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2011年1月

2011年1月31日 (月)

韓国紙による韓国口蹄疫批判記事

002

ひさしぶりに韓国口蹄疫に触れます。

口蹄疫は、今まで清浄地域だった慶尚南道にも侵入しました。口蹄疫防疫の責任者である劉正福(ユ・ジョンボク)農林水産食品部(省)長官が28日、辞意を表明しました。

一方27日、FAOのフアン・ルーブロス畜産部門最高責任者は、「現在の韓国国内での口蹄疫の流行は、過去50年間で類例を見ないほど深刻な状況だ。この問題に対する備えやモニタリングが非常に重要だ」との声明を出しました。

韓国紙がこの間すさまじい爆発をした口蹄疫についてこのような批判記事を1月26、27日の二日にわたって掲載しました。

興味深いのは、11月の慶尚北道の初発において11月23日に既に発症しており、家保に通報があり簡易検査をしたところマイナスだったので、それ以上の詳しい検査を上部機関に依頼しなかったことです。

このことにより、初動が5日間遅れました。この5日間の遅れが致命的となり、防疫陣はこの間に拡大したウイルスの後追いに追われ続けることになります。

簡易検査はあくまでも簡易検査であり、しかも検体はサンプリング抽出にすぎません。ここでマイナスが出ても、他の個体で発生している場合が往々にしてあるということです。

わが国でも、現在進行しているトリインフルにおいて簡易検査(血清検査、PCR、ウイルス分離検査)がただちに家保で出来るようになりました。それは素晴らしい進歩なのですが、これを過信すると危ない。

あくまでも簡易検査はサンプリク数が一桁ないしは二桁です。これで仮に飼養規模1万羽だとすると、検査分母があまりにも少ないわけです。過信してはいけません。

次に、韓国では思ったとおり、輸出豚肉との関係で、ワクチン接種をためらっていたことが分かりました。

ワクチン接種の判断が、わが国と比べて極めておそかったことが指摘されていましたが、予想どおり韓国ではワクチン接種は想定外であり、どの段階で接種するかの定めがなかったようです。

このワクチン戦術のなさは、やはり防疫ならぬ貿易がらみだったようです。中央日報紙は、わずかの豚肉輸出のために国内養豚を壊滅させたと批判しています。

韓国は貿易で中国、ベトナムと大きなつながりをもつようになり、ヒト、モノの交流がさかんになりました。ベトナムは世界最大規模のトリインフル発生国で死者まで出しています。

一方中国は、もうなんでもありの非清浄国です。これらとの国のグローバル化により、韓国の今までの防疫体制のあり方そのものが崩壊したようです。

今後、民主党菅政権が6月までに強行しようとしているTPPが防疫状どのような結果をもたらすのかの未来図であるのかもしれません。

なお、もうひとつの引用記事において韓国で行われたと噂のあった豚の非人道的な処分(生き埋めといわれる)について動物愛護団体が抗議したという記事もあります。これはいつくか映像報道などがありましたが、複数情報がないために私のブログでは報じてきませんでした。事実については確証はありませんことをお断りておきます。

それにしてもわが国マスメィアは、KARAがどうしたとかいうどうでもいいことには大きな時間をさくくせに韓国口蹄疫の「こ」の字もでないのですから、まったく。

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以下中央日報記事を転載いたします。読みやすくするために改行を施し、赤字は引用者です。

口蹄疫:進歩なき防疫対策   2011/01/27 朝鮮日報

今回の口蹄疫(こうてい)感染拡大問題で、農林水産食品部などの担当部処(省庁)は、感染が確認されてから最初の五日間に行うべき対応を怠った。さらに、その後も急速に広まるウイルスを抑制することができず、右往左往するばかりだ。

 昨年11月に慶尚北道安東市の農家から最初に感染が疑われるとの通報があったが、当局はこれを詳しく調査することなく、五日間にわたり何の対策も取らずに放置した

その間に口蹄疫ウイルスは安東から京畿道にまで広まり、その後に行われた大規模な殺処分や予防ワクチン接種は、結果的に後追いの対策となった。

つまり今回の口蹄疫問題は、初期対応の失敗が最悪の状況を招いた人災というわけだ。そのため、殺処分に伴う補償や消毒費用などに2兆ウォン(約1500億円)以上の税金が投入される結果を招いた。

 26日までに殺処分された家畜の数は、牛14万4249頭、豚257万3319頭など、計272万3811頭に上る。前日の262万5553頭に比べ、9万8258頭も増えた。このままのペースで行けば、旧正月(今年は2月3日)連休前までに殺処分される家畜の数は300万頭を超える見通しだ。

 殺処分に伴い農家に支払われる補償金も、1兆7000億ウォン(約1250億円)を超えるものとみられる。

 今回の口蹄疫問題の初期には、農林水産食品部の劉正福(ユ・ジョンボク)長官を司令塔に消毒などの対策が取られたが、京畿道、慶尚北道、江原道などへの感染防止に失敗したことを受け、昨年12月29日には政府次元で中央災難安全対策本部が発足した。しかし、その後も感染の勢いは衰えていない。

(1)最初の五日間は完全に無防備状態

 今回の口蹄疫は慶尚北道安東市で最初に発生したが、この事実を農林水産食品部国立獣医科学検疫院が正式に把握したのは昨年11月28日だった。ところがその五日前の23日には、慶尚北道家畜衛生試験所にすでに通報されていた

試験所の関係者は簡易検査の結果が陰性だったことを理由に、通報があったことを中央災難安全対策本部に報告しなかった。ところが28日に再び通報があったため検疫院が詳しく調べたところ、29日になって陽性反応が確認された。農林水産食品部は感染の疑いがあるとの通報が入った場合、必ず獣医科学検疫院に詳しい検査を依頼するという規定を定めていたが、現場の自治体がこれに従わなかったというわけだ。

その間にウイルスは車や人間を通じて安東全域に広まり、さらに糞尿運搬車によって京畿道坡州市にも感染が広まっていった。

2)右往左往する防疫当局

 京畿道北部で最初に口蹄疫の疑いがあるとの通報が入ったのは昨年12月14日だった。

しかし、口蹄疫ウイルスに汚染された糞尿運搬車が坡州に立ち入ったのは11月17日と26日だ。安東市で指定されていた口蹄疫防疫網(発生農場から20キロ以内)が完全に崩壊していたにもかかわらず、政府が口蹄疫ワクチンの接種を開始したのは12月23日だった。

それも李明博(イ・ミョンバク)大統領が前日の国務会議(閣議)で「過去と同じような対策では解決しない。専門家と相談してより根本的な対策を取りまとめよ」と指示した後だった。

 口蹄疫ウイルスを完全に制圧するには、殺処分が最善の方法だ。英国では2001年に2030件の口蹄疫が発生したが、1084万頭を殺処分することで感染の拡大を防いだ。しかし韓国では全国に感染が拡大するペースが速く、殺処分だけでは不十分だった。農林水産食品部も、どの時点で予防ワクチンを接種するかという基準を事前に定めていなかった。

 一時は豚肉の輸出を続けるために予防ワクチンの接種をためらったという話もある。いったんワクチン接種を開始すれば、継続して接種を行わなければならない可能性が高いからだ

しかし韓国からの豚肉輸出はわずかで、牛は一切輸出していない。口蹄疫がほぼ放置された状態にある中国やベトナムとの交流が増えた結果、韓国はウイルスに対してすでに無防備な状態に置かれているが、その対策として実利のない殺処分にこだわりすぎた。つまり、グローバル化という環境の変化に防疫対策が追い付いていないということだ

(3)一部農家の無責任な態度

 口蹄疫の感染拡大には一部農家の無責任な行動も大きく影響した。今回、口蹄疫が最初に発生した慶尚北道安東市の養豚地域では、複数の養豚業者が定期的にベトナム旅行に出掛けていた。しかも、帰国の際に空港でしっかりと消毒を行っていなかったことも分かった

 感染対策が出遅れた影響で、非常に多くの畜産農家で被害が相次いでいる。これまで苦労して育ててきた家畜を地中に埋める心情は尋常ではないはずだ。ところが一部の農家では、少しでも補償金を多く受け取るため、被害状況を水増しするといったモラルハザード現象も起きている。

 最近は豚肉価格が1頭当たり60万ウォン(約4万4000円)前後と、昨年の30万ウォン(約2万2000円)に比べ2倍近くに跳ね上がっている。

その影響で、一部の養豚業者は殺処分に伴う補償金目当てに消毒を怠っているとのケースも農林水産食品部に報告されている。この報告を受けて農林水産食品部は26日、豚に対する殺処分の補償金を、前年度平均価格の130%を上回らないよう規定を変更した。

このように口蹄疫が韓国畜産業の根幹を揺るがすほどに大きな問題となっている中、畜産業従事者の一部では相変わらず海外旅行に出掛けているケースもあるという。

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「口蹄疫清浄地域」の慶尚南道でも口蹄疫の疑い

口蹄疫清浄地域だった慶尚南道(キョンサンナムド)でも口蹄疫が疑われるという申告が入った。慶尚南道金海市酒村面(キムヘシ・チュチョンミョン)の養豚農家から口蹄疫の疑いがあるという申告があり、国立獣医科学検疫院に精密検査を依頼したと23日、明らかにした。

  慶尚南道によると、該当農家で飼育中の豚は立つことができず、水泡が生じているという。また39頭の子豚が死んだ。これを受け、慶尚南道は農場主ら関係者と家畜の移動を禁止し、緊急防疫に入った。この日夜には半径500メートル以内の農家の豚6500頭余りを予防次元で殺処分した。精密検査の結果は24日午後に出る予定。

  22日には国内最大規模の韓牛産地である慶尚北道尚州(キョンサンブクド・サンジュ)でも口蹄疫が発生し、畜産基盤が崩れるのではないかという懸念が強まっている。

  特に政府が全国の牛を対象にした一次ワクチン接種をすでに終えたにもかかわらず、口蹄疫が拡散し、これまでの防疫作業には効果がなかったという指摘も出ている。これに対し政府側は「ワクチンを接種した後、およそ14日後に抗体が形成されるだけに、今月末ごろから沈静化するだろう」と明らかにした。

  一方、京畿道利川(キョンギド・イチョン)では伝染性が強い鳥インフルエンザが発生した。京畿道(キョンギド)災難安全対策本部は、申告が入っていた利川市雪星面(ソルソンミョン)の農場の鶏について「高病原性鳥インフルエンザと確認された」と23日、明らかにした。この農場は鶏200羽が死んだことを受け、21日に申告した。
(中央日報 1月24日)

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動物自由連帯が19日午前、ソウル明洞(ミョンドン)で、口蹄疫のため生き埋めにされた動物の苦痛を市民に知らせるため、動物の仮面をかぶってパフォーマンスをしている。
(中央日報 1月21日)
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口蹄疫:農林水産食品部長官が辞意表明

牛や豚などの伝染病「口蹄(こうてい)疫」の発生を受け、防疫作業を指揮してきた劉正福(ユ・ジョンボク)農林水産食品部(省に相当)長官が28日、辞意を表明した。

 劉長官はこの日午前、記者会見を開き、「今回の口蹄疫の流行を早期に終息させ、事態の収拾を図った上で、潔く身を引きたい」と述べた。

辞意表明の理由について劉長官は「あらゆる出来事には原因と結果が付き物だ。時間がたてば責任の所在も明確になるが、政治家は是々非々とは関係なく、結果に対し潔く責任を取る姿勢を示さなければならないと考えた。決して長官職にしがみつくつもりはない」と語った。

 劉長官の辞意表明について、大統領府の関係者は「劉長官の発表は『辞意の表明』というよりも、『事態の収拾に万全を期す』ことを強調したものと見るべきだ。正式に辞意を表明したわけではなく、『責任を持って事態を収拾する』と発言しているため、もう少し見守る必要がある」と話した。

 一方、国連食糧農業機関(FAO)は27日(現地時間)、「口蹄疫の流行による、過去に類例を見ない最悪の事態が韓国で発生した」として、アジア各国の畜産や出入国管理の関係機関に注意を促した。

FAOのフアン・ルーブロス畜産部門最高責任者はこの日、声明文を発表し、「現在の韓国国内での口蹄疫の流行は、過去50年間で類例を見ないほど深刻な状況だ。この問題に対する備えやモニタリングが非常に重要だ」と述べた。(朝鮮日報 1月26日)

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■写真 雲の万華鏡。ああ、なんかひさしぶりで空写真アップできるな。(゚ー゚;うう
■蛇足 え~今日はあせって記事を書いたためにミスタイプの山で、読み直したら汗。すいませ~ん。

2011年1月30日 (日)

宮崎トリインフル事件  なぜ大型系列農場は反社会的行為をしたと言われるのか?

013

私の父は鹿児島人、母は熊本人です。母は火の国の女らしく気丈な女性でした。ですから、子供の頃からわが家は南九州訛りが飛び交っていました私が若い頃に髪を伸ばしていると、母から「やぞらしー」と意味不明なお叱りを受けて、ちょん切られたものです。

父からは私が生き方に迷っていると、すぐに「チェッスト、ひっ飛べ」というオヤジ得意の気合を入れられました。

親戚は九州全域に散らばり、わが家で法事でもあろうものならカルカンやボンタン飴で溢れたものでした。そのせいではないと思うのですが、宮崎が他県のような気になれません。

こんな宮崎県にまたもや災厄が舞い降りました。

さて、私はなんども言っていますが、発生したことそのものは、ある種の不可抗力に近いと考えています。

よく防鳥ネットの穴があったなどと疫学調査で言われていますが、自慢ではありませんがあんな穴、どこの鶏舎にもあります。私は言われたくないので、二重にしたほどです。

ではネット自体が不要な密閉式ウインドレス鶏舎が発生しないかと言えば大間違いで、愛知のように出ます。

言ってみれば、感染力の極めて強力なウイルスはいったん地域に侵入してしまえば、あらゆる自然界、人間界の無数のラインが不幸にもクロスして感染するのです。

私は宮崎口蹄疫事件の時に、「畜産家の品格」とでもいうべきことを考えてしまいました。大多数は地域ぐるみで耐えて、耐えて耐え抜いた人々ばかりでした。宮崎県の農家の中には畜産農家のツラ汚しといえる人はひとりもいなかったおかげで、宮崎県東部地域のみで口蹄疫を封じ込める事ができました。素晴らしいことです。

唯一の汚点は、第7例の大規模農場でした。万を超える大型家畜に獣医師が1名という杜撰極まる管理体制、あってなきがごとしの防疫、ワンマン社長にお伺いを立てないと届け出ひとつ出来ない社内、それらが合わさってあのような感染車両の移動という著しく品格に欠ける所業をしました。

そして系列農場すべてに感染拡大したのみならず、えびの市へ感染を拡げました。いまだこの業者からはなんの謝罪の言葉もなく、殺処分に伴う補償金すら平然と受け取っているようです。

