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「日本農業壊滅論」と「日本経済、農業によって壊滅論」はメダルの表裏だ

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昨日のわが茨城県議会選挙は、民主党が4分の3を落選させて現有6議席に止まる惨敗に終わりました。自民党との1人対決区ではすべて敗北です。自民党は現有議席を割り込んだものの、議会の過半数を制しました。

これは言うまでもなく、1年2カ月前の衆院選で民主党がすべての1人区で勝利するといった構図がまったく逆転してしまったことを意味します。

民主党の敗因はもううんざりするほどあるでしょうが、ことわが農村部においてはひとつしかありません。TPPです。

あまりにも唐突に、なにひとつ下準備もなく、最大の被害者となりうると考えている農業界との何の相談もなく、APECの議長国として成果を上げたいというみみっちい野心にとらわれての菅「仮免」総理(←自分で言ってりゃ世話はない)のTPP方針の発表でした。はっきり言って馬鹿としか言いようがありません。

第一民主党内で完全に意見が二分されているありさまです。
地方選出議員、言い換えれば農村部を地盤とする民主党議員は「TPPを慎重に考える会」を作りました。その会長は誰あろう、宮崎口蹄疫で名を馳せた山田正彦前農水大臣です。同じく口蹄疫を宮崎現地で戦った現副大臣の篠原孝氏も同じく矛先を揃えました。

いわば「TPP農業壊滅論」と言っていいかと思います。

そして実にこの「慎重に考える会」に集まった民主党議員はなんと200名!与党議員のほぼ半数弱が反対ということになります。身内が半分も反対していて、TPP政策ができると思うほうが変です。例によって党内議論などまったくなかったことがわかります。

安全保障政策や農政という国の形の原則にかかわることに、民主党は統一された政策を持たない弱点が、またまた出ました。

一方、前原誠司外相を中心とする推進派も同じ数だけ民主党内にいるようで、このようなことを言います。
「GDPに占める農業の割合は1.5%でしかない。こんな農業を守るために残りの98.5%を犠牲にするというのか」。

こんな意見は別に前原氏のオリジナルというわけではなく、私たち農業者はまたかい、というほど耳にタコができそうなほど聞かされたフレーズです。原型は経済同友会や経団連のこのような認識にあります。前原氏はそれを口移しにしたに過ぎません。

米倉弘昌・経団連会長はこう言います。
「TPPに参加しないとなると、日本は世界の孤児になる。競争力なき日本農業の構造改革を促進するべきである」。

経済同友会はかねがね、「農業は日本経済の障害となっている」とまで極論していました。その財界の考えの先に出てきたのが今回のTPP積極参加論だとみていいでしょう。いわば「日本経済、農業によって壊滅論」です。

では農業界はといえば、JA全農は毎日その準機関紙の「日本農業新聞」を使って、大反対の声を張り上げています。大規模デモも何回も行われました。

今回の茨城議会選挙もJAはひさしぶりに反民主で統制をかけたのではないでしょうか。前回の衆院選では、JAになびく単協が多かったのとは大違いです。

それはさておき、この「日本農業壊滅論」とそのメダルの裏側の「日本経済、農業によって壊滅論」はほんとうに今の日本農業の姿を映し出しているのでしょうか?

私ははなはだ危うい議論だと思っています。私は日本農業はそんなにひ弱だとは思わないし、TPP推進派の財界や前原氏が言うようなまるっきり国際競争力に欠けるものとも思わないからです。

結論から言ってしまえば、日本の畜産ほど高度でおいしい畜産製品を作る国はないし、野菜や果樹においては品質の高さ、品種の多さにかけては世界一級のレベルに達しているでしょう。

うそだと思うなら、横浜中華街の料理人に聞けばいい。口を揃えて、世界でいちばん美味い中華街は横浜で、その理由は日本の食材が世界最高だからだと言うことでしょう。どうしてこんな国の農畜産業がお荷物なわけがありますか。馬鹿にするなと言いたい。

JAがTPPに反対しているのは、今800%弱の関税をかけて「保護」している米の自由化が主な原因でしょう。
ではここでお聞きしたい。
日本民族が2千年にわたって磨き抜いてきた米に勝てる輸入米など、世界のどこにあるのでしょう。あったら教えて下さい。カリフォルニア米ですか?それとも中国東北部ですか?まさか東南アジアなどといわないで下さいね。

米輸入が問題だと言うならば、どこの国のどの銘柄が日本市場で国産米にとって脅威となるのかを言うべきでしょう。食味的に日本米にもっとも近い(それはあたりまえ。日本人が作ったんですから)カリフォルニア米はロッキーの雪解け水の量に規定されているために生産の限界があります。米国の国内需要をまかなうことで需給バランスが取れています。

