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« 島根トリインフル事件 地域のバイオ・セキュリティ向上には財源がいる | トップページ | 宮崎口蹄疫事件と島根トリインフル事件の教訓 地域を「面」としてとらえる防疫が必要だ »

2010年12月 5日 (日)

島根トリインフル事件 その2  地域の面としての防疫がないから、発生農場がバッシングされるのだ

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私が今回の島根トリインフル事件をみて感じるのは、一体私たち農家がどれほどのことまで出来るのだろうかという諦観のような気分です。

そりゃ発生農場は防鳥ネットが破けていました。そこからウイルスを持った野鳥が侵入し鶏と接触して感染、というのが疫学調査チームの見立てです。

中海に近い側のシートが破れており、そこを中心に鶏が死んでいたとの報道もあります。たしかに因果関係はあるのでしょう。

早くもその農場主を批判する論調がブログなどで散見されます。「こりゃ出るわ」と、一種はしゃいだ声すら聞かれます。苦々しい気分です。思わず、あんたらに何がわかる!と叫びたくなります。

この農場主は不審な死亡鶏を見つけるとすぐに家保に通報しています。これもあたりまえだ、などと思わないでいただきたい。とてつもなく勇気のいることなのですよ。

宮崎口蹄疫の初期に侵入された第1例、第6例の農場主はいずれも隠匿しようとしませんでした。むしろ家保でしっかり検査をしてくれ、検査結果はまだかと催促しているほどです。結果どうであったのか?

宮崎家保には警戒感がなく、確定までに20日間もむだに使ったあげくに「あなたの所が初発だった」と県が言ってきました。そして全国規模のありとあらゆるバッシングの嵐。デマの洪水。

第1例の農家はとうとう再建を放棄しました。心労がたたったのです。第6例の経営者は人嫌いになったそうです。

世間は、この島根の農場主がただちに届け出たという勇気に共感するより、人は叩ける者を叩きたがるものだと改めて知りました。

このような社会心理が伝染病においてなくならないかぎり、以後、必ず農場主は隠匿に走るようになります。なぜなら、書いてよいものか迷いますが・・・感染家畜の隠蔽など技術的にはたいしたことではないからです。簡単です。

私がかつて遭遇した茨城のニューカッスル(ND)の大流行の時には、NDに罹った鶏を密かに処分する農場ばかりでした。私がそれに気がついたのは、私の風上1㎞にあるある企業養鶏場(現在廃業)から、夜間異様な匂いが漂ってくることからでした。その異様な匂いとは、忘れもしない、焦げたタンパク質の匂いでした。

燃やしているのです。それも人目につかない夜間に。大きな穴を堀り、死亡鶏に灯油をかけて焼くのです。そして消石灰をかけて埋め戻して何食わぬ顔をする。

この島根の発生農場の周囲10㌔にはわずか4軒の養鶏場しかありません。そして死亡羽数もわずかでした。こんなていどなら、自分でスタンピング・アウト(淘汰)し、燃やして埋めて、石灰をかけておけば誰にもわかりません。そして出たロットに抗生物質を緊急投与し、折りを見て淘汰を早めればいいのです。言うまでもなく、家伝法違反ですが。

悪魔の知恵です。そう、畜産家だったら誰でも思いつく悪魔の知恵です。

かつての京都で発生したトリインフル事件の農場主ご夫婦自殺事件のように、感染鶏を処理場(屠殺場)に持ち込もうとして発覚し、社会的に糾弾されて心中を選ぶ、という痛ましい悲劇も起きました。

あの御夫婦には隠匿して楽をしようという気持ちはなかったはずです。起きてしまった感染に驚愕し、従業員の生活を考えて、懊悩のあげく「悪魔の知恵」の誘惑に負けただけです。

初期通報者に対して、手厚い保護がいります。正直に通報したらバッシングを受けるでは、誰が初期通報をするでしょうか。

私は日本の防疫で抜け落ちているのは、「面としての防疫」という概念だと思います。「面」、つまり地域で伝染病対策を策定しようとしていません。家畜衛生協会も親睦団体にすぎず、家保は財政難と人手不足のありさまです。

しょせん最後は、自分の農場は自分で守る、という意識から一歩も先に進んでいません。だから、いつまで立っても「悪魔の知恵」が畜産業界から抜けないのです。

地域の「面としての防疫」をするには地方行政がしっかりと支援して、地域防疫総合計画とでもいうべきものを策定する必要があります。これがないから伝染病が起きれば、すべては農家が悪い、お前が馬鹿だったからだ、で終わってしまうのです。