今回もまた、川南町という地名を聞くだけで胸が潰れそうな気がする地域の業者の養鶏場から発生しました。

発生したこと自体は今は問いません。問題はそれ以後、どのような対処をしたかです。

まず、この業者はブロイラー養鶏場で相当数の死亡鶏が出るまで届け出を怠りました。

「農水省によると、川南町の養鶏場は、27日に発生が確認された同県都農(つの)町の養鶏場と同じ企業グループに所属。死んだ鶏を回収する業者が同じため、都農町の養鶏場のウイルスが広まった疑いがあるとみて、遺伝子検査の結果を待たずに高病原性と判断した。

 川南町の養鶏場では、約9万2千羽を飼育。27日に約150羽が死に、28日にも約400羽が死んだため県に通報があった。簡易検査では調べた5羽のすべてが陽性だった。約9万2千羽が殺処分される。延岡市の養鶏場は約6600羽を飼育。28日に死んだ6羽の簡易検査では、うち3羽が陽性だった。 」(朝日新聞1月29日)

この報道によれば、この業者は27日に都農町の同系列農場で発生したことを知っています。いや、それどころか、川南町の農場すら27日に150羽、28日には400羽と死亡鶏が出ているのです。

おそらくは、川南町の自社系列の食肉加工場での簡易検査の結果11羽中11羽すべてが陽性という驚くべき確率からみて、こんなていどの数では済んでいないはずです。

高病原性トリインフルエンザはその名のとおり驚異的な感染力を持つウイルスです。おそらくは、手がつけられないほど川南の農場では蔓延していたはずです。

この系列農場群は数カ所に万単位の大規模養鶏場を所有し、4カ所の食肉加工場を持つ大企業です。にもかかわらず、口蹄疫第7例と同様に、わずか1名の獣医師ですべてを見ていました。

考えるまでもなく、1名で見るなどとはまったくのお笑い種で、かつてこの業者はニューカッスル病(ND)を出した経歴さえもあります。獣医師がいてNDを出すということ自体、業界の常識から見て信じられません。

憶測の域を抜けませんが、おそらくは出荷日齢が平均60日前後のブロイラー飼育において、まっとうなワクチネーション・プログラムを持っていなかったのでしょう。低単位の抗生物質を飼料に混ぜて投与し続け、出荷前の1週間だけ切るていどの防疫だったと思われます。

また、飼養密度もブロイラーは、私たち平飼養鶏の10数倍以上という高密度なために、いったん呼吸器系伝染病が発生すると、瞬く間に農場全体を感染していきます。

私は27日以前、既にこの川南の業者農場ではトリインフルが蔓延状態にあったと考えています。そして形だけとはいえ獣医師がいるのですから、これがトリインフルでないと分からないほうがおかしい。

まして27日に都農の系列農場で発生しており、検査でH5亜型と診断されている以上、もはや川南の大量の死亡鶏がトリインフルであることは誰にでもわかったはずでした。

「トリインフル以外の別な病気だと疑った」などというとぼけたことを言っていますが、死亡鶏が通常の百倍以上出ていている以上、なんらかの呼吸器系伝染病であり、系列でトリインフルが出た以上、それを疑わなかったとしたら獣医師免許を返上したほうがいいでしょう。このようなつまらない言い逃れは止めたほうがいい。見苦しい。

そしてありえないことには、あきらかにトリインフルであることを知りながら28日に川南町の同社系列食肉処理場に持ち込んでいます。28日の出荷当日にも400羽死亡しているのに、です。唖然となります。

持ち込んだ鶏は、相当な確率で感染鶏を含んでいたはずです。断じて許されない行為です。このようなことをすれば一体どうなるのでしょうか?

感染した鶏の気道からは高濃度のトリインフル・ウイルスが排出されつづけています。いわばウイルス高濃度拡散装置と化しているのです。こんなウイルス拡散装置を大量に農場外で移動して回ったらどうなりますか。

鶏体はおろか、家畜搬送車にもウイルスが大量に付着しています。そのタイヤにも、その荷台や車体にも、運転手の靴にも服にも、いやハンドルさえにも!

だから、口蹄疫の時、感染区域に入った人たちは、一般人も含めて靴や車両のみならず、ハンドルまでも消毒していたのです。川南に本部を置く業者なら、知らないはずがないでしょう。

ウイルスが食肉処理場だけではなく、沿道にバラ撒かれていきました。国道10号線沿いには、既にこの愚かな行為によりトリインフル・ウイルスが散布されてしまっているはずです。

かくして、口蹄疫に次いでまたもやこの国道10号線は口蹄疫でも感染ハブとなりました。あの南北に抜ける動脈はそのまま感染の流れになってしまったのです。

次にあの業者は感染鶏を川南の食肉加工場に持ち込もうとしました。いいですか、食肉加工場はさまざまな農場からトリが集まる所ですよ。いわば大きな駅のようなものです。

そんな場所にウイルス発生装置と化した感染鶏を大量に持ち込んでしまったら、どうなりますか。加工場の作業員の服、靴を初めさまざまな器材、ヤードが感染されます。

いやそれだけでは済みません。

食鳥処理においては、作業員は手で鶏体を掴みますから、濃厚接触の恐れからくるヒト感染の可能性が出ます。そしていったんヒト感染が起きてしまえば、後は新型インフルエンザに変異し、ヒト-ヒト感染するかもしれません。

いいですか,口蹄疫はヒトには絶対に感染しませんが、トリインフルはヒト感染がありえるのですよ。そして新型インフルエンザになってそれが強毒性に変異してしまえば、対処薬は、現段階でタミフルていどしかないのです。

その作業員が、知らずに感染した服や靴で自宅に帰り、近隣に別の養鶏場で働く人がいたらどうなります。もう考えただけでゾッとします。このケースは口蹄疫第12例目で現実にあったことです。

風評被害から口をつぐむ向きも多いようですが、あえて言いましょう。
私たち養鶏農家がなぜトリインフルを恐れているのか。それはヒトと交差する可能性があるからです。トリインフルはその意味で、口蹄疫とは比較にならない危険極まる伝染病なのです。養鶏業者でそれを知らない者はいません。

この業者はそれを知っていてやった。だから、私はこれを反社会的行為と断じます。

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「みやざき甲斐」さんのコメントを転載します。ありがとうございました。

大分の関連農場
川南の処理場が閉鎖されたため、急遽八代工場へ搬入を変更し、到着時には斃死多数。
簡易検査1回目で陽性、簡易検査2回目で陰性。
PCR検査の結果待ちです。
簡易検査の結果でも圧力かけて揉み消ししようとする児湯諸区長。

「安全は確認しています」と会社は言います。しかし、あれだけの農場を持ちながら獣医師は1人ですよ。どうやって確認したんですか?
誠実な技術員社員の申し出を聞いて対策しなさい。
日本の食品は「信用」を基礎に、信頼関係で流通しているのです。

養鶏「農家」の皆様。
大きくなりすぎてクロスを防ごうにも導線が多すぎる状態です。地元でも名前を聞けば何処が何を運んで、という事が思い浮かぶはずです。ご自分で出来る対策を取って下さい。

九州閉鎖しないと全国へ撒き散らしてしまいます。
こちらの地区でも八方手を尽くしていますがどうしても導線が切れません。今は九州内だけでも全農場・全施設を一時封鎖しないとコントロール出来る状態ではないです。
口蹄疫の時の、「後追い対策」になりそうです

大げさではなく、口蹄疫の惨劇を思い出して下さい。

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鶏の死骸、大半は鶏舎出入り口付近 宮崎・鳥インフル図:  

宮崎市の養鶏場で発生した高病原性鳥インフルエンザの問題で、死んだ鶏の多くは鶏舎の出入り口近くで見つかっていたことが農林水産省と宮崎県の調査でわかった。人や物に付着したウイルスが出入り口から侵入した可能性があるといい、農水省は専門家による疫学調査チームを派遣して詳しく調べる。

 農水省などによると、この養鶏場には鶏舎が六つあり、計約1万羽を飼育していた。このうち養鶏場全体の入り口に最も近い鶏舎で21日、鶏36羽が死んでいるのが見つかった。36羽の大半はその鶏舎に1カ所だけある出入り口近くで死んでいた。

 鶏舎は縦42メートル、横7メートル、高さ3.5メートル。約1500羽がカゴに入れない平飼いという方法で飼育されており、側面は金網状で空気が通るようになっている。調査チームは、出入り口付近に消毒槽が適切に設置されていたか調べる。

 昨年11月に鳥インフルが発生した島根県安来市の養鶏場では、鶏舎の金網に穴が開いており、野鳥が侵入できる状態になっていた。宮崎市の養鶏場では網目の直径が約2センチ程度の防鳥ネットが設置されていたといい、調査チームはネットについても調べる。

 また養鶏場から約500メートル離れた場所に、カモ類が飛来する池があることも判明した。今季日本各地で発生している鳥インフルは、シベリア付近から南下する渡り鳥が感染源として疑われている。(朝日新聞 2011年1月23日)

2011年1月29日 (土)

トリインフルエンザ、宮崎県で新たに2例発生  児湯の発生企業は同系列に移動させていた!

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毎朝、このような感染拡大情報を流さねばならないことは憂鬱です。今日もまた、トリインフル拡大の情報からです。

宮崎県のトリインフルは刻々と拡大を続けています。新たに2例が6600羽の種鶏飼育の延岡市と、9万羽飼育の川南のブロイラー養鶏場で発生しました。ただちに全羽殺処分に入ると思われます。

愛知県は40万羽超という大規模養鶏団地丸ごとという殺処分のために難航しているようですが、1日実に3万羽、100人態勢で土日も返上した驚異的な速度で処分に当たっています。

しかし、このような大規模処分において必ず発生する埋却地問題が出ています。

一方、宮崎県都農市で反社会的な出荷をしようとした養鶏場の1万羽、出荷先の川南町の食肉加工場に残る6200羽、他の系列農場に搬入した1万5千羽、計3万1200羽の殺処分はすべて完了しました。

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都農市の悪辣業者の出荷により感染が拡大しています。この業者が感染した鶏を川南の同系列養鶏場9万2千羽が殺処分となります。

この川南町の養鶏場では、27日に約150羽が死に、28日にも約400羽が死に、その段階で県に通報しました。遺伝子検査をするまでもなく、明らかな感染鶏の移動によるウイルス伝播です。もっともやってはならないことをこの業者はやっているのです。

口蹄疫でもまったく同じ構図が見られました。覚えていますか。舞台も同じ川南町です。

「みやざき甲斐」さんが下のコメントでもおっしゃるように、かの第7例目の安愚楽農場を思い出します。ここでも同系列のえびの市への車両移動が引き金でえびの市へ感染拡大しました。

また川南町第12例目の系列企業農場でも、同系列の第39例に出荷した豚から、そして系列会社社員の会議により第26例目に感染を移しています。

12例目からの拡大ルートは、その他にも発症した4農場(12、42、298、281例目)が同一の飼料輸送業者であることからその飼料運搬車が感染を移動させた可能性が高いと指摘されています。

また第7例目の安愚楽農場とこの第12例目は死体搬出業者を共にしていたことがわかっています。

そして、川南町の第12例目が使用する共同堆肥施設が第10例目(畜産試験場)と第13例目の裏手にあり、この共同堆肥場が感染ハブのひとつになりました。

今回もまた、宮崎口蹄疫事件とまったく同じパターンの繰り返しです。おそらくは、考えるのもいやですが、ウイルスは国道10号線を通じて広範にバラまかれてしまっていると思われます。後はこの地雷を誰が踏むかです。

このような反社会的な企業にも、殺処分による補償金が支払われるのでしょうか。彼らに必要なのは補償金ではなく、罰金と厳重な社会制裁です。この企業に再建を許してはなりません。

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本日もみやざき甲斐さんの現地のレポートを掲載します。いつもありがとうございます。まさに現地でなければつかめない貴重な情報です。

■28日もこの児湯食鶏は出荷しようとしています。(PCR確定前の移動制限前のタイムラグを悪用)  26日に技術員が約300羽の急激な弊死を確認し、すぐ会社に報告を上げたのに、何故急いで出荷したのか(怒)。

消費者への裏切り。「宮崎県産」の信用を無くしてしまうのが何故分からないのか?
高崎処理場・都城処理場・八代処理場と広範囲にリスクを高めています。

・・産業、・・商事も知らない内に撒き散らした可能性が有ります。養鶏業者の皆さん、ご自分の農場へのクロスに注意なさって下さい。   口蹄疫の時には安愚楽牧場が情報を伏せた為に被害が未然に防げませんでした。 二の舞はご免です! きばっど宮崎!

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宮崎の鳥インフル拡大、新たに2例 国道10号沿い
朝日新聞 2011年1月29日1時53分

図:  拡大  

 宮崎県川南町と延岡市の計2カ所の養鶏場から28日、「鶏が死んでいる」という通報が同県にあり、県の簡易検査でいずれも鳥インフルエンザの陽性反応を示したことがわかった。農林水産省と県は、川南町については感染力の強い「高病原性」と判定して殺処分の準備に入った。

 延岡市も遺伝子検査で29日未明に高病原性(H5亜型)と判明。昨年11月以降、国内の養鶏場での高病原性鳥インフルの発生は8件で、そのうち5件が宮崎県内になった。

 農水省によると、川南町の養鶏場は、27日に発生が確認された同県都農(つの)町の養鶏場と同じ企業グループに所属。死んだ鶏を回収する業者が同じため、都農町の養鶏場のウイルスが広まった疑いがあるとみて、遺伝子検査の結果を待たずに高病原性と判断した。

 川南町の養鶏場では、約9万2千羽を飼育。27日に約150羽が死に、28日にも約400羽が死んだため県に通報があった。簡易検査では調べた5羽のすべてが陽性だった。約9万2千羽が殺処分される。延岡市の養鶏場は約6600羽を飼育。28日に死んだ6羽の簡易検査では、うち3羽が陽性だった。

 農水省は、養鶏場で死ぬ鶏の数を毎日確認するよう宮崎県に通知することを決めた。

 今回、同県内で発生した鳥インフルとその疑い計5件は、いずれも南北に延びる主要幹線の国道10号沿い。昨年に大流行した家畜伝染病・口蹄疫(こうていえき)も10号に沿って感染が広がり、人や車による伝播(でんぱ)が疑われた。同県は、獣医師1人あたりが担当する家畜の数が全国で最多。農水省幹部は「獣医師が少ないとどうしても対応が遅れる」と話す。

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宮崎、新たな2例も感染確認=10万羽弱を殺処分―鳥インフル

時事通信 1月29日(土)5時22分配信

宮崎県川南町と延岡市の養鶏場で新たに高病原性鳥インフルエンザに感染した疑いのある鶏が見つかった問題で、同県は29日未明、いずれも遺伝子検査で陽性を確認したと発表した。県内での感染確認はこれで計5例となった。

 検査結果を受けて、県は鶏の殺処分に着手。延岡市の農場で飼われていた約6600羽、川南町の農場の約9万2000羽の計10万羽弱が対象となる。川南では、同日中に作業を支援する自衛隊の到着を待って殺処分を開始する。 

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死亡野鳥すべて陰性 県内
宮崎日々新聞 1月28日

高病原性鳥インフルエンザ問題で県は27日、死亡野鳥を簡易検査した結果、鳥インフルエンザの感染が疑われる事例は確認されていないことを明らかにした。同日開いた県議会環境農林水産常任委員会で明らかにした。

 県自然環境課によると、野鳥の死亡報告は10月末~今月25日に123件(174羽)あり、簡易検査ができなかった9件(9羽)を除く全てで陰性を確認した。

 委員からは渡り鳥の飛来状況に関する質問もあり、県側は「宮崎市の大淀川河口付近に3千羽、同市と新富町の間を流れる一ツ瀬川河口付近に1500羽、都城市の御池に千羽が飛来している」と説明。県の鳥獣保護員による監視パトロールも週2回から4回に増やし監視を強化することや、環境への影響を調べるため埋却地周辺の地下水を調査することも報告された。.