むしろ日本からの対米輸出がJA全農の視野に入っているほどです。価格問題だけをクリアすれば、日本米は全米を席捲するでしょう。

中国東北部も日本の商社が種をもって行って作らせていますが、いい水が少ないことと中国沿岸部市場の高品質化に合わせて国内需要で消化しきっているようです。安全性という中国農産物最大のネックを別にしても、中国にわが国の米市場への参入する力はないと思います。

この両国とも、とうてい1億3千万人の日本市場など狙う余力はありません。つまり、仮に関税をゼロにしても、日本の米市場に新規参入してくる度胸のある国は考えにくいのです。

実はかつて米国は、コメの輸出業者が日本政府に圧力をかけて来たことがありました。アメリカン・アップルやチェリー、オレンジの対日輸出攻勢の頃です。しかし、すぐに断念しました。理由は関税ではありません。

アメリカン・アップルやチェリーはそのどぎついレッドにふさわしく驚嘆するまずさで、瞬く間に日本市場から蹴りだされました。米国のオレンジ業者は、その安さでたちまち温州みかんなど蹴散らせると思っていたようですが、まぁご覧のとおりで、日本のみかん業界がかえって高品質になって強力になったことを手伝ってしまったくらいです。

では、関税ゼロとなったら野菜がどとどっと入ってくるでしょうか?よく日本農産物は高い、それは国が補助金漬けにして高いコストをかけているからだ、なんて知りもしないことをわけ知りに言う評論家がいますが、そもそも野菜なんて関税かかっていませんったら(笑)。

いい意味でも悪い意味でも(やりすぎの弊害もありますが)野菜などの日本農産物は、ジャパン・プレミアムといって世界屈指の高水準の品質、規格が維持されているのです。

価格面においても、今年の夏場のような異常気象時は例外として、私はドイツなどで現地価格調査をしたことがありますが、品目ごとのデコボコはあってもほぼヨーロッパ諸国と同一水準です。日本農産物が高いと言う人が私のブログを攻撃してきたことがありましたが、その人が比較していたのは確か東南アジアでしたっけね。反論するのも馬鹿げていますが、所得水準を考慮せずに食品価格を比較しても何の意味もありません。

だいたい日配の青菜や根菜類をどうやって毎日輸入するというのでしょう。日本市場に輸出するためには、四面海を渡ってこなければならないのですよ。一把の出荷価格が5、60円のホウレンソウを毎日空輸でもしますか(苦笑)。

巷によくいる日本農産物自由化論者の錯覚は、日本の農業にかけられている平均関税率はたかだか16%にすぎず、超高関税はコメ単独なのだということを意識的に見ないことです。米だけ見ていると、かえって分からなくなります。米は農産物の中で非常に特殊な位置にあるのです。これはそのうち詳述します。

そして、日本はEUや北米ではないことです。EUや北米のようなトラックや鉄道輸送で安価な輸出入ができる地域とは違うのです。

ですから、日本に輸出できる野菜類は一握りに限定されてしまいます。これは関税でブロックしているからではなく、そんなものしか輸出できないからです。可能なものは船便を使っての大量に輸出でき、保管がきくものだけです。たとえば、日本の端境期を狙った南半球NZのカボチャやニンジンなどですね。

私は日本の農畜産物は大いに競争力がある力強い存在だと思っています。根拠不明な40%自給率などという自虐的な数字を司令部の農水省やJAが垂れ流すからかえってしおれているだけです。

私たち農業者は農水省の言う「TPPになれば自給率は16%に下落する」というプロパガンダにまどわされずに、しっかりと自分たちの農業の姿を見据えていかねばなりません。

今日本農業に必要なことは、いたずらに危機感を煽ることでもなく、強い点はさらに強くし、弱点を弱点として認めて対策を立てて、さらに強くなることです。

「日本農業壊滅論」も、「日本経済、農業によって壊滅論」も、実は同じ根っこなのです。日本農業が弱く、他の産業に寄り掛かって補助金で延命治療されているような存在だという誤った認識から始まっています。

日本農民はもっと自分に自信を持つべきです。このテーマはもう少し続けます。


■写真 カミさんの誕生祝いの薔薇をドライフラワーにしています。


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コメント

thunderそうだったのか!まるで池上彰さんみたいにわかりやすいsign03

ご無沙汰!いつも開けていますよこのブログ…pc。すっとばして読むことはあるけれど…。
「農業なんて、なにが美味しいかということに尽きると思う」もよかったですね。ブログ主のひろがる情感。あたたかい世界。
猪突も「らしく」ていいですが、幅広い読者もつかんでおいてください。
~立ち上げ以来の一読者より~

投稿: 余情 半 | 2010年12月13日 (月) 11時07分

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