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2010年12月 7日 (火)

宮崎口蹄疫事件 その145 畜種横断的な「地域防疫協会」を作りたい

012


宮崎口蹄疫事件を半年間追いかけてきました。その中でやはりこれだけはどうにかせねばならない、ここを改善せねばダメだ、ということがいくつか残りました。

その中のひとつが、「北海道」様もおっしゃる畜種間の温度差です。お恥ずかしい話ですが、私がこれに気がついたのは相当に遅く、既に終結宣言が出て、「現役養豚家」様の投稿をいただいてからのことです。

その投稿を読むことで、私は日本養豚協会やJASVの動きが、今回の事件の鍵だと知りました。この経過については何度も書いてきていますので簡単にしますが、要は民間の養豚協会と獣医師の団体が、山田大臣(当時副大臣)を動かし、ワクチン接種・全殺処分という大胆な防疫方針をとらせたことです。

当初、私はこの動きに批判的でした。一業界団体と農水大臣の癒着とすら考えていたほどです。その評価が変化したのは、やはりJASVの5月初旬からの現地防疫支援と、現地の宮崎養豚生産者協議会の献身的な動きを知ったからです。

彼らが県や農水省を通さずに、直に農水大臣に「直訴」するという手段を取ったのは、このままでは台湾口蹄疫のように宮崎県のみならず、全国の畜産が崩壊するというひりつくような危機感でした。この危機感こそが養豚業界の原動力だったのです。

それに対して牛関係の動きは鈍かったのは事実です。
片や養豚関係は県レベルでのワクチン・全殺処分に向けた意志一致をしている。片や牛関係は県の方針に従っているにとどまっていたわけです。つまり、養豚関係は既にワクチン・全殺処分が国の方針とされることを想定して組織的な態勢を整えていたにもかかわらず、牛関係はひとりひとりの農家が県と個別対応する所にいたのです。

この温度差こそが、宮崎口蹄疫事件の最大の矛盾、あるいは悲劇だと言っても過言ではないでしょう。県と国の確執以前に、既に畜産業界の中での亀裂が存在していたのですから。

このような養豚関係者と牛関係者との目に見えない確執が、狭い地域で演じられたらどのようなことになるでしょうか。それが現実になってしまったのが、今回の宮崎県の事例でした。

養豚関係は政府の新方針を全面支持し、一方牛関係は「全殺処分しか方法はないのか!」という悲鳴にも似た声をあげました。

私は東国原宮崎県と山田農水省の対立と巷間言われていることの背景には、この養豚業界と牛業界の畜産農家内部の温度差が存在すると思っています。

この問題は形を変えて口蹄疫を総括する時にも現れました。私や三谷先生のようにワクチン・全殺処分に懐疑的な者と、「現役養豚家」様や岡田先生のようにそれを全面支持する人たちとの間の落差です。

私はこれをマーカーワクチン論争のような空中戦で処理する気はありませんでした。そのようなことをやってもケリが着かず、かえって溝が深まるのは目に見えていたからです。私が卑怯とまで罵られても、ワクチン論争を回避したのはそのような理由からです。

なぜなら、宮崎県口蹄疫事件においては現実にはNSP抗体検査を導入する時間的余裕はなかったでしょう。かといって、ワクチン・全殺処分のみが正しい方針として今後の防疫指針になっていくなら、それは明らかに間違っています。

大事なことは防疫方針上のこともさることながら、ひとつの地域での牛と豚の壁を取り除き、地域の「面」としての防疫という新しい防疫概念を打ち立てることです。

好むと好まざるとに関わらず、狭い地域という船に互いに乗り合わせたことを自覚することです。現実の壁は絶望的になるほど厚いのは確かです。

個人でどうかできる範囲をはるかに超えています。これには地方行政がしっかりと中心になってくれないと不可能です。県家保と農業改良普及所、自治体農水課、そしてJAなどが指導する形で、畜種横断的な「地域防疫協会」のようなものを作らないと実現しません。

初期通報者保護もこの組織が対応することにしたらどうでしょうか。家保と民間獣医師の調整もできます。このような受け皿ができれば、宮崎県の蹉跌を再度踏むことは避けられると私は思います。


■写真 欅の樹もだいぶ散りました。ちょっと風が吹くと、桜吹雪ならぬ欅吹雪です。

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口蹄疫問題」カテゴリの記事

コメント

地域ぐるみで防疫に取り組むには糞尿処理と比較してみるのもよろしいかもです。どちらも生産性を上げる為の投資とは言えないわけですから個々の農家で、或いは畜種でかなり温度差存在します。糞尿処理問題が法規制を整えたように防疫にも必要だと認識してます。
管理人さんが以前から指摘されてるワクチン接種直訴を養豚関連業界が行った事が事実としたら、今回のTPP参加を政府に大企業幹部や経団連辺りが直接働きかけた事と流れは酷似してますね。

地域ぐるみ(畜種の垣根を越えての)の防疫体制構築について、町自衛防疫組合の中でも議論してみようと思います。
私の町では乳用牛(搾乳及びホル雄肥育)と和牛(繁殖及び肥育)の他は、緬羊と馬で、豚及び鶏はいません。(自家用の為の鶏は町内全部で100羽程度でしょうか)
宮崎県や濱田様の住んでいる地域とは畜種の種類も経営形態もシンプルですから、理解には時間が掛かったり、難しさはあるものの、他地域と比較すると可能かも・・・と思っています。
今回の口蹄疫発生や被害が形骸化しない内に、協議を進めようと思っています。

