韓国はウイルス相手にモグラ叩きをやっているように見える
韓国が空前の口蹄疫大発生をみています。既に10万頭を超え、この感染拡大をどこかで止められなければ、宮崎県のような膨大な被害を出してしまうような気がします。海峡を超えて韓国農民にがんばろうの声を届けたいですね。
さて、なぜこのような大発生を引き起こしたのでしょうか。私たちは宮崎の事例を知っているだけに、今回の事件を他山の石とせねばならないでしょう。
実は韓国における口蹄疫の発生は今年だけで3回目になります。ご承知のように1月と4月で、4月には実に11回のリング・カリング(*一定の範囲内の患畜、疑似患畜を問わない全殺処分方式)と2回の農場全殺処分を行った結果、395農場で約5万頭の牛、豚、羊、鹿を殺処分にしました。
しかし、韓国は一見早く清浄国復帰をなし遂げたように見えても、実は広範囲に口蹄疫ウイルスをなんらかの媒体を通じてばらまいたのではないかという可能性がつきまといました。
つまりこういうことです。OIEに「清浄性(FMDFree)を回復した」と言う時に、eradication「根絶」jlと訳される用語を用います。しかし、ほんとうに口蹄疫ウイルスが一国から「根絶」できるなどということがありえるのでしょうか?
実は「根絶」したつもりでも、ほんとうは発生地域からelimination「排除」したにすぎず、他地域、あるいは他の種へmove「移転」したに過ぎないのではないかと、私には思えてならないのです。
今年の韓国の発生事例を時系列でみてみましょう。12月10日に掲載した地図を一緒にご覧ください。
まず今年の最初の発生は、2010年1月~3月の京畿道ポンチョンでした。これが終息するやいなや同じ京畿道インチョンのカンファで発生しました。
これが4月いっぱい続き、その発生と並行して東に隣接する忠清北道忠州に飛び火しました。
そしてめまぐるしいことには、京畿道の南に隣接する忠清南道の青陽郡で4月末から6月初めまで発生しました。
ここまでが今年の上半期です。京畿道⇒忠清北道⇒忠清南道へと発生が遷移し続けてているのがわかります。
そして下半期です。これは上半期に発生を見た忠清北道の東に接する慶尚北道安東で11月26日に発生して以降、慶尚北道全域で猛威をふるっています。
これを見る限り、韓国のこの一帯の京畿道、忠清北道、忠清南道、慶尚北道、江原道の中で、唯一感染を免れているのは江原道だけだとわかります。
そうです、たぶん韓国においては一見徹底したリングカリングを敷き、3㎞以内を全殺処分にするという防疫方法をとりながらも、実態はその地域の清浄性が確保されただけで、隣接する地域にウイルスを遷移させていたにすぎないのではないでしょうか。
ひとつの地域から口蹄疫ウイルスをelimination「排除」したにすぎず、ほんとうは口蹄疫ウイルスは国内からeradication「根絶」jされていなかったのです。
まさにもぐら叩きです。
どうしてこうも簡単に再発を許してしまうのか、その原因は理解できないでもありません。「日本農業新聞」(12月10日)は、慶尚北道の家畜衛生試験場の確定検査までの申告の遅れを指摘しています。
また、新たに上半期の発生を受けて作られた口蹄疫緊急行動指針(SOP)の見直しが、かえって現場の混乱をもたらしたとの説もあるようです。
新しいSOPに馴れていない地方自治体の現場の公務員が右往左往してしまい、情報伝達が遅れたケースもあるようです。
殺処分現場でも、重機などの機材があっても人員がいないなどの事例も報告されているようです。
防疫警戒も甘く、安東市の場合、口蹄疫が確定された3日後によやく中央高速道から安東市へのICで消毒ポイントが設置されたそうです。
ああ、なにか5月の宮崎県の児湯地域を見るようです。情報伝達の遅れと殺処分の遅れ、まさに宮崎で起きたことと瓜二つです。このような中、畜産農家はどれだけ不安におののいていたのか、胸が痛みます。
かえって、飼料運搬業者などの民間のほうが自主的に情報を収拾し、防疫処置を取ったようです。ににもかかわらず政府発表では、伝播した原因は飼料車などとされています。
確かに疫学的にはそうであったとしても、私はもっと深い部分で韓国は過ちをおかしているのではないかと思えてなりません。
■写真 わが村、湖水地帯の夜明け。
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一度、口蹄疫などの伝染性疾患が国内に入ってくると、その駆逐には、凄まじいまでの労力とお金が必要になることを、今回の宮崎口蹄疫、韓国の口蹄疫を見て感じています。
近隣諸国で、断続的に発生している事を考えれば、また日本で発生しない保証は、どこにもありません。
ましてや、宮崎口蹄疫において、感染の可能性のあった牛を、食肉処理に出荷しているのに、その行き先や最終的な状況を全く公表していないのに、何故、農水は日本は清浄国であると言えるのでしょうか?
