市販品のネットを使ってやればこの数倍のコストがかかるでしょう。発生農場規模だと200万円はかかるのではないでしょうか。いや、それでは済まないか。

宮崎口蹄疫事件の時もそう思いましたが、この不景気な時代に生産性に寄与しない防疫にコストをかけるのは非常につらいことです。バイオセキュリティの改善なをやっても、それで収益が増すわけではない、そう思ってしまう農家も多いはずです。

また地域で一カ所がバイオ・セキュリティの取り組みをやっても、隣がやらなければ意味はありません。つまり地域で一丸となってやらないと地域のバイオ・セキュリティは完成しないのです。

私はこれには行政が積極的に関わって行く必要があると思っています。湖周辺の農家には防鳥ネットをつけることを法的義務づけ、その代わりに一定額を補助する仕組みがいります。今もいちおう補助はありますが、なんと一律1万円!(爆笑)馬鹿馬鹿しくて申請する農家もいないようです。

地域のバイオセキュリティをレベルアップするためには、地方財源が要ります。養鶏、養豚、牛も皆同じです。こども手当てなどというやくたいもないことで地方に負担をかけている場合ではないのです。そんな財源があれば立派な口蹄疫やトリインフル対策がとれるのですから。


■写真 美しくも怖い湖の光景。トリインフルさえなければ、ほんとうにいいところに住んでいると思います。


2010年12月 3日 (金)

トリインフルエンザの侵入ルートは北海道経由かもしれない

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やっぱり、島根県のトリインフルエンザのウイルス・タイプは、この10月26日に北海道稚内市大沼の野生のカモの糞から見つかったトリインフルエンザH5N1型(強毒タイプ)と99%遺伝子配列が近似していたそうです。
ああそうか・・・という気分ですね。

この半年の間、OIEには鶏に感染したトリインフルエンザH5N1型の報告はありませんでした。ただし、トリインフル全体では、東アジアで2件の報告がありました。

ひとつがこの11月に香港でのヒトで発症したH5N1型(*中国大陸で感染した模様)、もうひとつが10月に韓国チョーヤ南道で発生したH7N6亜型(弱毒タイプ)のふたつです。
http://www.oie.int/wahis/public.php?page=single_report&pop=1&reportid=9899

通常、私たちは家畜伝染病が起きた場合に真っ先にその侵入ルートとして韓国を疑います(韓国のみなさん、すまんこって)。というのは今までの口蹄疫、トリインフルエンザのウイルス侵入ルートとしては韓国ないしは中国が最有力だったからです。

2004年に発生した79年ぶりというH5N1型高病原性鳥インフルエンザも、その前年に韓国で鳥インフルエンザが流行しています。韓国で感染した鶏からウイルスをもらったカモが、山口県阿東町の発生農場に飛来し、養鶏舎内の鶏に感染させた、という推論です。

カモというのは、非常に私たち養鶏家からすればやっかいな水鳥でして、トリインフルエンザのキャリヤーになるくせに、自分は発症しないという特性があるのです。だから、トリインフルに罹ったカモはピンピンしているので見分けがつきません。

おまけに、カモは人に感染しうるすべてのインフルエンザ・ウイルスを持っているのですから始末が悪いのです。この湖の水辺に生きるカモが、水辺と内陸を往復するタイプの野鳥に感染を移します。大きい鳥ではカラスや、小さいものではスズメなどです。

移された別な種類の野鳥は抗体がないために死亡する可能性が高いのですが、発症前に養鶏場に飛来して、なんらかの方法で鶏、あるいは養鶏機材と接触するとボンっとなってしまうと考えられています。

2004年時には韓国の発生事例とウイルス・タイプが相似性が同じでしたので、これは韓国から来たものだと疑われるようになりました。

これで侵入ルートは解決と思われましたが、実はそう簡単ではなかったのです。
というのは、逆に韓国の鶏舎内にいる鶏からどうやって水鳥に感染を移したのかがよくわからないのです。先ほどと逆なルート、つまり鶏⇒野鳥⇒水鳥だろうと思われるのですが、とするなら媒介している野鳥は抗体がないためにあっさり死ぬのですから、水辺のカモなどにウイルスを伝染できる可能性は非常に低いのではないかという説もあります。

