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2010年12月22日 (水)

農家戸別補償で一致した民主党農政の顕教と密教・同床異夢の果てに

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作日の「日本農業新聞」(12月20日)によれば、行政刷新会議が設置した政府・規制改革分科会の検討項目に、JAがあれだけ強く反対していた「JAからの信用・共済事業の分離」が登場しました。ワーキングチームでもんだ後に21日に検討の方向性を示し、各省の政務3役との折衝を経て、年度内には政府方針とするとのことです。

とうぜんのこととして、既におおよその方向は決まっているはずです。6月の第1期検討会で不発でしたから、今回は決めたいと思っていると思います。

いよいよ来たなという気分ですね。この「改革」は准組合員の組合員資格の廃止もともなっています。准組合員、要するに非農業者は、今やJAバンク・共済事業の重要な対象ですから、JAからの事業と同時にその「お客さん」までもをもぎ取るわけです。JAにとっては計り知れない打撃になると思われます。

さて、民主党という党は「面白い」ですね。右手と左手がまったく違うことをしています。国家安全保障や農政といった国の形を決定する重要な事柄に党内できちんとした綱領が存在しません。

思えば、今回のJA弱体化路線を打ち出した行政刷新会議の初代行政刷新担当大臣はかの仙谷官房長官その人でした。そして彼が指揮する事業仕分けでバサバサと「無駄」を切りまくったわけです。なにか遠い昔の様な気がするのが不思議ですね。

そのとき、いちばん被害を受けたのが農水省関係で、私自身「有機農業モデルタウン」の事業を5年継続の2年目で打ち切りという悲運に泣きました。当時農水大臣だった赤松氏は、この事業仕分けチームの横暴には、同じ社会党時代からの仲間である仙谷氏に、「こるらぁ、ふざけんなよ!必ず復活折衝すっからな!」てなことを吠えていました。

一方、当の仙谷さんは、レンポー氏や枝野氏を現場監督にして、民間から大量の人材を投入しました。このメンツが興味深いのです。

川本裕子氏、土井丈朗氏、そしてあろうことかゴールドマンサックスのロバート・フェルドマン氏たちです。この民主党に選ばれた首切り役人は、「小泉-竹中-ホリエモン路線」(←現農水副大臣・篠原孝さんの命名)を推進した当事者たちでした。私が秘かに恐れていた小泉-竹中-ホリエモン路線、言い換えれば新自由主義の復活の兆候ととられてもいたしかたないでしょう。

民主党政権は、市場原理主義を否定し、小泉-竹中-ホリエモン改革の行きすぎでおかしくなった日本を「友愛」で再生するということで、国民の期待を得たはずでした。それが政権成立早々に、かつての小泉-竹中-ホリエモン災厄を引き起こした当の亡霊たちを呼び寄せたわけです。民主党内部のある潮流の存在がよくわかりますね。

そして今年突如、菅首相が言い出したTPP路線が浮上します。シンガポールなど4カ国のFTAが参加することを表明しています。既にシンガポール、チリ、NZ、ブルネイで発足し、オーストラリア、ベトナム、ペルーが参加を表明し、「盟主」米国も参加を表明しました。これに米韓FTA(未締結)が連動しますから、このままでは日本は、完全に環太平洋自由貿易経済圏のカヤの外となるという危機感が政財界にありました。

さて、どうやら民主党にはふたつの潮流があるようです。このふたつの潮流が反映してふたつの農政を作り出そうとしているように見えます。

ひとつはいわば「顕教」である「農民の生活と生産を守る」という道です。「安心して作ってくれ、農業を応援するぞ」といういわば国家保護型農政です。

これが農家戸別所得補償制度に代表されるように「農家が安心して生産に励める」仕組みを生み出しました。

選挙目当てのバラマキと言われようがどうしようが、減反制度を自由参加にして、参加した農家には直接に金を出します、という制度です。従来の自民党農政以来連綿と続く、「農民保護」政策のニューバージョンだと思えばいいのかもしれません。

2年前この発案者の篠原孝氏と話たことがありますが、氏のドイツ農業型直接支払い制に模範を置いたこの制度は、ダイレクトにJAを迂回せずに農民に国家が支援をする制度だと聞きました。

篠原氏の脳裏には、JAを介さねば何もできない日本農業を、国家が農民に直接に所得保障をすることで政策誘導する意図があったように見受けられました。

野党時代の篠原氏は明確にふたつのことを言いました。ひとつは、この農家所得保障制度はFTAなどの自由貿易の痛み止めではない、まったく無関係な制度だということがひとつ。