あやふやなままの決着が、今後の日本の仇とならない事を切に祈ります。
投稿: 一宮崎人 | 2010年12月12日 (日) 13時22分
こんばんは。青空です。
韓国の口蹄疫はやや拡散が止まっている模様ですね。このまま収束してくれればと思うと同時に、あの苦しみに現地農家、
関係者が悶絶していると思うといたたまれなくなります。
韓国は日本に比しても優れた防疫体制を有していると感じています。是非はともかくとして感情論や科学的根拠を全てを凌駕する予防的殺処分とその対応のスピード、日本よりは踏み込んだ補償体制。現実的に対応可能性な対処方法と徹底したサルベージ。スピードも十分にあると感じています。軍もこの環境下でも積極的に動いているようですし、国を挙げて封じ込めようという姿勢を感じます。さすがは徴兵制の国、現場における作戦の遂行は時間こそが全てという軍隊の鉄則がすべての行動に浸透しているのでしょうか。
反面農家が複数、アジアへ海外旅行にいったり、初発以後に各農家が消毒を徹底できていたのか、家畜の異常に気付けなかったという初歩的な問題点もでてきています。
どうにもネット上はかの国に対して激しい感情を持つ人々が多いようです。冷静な分析が少ないような気がしています。
私見ですが、今回の韓国での発生は以下の点をあぶり出しているのではないかと感じています。それは私が当初から感じていたことでもありますが。
「この疫病に人類は勝ち、清浄化することは現時点では科学的に不可能ではないか」もちろん、無限に金と人員は投入すれば可能でしょうが。
十分にある準備も実態経験も、市民全体の危機感も有し、農家及び関係者も緊張感は高い状態ですら、初発農家の発見は遅れました。焦土作戦、500mの予防的殺処分を持ってしても、封じ込めは不可能でした。これが口蹄疫の真の姿であるのではないのでしょうか。他国のように十分な国土がない中で、感染を一地域に封じ込めることがいかに困難か、人・物の動きは現在社会では一日で簡単に列島を往復します。10〜20キロの関係者のみの移動制限など気休めなのでは。
また、現在の消毒方法で、果たしてどの程度のウィルス駆逐能力があるのでしょう。
もしかしたら10%前後のウィルスの駆逐しかでいないのかもしれません。
この悪魔には人類が勝つことはできないのかもしれません。
前線の間近で防疫戦線を貼っておられたCOWBOY様が面の防疫構築に懐疑的な見方をされたことを思い出しました。
平時に相応に高レベルな防疫体制を地域一丸で構築することに異をとなえられていたわけでないのに、困難な印象を持たれているということに意味があります。
万が一開戦(ウィルスの侵入)があった時に、当事者である農家の及び関係者は、何日間完全な緊張状態を保つことができるのか、また経済的にどの程度の期間耐え得るのか。兵站線は機能し続けられるのか、その困難さを身をもって見聞きしていることが重要です。しかも防衛線がもし、気休め程度の効果しか得ないのであればどうでしょう。
初発についても、感染拡大前に発見することは極めて奇跡的な領域とあるのではありますまいか。
もしそうだとすれば、初発発見体制に重きを置きすぎる評価体制は極めて危険な対策なのではないのでしょうか。
いろいろ考えさせられる状況です。
投稿: 青空 | 2010年12月12日 (日) 23時54分
青空 さま。
>初発発見体制に重きを置きすぎる評価体制は極めて危険な対策なのではないのでしょうか
同感です。韓国の状況を見ていると、少々ミスがあっても、大惨事までに至らないような「環境作り」が必要な気がします。
韓国でも、初動の遅れが報道されています。
http://www.twitlonger.com/show/7fcobc
韓国と宮崎の同じスケールでの比較
http://twitpic.com/3fiuxt
韓国は、今年、かなり広い範囲で発生があったことがわかります。
宮崎は、ほんとうによく狭い範囲ですんだモノだと思います。
投稿: コンタン | 2010年12月13日 (月) 18時27分