               

2011年1月28日 (金)

宮崎県で県内3例目発生!   発症した鶏を集めて8千5百羽を出荷しようとしたことが発覚! もはやこれは犯罪だ!

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宮崎県で第3例目が出ました。小井戸は都農市です。川南の食肉加工場で簡易検査の結果判明しました。

宮崎県プレスリリースによれば、加工場に持ち込まれたブロイラー8574羽中186羽もの死亡鶏が発見され、直ちに簡易検査の結果11羽中11羽、農場採血分で8羽中2羽に陽性がでました。

この農家の1万9千羽の、残り1万羽はただちに殺処分されることになります。http://www.pref.miyazaki.lg.jp/parts/000152662.pdf

まさに声もない、とはこのことでしょうか。やはり恐れてきた飛び火をしていました・・・!

正直言って、今日はコメントをしたくない気分です。ひどい、ひどすぎる。何を考えているのだ、この人は!加工場採血分の検査で11羽中11羽ということは、全部罹患しているトリを持ち込んだということか・・・!絶句。

発生に慌てて、しかもおそらくは病気のトリだけを集めて出荷をする・・・絶対に、断じてしてはいけないことです。これは現時点では法に問われません。しかし、これは明らかな犯罪的行為です。

この人には養鶏家としてのプライドがないのでしょうか!?自分だけなんとかなれば、地域が壊滅してもいいのでしょうか!

この人はもはや今後この地域で養鶏を続けるべきではありません。自分の農場で封印できたかもしれないトリインフルウイルスを、搬送車や、加工場を通して各所にバラまいたようなことをした者には、地域で生きる資格はありません。

このような反社会的な行為のために都農の同業者は、感染に毎日おびえながら半径10㎞の移動制限がかけられ、毎日生む卵や、出荷になっても出せないブロンイラーを抱えて、餌代も払えず、雛も入れられず、なんの補償もなく、共済だけを頼りにして生きていかねばならないのです。

加工場で獣医師がたまたま発見したから最悪の事態は避けられましたが、しかし、この人の車両や農場の出入り、訪問先などを徹底的に調べ上げて消毒してまわらねばなりません。

私はこのような事態が他ならぬ口蹄疫禍が出た宮崎県で起きたことを哀しみます。いかに私と同じ養鶏業者が、口蹄疫を対岸の火事としてしか見ていなかったのかが分かります。

養鶏農家は宮崎口蹄疫の一部始終をしっかりと学んで、胸に焼き付けるべきです!

海外悪性伝染病に際して、なにをしなければならないのか、なにをしてはいけないのかをしっかりと叩き込むべきです。

鹿児島の事例、愛知での事例、そして今回の宮崎3例目と続くと、このような発生報告の遅れは法的に厳罰化するしかないのではないかとさえ思えてきます。

私の地域でも日に日に恐怖が募ってきています。もはや発生することを前提にすべてを考えるようにしています。その場合に供えて、養鶏協会の互助金制度に加入しようと思っています。トリインフル互助金制度については最下段をご覧ください。

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「みやざき甲斐」様から緊急の呼びかけを頂きました。

*宮崎県内の養鶏業者の方々*
今後少なくとも48時間は県同40号線の通行、児湯Gへの接触は出来るだけ避けて下さい。飼料車・運搬業者全て。

未申告で済ませたため、その間知らずに接触した関係業者はウイルスを撒き散らしていた可能性が有ります

「お湯が当初の計画を変更して食肉処理場へ持ち込んだ鶏から、施設の獣医師が気付いて慌てて検査、検出された宮崎の3例目」
緊急事態です。

「慌てて当初の予定を変更して」発生鶏舎から出荷した為、発生農場の残りは10000羽だけでしたので処理自体は明日には終わる見通しです。
 しかし、26日急激な斃死増加、痙攣を「お湯食鶏」へは農場から連絡が入っています。それを知りながら多数の農家が集まる(繋がる)処理場へウイルスをまき散らしながら持ち込んでいます。

通常出荷として、持ち込んだ鶏を食肉工場で検査員が発見し、報告した事で「発覚」しました。

 養鶏業者としてのプライドはどこへ行ったのか。処理場でのクロスが畜産業全体を破滅へ追い込む事を考えなかったのか。隣国の韓国では口蹄疫・鶏インフルエンザともに既に制御不能に陥っています。

ニューカッスル、CHSを隠した時とは訳が違います。あの時責任を問われない甘さが、裏目に出ました。
そんな会社が宮崎にあったのが悔しいです。

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宮崎で3例目の感染確認=口蹄疫被害の都農町―食肉処理場で発見・鳥インフル

時事通信 1月28日(金)1時33分配信

 宮崎県都農町の養鶏場で27日、新たに高病原性鳥インフルエンザに感染した疑いのある鶏が見つかった。簡易検査で陽性となったため、遺伝子検査を行った結果「H5亜型」のウイルスが確認された。この冬の養鶏場での発生は同県内で3例目、全国では6例目となる。
 農林水産省対策本部は、専門家の意見を踏まえて遺伝子検査結果の判明を待たず、この農場の家畜が感染したと見なし、殺処分の着手を前倒しする方針を決めていた。同町は昨年発生した口蹄(こうてい)疫で、町内の牛と豚を全て殺処分している。
 同町などによると、この農場から川南町にある食肉処理場に出荷された鶏約180羽が死んでいるのが27日に見つかり、県の獣医師に報告。川南の処理場と都農の農場双方の鶏について簡易検査で陽性を確認した。28日未明にも自衛隊員ら約90人を投入し、農場の鶏約1万羽の殺処分を開始する。同日早朝までに終える予定。
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殺処分直後また「疑い」 宮崎トリインフル 養鶏農家「なんで」
高病原性鳥インフルエンザの発生から約1週間。畜産王国・宮崎がまたも打ちのめされた。三たび明らかになったウイルス禍の疑い。養鶏農家は「なんでか」と唇をかみ、対策に神経をすり減らしてきた自治体職員は頭を抱えた。42万羽の鶏を殺処分し、消毒を徹底しても、病原体を封じ込めきれないのか。先行きは不透明さを増し、関係者はため息を漏らした。

 「ショックだ」。相次ぐ感染の疑い発生に、県庁で会見した押川延夫県農政水産部次長はみけんにしわを寄せ、言葉を絞り出した。

 急ピッチで進めてきた新富町の殺処分はこの日、終わったばかり。同町や3例目の感染疑いが出た都農町、川南町を含む児湯地区は、採卵、ブロイラーの養鶏農家数が計124戸(県調べ、2007年現在)で都城地区(136戸)と並び県内の主力を担う。昨年の家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」禍でも牛、豚の大量処分を余儀なくされた。

 同県川南町の養鶏業者の伊東康男さん(64)は「2例目発生から4日たち、もう大丈夫じゃないかと思っていたのに」と嘆く。所有の鶏舎が鶏や卵の移動制限区域に入るかどうか、心配げに県からの連絡を待った。

 今回の養鶏場がある同県都農町は昨年4月20日、口蹄疫で感染が疑われる牛が最初に見つかり、大きな被害が出た。河野正和町長は「農家は口蹄疫の悪夢からやっと立ち直り、頑張っていたのに。がっくりこないか心配だ」。同町を管内に持つJA尾鈴の松浦寿勝畜産部長(55)は「これ以上、どんな対策を取ればいいのか分からない」と衝撃を隠せない。

 この日、1例目の移動制限区域内で卵の出荷が例外的に認められた。宮崎市の卵加工センターには約15万個が運び込まれ、関係者らに活気が戻ろうとした矢先だった。JA宮崎経済連の長友和美参事は「感染疑いのある鶏が見つかった食肉処理場は、完璧なクリーニングに時間がかかるだろう。見通しが立たない」と肩を落とした。

 3例目の感染疑い報告を受け、農林水産省幹部も「2例目の採卵農場と3例目は約20キロ離れ、業態も異なることから関連性は考えられない」と苦悩の色をにじませた。

=2011/01/28付 西日本新聞朝刊=

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養鶏協会トリインフルエンザ互助金制度http://www.jpa.or.jp/news/item/2004/12/28/01.html

鳥インフルエンザに係る家畜防疫互助事業の実施について

 本年の高病原性鳥インフルエンザの発生を踏まえ、本病が万一発生した場合に、発生農家となった養鶏生産者の経営への影響を緩和するため、家畜伝染病予防法に基づく手当金制度の対象とならない経営支援のための資金、発生農家の死体処理費用の自己負担分に対して補償する互助事業を(社)日本養鶏協会を窓口として実施することとなりましたのでお知らせします。

1.本基金の考え方
 本互助事業は、鳥インフルエンザの万一の発生に備え、国が1/2、生産者が1/2を積み立て、発生時の経済的損失について互助補償するもので、加入はあくまで任意です。
 牛、豚については既に(社)全国家畜畜産物衛生指導協会(以下「全国衛指協」という。)が事業実施主体となり互助事業として運営されておりますが、今回、新たに鶏が互助事業に追加されることとなりました。
2.事業の推進方法
 本互助事業の事業実施主体は、全国衛指協ですが、鶏については(社)日本養鶏協会が全国衛指協との基本契約により実務を行うこととなります。
 肉用鶏についても、加入契約、生産者積立金の納付、万一の場合の互助金の受け取り等全て(社)日本養鶏協会を通じて行うこととなります。
 さらに(社)日本養鶏協会から各県の養鶏協会に業務委託を行い、県養鶏協会が加入促進、相談、加入手続き業務等を行うこととなっております。
3.本互助事業に対する(社)日本養鶏協会の役割
 本互助事業の実務は、本事業の事業実施主体である全国衛指協から委託を受けて(社)日本養鶏協会が行い、会員及び全国の養鶏生産者の皆様に対する本互助事業への加入促進と相談事務を行うこととなっております。
 本互助事業に対する疑問点等ありましたら、本会事務局又は県養鶏協会にご連絡願います。

■末尾となりましたが、宮崎県霧島の噴火をお見舞い申し上げます。cowboyさんの農場に影響がでないといいのですが。心配しています。

2011年1月27日 (木)

愛知県でも発生。 養鶏の中心県で連続するトリインフルエンザの猛威。

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愛知県でもトリインフルが発生しました。5例目です。今回は規模が大きく、23日~26日の間に700羽の死亡が出て、通報されたとのことです。一挙に同農場の14万羽を殺処分することになります。

同時に半径10キロは移動制限区域となり、この範囲内には農家50戸、400万羽がいます。

愛知県は全国で有数な養鶏生産県です。995万羽飼育されています。一方、鹿児島もブロイラーでは全国一、採卵鶏では全国第4位です。

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まさに養鶏生産の中心部ばかりを狙い撃ちしたようなひろがりぶりです。となると、次は関東の養鶏の心臓部のわが県茨城でしょうか。湖もあり、渡り鳥も多数飛来しています。わが県は今、厳戒体制下にあります。いつ出てもおかしくないでしょう。

わが農場は消石灰で真っ白な雪景色のようです。畜産関係の出入りは原則禁止となり、侵入車両には徹底した消毒をしています。

さて、この愛知に関していくつか指摘しておきます。

まず第1に、今回のケースもまた23日から26日まで3日間隠蔽していることです。450羽(日本農業新聞1月27日の数字。700羽とする報道もある)が死亡したということですが、当然自然感染であるのならば、23日から連日数十から百羽単位で死亡鶏が出たはずです。

にもかかわらず、この農場もまた鹿児島と同様に家保に通報をしていません。今年最初の島根が単発で抑え込めたのは、わずか5羽で通報する良識をもっていたからです。

ところが鹿児島の事例では、20日から1週間に及び累計169羽の死亡鶏を隠蔽しました。23日には隣県の宮崎県新富町で発生しており、自分の地元の出水で野鳥のトリインフルが確認されているにもかかわらず、です。

そして今回の愛知。またもや隠蔽です。この農場は大型農場であり獣医師もおそらくはいるはずです。

常駐していなくとも、連日数十から百単位で死んでいるはずですから、なんらかの診断を受けていてしかるべきです。逆に診断も受けせずに放置していたのならば、農場主の養鶏家としての常識を疑います。

となると、ここでも鹿児島と同様の意図的な隠蔽、ないしは通報の遅延が疑われます。

わが同業者は宮崎県口蹄疫を学んでいたのでしょうか!?
残念ながら、対岸の火事意識だったようです。少なくとも、悪性海外伝染病の恐ろしさを骨身で知っている宮崎県を除いては。

口蹄疫において、宮崎県がなぜあれほどまでに批判されたのか。それは初動の検体送付の遅れに尽きます。あの3月末から4月20日までの期間が悔やまれるのです。

そして第7例大型農場の意図的な隠蔽と通報の遅延により、感染ハブになりました。しかもここは危険を知りながら、えびの市に家畜運搬車両を移動させていました。このことによりえびの市という遠方まで一挙に飛び火してしまいます。

残念ながら、鹿児島県においてこのふたつの宮崎県の教訓は生かされていませんでした。そして愛知県においてもです。

第2に、愛知県の事例はウインドレスです。ウインドレス、つまり無窓鶏舎で、なぜ野鳥からの伝染といわれるトリインフルが発生したのでしょう。

ウインドレスは、外部と遮断され、日照、気温までコントロールされた完全な工場型の養鶏施設です。外部との接点を極小化できるので、これを究極の鶏舎と呼ぶ人もいます。

私の養鶏方法はウイドレスと真逆で、自然界との接点を最大限にして、人工的管理を極小にしています。しかし、防疫においては、防鳥ネットを二重にするなど最大限のことをしているつもりです。

それはさておき、ウインドレスで感染が内部に入ったとすれば、野鳥の侵入ではありません。ではなにか?

鹿児島県の事例でも25日の調査では防鳥ネットの破れはなかったと言います。となると、なにか?

