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トリインフルエンザの侵入ルートは北海道経由かもしれない

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やっぱり、島根県のトリインフルエンザのウイルス・タイプは、この10月26日に北海道稚内市大沼の野生のカモの糞から見つかったトリインフルエンザH5N1型(強毒タイプ)と99%遺伝子配列が近似していたそうです。
ああそうか・・・という気分ですね。

この半年の間、OIEには鶏に感染したトリインフルエンザH5N1型の報告はありませんでした。ただし、トリインフル全体では、東アジアで2件の報告がありました。

ひとつがこの11月に香港でのヒトで発症したH5N1型(*中国大陸で感染した模様)、もうひとつが10月に韓国チョーヤ南道で発生したH7N6亜型(弱毒タイプ)のふたつです。
http://www.oie.int/wahis/public.php?page=single_report&pop=1&reportid=9899

通常、私たちは家畜伝染病が起きた場合に真っ先にその侵入ルートとして韓国を疑います(韓国のみなさん、すまんこって)。というのは今までの口蹄疫、トリインフルエンザのウイルス侵入ルートとしては韓国ないしは中国が最有力だったからです。

2004年に発生した79年ぶりというH5N1型高病原性鳥インフルエンザも、その前年に韓国で鳥インフルエンザが流行しています。韓国で感染した鶏からウイルスをもらったカモが、山口県阿東町の発生農場に飛来し、養鶏舎内の鶏に感染させた、という推論です。

カモというのは、非常に私たち養鶏家からすればやっかいな水鳥でして、トリインフルエンザのキャリヤーになるくせに、自分は発症しないという特性があるのです。だから、トリインフルに罹ったカモはピンピンしているので見分けがつきません。

おまけに、カモは人に感染しうるすべてのインフルエンザ・ウイルスを持っているのですから始末が悪いのです。この湖の水辺に生きるカモが、水辺と内陸を往復するタイプの野鳥に感染を移します。大きい鳥ではカラスや、小さいものではスズメなどです。

移された別な種類の野鳥は抗体がないために死亡する可能性が高いのですが、発症前に養鶏場に飛来して、なんらかの方法で鶏、あるいは養鶏機材と接触するとボンっとなってしまうと考えられています。

2004年時には韓国の発生事例とウイルス・タイプが相似性が同じでしたので、これは韓国から来たものだと疑われるようになりました。

これで侵入ルートは解決と思われましたが、実はそう簡単ではなかったのです。
というのは、逆に韓国の鶏舎内にいる鶏からどうやって水鳥に感染を移したのかがよくわからないのです。先ほどと逆なルート、つまり鶏⇒野鳥⇒水鳥だろうと思われるのですが、とするなら媒介している野鳥は抗体がないためにあっさり死ぬのですから、水辺のカモなどにウイルスを伝染できる可能性は非常に低いのではないかという説もあります。

北海道大の喜田宏教授(ウイルス学)が唱える説は、カモの保持するウイルス変異説です。カモは各種のインフルエンザ・ウイルスを保持している可能性があるのですが、カモが糞と一緒に出す毒性のないウイルスが、ある日突然変異して病原性を獲得してしまったという見方です。

このふたつの説があることを頭に置いて下さい。私たち養鶏家にとっては、水鳥⇒野鳥⇒(ネズミ)⇒鶏という説が分かりやすいのですが、ウイルス学や野鳥の専門家はこの説をかならずしも支持しているわけではないのです。ウイルス・タイプの同一性と、外国から渡り鳥(水鳥)が飛来していたという状況証拠だけしかないと思って下さい。

前置きが長くなりました、今回の島根県の事例では韓半島や中国大陸からの渡り鳥由来という説は成り立ちません。なぜなら、今年10月の韓国の発生事例とはそもそもウイルス・タイプが違います。半年以内には韓国、中国共に今日毒タイプのトリインフルエンザを発生させていないのです。

となると、どこからウイルスが侵入したのかということで行き詰まりました。このひとつの謎解きの答えがこの10月にあった北海道稚内大沼のカモのH5N1型の発生です。

本日の情報では北海道稚内のカモの糞のウイルス・タイプと近縁なことがわかったそうです。

「農林水産省は2日、島根県安来市の養鶏農場で発生した高病原性鳥インフルエンザについて、ウイルスは強毒性で、今年10月に北海道で野生のカモのふんから検出された「H5N1型」ウイルスと「極めて近縁」なことが遺伝子解析で判明したと発表した。養鶏農場の近くには渡り鳥の飛来地もあり、北海道の感染した野鳥と今回の発生との関連性が強まってきた形だ。

 国内の農家で強毒性の鳥インフルが確認されたのは2007年1~2月にかけ宮崎、岡山両県で発生した時以来となる。今回検出されたウイルスは「H5亜型」までしか判明していないが、動物衛生研究所(茨城県つくば市)の分析では、北海道のウイルスと遺伝子配列が99%一致しているという。
 強毒性は鶏に呼吸が荒くなるなどの症状が見られ、感染した場合、死亡率が極めて高いのが特徴。人への感染は国内で例はなく、農水省は「通常の生活をしている限り、感染はほとんど考えられない」(動物衛生課)としている。」 
(時事通信12/2)

