韓国の口蹄疫対策はFTAと一体だ
韓国の今回の口蹄疫を見ると、韓国の今までとって来た防疫方法が根本的にどこかで過っていたのではないか、という思いにとらわれます。
今回の韓国は10万3千頭の殺処分を出しながらも,、江原道を除く京畿道、忠清北道、忠清南道、慶尚北道、江原道にまで拡大を続けています。広さにおいては宮崎事件など取るに足らないほどです。これを防疫の壊滅的失敗と言わずしてなにをそう呼ぶのか、というほどの失敗です。
韓国の口蹄疫防疫政策の特徴は、世界でも類を見ないは徹底したリング・カリング(ring-culling)政策でした。リング・カリングとは、無理に訳せば「リング状選別政策」、あるいは「リング状殺処分政策」とでもなるのでしょうが、発生点から一定の半径内(韓国の場合3㎞)を無条件で疑似患畜、患畜を問わず、全殺処分にする方針です。
いや~、苛烈ですな。うちの農場にモニタリングに来た家保の獣医師も、「あんなことが出来る国はそうそうないですよねぇ」と呆れるというか、感心していました。
この韓国産檄辛トウガラシのような防疫方法はどうして生まれたのかを少し考えてみたいと思います。私はこれは韓国のFTA政策と不可分であるように思えます。そう、「貿易対策としての防疫対策」なのです。
現在、韓国と相手国の議会で批准されて発効したFTAは、願いましては・・・チリ、シンガポール、EFTA(欧州自由貿易連合=スイス、ノルウェー、リヒテンシュタイン、アイスランド)、ASEAN(東南アジア諸国連合)、インドとの5件です。
韓国は東南アジアの全域、EU地域の一部、南米の一部、インドが既に自由貿易圏となり、次いで、発効ここそ至らないが交渉が妥結した国々は以下です。
まず筆頭はなんといっても世界一の消費市場である米国を筆頭にして、EU(欧州連合)、ペルーとなります。米国、EUという荷台地域で既にFTAが発効するのはもはや時間の問題というわけです。
そして交渉中のFTAは、カナダ、GCC(湾岸協力会議)、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、コロンビア、トルコなどがあります。
ちなみに、日本とは交渉が中断されており、中国、ロシアとは共同研究が行われている状態です。
(以上、韓国外交通商部の資料による)
つまり、韓国はTPPなどという環太平洋規模いうケチな話ではなく、北米、南米、中東、EU、東南アジアといったほぼ全世界と自由貿易協定体制に既に突入しているわけです。
これを「開国」の進んだ韓国、「開国」の遅れた日本という表現をする人がいますが、私はまったくそう思いません。
韓国経済の宿痾は、非常にいびつな形をしています。極端な外需依存、輸出シフトなのです。
韓国経済の実に40%弱が外需に依存しています。しかも韓国国内での完成品生産率が高く、同じ輸出品といっても日本のそれが、たとえば自動車などにしても米国で売られる日本車のほとんどが米国製であり、部品もまた日系米国法人が生産しているのと対照的です。
このような輸出先の経済や雇用になんら貢献しない韓国の消費財の雪崩的輸出は、とうぜんのこととして激しい貿易摩擦を引き起こします。米国で全米自動車労組が゛米韓FTAに強硬に反対したことは記憶に新しいことです。
そしてこのFTAによりてヒョンダイやサムスンなどの製品を無関税で輸出殴り込みをかけられる反面、これらの対象国と地域で生産される農産品が、韓国でも同じように生産されており、しかも韓国の価格競争力が弱いとなると、とうぜんのこととして韓国農業が大打撃を受けることになります。
このFTA路線は、盧武鉉(ノムヒョン)政権が始めたのですが、農業部門の抵抗はすさまじくく韓国農民が国際会議の開かれる香港まで出ばって現地の警官隊と乱闘になるという珍しい光景が繰り広げられました。おいおい、他人様の国で暴れるんじゃないよ。これじゃあ農業フーリガンってよばれるぞ(笑)。
