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2010年12月15日 (水)

韓国口蹄疫事件を通し見えてきた韓国の「開国」の現実とは

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Aさん。
お身体の調子はいかがだろうか。少しは食べられるようになっただろうか。

私のほうは相変わらず、口蹄疫を追いかけている。なんだまだやっているのか、というあなたの声が聞こえてきそうだが、今なんとなくだが、宮崎口蹄疫事件を別の目で眺められるようになったんだ。

私のブログは元来農業全般をあれこれを考える場所だった。こんなひとつのテーマで8カ月間も費やしたのは初めてだった。今や老舗の口蹄疫ブログとなってしまった。といっても、口蹄疫を考えるブログなんて今や5本の指くらいになってしまったんだけどね。

さて、今、私は口蹄疫問題を単独の事象に終わらせずに、もっと広い日本農業の問題や経済とリンクさせてみたいと思うようになってきた。

こんなふうに考え出したのは、TPPと韓国口蹄疫の爆発というふたつの事態が同時に起きたことがきっかけだった。韓国と日本を比較する中で、なにか見えることがありはしないかと思っている。
少しおつきあいしてもらえるかな。

ところで韓国という国は、非常に変わっている国家なのだ。GDPの40%が外需依存という世界でも稀なる異形な経済をもっているんだ。だから自由貿易政策こそ彼らにとって生き延びる唯一の途だった。

韓国が、1997年にアジア 通貨危機をまともに浴びてデフォルトの断崖絶壁まで追い詰められたことは覚えているだろうか。そのとき、韓国はIMFの緊急支援をもらってようやく亡国の危機から救われた。ちなみに日本も唯一の支援国だったが、彼らは忘れちゃったみたいだな。ま、いいか。

IMF管理の下に入り、韓国はIMFの事実上の主人である米国の言うがままに財閥を解体したり、金融市場の自由化に踏み切ったりした。ここで韓国の新しい経済体質が生まれた。それが、極度の資本の自由化と市場を外国に依存するという体質だ。

今まで韓国経済の大黒柱だった財閥を解体するなどは、誇り高いコリアンにとって受け入れがたい屈辱だったと思われるが、彼らはラッキーにも災い転じて福となすような追い風に恵まれていたんだ。

資源が安かったことが第一。
石油はアジア通貨危機以降の7年間も原油価格が低迷するという幸運が続いた。ウエスト、テキサス・インターミディエート(WTI)という原油先物市場は1バレル30ドルという低位安定をしていた。昨今の100ドル超えなどウソのような安さだ。当時、まだ中国経済は今の隆盛ではなかったので、韓国はその前のひとときの原油や鉱物の安値市場を味わうことができたというわけだ。

また90年代末から21世紀にかけて米国は空前のITバブルと不動産バブルに沸く。これがなんと言っても、韓国の起死回生の最大原因となった。

安い原料で作ればバカバカと米国で売れる。そして韓国政府はウォン安に為替相場を固定しようとした。資源安、米国の好景気、ウォン安、この三つが揃ったので、韓国はIMF管理なんていつのはなしかという気分に酔いしれることができた。

さぁ、作れ、さぁ輸出しろ!輸出こそ韓国のエンジンだ!という強気が韓国を支配した。シャンパン開け放題で21世紀に突入したというわけだね。

ところが2004年を境にして、これらの韓国経済バブルを支えていた要因がどんどんと消えていったんだ。韓国ウォンはいくらウォン売りをしても支えきれずに,とうとうウォン高に転じるようになった。もうウォン安・ドル高を武器にした価格競争力が通用しなくなってきた。

おまけに原油価格や資源価格は、中国などの新興経済諸国の追い上げにあってたちまち国際市場価格が高騰するようになった。つまり原価がどんどん上がっていくというわけだ。

そしてとどめの一撃はなんといっても2008年9月15日のあの世界的大災厄だった。覚えているかな、リーマンショックさ。サブプライムローンの危機をきっかけとする金融破綻で、米国を初めとする各国は大変な経済危機を迎えるようになった。世界同時不況の到来だ。

4割ものGDPを輸出、それも対米輸出が主力でまかなってきた韓国にとって、これはサンリンボウにテンチュウサツ、ついでに厄年がいっしょに来たようなものだった。輸出激減、通貨暴落の津波が韓国を一瞬にして呑み込んだ。

こんな時期に日本の経済評論家は、韓国経済を手放しで褒めたたえて、韓国企業に学べ、サムソンはソニーなど目じゃないなどとと叫んでいたのだから、脳味噌の中を見てみたいものだよ。

それはともかくとして、対米輸出が激減するとなると、内需頼みにシフトするしかなくなるわけだが、そうはいかなかった。もともとコリアの人口は4800万程度だから国内市場が小さすぎる。

わが国のような、ややビンボーたらしくなったとはいえ、1億3千万人スケールで、内需が基本の、しかも成熟した目と舌が肥えた市場とは大違いだ。

話はちょっと逸れるが、日本は世界で有数の内需依存型経済をもっている。外需依存率はGDPのわずか16%でしかない。あくまで内需が基本。輸出は相手先のご当地で作っていただいても平気なわけだ。米国で販売される車は全部メイドインUSAだ。日系米国法人の工場で、アメリカ人が作っている。

ともかく、なにがなんでも輸出しないことには韓国という国が自転車から転げ落ちて坂の下まで落ちていってしまう。IMF危機以降、外資をしこたま導入して、ほとんど外資に乗っ取られたような韓国企業にとって、借金を返すためにはともかく外国に売ることしか生き延びる方法はなかったのだ。

今の韓国経済はなんとスワップで借りた金を、スワップで返済してなんとか持っているというありさまだ。なんか宮部みゆきの「火車」みたいな話だね。小説は個人だったが、韓国の現実は国家経済単位だから大変だ。