私はヒトによる持ち込みだと思いますが、現時点ではなんとも言えません。

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鳥インフル:愛知の養鶏場でも陽性 300羽以上死ぬ

愛知県は26日、同県豊橋市内の採卵鶏農場(15万羽飼育)で23日から26日朝までに鶏が300羽以上死んでいるのが見つかり、鳥インフルエンザの簡易検査で5羽中4羽から陽性反応が出たことを明らかにした。県は県中央家畜保健衛生所(同県岡崎市)で精密検査を実施。同日夜にも結果が判明する見通しだ。高病原性鳥インフルエンザの発生が確定すれば、発生農場の飼育鶏全羽の殺処分、農場の半径10キロ内の移動禁止処分などを実施する。

 県畜産課によると、26日午前7時50分ごろ、農場から東部家畜保健衛生所に「鶏に異常が認められる」と通報があった。同衛生所の防疫員が現地調査に向かって簡易キット検査をし、高病原性鳥インフルエンザの疑いがあると判断した。鶏が死んだ農場は成鶏12万羽、育成鶏3万羽を飼育。大量死が発生したのは成鶏用の鶏舎4棟のうち1棟。ウインドーレスタイプで野鳥などが侵入しにくい構造になっているという。

 同市では09年2月にも、ウズラ飼育農家で高病原性鳥インフルエンザが確認され、160万羽が殺処分された。鳥インフルエンザ発生が確定すればそれ以来。

 農水省の09年の調査では、愛知県の採卵鶏の飼養農家数は221戸で全国1位、飼養数も995万2000羽で全国3位となっている。

 また豊橋市農政課によると、市内の養鶏農家は10年2月現在、27戸(採卵鶏17戸、ブロイラー10戸)で、飼育数は採卵鶏が約154万9000羽、ブロイラーが約23万5000羽に上る。豊橋市養鶏農協によると、卵の生産量は1羽当たり年間約16キロという。(毎日新聞1月26日)

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愛知でも感染確認=14万羽余の殺処分に着手―鳥インフル

愛知県は27日未明、同県豊橋市の農場で採卵用として飼われていた鶏が、「H5亜型」の高病原性鳥インフルエンザに感染していたことを遺伝子検査で確認したと発表した。これに伴い、県は同農場の鶏約14万2000羽の殺処分に着手、発生地点から半径10キロ圏内の鶏やウズラなどの移動を制限した。
 家畜への感染確認は、島根、宮崎、鹿児島の各県に続き、この冬で4県目(5例目)。豊橋市のこの農場では23日から26日までの間、鶏舎の一つで700羽以上が死んでいるのが見つかった。 (時事通信1月26日)

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毎日新聞 1月27日(木)3時25分配信

鳥インフル 愛知・豊橋は高病原性 遺伝子検査で陽性
拡大写真
鳥インフルエンザの疑いが出た養鶏場の敷地内に消石灰をまく県の職員=愛知県豊橋市で2011年1月26日午後4時2分、兵藤公治撮影
 鶏が大量死した愛知県豊橋市の養鶏場について、県は27日未明、遺伝子検査の結果、高病原性鳥インフルエンザ感染と判定した。

【写真で見る】全国で検出 鳥インフルエンザ

 県はいったん、検査の結果を陰性と公表したが、不明確な点があり、農林水産省と協議した結果、陽性と判定し直したとしている。
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愛知の養鶏場も高病原性鳥インフル…5例目

読売新聞 1月27日(木)4時51分配信

 愛知県豊橋市の採卵鶏(さいらんけい)農場で、死んだ鶏から鳥インフルエンザの陽性反応が出た問題で、県は27日未明、死んだ鶏が高病原性の「H5型」ウイルスに感染していたと発表した。国内の養鶏場で今冬、鳥インフルエンザの感染が確認されたのは、島根県安来市と宮崎市、宮崎県新富町、鹿児島県出水市に次いで5例目。

 県が26日から実施した遺伝子検査(PCR検査)では、1回目の検査で明確な結果は出なかったが、わずかな反応があることや、この農場で多数の鶏が短期間に死に、独立行政法人動物衛生研究所(茨城県つくば市)の専門家から「陽性と判断して差し支えない」との意見を得たことなどから、農林水産省と協議した結果、同日未明、陽性と判断した。

 県は同日朝から、この農場で飼育されている約15万羽の鶏を殺処分する方針で、半径10キロ以内を移動制限区域とし、鶏や卵の移動や出荷を禁じる。

 また、別の検体を同研究所に送り、ウイルスの型をさらに詳しく調べる。
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日本農業新聞1月27日によれば、26日、松江市の宍道湖でもキンクロハジロから陰性が出た。強毒性H5型。今年は全国的にトリインフルを持った渡り鳥が越冬のために飛来していると思われる。
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■筆者近況 昨日の筑波の大学での講義はうまくいきました。しかし燃えすぎて今日はクタクタです。カミさんもいないし、ああしんど。 カミさんがいない時にトリインフルが来たらどうするんだべ。 (u_u。)シクシク

2011年1月26日 (水)

鹿児島でもトリインフルエンザが発生! 出水で1週間累計で169羽死亡 意図的隠蔽か?

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鹿児島県出水で85羽の鶏が死んでいるのを農場主が見つけ、簡易検査の結果8羽にプラス(陽性)が出ました。当該農場の規模は8500羽です。
動物衛生研究所の遺伝子検査の結果が出るのは26日未明ですが、ほぼH5N1型で間違いないでしょう。
出水は国内最大のツルの越冬地で、昨年12月21日にはナベヅルからH5N1型が確認されており、緊張が高まっていました。
発生農場から半径10㎞の移動制限区域には162戸525万羽がいます。
一方神戸でも野鳥のカイツブリの死骸からトリインフルA型が発見されました。
とうとう北海道、島根、福島、宮崎、鹿児島と続いて、全国化の様相を呈してきました。関東に侵入するのは時間の問題です。私の農場も防疫レベルを最強度に上げました。
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今回の鹿児島のケースで残念なことは、届け出が非常に遅れていることです。この農家では20日に5羽、21日10羽、22日4羽、23、24日はそれぞれ30羽が死んでいます。それを届けたのが、26日に85羽死んだ午後1時半でした。
26日までの1週間の累計で、実に159羽しんでいたことになります。やんぬるかな!
私は同業者にこのようなことは言いたくありませんが、残念ながらこの農家のしたことは社会的道義上ほとんど犯罪的と糾弾されるべきことです。許されるべきではありません。
私の近隣でこのような意図的隠蔽の結果、感染伝播をみたら絶対に許しません。
宮崎では第1例が5羽、第2例で20羽死んでからの届け出でした。だからこの程度で済んでいるともいえます。
しかし、この農家は20日から発生を知りながら、しかも23日の宮崎県の発生を横目で見ながら、まさにその日に毎日のように30羽死んでおきながら、26日まで届け出していないのです。
地元の出水のツルで出て、宮崎で出たのならば、トリインフルだとわからないはずがありません。わからなかったら素人です。
たぶんこの出水の農場は感染が蔓延しているはずです。159羽どころではなく、たぶん数百の単位で感染鶏がいるはずです。それを1週間丸々放置したとは!大馬鹿者!あんただけの問題じゃないんだ、これは!
私は発生したことそれ自体には同情的ですが、隠蔽、しかも1週間もの隠蔽は許しがたい思いです。
この1週間、この農場主とその従業員、家族の訪問先、農場を訪問した人と車両のすべての動向を調査し、徹底的に調べ上げて、追跡消毒しなければなりません。
この農場主のしたことは自分の農場を感染ハブにしたことなのです。そのことにより、地域の養鶏が壊滅したら、どうするつもりでしょうか。
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<鳥インフル>鹿児島県出水の鶏 7羽から「H5型」を検出

毎日新聞 1月26日(水)3時17分配信

<鳥インフル>鹿児島県出水の鶏 7羽から「H5型」を検出
鹿児島県出水市の鳥インフルエンザ発生農場
 鹿児島県出水市高尾野町下水流(しもずる)の採卵鶏農場で鶏164羽が死に、うち8羽が鳥インフルエンザの簡易検査で陽性反応を示した問題で、県は26日未明、県中央家畜保健衛生所で10羽を遺伝子検査した結果、7羽から「H5型」ウイルスを検出し、高病原性と確認したと発表した。

 感染確認を受けて県は、発生農場で飼育する採卵鶏約8600羽の殺処分に着手。また半径10キロ内(162農場、計525万羽)に鶏と卵の移動制限区域を設定した。

 鹿児島県は全国一の養鶏県で、発生地周辺は養鶏場の集中地帯。県によると、発生農場は壁のない開放型の鶏舎で、周囲に防鳥ネットを張り巡らしていたという。

 遺伝子検査は簡易検査で陽性反応を示した8羽と陰性の1羽、さらに簡易検査を実施していない1羽の計10羽で実施していた
(毎日新聞1月26日)

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出水の養鶏場で鳥インフルエンザ陽性 

鹿児島県は25日、出水市高尾野の養鶏農家が飼育する鶏85羽が死に、9羽について北薩家畜保健衛生所で鳥インフルエンザの簡易検査をしたところ、8羽が陽性だったと発表した。

中央家畜保健衛生所で遺伝子検査など病性鑑定を行っており、感染が確認されれば当該農場の鶏は殺処分される。

 県によると、同農家は同市高尾野町下水流で採卵鶏約8600羽を飼育。25日午後1時半ごろ、農家から北薩家畜保健衛生所に、85羽が死んだと連絡があった。

同農家では20日に5羽、21日10羽、22日4羽、23、24日はそれぞれ30羽が死んでいた。
 感染が確認されれば、家畜伝染病予防法に基づき、発生農家から半径10キロ以内の養鶏場など162カ所の鶏、ダチョウ525万羽や卵の移動が制限される。
(西日本新聞1月26日)

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兵庫・伊丹で鳥インフル疑い、簡易検査で陽性

読売新聞 1月25日(火)21時46分配信

 兵庫県伊丹市瑞ヶ丘の瑞ヶ池で25日、野鳥のカイツブリ1羽の死骸が見つかり、兵庫県が簡易検査をしたところ、インフルエンザA型の陽性反応を示した。

 鳥インフルエンザの疑いがあるとみて、県姫路家畜保健衛生所(姫路市)で遺伝子検査を実施している。

最終更新:1月25日(火)21時46分

2011年1月25日 (火)

宮崎トリインフルエンザ事件    ウイルス侵入経路を早急に明らかにしてほしい!

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宮崎県トリインフルエンザ事件の概況は、下のスクラップをご覧ください。昨日の記事から詳細が判明したのはとりあえず以下です。

①殺処分数は41万羽。自衛隊員は170名。25日により作業開始。処分には地元の土建業者組合やJAも協力。
②鹿児島で検出された野鳥のウイルス・タイプと近縁。
③移動制限区域は、第2例より半径10㎞範囲。宮崎市、西都原市、新富町、高鍋町、国富町、川南町、木城市の2市5町。
④家禽農場120箇所、最大で400万羽の移動制限。
⑤国道、県道で35カ所の消毒ポイントを設置。
⑥第1例と第2例は死体を搬出する業者が一致。
⑦第2例、防鳥ネットに穴を発見。

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昨日、わが農場にも家保の緊急立ち入り調査がなされました。チェックポイントと、防疫状況と鶏舎内に立ち入っての目視調査、死亡鶏の確認などです。私の農場は県のモニタリング農場なので、月に一回の死亡鶏を報告し、家畜防疫員によるPCR検査と血清検査を受けています。025_edited1

私の農場の防疫の特色は防鳥ネットを二重にしていることです。写真でご覧になるとわかると思いますが、外側に赤い色の強靱な漁網製の防鳥ネットを張り、その下に1~2メートル開けて金属製のネットを張っています。

外側ネットの目は小型の野鳥が通れないように細かく、内側は通気性を考えてやや大きめのネットにしています。これでほぼ完璧に野鳥の鶏舎内侵入はブロックできるはずです。

と言いますのは、だいたいの養鶏農場の防鳥ネットは一重です。そのために、いったん大風などで破れ目ができるとそこから引き裂かれたような裂け目を作ってしまいます。

カモは私の農場に飛来しませんが、カラスはよく飛来します。かつて京都トリインフル事件では、カラスが感染して死亡した鶏をついばんで発症して死んでいます。

また、カモから感染を移されて死亡した野鳥をカラスがついばんでキャリヤーとなり、養鶏場の鶏となんらかの接触をすることで感染を移すこともありえます。

つまりカラスは、野鳥の死肉をついばむために感染を拡げる媒介者の第1に上げられる存在です。もちろんネズミ、ハエも有力な媒介者ですが、彼らの行動範囲は狭いために鳥類より脅威度は低いと言えます。

コメントにもありましたが、第2例のような場合すぐに疫学調査でネットの穴を指摘されて、それで事が済むような傾向があります。確かに私もおかしいとかねがね思っていました。

私の養鶏家としての実感から言って、野鳥がネットの小穴から飛び込むというケースは一万分の一あるかなしやだと思われます。はっきり言って、ありえません。

防鳥ネットは簡単に破けるしろものです。私など常に補修用の紐を作業中にもってシコシコ補修しているほどです。ましてや第2例規模の大型養鶏場で、日常的に小穴の点検をしろというのは無体な話です。

また、第2例では、鶏舎ごとの長靴の履き替えが励行されていなかったとあります。ネットの小穴と一緒にされていますが、こちらはやや意味が違います。

一棟ずつゴム長を履き替えるのは、棟ごとの農場内水平感染を防ぐ目的であって、ウイルス侵入とは次元が違うことです。マスコミはその辺をわからずに、ただ情報を垂れ流しています。

私の農場でもいちいち別の長靴に履き替えるというメンドーなことはせずに、棟の入り口の踏み込み消毒槽を置き、出入りにドプンと浸すことで代行しています。家保もそれでいいとの見解です。

このように、現場から見れば、事あれば一斉に発生農場のあら探しをしますが、私が見る限り第2例は相当に使用衛生レベルは高い農場です。あのていどまでやれば、立派なものです。

一般の人が、発生すると「県の恥」という言い方をするのは、厳に控えてほしいものです。誤解を恐れずに言えば、発生するかしないかは、ある種「時の運」なのです。万全な防疫をしていても出るときは出るし、まったくズボラを決め込んでも出ないときには出ないものです。

感染発生は、実に多くの要因と偶然に支配されており、私たち現場の農家はそれを最小限まで下げるしか出来ない非力な存在にすぎないのです。

感染が発生するたびに「わが県の恥」などと糾弾されてしまえば、畜産業者は必ず発生を秘匿するようになり、地下に潜り潜在化してしまいます。そのほうがよほど悪い。

第1例と結びつくくなにかがあるはずです。第1例は裏手の池の水鳥からの侵入かもしれません。

そこから第2例目までが9キロ弱あります。これは鳥類の行動半径としてはそうとうに大きいもので、中小型の野鳥ではありえません。となると・・・第2例にウイルス侵入したルートの可能性はこんなかんじです。

一つめは、行動半径10㎞を持つ鳥類のなにか。
二つめは、感染して死んだ野鳥の死骸を食べてのリレー。
三つめは、第1例、第2例に対しての同時侵入。
四つめは、人為的な媒介。

私はあくまでも憶測の域をでないとお断りしますが、ヒトによる伝播が大きいと思います。死体搬送業者、飼料関係、会合、訪問などのなにかしらの人的接触・・・。

そして第2例がほんとうに2番目とも限りません。既に別の団地内養鶏場で発生していた伝播の可能性も充分にあります。しかし、殺処分になってしまい焼却するとなると迷宮入りでしょう。

まだ情報が決定的に不足です。侵入経路という最も同業者が知りたいことの情報が少なすぎます。侵入経路が分からないと、防ぎようがないではありませんか。

それにしても、移動制限区域として上がった宮崎市、西都原市、新富町、高鍋町、国富町、川南町、木城市などの名を聞くだけで、なんともいえないやりきれなさに襲われます。なんということだ!なんて天は残酷なんだ!