北海道さんが仰っていたように、管理人さんの主張には、大賛成です。というか反対する人は、皆無でしょう。
私が懐疑的なのは、高額な防疫費を捻出できない農家にどう説明・説得するかです。前コメで、堆肥舎の問題と絡めてはとの提案がありましたが、飼養母牛9頭以下の農家は、堆肥舎不要となっています。つまり、この法律は、「零細農家は多目に見ますよ」と言っているわけです。
しかし、防疫はそうは行かない。針の穴も通さない防御シールドを畜種横断的に構築・維持しなければならない。
あまりにも壮大すぎる気がします。
野生鹿はおろか、山羊・猪の飼養頭数すら把握できていない現状は、面防疫元年から見れば、まるで、原始時代ですね。

またまたシロウトの暴論で失礼します。

「堆肥」について、牛も豚も鶏糞も、まとめて地域で一体化&何らかの化学or熱処理で無毒化して再利用。もしくはバイオマス発電利用は不可能でしょうか?

家畜排泄物の管理に関しての、成牛9頭以下については、その程度の頭数では環境に大きな影響を与えないだろう・・・との事での線引きでありますが、その人の考え方(処理の仕方)によってはもっと頭数の多い人よりも影響を与えている場合もあります。
COWBOYさんが仰る通り、排泄物管理と防疫をセットにしての対応も一考の余地はありますが、現実的には費用負担や規模の大小、畜種、経営形態によって考え方や対応の仕方は、まちまちだと思います。
防疫シールドの構築も、特に空気感染する疾病の場合は尚更難しさがあります。
実際の防疫シールド構築をする前に、垣根を越えた防疫に関する意識のシールドを構築する事を目指し、危機意識を共有出来た時点で、次の段階として実際の防疫シールドの構築と言う事かな?と思っています。

記事の内容と関係ないかもしれませんが、今回の口蹄疫禍から、自分の家畜を守り通した農家の事を聞く機会がありました。
一件は養豚農家で、畜舎全体をシールドして、消毒液を四六時中滴下、その外側を防鳥ネットで囲み、農場の入り口には、24時間、従業員が立ち番に立ち、人の出入りを厳しく制限したそうです。
もう1件は、少数繁殖農家で、口蹄疫発生以後、外出を極力控え、農場への人の出入りは、殆どなかったそうです。
その、防疫規模は、まさに両極端ですが、両例とも、最後まで、自分の家から口蹄疫を発生させることなく、和牛は結局、ワクチン接種になりましたが、感染はなかったそうです。
一口に防疫と言っても、できる規模や対応が、やはりまちまちになってしまいますが、上記の例から判ることは、リスクの高い部分を、防ぐことにより、かなりの効果が期待できるのかもしれません。
その為にも、今回の宮崎口蹄疫禍、および鳥取鳥インフルにおける初動や、それに対する個々の対応を検証し、次に生かす努力をすべきかと考えます。
まだまだ、役に立つ事案が、埋もれているのではないでしょうか?

すみません。
前の書き込みの鳥取鳥インフルは
島根鳥インフルです。
訂正してお詫びします。

えびの市の例を紹介します。
和牛繁殖農家が2件、軒先を並べてありました。その片方に口蹄疫が発生。
その時から、ブルーシートを貼り付け、その上から、希釈した食酢を24時間掛け流し、牛の生体にも噴霧機で24時間掛け続けたそうです。
この農家は幸いにして、後継者夫婦がいたから出来た措置です。
結局、この農家には口蹄疫は侵入しませんでした。
我々は、この農家に足を向けて眠れないと口々に言っています。もし、この農家に口蹄疫が発生していたら、ワクチン接種&殺処分が実行され、多くの農家が再興できなかったことでしょう。
防疫には、強弱というか緩急が必要な気がします。いつもMAXでは身も金も持たない。しかし、いざという時、フルパワーで望める備えは必要。

希釈酢による消毒の効果は疑わしいです。
(びしょ濡れになるほど撒けば、多少効果が期待できるとは思いますが。)
http://www.pref.tokushima.jp/docs/2010090700047/

いまでも、役所のHPで、希釈酢による消毒を紹介しているところがありますが、
いざ発生したら、訴えられるのではないかと人ごとながら心配。

割愛した内容ですが、牛に100倍希釈酢を滴る程、掛けたため、牛は鼻水や涎をダラダラと流し、ついに、うちにも来たかと、獣医に連絡して、酢の掛けすぎのせいだとわかり、杞憂に終わったということです。
食酢は、安価で入手が容易なため、すぐに広まりましたが、石灰の上から酢を撒く行為を見かけました。
所詮、この程度の知識で牛を飼っている老人が殆どなんですよ、この辺りでは。面防疫ねぇ、確かに理想だけど、う~ん。限りなく文盲の人だっているし、夜明けはかなり遠いですね。

首になった山田農水大臣に見殺しされた民間種牛の飼育者:三共種畜牧場:こもだ氏の口蹄疫防疫方法なども参考になるのではないですか??広く紹介したら、九州地区の畜産農家の参考になると思います。12月の韓国安東市の口蹄疫はさらに拡大!、殺処分は既に8万8千頭で、日本各地の畜産農家も要注意です!!。

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