北海道大の喜田宏教授(ウイルス学)が唱える説は、カモの保持するウイルス変異説です。カモは各種のインフルエンザ・ウイルスを保持している可能性があるのですが、カモが糞と一緒に出す毒性のないウイルスが、ある日突然変異して病原性を獲得してしまったという見方です。

このふたつの説があることを頭に置いて下さい。私たち養鶏家にとっては、水鳥⇒野鳥⇒(ネズミ)⇒鶏という説が分かりやすいのですが、ウイルス学や野鳥の専門家はこの説をかならずしも支持しているわけではないのです。ウイルス・タイプの同一性と、外国から渡り鳥(水鳥)が飛来していたという状況証拠だけしかないと思って下さい。

前置きが長くなりました、今回の島根県の事例では韓半島や中国大陸からの渡り鳥由来という説は成り立ちません。なぜなら、今年10月の韓国の発生事例とはそもそもウイルス・タイプが違います。半年以内には韓国、中国共に今日毒タイプのトリインフルエンザを発生させていないのです。

となると、どこからウイルスが侵入したのかということで行き詰まりました。このひとつの謎解きの答えがこの10月にあった北海道稚内大沼のカモのH5N1型の発生です。

本日の情報では北海道稚内のカモの糞のウイルス・タイプと近縁なことがわかったそうです。

「農林水産省は2日、島根県安来市の養鶏農場で発生した高病原性鳥インフルエンザについて、ウイルスは強毒性で、今年10月に北海道で野生のカモのふんから検出された「H5N1型」ウイルスと「極めて近縁」なことが遺伝子解析で判明したと発表した。養鶏農場の近くには渡り鳥の飛来地もあり、北海道の感染した野鳥と今回の発生との関連性が強まってきた形だ。

 国内の農家で強毒性の鳥インフルが確認されたのは2007年1~2月にかけ宮崎、岡山両県で発生した時以来となる。今回検出されたウイルスは「H5亜型」までしか判明していないが、動物衛生研究所(茨城県つくば市)の分析では、北海道のウイルスと遺伝子配列が99%一致しているという。
 強毒性は鶏に呼吸が荒くなるなどの症状が見られ、感染した場合、死亡率が極めて高いのが特徴。人への感染は国内で例はなく、農水省は「通常の生活をしている限り、感染はほとんど考えられない」(動物衛生課)としている。」 
(時事通信12/2)

となると次の謎は北海道からどうやって本州の島根まで来たのかという疑問になります。その答えは、北海道が他の渡り鳥の飛来地とは違った特色があることを知れば解ります。

北海道は、シベリア方面から本州へ、またその逆に本州からシベリアに飛ぶ渡り鳥ハイウエイのインターチェンジのような地点なのです。

シベリアのバイカル湖などと日本を往復する渡り鳥にとって、北海道内の湖はうってつけの休憩地や越冬地となります。代表的な渡り鳥であるオオハクチョウ、コハクチョウ、マガン、カモなどはここで翼を休めて体力を回復してからおもむろにシベリアへ、あるいは本州各地の湖へと再び飛んで行くわけです。

現時点では、この北海道を経由して島根に飛来した水鳥が伝播したのではないかという説が有力になりました。しかし、ならば北海道の各地の湖で同じように強毒H5N1型ウイルスが発見されていなければなりません。

ところが、今のところその情報はないわけです。となると・・・まだるっこしくて申し訳ないのですが、北大の喜田先生の説である、突然変異による強毒性への変異説の可能性も出てきました。


■写真 明け方のわが村の空。何か禍々しい雲がかかっていますが、遠くにはうっすらと夜明けが見えます。

■蛇足 毎日エビゾーだか、イカゾーだか知らないが、くだらないニュースばかり報道しています。口蹄疫の時も、一カ月まるまる報道されませんでした。今回のトリインフルも圧倒的に情報不足です。日本マスコミのこの能天気はどうにかならんのですか・・・。

■蛇足その2 鶏とのトリインフルの「濃厚接触による伝染」とは、私の右下のような写真の状態を指します(o^-^o)。
あながち冗談ではなく、中国や東南アジアでは、家の中の土間に飼っていたり、市場で売る時も、このように触って肉づきを確かめて、羽根をむしらずに売り買いすることも多いのです。もし、保菌していたらバッチリ感染します。