がんばって下さい。今の段階でそれしか言えない自分が情けないです。

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■宮崎県プレスリリース

高病原性鳥インフルエンザのウイルス分析結果について(第1例目)
宮崎市佐土原町で発生した高病原性鳥インフルエンザ(H5 亜型)について、(独)農研機構
動物衛生研究所が、分離されたウイルスの接種試験及び遺伝子解析を実施したところ、当該ウ
イルスが強毒タイプであることが確認されました。
また、遺伝子解析の結果から、昨年11 月に発生が確認された島根県の家きんから分離され
たウイルスや昨年12 月に鹿児島県で野鳥から分離されたウイルス等と、極めて近縁であること
が明らかになりました。
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■警戒レベル最高に=宮崎の鳥インフル強毒性確認で―環境省

 環境省は24日、宮崎市の養鶏場の鶏が感染した高病原性鳥インフルエンザウイルスが強毒性と確認されたことを受け、発生地周辺10キロ圏内の野鳥の警戒レベルを現在の2から最高の3に引き上げ、宮崎県などと連携して、監視を強化すると発表した。

 25日から、発生地周辺で野鳥の感染状況を把握するための現地調査を行う。 

[時事通信社]

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■宮崎県で2例目の鳥インフル発生、約41万羽を殺処分

写真:鳥インフルが発生した養鶏場付近の道路には「立入禁止」の看板が立てられた。後方は養鶏団地=23日午後4時18分、宮崎県新富町、神澤和敬撮影鳥インフルが発生した養鶏場付近の道路には「立入禁止」の看板が立てられた。後方は養鶏団地=23日午後4時18分、宮崎県新富町、神澤和敬撮影

地図:  拡大  

 宮崎県は23日、同県新富町の養鶏場で採卵鶏20羽が死に、鳥インフルエンザの遺伝子検査をしたところ、6羽中5羽の検体から高病原性のウイルス(H5亜型)が確認された、と発表した。県は、この養鶏場(約6万6千羽)が入っている養鶏団地で飼育されている鶏全約41万羽を殺処分することを決め、同日夜、処分を始めた。河野俊嗣知事は自衛隊に災害派遣の出動要請をして支援を求める方針。

 同県での今季の発生は、宮崎市の養鶏場に続き2例目。新富町では2007年にも鳥インフルエンザが発生し、約9万3千羽が殺処分された。

 県によると、23日午前10時ごろ、採卵鶏を飼育する新富町の養鶏団地(全12棟)内にある鶏舎1棟の中央付近で20羽がまとまって死んでおり、所属する農協を通じて宮崎家畜保健衛生所に届け出た。この養鶏場は、宮崎市佐土原町で22日に高病原性ウイルスの感染が確認された養鶏場の北東約8・5キロにあり、鶏や卵の移動を禁ずる移動制限区域内(半径10キロ)だった。県が同日、立ち入り検査した際、目視で異常は確認されなかった。

 一方で、宮崎市と新富町の養鶏場は、日頃死んだ鶏を回収する業者が同じだったことが農林水産省などの調査でわかった。回収業者はこの二つ以外の養鶏場でも業務をしているといい、農水省はそれらの養鶏場でも異常がないか立ち入り検査を進める。

 県は23日夜、この養鶏場から半径10キロを新たに移動制限区域に設定。この区域内には新たに約90の養鶏場(約300万羽)が入り、今後、立ち入り検査を行う。これで、口蹄疫(こうていえき)被害が昨年集中した川南町など2町の一部が同区域内に入り、計2市5町に規制がかかることになった。(朝日新聞1月24日)

2011年1月24日 (月)

新富町で第2例発生! ここでくい止めるしかありません!

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宮崎県民のみならず、国民皆が恐れていた事態が始まるかもしれません。

第1例目(*正式ではなく、便宜的)から8.5㎞離れた移動制限区域内(10㎞圏内)の農場(約6万6000羽飼育)で23日朝、20羽の鶏が固まって死んでいる、との通報があり、家保が検査の結果6羽中5羽から陽性を検出しました。

第2例目は養鶏団地内にあり、農水省対策本部はこの養鶏団地内の鶏46万羽すべてを処分することに決定し、既に殺処分に入ったようです。

第2例目の発生を受け、県は発生農場を中心とした半径10キロ圏内の鶏や卵の移動を新たに制限し、制限対象の農場は第1例目と合わせて100カ所、鶏約46万羽が対象となります。

また警察、消防による消毒ポイントの設置が行われる一方、知事の要請により、陸上自衛隊第43普通科連隊100名が災害出動準備に入りました。

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私からは4つ指摘しておきたいと思います。

■まず第1に、初動においてウイルスを完全に排除することは不可能であることが決定的になりました。

いかに初動を素早く立ち上げて、発生農場をいかに素早く淘汰したとしても、それが仮に韓国方式のように半径500メートルを全殺処分するリング・カリング方式をとろうとも、ウイルスは既にほぼ確実にすり抜けて移動をしています。

今回は牛と鶏の違いはありますが、第1例目から8.5㎞離れています。制限区域内外周ギリギリの地点です。ここで飛び火したということは、第1例目の殺処分と消毒処置が効いていないか、既にウイルスは移動済だったということになります。たぶん後者でしょう。

今後、口蹄疫にしろ、トリインフルにせよ、「初動は必ず破綻するものであり、初動破綻に供えた二の手を考えて緊急対策を考えるべきだ」という教訓になりました。

韓国に典型のように、初動に頼りきった防疫対策を主軸としてしまうと、それが破綻した場合もう次に打てる手がなくなってしまいます。必ず初動が破綻した「次」を考えて防疫対策を立てるべき時期に入っています。

■第2に、畜産業の集中設置、団地化は今後止める方向にするべきです。

畜産業は、その臭気などから今まで地域の中で迷惑施設扱いを受けてきました。その関係から、行政はこれを団地化して一地域に密集させる方法を指導してきました。

かつて5年前の茨城トリインフル事件の舞台であった茨城県水海道地区、小川地区は、このような行政の団地化構想に従って生まれました。

このような地区では10戸ていどの畜産農家が軒を並べ、数十万羽の飼育がなされています。今回の新富町の場合は8戸12棟、46万羽規模でした。

では、何がこの畜産団地の特徴なのでしょうか。
それはなにより、半径数キロ以内にひしめき合う密集した立地条件にあります。道一本隔てて隣の農場があるわけです。

当然道路は共に使っています。それだけではありません。ほとんどすべての畜産関連のルートが共有されているのです。

飼料関係は同一の会社から搬入されています。鶏糞もまた共同の処理施設で堆肥化されているいます。淘汰鶏の搬出も同一業者です。そして出荷先が一緒な場合は、鶏卵選別出荷センター(GPセンター)も共同しています。

これら飼料関連、共同糞尿処理施設、死体搬出、共同出荷センターのすべてが感染ハブになることは、私たちは口蹄疫の時にさんざん見てきました。川南町での感染ハブのひとつは共同の堆肥舎でした。

事実、2005年茨城トリインフル事件の時は、共同の下水溝すら感染ハブになったほどです。

いったんこの団地内の一戸にウイルスが侵入したとしたら・・・もう考えるまでもないでしょう。瞬く間になめるようにして感染は拡大していきます。今回第2例が20羽で済んだというのは奇跡的に初期で発見しているからにすぎません。通報した農場主の勇気に敬意を表します。

この乾燥しきった冬季にトリインフルが侵入すれば、その感染力の強力さで、一日に一棟数千羽、時には数万羽が丸ごと感染してしまったかもしれないのです。それほどまでにH5型(たぶんN1)ウイルスの感染力は強力なのです。

畜産団地化は、このような感染力が強力なウイルスが蔓延する時代以前に構想された前世紀の遺物です。確かに飼料配送、集荷などで効率化されるものの、現代においてこれほど危険な火薬庫はありません。

■第3に、第2例は既に家保の22日の第1回簡易検査でマイナス(陰性)だったことです。にもかかわらず、翌日死亡鶏が出たわけです。

宮崎家保を疑うわけではありませんが、はっきり言ってお粗末です。どのようなサンプリングをしたのでしょうか?1棟につき何羽の無作為抽出をしたのでしょうか?

確かに簡易検査キットの精度は万全ではないはずですが、抗体検査、PCR遺伝子検査、ウイルス分離検査の3検査をやってマイナスだったというわけですから、後はサンプリング方法の問題となります。

家保の家畜防疫員は、その時しっかりと農場主から聞き取りをして、自分でも鶏の状態を目視したのでしょうか。

このようなことだと、初動はスッポ抜ける、そして周辺の発生動向調査の精度も危ういということになってしまいます。

家保は防疫の主力部隊です。畜産農家の頼みの綱です。頼みます。しっかりとした仕事をしてください。あなた方が疲労困憊しているのは重々分かっています。大変な重圧と闘っているのも理解しているつもりです。だから、激励を込めてあえて言っています。

■第4に、たぶん・・・最悪のケースを考えると、この団地のみならず飛び火していると考えるべきでしょう。緊急ワクチンの投入を大至急検討すべきです。

緊急ワクチンをするなら、今しかありません。時期を失しては意味がないのです。直ちにワクチンを接種するべきです。
(筆者注・トリインフルのワクチンは存在しないか、あっても問題がある可能性があります。また日本は備蓄していない可能性が高いと思われます)

最後に国に。直ちに宮崎県に最大限の支援を与えてください。全国からの獣医師の派遣も今ただちに行い、周辺の発生動向をしらみつぶしにやるべきです。これは絨毯爆撃方式でするしかありません。それには獣医師の人数がいるのです。

この発生動向調査に全力を上げ、家畜防疫員は殺処分を自衛隊に委ねるべきです。たぶん、間違いなくここ以外にも飛び火しているはずですから!

私たちは祈るような思いで新富町を見ています。
口蹄疫に続くまたもやの災厄に、心から同情します。
がんばろう、宮崎!がんばろう、新富!

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宮崎現地の「みやざき甲斐」様の緊急コメントを転載いたします。ありがとうございます。また逐次ご報告ください。

■国道44号線の通行は畜産関係者は避けて下さい!
ここは採卵農場が多数ある地帯です。
1件目は裏手の池からの野鳥ですが、今回は人の移動での疑い濃厚です。
口蹄疫の二の舞は避けなければなりません。
頑張ります!

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宮崎で2例目の鳥インフル=養鶏団地の41万羽殺処分-県、自衛隊派遣を要請へ

時事通信 1月24日(月)0時17分配信 

宮崎県新富町の養鶏農場で23日、高病原性鳥インフルエンザに感染した疑いのある鶏が見つかった。同県によると、遺伝子検査で高病原性の「H5亜型」ウイルスが確認された。

鳥インフルエンザ感染は宮崎市の農場に続き同県では今年2例目。この農場は県内最大規模の養鶏団地の一角に位置し、農林水産省の対策本部は感染拡大を防ぐため、団地の約41万羽すべてを殺処分する方針を決定。県は殺処分に着手した。
 政府は23日夜、菅直人首相ほか全閣僚が出席して首相官邸で鳥インフルエンザ対策本部を開催。席上、菅首相は「徹底した体制を敷いて、何としても拡大を止めることが必要だ」と強調し、政府を挙げて拡大防止に取り組むよう指示した。
 また、宮崎県の河野俊嗣知事は近く自衛隊の派遣を要請する方針を明らかにした。防疫体制の強化や殺処分した鶏の埋却などの実施に向け支援を求める。防衛省は、陸上自衛隊第43普通科連隊(同県都城市)の隊員約100人を待機させており、県から災害派遣要請があれば出動させる方針。警察庁と国土交通省も消毒で協力する。
 宮崎県によると、21日に見つかった今年1例目の宮崎市の農場から北東8.5キロにある新富町の農場(約6万6000羽飼育)で、23日午前に鶏約20羽が死亡していると届け出があった。死亡鶏と生存鶏双方に簡易検査を行い、6羽中5羽で陽性反応となっていた。この農場では22日から県が目視検査などを実施したが、異常はなかった。
 2例目の発生を受け、県は発生農場を中心とした半径10キロ圏内の鶏や卵の移動を新たに制限した。制限対象の農場は1例目と合わせて100カ所を超え、鶏は約400万羽以上になる見通し。
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鳥インフル:「終わらせる」一転拡大 県振り回され 宮崎

宮崎県新富(しんとみ)町で新たに鳥インフルエンザ発生が確認された23日、県内の養鶏農家に一斉にショックと不安が広がった。発生したのは県内最大の養鶏団地。
41万羽もの殺処分が決まったことで、これらの養鶏農家が加盟する同町の児湯(こゆ)養鶏農協は強い緊張感に包まれた。「絶対これで終わらせる」。1例目の発生を受け、防疫の徹底を指示していた県も、神出鬼没のウイルスに振り回される格好となった。
【村尾哲、小原擁、川上珠実】

■苦悩の新知事

 河野俊嗣知事は23日午後2時から県庁で2回目の対策本部会議を開き、関係職員に「迅速な防疫に徹するしかない」と繰り返した。東国原英夫前知事の後を継ぎ、就任3日目。表情にはすでに疲労の色がにじんでいた。

 新たに発生が確認された新富町の採卵鶏農場では、県が22日に抗体検査のための血液採取と目視による検査を済ませたばかりだった。ウイルスはその検査をすり抜けるかのように出現し、防疫強化を指導する県職員らも言葉を失った。

 河野知事は「農家からすれば、昨年から何度も立ち入り検査をしているのになぜ、との思いがあるだろう。とにかく二重、三重のチェックをやっていくしかない」と述べた。

■「再建できぬ」

 JR日向新富駅から北へ車で5分ほどの児湯養鶏農協。組合員らが頻繁に出入りし、ピリピリとした緊張感に包まれた。30代の男性は取材に「県との調整も続いていて申し訳ないが対応できない」と表情は険しかった。

 事務所前にはパック詰めした卵の無人販売所があった。その横には、購入者の思いが記されたノートも。そこには、子どもとみられるたどたどしい文字で「おいしかったです。また作って下さい」と書かれていた。

 発生農場の近くに住むピーマン農家の福山三義さん(61)はニュースで知って、近所で約6万羽の鶏を飼育する組合員の友人男性に電話した。「『なんでこんなことに。もう再建できない』と嘆いていた」と心配する。

 福山さんは「(発生が確認された)養鶏団地は、最近できたばかり。『古い鶏舎では疾病対策が十分にできないから、設備の整った鶏舎を造る』と言っていた。よく頑張っていると思っていた。この周辺は口蹄疫(こうていえき)でもやられたので、まさにダブルパンチだ」と声を落とした。(毎日新聞 1月23日)

2011年1月23日 (日)

宮崎県でトリインフルエンザ「H5亜型」が発生! がんばろう、宮崎!