まぁそれはともかく、韓国はこのような農民の激しい反対運動を蹴散らして、大統領制という日本国首相などは及びもつかない強大な権限集中によって与党を賛成につけ、国是と化したように自由貿易体制になだれ込んで行ったのでした。
前置きが長くなりましたが、この韓国のFTA路線の強行とほぼ同時期に現れるのが口蹄疫のリング・カリング政策です。これは偶然ではないと私は考えます。
韓国はGDPの4割を外需に依存するという体質のために(ちなみに日本の外需依存率は16%ていどですが)のために取った、というか取らざるを得なかった世界規模のFTA政策の結果起きた韓国農業の無関税状態に対する防衛手段としてこの檄辛口蹄疫方針を取ったのです。
これが関税外障壁としての口蹄疫対策です。つまり清浄国であることを死守するために、仮に発生したとしても速やかに清浄国ステータスに復帰するためにいかなる形でもワクチンを使用せずに、容赦なく全殺処分をかけていくという方法です。
日本はFTAを国是としているわけではありませんので、韓国のようなタックス・フリー国でない分だけ対処の余裕があります。日本は仮に清浄国復帰が多少遅れたとしても、結局は輸出国との二国間交渉で清浄国復帰までの数カ月間をだらだらと時間稼ぎしていでいればいいのです。
一方、韓国はそうはいきません。発生国に転落した瞬間、南米諸国などの「ワクチン接種・清浄国」の牛肉にまで輸出攻勢をかけられるハメになります。
このときに韓国牛肉の品質の低さが問題となります。行ってみればわかりますが、韓国牛肉はうまくないんだな、これが。韓国人旅行者が日本に来ると和牛の焼き肉を必ず食べて帰るといわれるほどです。和牛のような国際ブランドではないだけに、単純な価格競争になってしまうのです。
まさに待ったなし。常に尻に火がついている状態だと思えばいいでしょう。
私は今回の韓国口蹄疫を見ていると、たぶん清浄性確認が甘いのではないかと思わせられます。清浄国復帰を焦るあまりに、藁、堆肥などの中のウイルス処理が甘く、家畜関係車両の消毒も同じく甘いように思えます。
早期発見-初動リング・カリングに頼るあまり、ウイルス制御が失敗し、いったんウイルスが漏れだして貿易網をかいくぐってしまうと、とてつもない広域がパンデミックに陥ってしまいます。
私は今回の韓国の口蹄疫事件は、無理なFTA体制を維持するために敷いた、これまた無理なリング・カリング政策の結果だと思えます。私たちは、TPP問題を考えるときに、口蹄疫対策とからめて考えていかねばならないのではないでしょうか。
■写真 もう紅葉もおしまいです。雨に濡れたもみじの葉はひときわ美しいですね。
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コメント
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韓国の牛肉がまずい理由。
日本の黒色和牛のようなサシが入る品種改良がまったくされていない。熊本と高知の赤牛の遺伝子に昔の朝鮮赤牛の遺伝子が少し入っているが、儒教の影響で、朝鮮では黒色は不吉な色とされ、淘汰された!だから、日本の和牛の精液を韓国に密輸しても、母牛が赤牛だから、仔牛は韓国赤牛にはならない!!また赤牛は黒色和牛に比較したら熱に強いが、刺しの入る頻度が、黒と比較したら、劣る。今では、熊本赤牛でも刺しがよく入る牛もいるが、やはり、黒色和牛には負ける。
投稿: AniVet | 2010年12月14日 (火) 18時38分
世界でも最高峰レベルと思っていた韓国の防疫体制も、実は張り子の虎だったというか、工業製品輸出のための方便として作られたものだったのかもしれません。
国策で財閥とともに突っ走る韓国。現在はエライ儲かっていますが、12年前の通貨危機みたいなことが再び起きたり(今も世界のマネーはダブダブです)、北が今以上にちょっかい出してきたらどうなるでしょう?
そして日本はどこへ向かうんでしょう?
投稿: 山形 | 2010年12月14日 (火) 20時13分