2010年12月 2日 (木)

トリインフルエンザの初動3点検査セットが威力を発揮した

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動物衛生研究所の確定診断でもH5型であることの結果が出ました。まだなんのNの亜型かは判っていません。まぁ亜型判定が出来ても出来なくても、処分方法の結論は一緒ですから困りません。

さて、今回のトリインフル事件で特徴的なことは、その対処の迅速性です。これはたぶん全国の関係者もびっくりしているのではないでしょうか。もちろんいい意味でです。

私たちは、宮崎県の口蹄疫のあまりの処理の遅さを知っているだけに島根県の対応に仰天しました。
それにはもちろんタネがあります。

まずひとつめのタネは、奇妙な因縁ですが宮崎県にあります。
みなさんは、平成19年に起きた宮崎県のトリインフルエンザ事件を覚えておられますか?この時も、実は東国原知事が指揮を執りました。

この事件以降、農水省はトリインフルエンザの防疫方針を改善します。なぜならこのトリインフルは、濃厚接触によりヒトに感染する可能性があるからです。外国では豚を媒介にしてヒト-ヒト感染する新型インフルエンザに転換してしまうケースもありました。
ここが口蹄疫との最大の違いです。口蹄疫はヒトに伝染しません。

農水省が大きくトリインフル対策を変えたのは、今までインフルA型か否かの判定だけに止めていた家保の診断を、トリインフルエンザH5型判定まで拡げたことです。

これで県家保の診断範囲が一挙に広がり、動物衛生研究所に検体を持ち込む前にトリインフルエンザか否かの判定が可能になりました。
今回の島根県での素早い対応の秘密はここにあります。

今回、家保は初動において3種類の検査を同時に行っています。
〇PCR遺伝子検査
〇抗体検査
〇ウイルス分離

これはトリインフル診断の3点セットと呼ばれるもので、血液採取と咽喉や肛門からの糞便の検体採取で行います。PCKとウイルス分離は同じ検体を共有して行います。

3種類を並行して行う理由は、抗体検査のみだと既に陰性に変わってしまう可能性があるからです。PCR遺伝子診断の判定技術は、現在非常に進んでいて、かなりの確度でH5型か違うのかを判定可能です。そしてそれをウイルス分離することで、いっそうたしかにするという念の入った方法です。

これらの3点セット診断は、1日以内に県家保の施設で行うことが可能です。現在検体は動物衛生研究所に行っていますが、これも最終的な確定をするためのもので、既に県家保段階でH5型であると出ているわけです。

この動衛研の確定診断は、発育鶏卵を使って行われるもので、そのために48時間ていどの時間がかかってしまいます。この初動の時間のロスを失くすためにも、県家保の初動の3点検査はとても有効なのです。

これが今回の島根県で、動物衛生研究所の確定診断以前に殺処分を始められた理由です。たぶん、島根県家保はPCRの陽性判定が出た瞬間、殺処分方針を決めたと思われます。

トリインフルエンザに対しては、この3点セット診断の簡易検査キットが家保には配備されているそうで、今回威力を発揮しました。


■ 写真 北浦河口の夜明けです。湖に漁船のポンポンという音と水鳥の朝のあいさつが響きます。ただし、トリインフルからみるとちょっとこわい。野鳥の会と家保が定期的に野鳥の糞便検査をしています。

2010年12月 1日 (水)

島根県でトリインフルエンザ発生 速報 日本初、確定前に殺処分!