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いきなりショックなニュースが飛び込んできました。「日本農業新聞」(1月23日)によれば、1月22日、宮崎県宮崎市の農場でトリインフルエンザが発生し、動物衛生研究所でトリインフルエンザ「H5亜型」であることが確認されました。

県畜産課によれば、21日午後5時ごろ、宮崎家保に鶏36羽が死んだとの連絡が入り、簡易検査の結果6羽が陽性、遺伝子検査でもすべてが陽性でした。

宮崎県での発生は東国原前知事の就任直後の4年ぶり。今回も新知事就任と同時の発生となりました。引き継ぎがうまくいくといいのですが。

既に県は同日朝から同農場の1万2千羽の殺処分を開始し、同日中に完了しました。また、同時に半径10㎏の移動制限区域が設けられ、家禽や卵の移動が制限されることになりました。

移動制限は46箇所、約150万羽。既に消毒ポイントも設置されています。

今回は全開の宮崎口蹄疫の初動の失敗の反省から、首相官邸に「鳥インフルエンザ対策本部」が設置されました。疾病小委員会から本日中に現地調査に入る予定です。

一方隣県の佐賀県、熊本県、,鹿児島県では一斉に緊急防疫会議が開かれ、養鶏農家への立ち入り検査などが行われ始めました。

今回宮崎県は、島根のように極めて早く通報が行われ、簡易検査と遺伝子検査で陽性と診断し、緊急対処を決断しています。

今後ですが、この発生農場での処分が終わり次第、周辺農場の再検査が始まります。

初動の発生動向調査で行ったのと同様に抗体検査、PCR遺伝子検査、ウイルス分離検査の3点セット検査を実施します。なぜ2回やるかといえば、殺処分と焼却処分、消毒作業をやっている1週間のうちに再びウイルスが飛び火した可能性も考えられるからです。

周辺農場の検査と並行して、清浄化が済んだ発生農場にはおとり鳥が置かれて監視に入ります。定期的に検査して新たな感染がなければ、晴れてこれで清浄性確認がなされたことになります。ここまでやっぱり2カ月間はかかるでしょう。

口蹄疫と比較してトリインフルが防疫上有利なことは、現場で家保が検査3点セットで陽性が確認され次第、初動制圧に乗り出せることです。これは口蹄疫の遺伝子検査が特殊なバイオハザード対策を持った施設のみでしか検査ができないことと大きく異なります。

現在、初動はうまく行っているような気がします。36羽というのは微妙な数ですが、とまれこの段階で届け出てくれたことを評価したいと思います。発生農場の防疫状況、侵入ルートについての詳報はいまの段階ではありません。追ってご報告します。

農水省はこの時点でもプレス・リリースを出していません。この省はこのような非常時にも土日はお休みにしてしまうようなお気楽な職場のようです。┐(´д`)┌ヤレヤレ

今回の事件でも報道のヘリが低空で撮影を続けています。これは宮崎県口蹄疫最終報告書にもあるように、非常に迷惑な行為です。ヘリの爆音は家畜をパニックにさせ、処分を遅らせます。防疫の人たち同士の声すら聞き取れなくなってしまいます。報道各社は、無神経な上空取材を直ちに止めてください。

口蹄疫に続き、立て続けの災厄ですが、口蹄疫での教訓を生かし、また再び宮崎県人の素晴らしいガッツを見せて下さい。この1件で抑え込めることを心から祈っています。
がんばろう、宮崎!

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口蹄疫の戦友である「みやざき甲斐」さんから緊急コメントが入りましたので全文転載いたします。

■鶏インフルエンザ、しかもH5型です。また宮崎ですが口蹄疫以降消毒、石灰は欠かさずやっています。
家保の対応も4年前とは違っているはずです。
何とか1件で封じ込めたいと思います。

宮崎県内の方々は219号線を通行される時は留意して下さい。

韓国では野生動物の制御が出来ておらず、終息しても気の遠くなる道のりかと思います。
この件に関しては同じ被災人として言いようの無い気持ちです。
絶望せず、気をつないで切り抜けて欲しいです。

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鳥インフル:宮崎に再び衝撃 口蹄疫復興のさなかに

 口蹄疫(こうていえき)で牛や豚約29万頭が犠牲となり、やっと復興に歩み始めた宮崎県を、今度は鳥インフルエンザが襲った。相次ぐ家畜伝染病禍に、全国有数の畜産地が震撼(しんかん)した。発生地周辺の養鶏関係者は不安と動揺を隠せない。

 宮崎県庁では22日午前4時過ぎ、県畜産課の岩崎充祐・家畜防疫対策監らが記者会見し、県内で4年ぶりの鳥インフルエンザ感染確認を発表した。

 岩崎対策監は「昨年、北海道で鳥インフルエンザが確認されて以来、県内の養鶏場に2回、立ち入り調査してきた。ショックだ」。宮崎県は昨年、口蹄疫で大きな被害を受けたばかりで「宮崎だけに立て続けに(家畜伝染病が)発生したのは、農家の人に申し訳ない」と言葉を詰まらせた。

 この日設けられた発生農場から半径10キロの移動制限区域内にある同県新富町の採卵場で働く男性従業員(28)は「いつ制限が解除されるのかわからないのが不安。口蹄疫の二の舞いになってはまずい。何とか1件だけで抑えられたら」と心配した。

 この採卵場では、21日夜のニュースで発生を知り、全従業員が急きょ集められ、防鳥ネットの確認や鶏舎の石灰の散布に追われたという。22日朝も午前6時出勤で、出入り口に石灰を足したという。男性は「島根、鹿児島と、だんだんとウイルスが近づいているようでみんなビクビクしていた。焦ってもしょうがない。いつも以上に防疫に力を入れたい」と話した。

 宮崎市佐土原町の発生養鶏場では22日朝、飼育する鶏約1万羽の殺処分のため、県職員らが準備に追われ、雑木林に囲まれた農場は物々しい雰囲気に包まれた。

 午前9時過ぎに、白い防護服に身を包んだ県職員らを乗せた大型バスが次々と現場に到着、約300人が降り立った。戸敷正宮崎市長の姿もあった。敷地内にはテントが約12張り連なるように設置されており、早速、職員たちが養鶏場に消毒液を噴射するなどしていた。現場には報道陣十数人が詰めかけたが、農場入り口には県職員が立ち、立ち入りを規制。現場には緊張感が漂った。(毎日新聞1月22日)

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■鳥インフル感染確認の養鶏場で1万羽殺処分終了 宮崎県

産経新聞 1月22日(土)21時2分配信

農林水産省は22日、宮崎市佐土原町の養鶏場で死んだ鶏について、高病原性鳥インフルエンザへの感染が確認されたと発表した。宮崎県の遺伝子検査の結果、H5型と判明。今後、動物衛生研究所(茨城県)が、さらに詳細な型や毒性の強弱を調べる。

 国内の養鶏場での鳥インフルエンザは昨年12月、島根県安来市で確認されて以来。宮崎県では平成19年以来となる。県は昨年、口蹄(こうてい)疫が発生して牛や豚計約29万頭が殺処分され、畜産が大打撃を受けたばかり。鶏も国内有数の産地で、影響が懸念される。

 宮崎県は同日、この養鶏場で飼育する約1万羽すべての殺処分を終了。家畜伝染病予防法に基づき、半径10キロ圏内の養鶏場46カ所の計約150万羽と卵の移動を禁止、立ち入り検査を進めて鶏の健康状態や防疫措置の実施状況を確認する。

 また、周辺地域の国道や県道に消毒ポイント26カ所を順次設置し、一般車両も対象に消毒する。

 農水省も22日、防疫の専門家らを現地に派遣。感染状況の把握に当たった。また、同日夕、専門家でつくる「家きん疾病小委員会」を開催し、今後の防疫対応について検討した。

 一方、消費者庁は、感染した鶏や卵が市場に出回ることはなく、仮に食べたとしても人には感染しないとする内閣府の食品安全委員会の見解を示し、消費者に冷静な対応を呼び掛けた。

 発生農場では21日に鶏36羽が死んでいるのが見つかり同日夕、県に連絡。簡易検査を実施した7羽のうち6羽が陽性となり、県が詳しい検査を行っていた。

 農林水産省の21年の統計によると、宮崎県の肉用若鶏の出荷羽数は約1億1800万羽、鶏卵も含めた養鶏産出額は637億円で、いずれも鹿児島県に次ぎ全国2位。

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H5型鳥フル確認 県、1万羽超を殺処分
宮崎日々新聞2011年01月22日

 宮崎市佐土原町上田島の養鶏場で確認された高病原性鳥インフルエンザの感染疑いについて、県は22日、遺伝子検査で高病原性ウイルス(H5亜型)を検出したと発表した。
県はウイルス分離を行い、早ければ23日にも動物衛生研究所(茨城県つくば市)で毒性の強さを含めた確定診断を行う。 また、22日夕までに飼育する1万240羽すべてを殺処分。廃棄物処理施設での焼却を始めた。同農場から半径10キロ圏内を鶏や卵などの移動制限区域に設定。車両向けの消毒ポイントの設置にも着手した。

 県対策本部(本部長・河野俊嗣知事)によると、この養鶏場は国内各地に農場を展開する森孵(ふ)卵場(本社・香川県)の尾曲農場。21日に異常死が始まり、簡易検査では7羽中6羽に陽性反応を確認。宮崎家畜保健衛生所での遺伝子検査で、22日未明に同じく7羽中6羽からH5型ウイルスを検出した。

 制限区域外の川南町にある同社系列5農場は県の要請に応じ、鶏や卵の移動を自粛。県は今後の対応を農林水産省と協議している。

写真】高病原性鳥インフルエンザのウイルスが検出された農場で防疫作業を進める関係者=22日午後、宮崎市佐土原町上田島
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■鳥インフル 北海道でも高病原性 オオハクチョウから検出

毎日新聞 1月22日(土)21時27分配信

 環境省は22日、北海道の国指定厚岸(あっけし)・別寒辺牛(べかんべうし)・霧多布(きりたっぷ)鳥獣保護区内(浜中町)で衰弱した状態で見つかり、その後死んだ野生のオオハクチョウ1羽から、強毒性の高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が検出されたと発表した。発見場所から半径10キロ圏内について、3段階に分かれる警戒レベルを最高度の「3」に引き上げ、野鳥の監視を一層強化した。高病原性鳥インフルエンザが確認されたのは昨年10月に稚内市でカモのふんから検出されて以降、今回で8カ所目。

【写真で見る】各地で確認された鳥インフルエンザ

 同省によると、このハクチョウは19日、同保護区内で浜中町職員に回収された。簡易検査した結果、鳥インフルエンザへの感染が判明。20日に北海道大に移送し、詳細検査をしていた。
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■ 明日からカミさんが外遊に出かけられて、私ひとりで哀しく農場仕事をすることになりました。年に一回のガス抜きです。私たち畜産農家は365日仕事ですので。
おまけに今週は、筑波の大学で「日本農業の今」とかをしゃべらねばならず、もうひっちゃかめっちゃかです。
できるだけ更新するように務めますが、ままなりませんでしたらごめんなさい。(つд⊂)エーン

2011年1月22日 (土)

農業への無知を晴らす中から 、平成の不平等条約・TPPを迎撃しよう!

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北海道様、ありがとうございます。非常にリアルなコメントでしたので、全面的に転載させていただきました。

私は、この間の記事をTPPをどう迎撃するかという流れの中で書いています。

そもそも9割の日本人は、昨年10月の菅首相の所信表明演説まで、TPPなどという単語自体を知りませんでした。ほとんど初耳。寝耳に水。民主主義とは相いれない手法です。

私たち農業者に至っては、FTAは民主党マニュフェストに出てきましたから議論の対象に大いにしたものですが、よもやその拡大バージョンをいきなりかまして来るとは思いもよりませんでした。

一種の脳震盪状態といっていいでしょう。村の友人はJAが組織した反対デモに行ったのですが、終わった後の飲み会で、「なんだ、てーてーぴーって?」といった有り様で、実感が湧かないというのが実態のようでした。

さてあれから3カ月間がたち、遅まきながら、私たち農業者にもTPPがかなるものかの全貌が見えてきました。

煎じ詰めれば、TPPは米国が主導する多国間自由貿易協定です。そもそも米国が、WTOのドーハ・ラウンドでの不調を棚に上げて、自国の利害のために身勝手に始めたことです。

菅首相は、横浜でのAPECで各国首脳を前に「世界の孤児にならない」、「日本は鎖国をしている」とまで述べました。普通このような外交的席上では、わが国はいかに開かれた国であるのか、WTOの優等生であるのかを力説するものですが、いきなり「わが国は鎖国している」と来たもんです。

たぶん軽い冗談なのだと思います。幕末に日米通商条約が結ばれた横浜の地をあえて選び、各国首脳、中でも米国大統領を前にして、「鎖国している」と自国を卑下してみせれば、それがどんな外交的メッセージなのかは明らかです。きっと受けを狙った笑えない冗句のつもりでしょう。

もちろん、首相の「鎖国」認識はまったくのでたらめです。わが国の関税率はOECD諸国の中でも低く、発展途上国に対しては膨大な品目を特恵関税扱いでゼロにしているほどです。

特恵関税を得ている諸国には、GDP世界第2位の「発展途上国」中国まで含まれています。

また、菅首相は今年の年頭所感で、「日本農業の開国」をぶち上げました。これも根本的に認識を間違えています。先日の記事で書いたように日本農業の平均関税率は11.7%にすぎません。OECD先進諸国の中で下から2番目の低関税国です。このどこをして、「日本農業は鎖国している」のでしょうか。

また、菅首相は歴史がお好きらしいとみえます。山口県出身の自らを「奇兵隊内閣」と呼んだことすらあった御仁です。ならば、1858年11月に横浜で結ばれた日米通商条約が、産声をあげたばかりの新生日本にとって、いかに大きな重圧だったかは知らないはずがありません。

関税自主権の放棄と治外法権という巨大な不平等条約を押しつけられた日本にとって、それを破棄することが明治国家の目標だったほどです。破棄に至る40年間、日本はしなくていい大きな犠牲を支払いました。

関税自主権の放棄とはそれほどまでに大きなことであり、それを薄っぺらな現状認識しか持っていない龍馬気取りの安っぽいロマンチストに簡単に「開国」されてはなりません。

考えてみれば、このていどの男が、このような時期に、このような席にいること自体が日本の不幸なのかもしれませんが。

かつての安政の開国は、ペリーによるあからさまな軍事的な圧力によってもたらされました。しかし、今の日本は当時の日本ではありません。

衰えたといえど世界経済の中枢的な地位におり、既に先進諸国の中で関税率が最も低い国に数え上げられるようになっています。農業生産においても世界有数の力をもっています。