話は長くなったが、これが韓国がFTAを国是とする理由だ。与党も野党も、農民が喚こうと暴動まがいのデモをしようと、自給率がグチャグチャになろうと、ともかく輸出、輸出、輸出、これしかテなかった。

そこで韓国は国際競争力をつけるために、昨日の記事でも書いた通り、世界中の国々や地域と自由貿易協定を締結するに至った。これが韓国の「開国」した理由だ。果たしてめでたいことなんだろうかね。

どこかの大学のセンセーが、韓国は「開国」の先見性があってすごい、日本も韓国に見習って「開国」すべきだと言っているのを聞いた時には、この人はすぐに大学を辞めて、吉本興業に再就職すべきだとおもったね。

それはともかくとして、韓国はこの時点で自由貿易国家、言い換えればタックスフリー(無関税)国家になる途を選んだわけだ。タックスフリーによる輸出競争力の強化。

これは逆に言えば、関税という普遍的な武器を捨てたノーガード国家になることを意味する。

とうぜんのことだが、タックスフリー国家は、輸入農産物の攻勢を覚悟せねばならない。
普通の国なら国内農業を防衛する武器は三つある。安価もあるが、輸出攻勢に来るほうが高いというのは考えにくいので省く。

●ひとつめは、関税障壁。古典的だが非常に有効だ。ただし、WTO体制下ではいつまでも今までどおりではいかないのも事実だ。
●二つめは、国産ブランドに対する市場の信頼。
●三つめは、やや邪道だが有効な関税外障壁である清浄国ステータス。

ところが、韓国は関税という最大の武器を自分で捨ててしまった。そして、国産農産品のブランド力は低いときている。韓国牛肉は和牛とは比較にならないのだ。うまくない上に安くない。韓国人が日本に来て、牛肉とはこんなに美味いものかと土産に買い込んだという話はどうもホントらしい。プルコギの本場がこれでは困るね。和牛の種牛の精液盗難事件があるたびにいつも韓国が犯人扱いされるのも気の毒。

となると・・・参ったね。これではもう清浄国ステータスしか「武器」が残ってないじゃないか。

しかも、わが国のように発生国に転落しても、後は二国間交渉で時間稼ぎという奥の手も使えない。発生国に転落したら最後、韓国はFTA締結国からいっせいにメッタ打ちに会うだろう。

今まで韓国に怒濤の輸出攻勢をかけられて国内産業をメタメタにされてきた国々が、清浄国から転落した瞬間にどどっと来る。アルゼンチンやチリなどの南米諸国は牛肉をさぁ買えと言ってくるぞ。こわいぞ。味は同じで、しかも韓国牛よりずっと安いんだから。

ひょとして口蹄疫発生国も輸出攻勢かけるのではないか。拒否する理由がないもの。もはやたまらない悪夢が始まる。韓国牛は市場から一掃されてしまう危機に直面しているのだ。

これが自由貿易の現実だ。

私にはTPPを手放しで礼賛する気にはとうていなれない。ただし、国がその方向に舵を切ってしまったのなら、それに耐えられるだけの力を日本農業が身につけねばならないと思っている。韓国の農業を見ているとつくづくそう思う。

宮崎口蹄疫事件は防疫の大切さを教えてくれた。これはTPP時代に、大きな国際競争力となる私たち農民の「武器」なのだ。

とうとう今日の新聞読むと、韓国の殺処分は15万頭に達しそうだ。韓国農民にエールを送りたい。防疫は国境を超えてやるものだから。

話が長くなってごめん。なに途中は読まなかったって(笑)。


■写真 北浦の湖岸の揚水風車です。


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コメント

日本は80年代のバッシングのせいでいまだに「輸出依存」と思っている人は多いと思います。円高のニュースなんかはよく取り上げられますし。
バブル以降、文字通り「日米構造協議」なんて圧力があり、そのままではいられなくなって、日本企業や経済・財政は血を流しながらも現地生産シフトにカタチを変えていった。
金型とかの基礎技術の流出は痛い!
そして未だに長い不況の中にありながら、日本経済はなんとか堪えている。


韓国は極端に歪な経済構造に陥りながら、繁栄を謳歌しています。そうせざるを得なかったとも言えますし、うまくやってのけましたが。
かつて日本が歩んだように、韓国もすでに新興国に追われる立場であり激しいバッシングを受けるかもしれません。
そうなったら韓国は耐えられるのか?どんな対処をするのかは興味深いです(日本という良くも悪くもお手本が側にありますが)。


口蹄疫問題も含めて「グローバリゼーションとは何か」考えさせられることですね。

学校の授業では、アルゼンチン=ガウチョの牛肉輸出国と習いますが、何故オージーやアメリカ産牛肉のようにスーパーで売ってないのか?なんて不思議に思う人はめったにいないんでしょうねえ。
口蹄疫問題の入門課題として分りやすいケースなんですが…。それこそ池上彰あたりにテレビで分かりやすく解説してほしい。今の彼なら効果絶大でしょう。

今年の宮崎の惨事も、現在の韓国のこともほとんどマスコミは取り上げませんね。
宮崎の事はもう忘れて欲しい人も多いでしょうし、関係者の気持ちは理解できます。
ですが我々一人一人が少しでも学ばなければなりません。「いつかまた起きる」前提で。
そして今現在隣の韓国では惨事が拡がっています。
まさに「今、そこにある危機」です。

せめて国営放送のニュースでの注意喚起や、空港での消毒実施と呼び掛けくらいして欲しい。いざ地元で発生したら…取り返しのつかない損失になります。

現実には冬のスキー客誘致に必死で、どれだけ危機感があるのか極めて疑問です。

あや!写真は山田ですね。方波見さん元気かなあ--kata

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