そしてもう一点が、この制度はJAを介さないということでした。実際、氏のブログには氏が長野のJA社屋の前で宣伝活動をしている写真があります。篠原氏の構想では、すべての農業範疇を含むはずでしたから、おそらくは数兆円規模の膨大な直接支払い金が、JAを介さずに流れるという仕組みになります。

実際に政権を取った後には、篠原氏は赤松大臣時代は無役であり、山田大臣に起用されて副大臣、そして宮崎口蹄疫現地対策本部長で活躍しますが、野党時代の理念から農家戸別補償制度がどんどんと逸脱していくのが、鋭敏な氏には見えていたはずです。

支払い分野は米作中心となり、額自体もはるかに少額になりました。ようやく麦、大豆に手を伸ばそうかというところですが、果たして財務省がウンと言いますかどうか。菅政権の財政政策は緊縮財政型ですから、そうきうにきついでしょう。

そしてなにより、農家戸別補償制度はやはりTPP、FTAと連動しているのではないかと思わざるを得ないTPP参加表明がなされてしまいました。副大臣以前の氏が、ブログで「こんなものはほんとうの農家所得保障制度じゃない!」と叫んでいたことを思い出します。TPP参加表明時にも、篠原副大臣は大反対だと新聞に語っていましたね。

今あれから2年、私はあらためて、この民主党農政「顕教」の代表者とでも言うべき篠原副大臣の現在の声を聞いてみたい気がします。

ところで、民主党農政にはもうひとつの別な側面があります。いわば「密教」とでも言うべき流れです。この密教の考えはこうです。

・・・農業には未来がない、どうあがいでも国際競争力がない、滅亡産業部門だ。ならば、もう終末処理を考えたほうがいい。成長戦略など農民は自分で考えつかないのだから、企業家に新規参入させろ。そうすれば米価は半分になり、国際競争力をもった日本農業となる。

農村の使い道は都市生活者のレジャーランドにするか、定年退職後の団塊世代の老後の癒しの場とするかていどで、いずれにせよ、農民を主体とした農業の時代は終わりだ、これからは企業農業だ、という考えです。

さぁ日本農業の幕引きの10年が始まったぞ、というわけです。・・・ああ、なんか書いているだけでムカムカしてきた(笑)。

この密教の信仰する偶像は、国際自由貿易と市場原理主義です。グローバリゼーション、あるいは新自由主義的路線と言ってもいいでしょう。

日米FTAをするには「農業が障壁になって、国益を阻害している」(経済同友会レポートの表現)ので、国益の名の元に農業には安楽死してもらう。苦しんだあげく、ムシロ旗なんぞを納屋から持ち出されても困るので、そのセーフティネットとして農家戸別所得保障制度を作ろう、というわけです。

理念において、このふたつの流れは本質的にまったく相いれないにもかかわらず、政策的には農家戸別所得保障制度で一致してしまいました。まさに同床異夢の典型ですね。

前者の顕教は、やはり農業や農民に寄り添って発想します。なんとかしたいという気分も大いにあります。まぁ農業への思いがあるというのでしょうか。山田さんや篠原さんなどはこの流れでしょう。赤松さんはそもそも農政と関係ありません。

宮崎口蹄疫事件の時も、山田氏のこわもての顔の下に、五島の牛飼のつらい表情が見え隠れしていました。日本養豚協会の「直訴」に即断即決したのも、彼の中にある農民魂のような部分に火が着いた結果でしょう。あの時、山田さんは泣きながら訴えを聞いていたそうです。薦田さんに最後面接を求めて拒否された彼は気の毒でした。

私は決してこの人物を嫌いではありません。むしろポビュリズムに流れかねない危うさを持った県知事より、自らの職責をわきまえていました。あの嵐の口蹄疫事件において、彼の「悪役」にもなれる強さは為政者として貴重でした。そのうち「山田大臣・危機のリーダー論」とでも題して書いてみたいですね。

それはさておき、一方後者の密教は、日本農業をとうに見限っています。同じ農家戸別所得補償を言っても、彼らの農民を見る眼はまるで死人を見るような視線です。日本農業は「国益の阻害物」につきるのです。果たしてこの「国益」が一体何ものなのか、誰のための「国益」なのかは分かりませんが。

このふたつの流れは今後も絡まりあいながら葛藤を続けていくことになるでしょう。かつての自民党農政もまったく同じでした。しかし、彼らは農村という人質をとられていたが故に、意思決定が致命的に遅れました。

石破農政のような改革派は自民党農政のまさに末期にしか現れず、しかも農民はそれを理解しようとはしませんでした。しかもその間に、小泉-竹中-ホリエモン路線の後遺症により農村が荒廃の度を深めました。そして伝統的な支持基盤だったJAすら単協の離反が相次ぎました。