そして今回、米国は日本に「開国」がらみで軍事的圧力をかけようとはしていません。それは不安定の弧の東の要が日本である戦略的位置によります。米国は日本をみずからの世界戦略上切れないのです。

民主党政権は、沖縄問題、尖閣問題、そして北方四島問題で連続的に外交をみずから揺るがせた反動で一気に米国にすがりつこうとしているにすぎません。

このような有利な諸条件がありながら、なぜ唐突にスーパーFTAとでもいうべきTPPをする必要があるのか、私には皆目見当がつきません。

ムード的に「平成の開国」と叫ぶのはやめたほうがいいと思います。なにがTPPであるのかがはっきりしないうちに「バスに乗り遅れるな」とばかりに走り出してはなりません。

TPPはすでに米国、カナダ、豪州、ニュージーランドが加盟しており、この先約事項に拘束されてしまいます。今、この時期で日本が最も遅れて加盟すると、日本が協議していないことまで先約決定事項とされて拘束されてしまいます。

まさに「平成の不平等条約」といっていいでしょう。

TPPはやる必要がない協定です。日本は既に充分「開国」しています。それで不足があると産業界が言うのなら個別の二国間交渉で詰めればいいのです。

現在のように二国間FTAすら満足な議論ができていないのに、多国間協定をいきなりもってくるというのは本末転倒です。

今、この形でやることに合意してしまえば大変な禍根を残すことになるでしょう。
ところでこの間、TPPに対して多くの意見が雑誌やウェッブで出されています。出来るだけ眼を通すようにしていますが、こと農業のこととなると立場は違っても悲惨の一語に尽きます。
例の自給率40%、食料輸入大国、穀物全量輸入、コメの高関税、高齢化などという視点からしか日本農業を見ていません。今までこんな嘘を垂れ流してきた農水省の毒により、日本農業のほんとうの姿が大きく歪められてしまっています。
この間違った日本農業観を基礎にして、一方は「日本農業の開国」を叫び、方や「日本農業の保護」を訴えているのです。
賛成するにしても、反対するにしても、こんな間違った日本農業像を一回叩き潰さねば私たち農業者にとって、いやわが国民にとっても本質的な議論となっていかないでしょう。
いい機会です。安易な日本農業保護論ではなく、自立をめざした論議をする中から、平成の不平等条約・TPPを迎撃しようと思います。
以下、「北海道」様の現場からの投稿を全文掲載しました。もし、可能ならでけっこうですが、「りぼん」様、養豚関係の声をお聞かせいただけないでしょうか。

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TPPに参加した場合の畜産(酪農と肉畜)の影響ですが、農業の周りにある農業機械や飼料など資材関係及びその地域のコミュニティなど様々な関連産業も当然影響を受けますが専門分野外ですので、個人的見解で答えます。

先ず、酪農関係ですが、国内の生乳生産は約800万トン弱ですが、乳製品の生乳換算需要は概ね1,200万㌧と言われています。

(国内生産量の50%相当が輸入されています)
その約800万㌧の内都府県での生産は約400万㌧でその大部分は飲用で消費され、一部バターやチーズにも使われています。

北海道は約50%の400万㌧弱生産しています。ちなみに平成21年度の生産量は3,824千㌧で、その用途別割合は

①バター・脱脂粉乳1,681千㌧(44%)
②生クリーム原料乳963千㌧(25.2%)
③飲用乳 746千㌧(19.5%)
④チーズ原料乳 433千㌧(11.3%)
となっています。
※飲用乳には、都府県での飲用の為の送乳を含んでいます。

この状況から言える事は、都府県の酪農家がそのまま存続し、生産量も現在と同じと仮定すると、北海道で生産している約400万㌧の生乳の内、フレッシュものとして輸入が厳しいと思われるのが、飲用乳の約75万㌧+生クリーム96万㌧+ソフト系チーズ若干程≒200万㌧ですから、単純に考えれば現在の生産量の半分の生産で間に合う事になります。

国内全体で考えれば飲用乳需要は約400万㌧、生クリームの大部分は北海道産なので約100万㌧合わせて500万㌧チョット程度あれば間に合います。

チーズ(主にハード系)及びバター・脱脂粉乳は全て輸入に置き換わるでしょう。
(一部国産にこだわる実需者が居れば少し上乗せされるかな?)

酪農での影響は牛乳だけではなく、生まれて来る「♂子牛」にも影響が出ます。雌雄判別精液を使わない限り53%前後は♂子牛であり、現在は哺育・育成・肥育して枝肉として消費されていますが、輸入牛肉とまともにバッティングしますので、採算は取れないでしょう。生まれた♂子牛は化成処理される事になります。

話を纏めると、酪農家は半減(戸数か生産量かはありますが)、北海道で主となっているホル♂肥育関係は壊滅、交雑種(ホル×黒毛和種)関係は黒毛和種に近いくらいの枝肉を作れる生産者1/3程度が残る・・・と言った感じかな?と思っています。

北海道では、酪農畜産農家は当然の事、畑作農家も危機感をもち、農業団体挙げて反対運動を展開している所です。(地域が壊滅すると言う危機感から市町村行政なども同じ考えで行動しています)

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連投ご容赦ください。
TPPの酪農畜産に関する影響は、大きなものがあると思っていますが、個人的には先に参加している国々がルールを決めてしまってからの参加は大きな不利益が生じると思っています。

WTOでもEPA・FTAでもいつまでも国際的な大きな流れに乗らず、国家が存続して行くとも思えません。

先々参加せざるを得ないのであれば、当初から参加し10年間の猶予(ルールの決め方によっては品目毎に延長もあるかも知れない)中に、国内農業の方法や方向も見定め、戦略を練る事も可能になると思います。

いつまで守りの農業に徹するのか?
攻撃的な農業は不可能なのか?

ただ単にデモをしたり、署名活動をすればよいと言うものではなく、攻撃的農業の戦略も政府や農水官僚に提案して行く事も重要だと思っています。

ただ、一部大臣や経団連会長等が何も分からず、GDPの1.5%発言をしている事には怒りを感じています。

TPP参加表明と同時に、国民の食糧確保の問題(異常気象が当たり前になっている状況の中で、輸出規制が為された時の対応)、投機資金が流入し価格が異常に高騰した場合の対応、自給率の問題(濱田様が仰るカロリーベースではなく、他国と比較できる数値)、農業の問題、地域やコミュニティの維持の問題、環境の問題、関連産業の問題等々の対応を国民に対して丁寧な説明が必要なのではないでしょうか?

単に所得補償すれば良い・・と言うものではないです。農業者は「物乞い」ではありません。

それと北海道の生乳品質は世界一と自負しています。
でも、狭い国土の中で集約的に生産して行くには、どうしても購入飼料にも頼らざるを得ません。コストがかかる事だけは、いかんともしがたい・・・と言うのが現状です。
(個体改良や自給飼料増産していくにも肥料等はどうしても掛かってしまいます)

                 ○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*

TPP “見切り発車”は許されない
琉球新報 2011年1月18日 

国家の政策は常に弱者の立場に配慮し、支援・強化策が先にあるべきだ。しかし、いま「強者の論理」が強行されようとしている。

 内閣改造を機にTPP(環太平洋連携協定)締結に急傾斜する菅内閣に、「農業や農民を切り捨てる暴挙」との批判と警戒感が高まっている。

 原因は「農政無策」ともいわれる日本の政治の脆弱(ぜいじゃく)さにある。
 県内の農家からも「ワクチンもないままに新型インフルが猛威を振るう社会に国民を放り込むようなもの」との批判の声が絶えない。

 農家や農業団体の懸念に、県議会は「地域経済に深刻な影響を及ぼすことが懸念される」として、協議に参加しないよう政府に求める意見書を可決している。

 TPPは、環太平洋諸国間で原則として関税を撤廃し、自由貿易協定を結ぶものだ。

 現状でも厳しい農家の経営環境の中で、関税撤廃と農産物の自由貿易化となれば、安い農産物が大量に流入し、国際競争力を持たない県の基幹作物のサトウキビや肉用牛、養豚、パイナップルなどが壊滅的な打撃を受けるのは確実だ。

 「TPP参加は日本農業の壊滅への道」との厳しい反対論に、政府はきちんと答える必要がある。

 「安い農産物は消費者にとって歓迎すべきこと」との賛成論もある。だが、中国産野菜の農薬汚染、米国産農産物の遺伝子組み換え問題など、「安さ」と引き換えに「安心・安全」を失うことへの懸念や警戒への政府の回答が先だ。

 菅政権の中には「GDPの1・5%しかない第1次産業が、他の98・5%の産業を犠牲にしている」との暴論を吐く外相もいる。

 思えば15年前、ウルグアイ・ラウンドで農水省は「一粒たりともコメは入れない」と反対していた。しかし、自由化は加速し、コメは減反を強いられ、農業総生産額はピーク時(7兆9377億円、1990年)の55%(4兆4295億円、2008年)に、主業農家は82万戸から36万戸まで激減した。

 農業人口の激減、耕作放棄地の増加、食料自給率の低下など、農政無策で農業を衰退させた「前科」に対する政府不信は根強い。

 TPP締結の前に、国内産業への影響に関する調査、影響に対する的確な対応策は不可欠だ。

 食糧安保の観点からも、“見切り発車”は、絶対に許されない。

■写真 旭日です。わが国の国旗を思い出します。

2011年1月21日 (金)

社会主義統制経済を今どきやっている小麦輸入の仕組み

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まずは自給率(カロリーベース算定)のデーターを上げてみましょう。

■平成18年年度(2006年)自給率39%
果実:35%
大豆:25%
野菜:76%
魚介類:59%
砂糖類:
32%
小麦:13%
油脂類:4%
畜産物:16%
コメ:94%

これがカロリーベースの算定による自給率39%の内訳です。ではこれを41年前と比較します。

■昭和40年度(1965年)自給率:73%
果実:86%
大豆:41%
野菜:100%
魚介類:110%
砂糖類:31%
小麦:28%
油脂類:33%
畜産物:47%
コメ:100%

少し説明をしましょう。2006年度の米が94%と、100%を切っているのは、ミニマムアクセスで低品質の輸入米を買って、市場に出さずに保管しているからです。

よくフード・アクション・ジャパンというCMで「米を食べて自給率を向上させよう」と言います。また農水省がマスコミを通じて国産自給だと、「3食はイモまたイモになりますよ」と言ったイメージをバラまきます。

何度も言っていますが、この政府の宣伝はある種のレトリック、有体に言ってプロパガンダでしかありません。

このカロリーベース自給率40%ということを国民的常識にして、そこからすべての農政を作ろうとしています。たとえば、農家所得戸別補償制度などは、米から始まり、それを畑作にまで広げようとしています。

畑作といっても、野菜や果樹というわけではなく、麦やナタネの類です。なぜ、こんな日本農業の主力ともいえない作物に莫大な税金を投入しようとするのでしょうか?その答えが上の表です。

自給率50%と民主党政府は掲げました。自給率を上げようとすれば、低い自給率しかない作物をテコ入れすることです。つまり、麦類、油脂作物、大豆などです。コメは自給率向上にはなんの関係もありません。

小麦などの穀物の自給率ですが、28%とあります。これには裏があります。小麦には100%の補助金が与えられていての数字です。このことを大部分の消費者は知らないと思います。

では、この国産穀物生産に対する補助金は、なにを財源にしているのかご存じでしょうか?「麦等輸入納付金」がこの財源です。ではこの輸入交付金がかけられた結果、輸入小麦はどのような価格になったのかをみます。

小麦輸入は、政府が管理するというどこぞの社会主義国家のようなことをしています。まず農水省が買い上げて、民間に売り渡すという仕組みです。

農水省HPによれば、値上げ後の政府売り渡し価格は、69,120円/tです。実は国際相場が、3,7000円/tですので、実に2倍です。国際価格の2倍の小麦を国民は食べさせられているわけです。ではこの差額がどこに行くのかというと、その大部分は国産小麦への補助金に化けていたのです。

国産小麦の相場は、43,000円/tですが、これに100%の補助金を乗せると、86,000円となり、国際相場の約2.5倍となります。つまり、輸入小麦を国際相場の2倍とすることで、そのサヤを国産小麦の補助金に回すという方法を農水省はとっていたわけです。

農水省は輸入穀物を輸入を統制することで、パンやうどん、ラーメン、そして同時に輸入穀物に頼る畜産製品の諸物価値上げの原因を作り出しています。

社会主義的な統制経済をして小麦輸入を一手に握り、そしてもう片方の手で国産小麦などへの補助金に回す方法で国内自給率の「向上」をはかる方法をとっていたのです。

大部分の国民は、よもや小麦が国家統制されているとはおもってもいないはずです。それは農水省が沈黙し続けているからです。

このことを公表すると、「国内自給率の向上」が、皮肉にも国民生活への圧迫となりかねない構造となっていることに、国民が気がついてしまうのを恐れているのです。

では、逆に農家から見てこの麦の補助金政策は嬉しかったかと問われれば、冗談ではないと多くの農家は答えるでしょう。なぜなら、麦、大豆への転作は減反の見返りでしかありませんから。

もともと美味いコメを作っていた畑を、減反という国家カルテルを維持するために3~4割作るな、と農水省から言われてきました。ひと頃は青刈りという屈辱的な方法でしのいできましたが、今のトレンドは麦、飼料用米、菜種、大豆を作れに変わってきました。

コメの代わりに麦を作ると転作奨励金がもらえます。作るだけで貰える愚民化政策ですから反収を上げたり、品質を上げたりするようなメンドーなことは考えなくなりました。これこそが、農民自身が最も軽蔑する「捨て作り」です。

日本の小麦の反収(単収)は3.2t/10㌃です。これは麦作に向いた英国の6tの半分強にすぎません。砂漠の国サウジすらわが国を1.2t上回っているほどです。

また反収の収量の伸び率も驚くほど低いのです。サウジは1977年から2.7t伸ばしているのに対して、わが国はわずか0.4tしか伸びていません。

世界でも屈指の技術力を持つわが国の農民とも思えないダルな数字です。これはひとえに、なんの努力もせずとも転作症例が貰える、作れば国家が買ってくれる、市場調査も開拓も考えずに済む、というあたりまえの農家経営につきものの経営努力をしなくて済むからです。

国家は農民に捨て作りを奨励するが如きことを強制して、「自給率向上」に名を借りた減反政策を維持しようとしているわけです。

この転作奨励金だけで実に7兆円が投じられました。よく日本農業を批判する人たちが言う「補助金漬けの日本農業」とは、ここを指します。

では、この巨額な税金によって日本農業はすこしでも強くなったのでしょうか。あるいは、「守られた」のでしょうか?