発生農家の方に、遠い茨城の地から激励を送ります。
がんばって下さい。あなたは模範的な養鶏家なんですから!一日も早い再建をお祈りします。

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コメント

まず、地方行政区として、市町村、県など、ありますが、どれを想定されていますか。

初発になると、
▼彼奴の衛生管理・防疫が悪いから、うちらが迷惑を被るんだと近隣からのバッシング
▼メディアへの露出を期に思わぬ全国からのバッシング
を受けると予想されます。
私が、よく解らないのは、行政が、
▼初発にならないための防疫マニュアルを策定・指導すべき▼住民に、バッシングしないように指導すべき
▼メディアに対して情報統制可能なように法制化すべき
▼バッシングされても、見捨てることなく、潤沢な支援策を出し続けるべき
▼A農産夫婦のような悲劇を繰り返さないように、一時的に保護プログラムに組み込んだ方がよい
のどれを主張されていらっしゃるのか、今一、見えて来ないのですが。


cowboy様。私は一般論で言っていません。
日本の場合、何がというよりも、地域としての防疫がほとんどすべてがないような気がします。

①JA、非JAを超えた地域での共通の防疫プログラムが存在しません。たとえば、養鶏ならば私たちの湖岸地帯の防鳥ネットを設備といった最低限のことすらの共通理解もありません。とうぜん島根もそうであったと思われます。

ですから、いったん伝染病が起きると個人の失敗のみがクローズアップされて叩かれます。

JA、非JAを超えた行政が主導する統一の防疫マニュアルとその具体的なプログラムを、地域ごとに策定すべきです。

地域ごと、領域ごとに必要なのは、畜産という領域が地域や職種ごとにかなり違ったものだからです。

そしてそれを記録して補完し、開示可能な地域別職別防疫GAPのようなものも必要となるでしょう。

それは個人ではできませんし、意味がありません。行政がかみ、それを保証する財源が必要です。

②メディア対策は不可能な気がします。今のマスコミは失礼ながら、口蹄疫にしてもそうでしたが、一部を除いて低俗に過ぎました。
これを防ぐには畜産農家がグループ化して対処を申し入れるしかありません。

③支援策は別途記事化しますが、4/5とかではなく、満額され、再建まで視野に入れてかんがえる必要があります。

以上については別途記事でお答えします。

有事の際、個人(ピンポイント)攻撃を浴びるのは辛いが、それを面で受けた方がまだましって言う風に、受け取れるのですが。まぁ、次の記事を拝読してからにします。

cowboy様。ぜんぜん違います。どうしてそういう解釈をなさるのかな。

「面」防疫を真剣に考えないと日本の畜産は守れないということを言いたいのです。ピンポイントより面のほうがましだなんてどこで言いました。ねじ曲げないで下さい。

ピンポイントのウイルス侵入から、「面」全体が決壊するのは、今回の宮崎の事例がイヤというほど教えてもらいました。

たとえば、私の近隣の同業者には防鳥ネットをつけようともしない人がいます。霞ヶ浦にトリインフルのカモが来ていたら、この人のところから出る可能性がありますよ。

そうしたらうちもとうぜん感染します。100メートルも離れていませんから。そして経営破綻だ。20年前ニューカッスルだって「もらい」でした。

このようなことを失くすための「面」の防疫の仕組みがいるのです。

その中で個人の初期通報者保護もかんがえないとダメだと私は思っています。

この「面防疫」と初期通報者保護は別々なことではありません。別個に考えるとかえってわからなくなります。

素直に解釈していただけませんか。

初発は点だが、感染はそこからみるみる拡がって線となり面になる。
だから、面全体でみた防疫体制が必要ということですかね。

今回の島根の業者は素早く通報して、県や国の動きも速かった。

テレビでは「ネットの網目に基準より広がった部分が…」とか強調して報道されてましたが…国からのマニュアルが農家に配られていなかったという不備も出てきましたね。

多少の曲解はあったかも知れません。
私は、こう受け取ってしまいました。
▼行政がタクトを振って、地域(面)で防疫を一律に徹底しよう。
▼それでも、有事の際は、初発だけのせいにせず、一律に防疫を徹底した同志として、バッシングを皆で甘受しよう。