さて、民主党があとどのていどわが国の舵を握っているのか分かりません。そう長くはない気もしますが、民主党農政は最後のお土産でJA弱体というとんでもない爆弾を残して去っていくのでしょうか。それは間違いなくJAという日本農業の背骨に打撃をあたえることでしょう。

■写真 私は空の写真が好きなのですが、これは今朝の嵐の直後の空です。太陽が雲間から覗いています。ああ、仕事時間前でよかった。セピア色ですが、着色していません。ほんとうにこの色でした。

■追記 韓国口蹄疫が燎原の火のように拡大し続けています。忠清南道、江原道でも疑似患畜が発見されました。処分対象の家畜21万頭畜を超え22万頭に達しつつあります。宮崎県の事例と酷似してきました。
このままでは30万頭規模になるかもしれません。しかも範囲が宮崎とは比較にならない全土規模です。大変なことです。韓国政府はワクチン使用を検討しはじめたようです。日本も最大限の警戒が必要です。
詳報は次回に。

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コメント

長い自民党政権時代に農協は集票マシーン化されていき、そのために極力手厚く守られてきたと理解してます。
自民党というのも思想も主義主張もバラバラで、派閥権力争いしながらも水面下で折り合って調整してから政策を作る。従って決定はとにかく遅いがなんとか妥協を繰り返してきた。ムダもあった。

そこにタイミング見計らって「古い自民党政治をぶっ壊す!」とやって絶大な人気を得たのが小泉でした。2001夏、山形駅裏広場演説では全員熱病にかかった(ティフォージ化)ようでしたよ。私も強く支持しました。
反動を上手く利用して政権奪取した今の民主党。古い自民党の権化小沢は、小泉の選挙手法をパクりつつ「国民の生活が第一」と、ばら蒔き。旧社会党幹部や公明党と組もうというのがかなりの無理。社民党は論外。
結局は現在の民主内ゲバです。しかも表でやってるし、それぞれ話がダダ漏れ。仙谷が権力を振り回す。

事業仕分けなんか「国民に見えるパフォーマンス」。今まで密室でやってたのを一部選んで短時間で素人がバッサバサと。蓮紡も枝野もあんなのは飾り。あくまで黒幕と財務省の意向。

蓮紡が「アトラクション」と言ってた陸自広報センターは有料化したら、来館数半減です。(ははは、人来ないなら次は廃止で思い通りか…)
そして「無駄をカットして9兆円」のいくら出せたのか…実際に無駄はいっぱいありましたが。

JAとJFの統合案は「始まり」ですかね。

顕教と密教とは上手く表現なされましたね。


ちなみにこれは山形の話ですが、JA共済の自動車保険に安いからと入った知り合い数人の評判は最悪です。
9時~5時以外は「平気で明日以降対応します」とか言います。
損保会社やネット販売の外資はとりあえずコールセンターで24時間受けて、情報集積してから翌日朝に支店から速やかに丁寧に連絡が来ます。

あれじゃ「JAはお役所仕事」と言われますよ。


今我が国に必要なのは「国の将来ビジョン」を持った、強力な指導者(と、優秀なブレーン)です。
なかなかいない。だから石破さんが人気投票1位になったりする。

長々と失礼しました。

JAに対する政権政党の考え方は、本当に濱田さまの仰る通りであると思っています。
文章下手な為に昨日のコメでも表現できなかったのですが、言いたかった事の大部分を濱田様に言ってもらった感じです。
山形様の仰る「JA共済」の対応の悪さについては、そのJAの質の問題であると思います。
JA共済と言えば、全国同一と思われがちですが、掛金などは同じでも、対応はあくまでも個々のJAなので、そのJAによって違うと思います。
北海道十勝では、事故発生時にはそれぞれ加入している個々のJAに連絡し、初期対応を行います。物損であればそのJAでの処理となりますが、人身事故であれば数JAで組織している広域事故処理センターが引き継ぐシステムになっています。
(コスト削減と人身事故処理には専門的知識がどうしても必要な事から広域処理センター設置となりました)
勿論事故の状況によっては、24時間対応ですよ!!


北海道様
なるほど、やはり地域によってずいぶん違うもんなんですね。
地域で組織率からして違いますし。

ただ、NOSAIはともかく自動車保険は農協共済は役割を終えつつあるのではないか?と思っています。こちらも農業県に住んでいるんですが…。

実は先週ジャスコ出口で事故やっちゃいましてね(ほぼこっちが悪い)。
三井住友GKの動きの速さと丁寧対応に感動ものだったんで。

JA共済に入ってた友人なんか、凍結路での信号追突もらい事故とかでもグダグダ対応されたりだったんですわ。

まあ、人間教育と職場の問題だろうとは想像つきますが…他にもいろいろとJA共済保険の悪評は残念ながら多いです。

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