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2010年12月16日 (木)

もしEUが日本だったら、関税外障壁を使いまくるだろう

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私が小規模農家であり、有機農業界の住人だと言うと、必ず言われる誤解を解いておかねばなりません。私は日本農業開放否定論者ではありません。むしろどちらかと言えば、「世界の時流の流れの中でいつまでも関税障壁をやっている場合じゃないだろう」という考え方です。

ですから、貿易自由化論者が言う「ならば関税自由化してみたら、いかに国産農産物が競争力がないことが証明されるだろう」という意見には半分賛成です。、

この自由化論者の言う前半分「完全自由化」はいいとして、後ろ半分はうなずけません。「いかに国産農産物が強いかが証明される」と私は思っているからです。

その前に前提としての「農産物完全自由化」などというのはありえない空論だと私は考えています。なぜなら、国内の農業という自国の基盤的部門を軽々に「完全」自由化して喜ぶ国は、かの米国 まで 含めて皆無ですから。

米国は輸出補助金という悪名高いWTOイエローボックスの反則技を繰り出し、一方、EU諸国は関税外的障壁の常連さんです。

EUが米国相手にやっている遺伝子組み換え農産物の輸入拒否は、農業の理念的な問題であると同時に、というかそれ以上に、関税外障壁の一部です。米国産の農産物をブロックするということにかけては、EUは日本の人後に落ちません。いや、日本など足元にも及ばないタフ・ネゴシエイターですから。

そもそもが、EUという地域国家間連合体は、米国の津波のような農産物輸出に対するブロックとして生まれました。美しい平和理念で飾っていますが、実態はヨーロッパのブロック経済圏を作ることにあります。

安全保障だけなら既にNATOがありますでしょう。あえてEUを屋上屋をして作らねばならない動機の最大のものは、なんといっても農業でした。

EC時代から、小はマーマレードから、大は牛肉、ワインまで恐ろしいほどの時間をかけて基準、規格をすり合わせて今のEUがあります。ですから、その手練手管において、欧州ほど手強い国家群はないでしょう。

さて、現代の世界では自由化論者の言う「完全自由化」という概念自体が、ありえない空論なのです。他国に対しては「自由化」という鉾を使い、自国の楯としては関税「外」障壁を使い分けているのが世界の国々なのです。しょせん農産物の市場自由化といっても、仮にFTAなりTPPなりで国内市場を開けてしまっても、防ぐ手段はゴマンとあるわけです。

たとえばかつてわが国は中国の雪崩的な農産物輸入に苦しめられました。あの苦い記憶が、日本の農業関係者にトラウマとなっています。いったん国内市場を開けてしまったら瞬く間に市場を安値で制圧されてしまうのではないか、という恐怖です。

では立場を置き換えてわが国がEUだったとしましょう。そしてかの中国が欧州にFTAをいいことに雪崩的な農産物輸出をして、欧州農業を圧迫する構えをみせたとします。まぁ現実には、あんな遠くまで農産物の輸出攻勢はかけられませんけど。

EUは日本のコメのように関税という方法を使わずに、たとえば農産物の安全性と環境破壊問題を楯にして輸入禁止措置を取るでしょう。「冗談じゃない、シロアリ駆除剤をかけたホウレンソウなど入れられるか」というわけです。港でストップ、市場にたどり着けることもできません。

一度この手は日本の海産物がやられました。たしかカキのような貝類だったっけな。EUは日本の海産物加工場の衛生基準がEU基準に照らして劣悪だとして、輸入を拒んだのです。EUの検査官が来日して、重箱の隅をつつくような立ち入り調査をしたそうです。

わが国の基準には適合していても、EUの基準ではダメだというのですから、やってくれるなぁ、です。たぶんノルウェイあたりに焚きつけられたんでしょうね。

これは立派な関税外障壁です。しかし、いくらWTOに提訴しても勝てません。自国民の健康の保護はなにより崇高な国家の存在理由ですから。

もし中国の毒餃子の相手国が、柳腰ニッポンではなくEUだったら、そしてあのような「知らぬ存ぜぬ、毒はそちらの国で入ったんだろう」というようなふざけきった態度を中国がEU相手に取ったとしたら、大使召還ていどは辞さないでしょうね。

自国民の健康の保護、食品テロからの防衛の視点から見て当然の措置です。

あるいは中国農民の置かれた悲惨な状況を、「飢餓輸出のためのダンピング行為」だと指弾するでしょう。欧州人ならぜったいそうします。そしてマスメディアで叩きまくります。

EUにとって農産物に人権問題をからませるくらい平気の平左なのです。もちろんOIEの清浄国ステータスなどあたりまえすぎるほどあたりまえの関税外障壁の武器です。

つまり、FTAを結んだとしても、「農産物市場は開放していますよ。原則はいささかも変えていませんよ。しかし、こんな危険で非人道的な農産物は、自国民の保護と人権上の観点から改善が見られるまで輸入禁止とします」という論法です。

市民語に訳せば、「オレの所の物はしっかり買え。しかしお前の国のものは難癖をつけて買ってやらんぞ」というわけです。

お分かりになりましたでしょうか。農産物交渉はジュネーブだけでは決まらないのです。よしんば農産物「完全自由化」となってしまっても、やりようはいくらでもあります。

■写真 畑の上に広がる空って、どうしていつもすがすがしいのでしょうか。


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コメント

つまり「あの手この手」でやりようはいくらでもあるってことですね。
そのためには、国内の衛生レベル・安全性・原産地呼称制度の厳格化などを世界最高レベルにして迎え撃つ必要と、
したたかな外交手腕(政治力)が要ります。

EUでも東欧各国の田舎では、伝統的な養豚やワイン造りをしていた農家は「EU基準を満たさない」として切り捨てられました。
TPP参加にしても各国とのFTA推進にしても、内側から変わることが必要ですね。

昨日、テレビを見ていたら米の輸出についての特集をしていました。全部見たわけではないので、確実ではないこもしれませんが、少なくとも、日本のコメは、十分輸出品として成り立つと言うことです。かのカルフォルニア米と対抗しても、十分勝負できると言う話でした。管理人さんが以前の記事に書かれたように、日本の農産品の品質は世界有数であると言うことでした。ただ、その農産物もそれなりの努力がなされてはいましたが。また、これは、コメンテーターが言っていたのですが、東北のとあるJAでは、すでに数百?数千トンと言う米を輸出しているとのこと。ただ、上部団体の手前、今回のTPPの問題等にたいする取材は可能であるが、放送には乗せられないとの事でした。
TPPが発効したら、農家が打撃を受けるのは事実だと思います。特に、畜産関係への打撃は大きいと思います。しかし、現実的には、貿易の自由化を見越して既に動きはじめている部分もあります。
TPP反対運動を見ていて、誰のための反対なのか?真摯に農家の為なのか?本当は組織の為ではないのか?昨日のテレビを見ていて、そう考えてしまいました。

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