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農水省プレスリリース

1.農場の概要

所在地:島根県安来(やすぎ)市飼養状況:採卵鶏 (成鶏2万羽、育雛3,300羽)

2.経緯

(1)本日、島根県は、死亡鶏の通報を受けて農場の立入検査を実施。

(2)顕著な死亡率の上昇は認めないが、インフルエンザ簡易検査で5羽中3羽陽性。

(3)同県は当該農場に対し、家きん・卵等の移動の自粛を要請するとともに、追加検査のため採材。

(4)家畜保健衛生所で遺伝子検査を実施したところ、H5亜型であることを確認。

(5)今晩、約30羽の死亡が確認されたこともあり、現時点で疑似患畜とする。

3.今後の対応

本日、「高病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針」に基づき、農林水産省に鹿野大臣を本部長とする高病原性鳥インフルエンザ防疫対策本部を設置・開催し、今後の対処方針を以下のとおり決定しました。

  1. 「高病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針」に基づき、当該農場の飼養家きんの殺処分及び焼埋却、移動制限区域の設定等の必要な防疫措置を迅速かつ的確に実施。
  2. 移動制限区域内の農場について、速やかに発生状況確認検査を実施。
  3. 感染拡大防止のため、発生農場周辺の消毒を強化し、主要道に消毒ポイントを設置。
  4. 感染状況、感染経路等を正確に把握し、的確な防疫方針の検討を行えるようにするため、農林水産省の専門家を現地に派遣。
  5. 島根県の殺処分・焼埋却等の防疫措置を支援するため、動物検疫所から「緊急支援チーム」を派遣。
  6. 全都道府県に対し、本病の早期発見及び早期通報の徹底を通知。
  7. 関係府省と十分連携を図りつつ、生産者、消費者、流通業者等への正確な情報の提供に努める。

4.その他

(1)当該農場は、感染が疑われるとの報告があった時点から飼養家きん及び卵等の移動を自粛しています。なお、家きん卵、家きん肉を食べることにより、鳥インフルエンザウイルスが人に感染することは世界的にも報告されていません

(2)現場での取材は、本病のまん延を引き起こすおそれもあること、農家の方のプライバシーを侵害しかねないことから、厳に慎むよう御協力をお願いいたします。

(3)今後とも、迅速で正確な情報提供に努めますので、生産者等の関係者や消費者が根拠のない噂などにより混乱することがないよう、御協力をお願いします。

島根県安来市の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザへの感染が疑われる鶏が見つかったことを受け、県は30日、感染拡大防止のため、疑い例が出た養鶏場で飼育する約2万3300羽について、同日午後から殺処分を始める方針を決めた。鳥インフルエンザで、ウイルスの型を特定する前に鶏を殺処分するのは全国で初めて。また、養鶏場が鳥取県境近くにあることから、鳥取県は同日、境港市の養鶏場周辺などで消毒作業をスタートさせた。

                           *

島根県プレスリリース

 1 発生農場の概要
   安来市の養鶏農家(採卵鶏、2万羽飼養) 

2 経緯
   11月29日 朝  ・農場主が5羽の死亡を確認
         午 前 ・県松江家畜衛生部が簡易検査で陽性を確認
             ・農場主に対し、飼養する鶏の移動自粛の要請
             ・県家畜病性鑑定室へ検体を搬入
          20:30 ・PCR検査で高病原性鳥インフルエンザの疑いが強い
              事例の発生と判断

3 今後の予定
 
 (1)(独)動物衛生研究所に検体を搬送後、ウイルスを確認し、高病原性鳥
    インフルエンザの発生を確定します。(12月1日夜の見込み)

 (2)発生が確定した場合
    ・島根県危機管理対策本部を設置
    ・発生農場の鶏の殺処分
    ・半径10km以内の農場の鶏等の移動規制等の防疫処置を実施

                        *   *

■13羽の判明は1日夜、調査対象400万羽

 政府は鳥インフルエンザ対策本部を設置し、菅直人首相は同日午前の会合で全力を挙げて対応に当たるよう指示した。

 島根県によると、安来市の養鶏場では29日、13羽が死んでいるのを事業主らが確認。動物衛生研究所(茨城県つくば市)で検体の詳細検査を行い、12月1日夜に結果が判明する見通しで、感染が確定すれば半径10キロ以内の鶏や卵などの移動が制限される。

 移動制限の対象となる養鶏場5カ所のうち2カ所は島根県、3カ所が鳥取県に位置しており、鳥取県はこのうち一部の鶏を抽出し、ウイルスの遺伝子を調べるPCR検査を実施。また、農林水産省は専門家らでつくるチームを島根県に派遣する。