限りなく、非組合員への勧誘員の決め台詞のようになってしまいましたが。

それはさておき、面での防疫を徹底していけば、その地域での畜種の垣根を越えたユニオンが形成され、面でのバッシング甘受もあり得るのでは?と思った次第です。

こんばんは、青空です。お久しぶりです。
濱田様、cowboy様、一息つかれては。お二人のご主張は防疫面の長年の矛盾そのものと感じています。より深く掘り下げ、建前でない議論を進めることが大事と感じます。
点(農家)と面(地域あるいは県、地方、国家)の問題は口蹄疫も鳥インフルエンザもあるいはその他諸々の疫病にも共通している問題かつ、50年近く有しても依然解答を得ていない問題です。(この国として真剣に向き合ってこなかった)
濱田様が仰る通り仮に100の畜産農家があり99戸が完璧な防疫体制を持っていても1戸のずさんさ、あるいはほんのアリの通り道のような抜け穴をあたかも嘲笑うかのように侵入し、全てを破壊して行きます。
実に理不尽です。自然の暴力とはなんとも理不尽です。

コスト競争が激烈な養鶏、養豚での防疫の徹底は濱田様が仰るとおり、一円の特にならないことに莫大なコストを支払うというなんとも覚悟のいる行為です。
おりしもこの経済環境下、廃業の危機に常にある、力ない養鶏家もいるでしょう。
その人々に強制することは困難を極めるでしょう。また、地域の限られた財源でも情報不足の問題や継続性に問題もでてくるでしょう。しかし行政主導は財源と専門情報はありますが、得てして時間がかかり、地域の実情から離れて責任感が希薄となります。

マスコミはさもそれが異常だとほざいていますが、
自分達がいる大都市圏でもまったく同じことがあり、まさに「自分のことは棚にあげての」理論です。
この話は類似したもので、首都圏の住宅地をみればわかります。
関東大震災がくると言われ続けてはや40年立ちます。墨田区、葛飾区、台東区を中心に明らかに地震時壊滅する住宅街が星の数ほどあり、且、もし発生すれば確実に近隣を巻き込み火の海にするでしょう。
もちろん、長年の消防法違反状態です。
行政は40年前から指導を行っていますが、「無い袖は振れない」の理論を受け入れ、強制撤去していません。
阪神大震災の長田地区も同様の状態でした。結果は皆の知っての通りです。

今回、島根県の農家の方は専門家から見ても奇跡の領域と言えるほどの早期発見、通報をなされています。
口蹄疫にて自治体、国家の緊張感が極限まで高まったタイミングであったことも奏功して驚異的なスピードで完了しつつあります。他自治体にあった移動焼却炉を起動的に活用するなど、口蹄疫では想像もつかなかった、できればあの時活用してもらいたかった横断的な実行がなされています。私は手放しで初発農家の英断と、関係者たちの迅速な行動に感謝の言葉を送らせていただきたいと思っています。
彼らは最小限の被害で中国地方の畜産を守ったのです。

マスコミがそれらの奇跡的な働きぶりを評価もせず、防鳥ネットの不備をさも「ずさん」と言いたげに誘導報道し、あまつさえ卵の出荷ができないことをこの農家のせいとも言わんばかりに報道する姿勢はいかに従来からの鳥インフルエンザや口蹄疫に真剣に向き合ってこなかったかを露呈し、怒りを通り越して殺意すら芽生えてきます。

話がとびましたが、私は面の防疫がなされなければ自然の暴力には永久に勝てないと思っています。
しかし、いくら法で縛り、マニュアルで縛っても、先立つものがなければ、名に一つできないのが真理です。
食糧安全保障を唱えるのであれば、他国と比較して必要な防疫体制は国家の補助なくしては成立しないでしょう。

防疫への姿勢がうやむやになるというのであれば、日頃の防疫体制の定期的な抜き打ちチェックで格付けを各農家に施し、補償に差を付けるのも一案です。防疫体制のチェックを行い、指導を恒例化することで防疫の情報交換が随時なされます。1戸毎の格付けなどできないというかもしれませんが、銀行は10年前より与信先1社毎に年一回格付けをしています。人員は当時の60%になってもやっています。できないことはないと思います。

なんともまとまりのないコメントとなってしまいましたが、日曜日の恒例行事と目をつむってください。

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