となると次の謎は北海道からどうやって本州の島根まで来たのかという疑問になります。その答えは、北海道が他の渡り鳥の飛来地とは違った特色があることを知れば解ります。

北海道は、シベリア方面から本州へ、またその逆に本州からシベリアに飛ぶ渡り鳥ハイウエイのインターチェンジのような地点なのです。

シベリアのバイカル湖などと日本を往復する渡り鳥にとって、北海道内の湖はうってつけの休憩地や越冬地となります。代表的な渡り鳥であるオオハクチョウ、コハクチョウ、マガン、カモなどはここで翼を休めて体力を回復してからおもむろにシベリアへ、あるいは本州各地の湖へと再び飛んで行くわけです。

現時点では、この北海道を経由して島根に飛来した水鳥が伝播したのではないかという説が有力になりました。しかし、ならば北海道の各地の湖で同じように強毒H5N1型ウイルスが発見されていなければなりません。

ところが、今のところその情報はないわけです。となると・・・まだるっこしくて申し訳ないのですが、北大の喜田先生の説である、突然変異による強毒性への変異説の可能性も出てきました。


■写真 明け方のわが村の空。何か禍々しい雲がかかっていますが、遠くにはうっすらと夜明けが見えます。

■蛇足 毎日エビゾーだか、イカゾーだか知らないが、くだらないニュースばかり報道しています。口蹄疫の時も、一カ月まるまる報道されませんでした。今回のトリインフルも圧倒的に情報不足です。日本マスコミのこの能天気はどうにかならんのですか・・・。

■蛇足その2 鶏とのトリインフルの「濃厚接触による伝染」とは、私の右下のような写真の状態を指します(o^-^o)。
あながち冗談ではなく、中国や東南アジアでは、家の中の土間に飼っていたり、市場で売る時も、このように触って肉づきを確かめて、羽根をむしらずに売り買いすることも多いのです。もし、保菌していたらバッチリ感染します。


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コメント

北海道稚内の大沼で見つかった野性カモは一年中、稚内にいる訳ではありません。稚内は極東シベリヤの中間地点であり、ですから、シベリヤから越冬する為に、南下した健康に見えるが、ウイルスをキャリーしているカモ類がH5ウイルスを持ってきて、大沼で排出した糞にウイルスが含有、一時的に大沼で同居した野生カモにたまたま、感染、検出された訳で、さらに南下した野生カモ類が、宍道湖などの中海で、休んでいた時に、排出したウイルスが、留鳥のスズメ類(ムクドリ、カラスの類、)などに、感染し、さらに、防虫網の穴から侵入して、採卵鶏に感染、そして発病して、死亡した。

投稿: AniVet | 2010年12月 3日 (金) 09時49分

AniVet様。う~ん、すると北海道でもっと多数のH5例が見つからないとなりませんね。シベリアから北海道の湖に南下してくるカモは大沼だけ行くわけじゃないですから。
私が分からないのはそこなんですよ。まだ見つからないだけなのか、そうじゃなくて弱毒からの変異なのかって。

実はトリ屋としては、弱毒ウイルス突然変異説より、渡り鳥由来説のほうが対策を立てやすいのです。家保の獣医師とも昨日話ていたのですが、突然変異説のほうが対策が難しいのです。

ちなみに私の友人の野鳥の会メンバーは渡り鳥説には拒否感があると言ってましたね。

投稿: 管理人 | 2010年12月 3日 (金) 10時02分

鳥インフルエンザの進入経路の研究では、オオクロバエ等の昆虫類の媒介もあがっていましたよね。
http://idsc.nih.go.jp/iasr/26303/kj3031.html

昆虫採集を趣味にしている友人たちは、鳥の渡りと同時期に、似た経路で大陸から日本に渡るハエ類がいるから、それが媒介なのでは?と口にしてました。
私の野鳥観察が趣味の友人たちも、渡りの経路、農場での発生時期などから、渡り鳥由来説には否定的なようでした。

投稿: みーちゃん | 2010年12月 3日 (金) 10時51分

専門家ではないので確認の仕様がありませんが、伝搬は渡鳥で、北海道経由・・と言うのが有力と言うか確率的に高い・・・と感じております。
濱田様が仰る「では、北海道内の他の地域(湖沼)での発見がなされないのは?」ですが、渡鳥の全てがキャリアーではなく、多数の鳥の内、数羽とか限られた鳥が感染(キャリアー)となっていた・・・と予想するのは間違いでしょうか?
口蹄疫でも、一緒に避難した種雄牛でも感染牛と非感染牛が存在した事と整合性が取れるかも知れません。
(口蹄疫に対する感受性が豚よりも牛の方が鈍い・・と言う事は聞いていますが)

投稿: 北海道 | 2010年12月 3日 (金) 16時14分

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