 鳥取県による消毒作業は、疑い例が確認された養鶏場周辺の鳥取県内2カ所の主要道路で車両を対象に実施。島根県は30日未明以降、養鶏場から数十メートルの範囲で道路規制を行っている。殺処分は同日午後から約90人態勢で行い、終了まで2、3日掛かるという。

 両県は、すべての養鶏場を対象に感染の有無を調査。対象は島根で約40カ所、鳥取で約90カ所に上り、計約400万羽が飼育されている。(産経11/30)

                          *   *

■政府は30日午前、島根県安来市の養鶏農家で高病原性鳥インフルエンザの感染が疑われる鶏が見つかったことを受け、全閣僚で構成する「鳥インフルエンザ対策本部」を設置し、鹿野道彦農相が防疫措置の実施状況などを報告した。

 菅直人首相は宮崎県で口蹄疫(こうていえき)被害が拡大した事例を挙げ「迅速な初動対応が重要だ」と指摘。「何としても抑え込まなければならない。国内の危機管理に全力を挙げてほしい」と各閣僚に指示した。(毎日新聞11/30)

                      *        *

■島根県は30日、高病原性鳥インフルエンザへの感染が疑われる鶏が見つかった同県安来市の養鶏場で飼育している約2万3000羽について、同日午後に殺処分を始めた。処分が終わるまで2、3日かかる見通し。高病原性鳥インフルエンザとの最終的な確定を待たずに殺処分するのは初めてという。また隣の鳥取県境港、米子両市を含め、この農家から半径10キロ以内にある養鶏場の鶏卵や鶏肉などを移動制限する。

 島根県は同日午前9時すぎから危機管理対策本部会議を開催。この養鶏場ではこれまで13羽の鶏が死んでいるが、県内の他の養鶏農家では異常は確認されていないという。

 県はウイルスが高病原性のH5型の可能性が高いとみており、茨城県つくば市の動物衛生研究所が検体を調べる。検査結果が分かるのは1日夜になるという。処分した鶏は焼却するため、焼却炉の手配を国に要請している。

 また、島根県は30日朝から養鶏場近くなど計9カ所で、鳥取県も米子市と境港市の2カ所で、それぞれ通行する養鶏業者などの車両の消毒を始めた。

 一方、鳥取県は当該農家から半径10キロ以内にある3養鶏場で抽出した鶏50羽の血液検査を行い、感染していないか調べる。同県畜産課によると、3養鶏場では約7万羽を飼育している。29日午後に県職員が戸別に訪れた際には異常がないことを確認しており、出荷自粛を要請した。

 3養鶏場のほか、鳥取県内では84農家で約300万羽を飼育。同県は全養鶏場に異常がないか聞き取り調査を行う。

 島根県の溝口善兵衛知事は危機管理対策本部会議で「国と協力し、万全の態勢で、他に波及しないようにしてもらいたい。原因の分析もしっかりやって、今後の対策も心がけてもらいたい」と話した。 (毎日新聞11/30)

  • 高病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針(PDFファイル)
  • http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_bousi/pdf/hpaisisin.pdf

    ■12月1日夜出るといわれている動物衛生研究所のウイルス同定の発表を待ってからの詳報となります。

    現在、家保などで情報を取っていますが、まったく情報がプレスリリースと報道以外にない状況です。

    農水省動物衛生課も総力をあげて現地に行っているようです。

    今回の場合は鳥取と島根の県境にまたがっており、島根のほうが飼養羽数は多いようです。動物衛生課としても、難しい判断ですが、統一された防疫体制を敷かないと大変なことになります。

    今回の疑似患畜の確定前処分という日本防疫史上初めての措置は、農水省の確固たる意思だと思われます。

    正直に言って仰天しました。なにせウイルス確定前に殺処分ですから、この是非は後に問題となると思います。

    口蹄疫が今後発生した場合も、このように確定前殺処分をするのでしょうか。防疫というのは前例踏襲の部分がありますから、その可能性も出てきました。拍手すべきか、いくらなんでもと言うべきか、悩ましいところです。

    それは置いて、政府の対策本部が非常に立ち上がりが速いのは、うれしい驚きです。この部分は口蹄疫を正しく総括しています。

    そのあたりも含めて現時点では詳細な情報がありません。

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