いや、まったくそうではなく、一部の人と省益を守っただけでした。多くの嫌日本農業派の人々は、農水省の愚かな政策と、日本農業そのものをごっちゃにしてひとくくりで切り捨てています。

農水省の省益利権の農政で日本農業全体までとやかく言われては、たまったものではありません。

■写真 雪の朝。ひさしぶりに雪が降りました。北国の方からみれば小雪でしょが。

■このところPCが不機嫌で、昨日は一回アップしようとして記事が全部消えるという悲惨なことになり、今日は今日とてフォントが大きくなりっぱなしで修正がききません。霞が関からの妨害電波でしょうか。(u_u。) しくしく、ごめんなさいノースイ様

2011年1月20日 (木)

日本農業は高関税ではない!

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日本の農産物のタリフライン(関税品目)が多く、障壁が高いので、実態として輸入ができないために、消費者は大きな不利益を被っている、日本農業は過保護なのだ、という声はうんざりするほど聞きます。

ことにこの「平成の開国」とやらのTPP(「トツゼン・パッと出た、プロジェクト」)がらみで、農業を日本経済の喉に突き刺さったトゲのように言う人はかならずと言っていいほどこの論法を採用しているようです。

わが国の菅首相もそのひとりだとみえて、誰から吹き込まれたのか(たぶん経産省でしょうが)正月早々に「開らかれた日本農業へ」とぶち上げていました。この人は理数系にもかかわらずデーターを調べないでしゃべるという悪癖をお持ちです。

日本の農業生産額を「世界80位」と言ってしまうレベルで、「農業の開国」をアジるのはやめていただきたいものです。正解は先進主要5カ国中で第2位です。

首相の代わりに、「閉ざされた日本農業」であげつらわれる品目を上げてはましょう。コメ778%、コンニャク1705%、落花生593%、バター482%、麦256%、砂糖325%、小麦249%、などとなります。

これに対して、単純関税率は、日本が12%、米国6%、EU20%ですから、ほら見ろ日本の農産物はバカ高い関税だと主張するわけです。どのような計算式を用いたのか、日本の農業関税は50%だという主張もあるようです。

日本農業への悪口を読みたい方はこちらからどうぞ。データー根拠も記載されていない軽薄な数字がずらーと並んでいます。( ^ω^)ワ,ハハ
http://unagi-kiken.seesaa.net/article/100505213.html

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そこで上の農産物関税を比較したグラフをご覧頂きたいと思います。出典はOECD1999です。(「現代の食糧・農業問題」(鈴木宣弘・東大教授 創森社より引用)です。ウルグアイラウンド終了時のもので、やや古いのですが、まぁ現在も大きな差異はないと思います。

これはタリフライン(関税品目)ベースです。有税品目というゼロ関税まで含んだ指標しか他に国際比較するものがないのです。

グラフを見れば一目で、日本がWTOの超優等生であることがわかりますね。唯一米国には負けています。

しかし、関税を語る場合、米国のような特異な輸入消費大国と比較するほうがおかしく、もしどうしても比べるのなら、国の面積や生活レベル、工業化水準が近いEUでしょう。

EUは、19.5%、日本は11.7%です。ノルウエーなど127%です。これでも日本の農産物関税が、関税が高いというなら、なにを見てそう言っているのか論拠のデーターを教えてほしいものです。

野菜、鶏卵、果樹などの主要農産物の多くは無関税か平均3%以下です。ほとんど関税に関してはノーガードだといっていいでしょう。

逆に高関税のほうが例外です。高関税品目には理由があります。

コメは減反政策という国家カルテルを維持するのが目的です。麦は国内産麦の補助金を捻出するために国が麦類の貿易を仕切るという愚かな社会主義国家まがいのことをしているためです。米と麦に関しては、別途詳述します。

輸入豚肉は「差額関税」というとんでもない制度を農水省は1971年から作っています。これはまず「基準輸入価格」というものを農水省が設定します。現在546円です。それより安い輸入豚肉は、この差額を関税として徴収する仕組みです。

一方基準輸入価格より高い輸入豚肉は一律4.3%の関税をかける仕組みです。

この差額を関税で徴収するというやり方をするとどうなるのでしょうか。豚肉には価格が高いヒレやロースなどの部位と、ももや肩肉などの安い部位があります。

安いモモなどはハムやソーセージにするために食品会社が輸入しています。この基準関税方式は、いわば差額関税ですから、安くても、高くても関税をかけられるという方式です。

食品会社は安い加工用肉をそのまま輸入してしまえば、差額関税をがっぽりかけられまてしまいますから、なんとか基準価格に近づいて関税を減らそうとして高い部位であるヒレ、ロース肉も一緒に輸入しています。この方法をコンビネーション輸入と呼び、どの食品会社もやっている方法です。

と、どうなるのでしょう?このコンビネーション輸入で仕方なく買った高い部位のヒレやロース肉は、ハムにするのはもったいないということで、一般市場に流します。しかも元を取ろうとダンピングまがいのことをしています。

これが一般のスーパーに並ぶ安い米国産などの豚肉の出所です。なんの国内豚肉の保護にもなっていないことがお分かりになると思います。まったく馬鹿な制度を作ったものです。

長くなりますから、またの機会にしますが、バターの高関税も農水省の天下り団体の「農業産業振興機構」がバター輸入を独占していることから発生しています。輸入業者は、2次関税を払った上に、いったん機構に輸入バターを伝票上買い上げてもらい、農水省の定めた806円/㎏の輸入差益を支払わねばなりません。

機構はこのトンネル差益だけで年間11億ももうけています。これは日本の畜産農家保護とはなんの関係もない、単なる農水省の天下り省益でしかありません。

日本の農産品高関税には必ずといってよいほど、農水省の利権がからまっています。私たち農家にはなんの関係もないことです。

日本農業は関税などによって守られてはいません。数少ない高関税は、農水省の省益にすぎません。ですから、「開かれた日本農業」などと言われると、笑ってしまいます。

■写真 父犬も4匹にジャレつかれてしんどいこと。しかしイヤな顔もしないでまとわりつかせているのはエライ。(o^-^o) おとうさん、がんばってね!

■追記 

いよいよ太平洋側にやってきました。

郡山・鳥インフル強毒性 59養鶏場、立ち入り検査へ

河北新報 1月20日(木)9時52分配信

 福島県郡山市水道局の貯水池(同市豊田町)で死んでいた渡り鳥キンクロハジロから検出された鳥インフルエンザウイルスについて、環境省と福島県は19日、強毒性だったことを明らかにした。県は半径10キロ圏内を監視区域に設定し、区域内の59の養鶏場を立ち入り検査する。強毒性の鳥インフルエンザウイルスが東北で確認されたのは、2008年4~5月の秋田、青森県以来になる。
 県によると、北海道大での検査によって、2羽から高病原性の「H5N1型」が検出され、遺伝子配列から強毒性と判明した。結果を受け、県と郡山市は19日、対策本部を設置し防疫の徹底を確認した。
 立ち入り検査では鶏の死亡率や産卵率を聞き、ウイルス感染の有無を詳しく調べる。県は既に県内251の養鶏場(100羽以上)に聞き取り調査を行い、異常がないことを確認している。
 環境省は監視区域内の野鳥の監視レベルを通常の「1」から最高の「3」に引き上げ、ふんなどを採取して調べる。
 鳥インフルエンザウイルスは濃厚な接触がない限り、人には感染しない。また、塩素で感染力を失うため水道水の安全性にも問題はないが、郡山市水道局は貯水池を通さない方法に変えた。
 キンクロハジロは今月4~10日、豊田浄水場の貯水池で計7羽が死んでいるのが見つかった。うち4羽からウイルスが検出された。国内では今冬、鹿児島県のナベヅルや島根県の鶏から、強毒性の鳥インフルエンザウイルスが検出されている。

2011年1月19日 (水)

2010年に宮崎県で発生した口蹄疫の対策に関する調査報告書 (二度と同じ事態を引き起こさないための提言) 抜粋 第4回

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宮崎県の作成した「2010年に宮崎県で発生した口蹄疫の対策に関する調査報告書」の第4回目を続けます。

この報告書には副題が付いており、「二度と同じ事態を引き起こさないための提言」とあります。まさに宮崎が流した血と涙の執念がこもったような内容です。

単なる事後報告書ではなく、さまざまな角度から検証テーマが立てられて、膨大なアンケートが関係者に広く取られました。この中には相当数におよぶ県防疫の失敗を手厳しく批判した内容があったと思われます。

通常このような行政批判は、報告書においては慎重に隠蔽されるのですが、この報告書は目を背けてはいません。検体送致の遅れ、初動の失敗、埋却の遅滞、自治体と県の連絡体制の不備、マニュアルの不在などの、県行政にとっては臭いものに蓋をしたい誘惑にかられるであろう分野においても、詳細な批判的報告と改善提案がなされています。

もちろんこの報告書はすべての人々を満足させるものではありません。特に初発とされて社会的な糾弾を浴びることになった6例目や、経営再建することを断念した1例目、あるいは善意の種牛の県譲渡をして報われなかった薦田さんなどにとっては、いまだ怒りがくすぶり続けていると思われます。

また支援者の中でも意見が別れることでしょう。私は高く評価しますが、いやまったくダメだ、大甘だという人がいてもおかしくはありません。これはこの巨大な災厄の規模と深さから見て当然のことです。

このような大きな社会的事件は、真にその姿を客観視できるまでに長い時間がかかるのであり、今、このさめやらぬ時期にこそできる最善を宮崎県はなしたと、私は考えます。

本日の部分は、初発をどのように扱うのか、第7例大型牧場の犯した獣医師法違反などの責任、発生動向調査の不備などに触れている箇所です。

全文はこちらからどうぞ。赤字は引用者です。http://www.pref.miyazaki.lg.jp/parts/000151738.pdf

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.以下引用 

■(3)-②
現行のシステムでは早期に通報したものが初発とされてしまい、今後の早期通報の確保に支障となるのではないか。
【検証結果】
○ (1)-①でも検証したとおり、今回の本県におけるまん延の初発がどこで、その農場にどのようにウイルスが侵入し、それがどのように拡大したのかについては、国の疫学調査においては極めてあいまいな形での調査にとどまっている

これに対して、初発として国の報告書に記載され、報道されることの影響、ダメージは非常に大きく、誹謗中傷を受ける可能性も高い。また人的な疫学関連についても、地域社会においては大きな影響を与えるものである。

現行の疫学調査の手法では、早期に通報した者が初発とされ、感染を隠蔽した場合でも責任を免れられる可能性もあることから、農家は早期に正直に通報しようとしなくなるのではないかという懸念がある

農家が口蹄疫を疑っても、「しばらく様子を見よう」と考えて通報せず、結果的に水面下での感染拡大につながったり、家畜がそのまま治癒してキャリアになってしまうことも懸念される。

【今後の改善のあり方】
◆ 国の検証報告にも述べられているとおり、国・県は協力して早期の発見者、通報者が社会的に評価される仕組みを作る必要があり、そのためには国民の正しい理解を促すための取組を進める必要がある。

◆ また、疫学調査における初発及びその感染原因等に関する調査の精度を高めるために、定期的な血液の採取やその保存、家畜の飼養状況や診療に関する記録の保存・提出等について、一定のルールを作る必要がある

現行の家畜伝染病予防法では、家畜所有者の責任を前提として、患畜、疑似患畜に対する手当金の支給率が、それぞれ3分の1、5分の4とされているが、口蹄疫の防御の困難性、さらには、早期発見・早期通報を確保するために、全額支給とすべきである

◆ あわせて、発見し、または疑いを抱きながら、あるいは口蹄疫を当然疑うべき状況にありながら、これを意図的に通報しなかった者は当然のこととして、見落とし、あるいは通報を怠った者に対しても何らかのペナルティーを課す方向で検討が行われるべきである。

また、その際には、手当金や補償金の支払いについても、現行の制度(法令違反があり、かつ発生・まん延を招いた場合に限り不支給)以上に、法令違反に対して厳格な措置を行う制度を整備すべきである。

(3)-③
大規模農場(*引用者注・第7例の安愚楽牧場を指す)では、雇用・契約された専属の獣医師が大量の家畜を管理しているが、外部の獣医師が定期的にチェックを行うことも必要ではないか。

【検証結果】
7例目の大規模農場では、1人の専属獣医師が、関連の多数の大規模農場も併せて担当しており、日常の家畜の健康状態のチェックや薬剤の投与は一般の従業員が行っていた。

○ 今回の発生の通報に際して、専属獣医師が本社役員との協議を行ったために少なくとも1日以上の通報の遅れがあったが、こうした通報の遅れとともに、通報すべきかどうかの判断が会社の意向に左右されることが懸念される

○ この大規模農場では、家保の立入検査(4月24日)の時点で相当数の牛に感染が拡がっており、少なくとも最初の口蹄疫発生が確認された4月20日以降に、専門的知識を持つ専属獣医師が頻繁に家畜の状態をチェックし、かつ、自らの判断で家保に通報していれば、もっと早期に対処することができたのではないかと思われる。

【今後の改善のあり方】
◆ 検証で明らかになった7例目の農場等における獣医師の診療の状況は家畜伝染病予防法のみではなく、獣医師法に照らしても問題がある疑いがある。国及び県としては、事実関係をさらに調査するとともに、各種法律の規定及び趣旨に反する部分があれば、早急に改善するよう強く指導する責務がある。

【獣医師法第17条】
獣医師でなければ、飼育動物の診療を業務としてはならない。(注射、投薬を獣医師の資格を持たない従業員が行っていた事実に関する問題点)

【獣医師法第18条】
獣医師は、自ら診察しないで診断書を交付し、若しくは劇毒薬、生物学的製剤その他農林水産省令で定める医薬品の投与若しくは処方をし・・・てはならない。(従業員からの電話による相談のみで投薬等の指示をしていた事実に関する問題点)

◆ 大規模農場で感染が起こった場合、発見が遅れれば大量のウイルスを拡散する可能性が高いことや、殺処分や埋却地の確保等で相当な時間を要するなど、感染を拡大させるリスクが大きい。このため、家畜防疫員が定期的に飼養衛生管理の状況をチェックできるシステムを作る必要がある。

1農場当たりの飼養頭数に上限を設けることや、飼養頭数に応じた数の管理獣医師の配置を義務付けることを検討すべきである

◆ 例えば、飼養衛生管理基準が遵守されているかをチェックする報告書を作成させ、定期的に家保に提出することを義務付けることも検討すべきである。

■(3)-④
口蹄疫が発生した農場の周辺農場に対する家畜の病性確認の方法は適切だったか。
【検証結果】
○ 県においては、国とも協議を行い、発生農場の半径3㌔以内の農家に対して、電話で発熱や流涎、食欲不振等の症状がないか、聞き取り調査を行った。(その後、国の指導により半径1km以内は抗体検査を実施。)

○ しかし、結果として、例えば7例目の農場に対して誰がどのような確認を行い、それに対して農場がどのような調査を行い、報告したか等について確認することができないなど、同時多発的な感染の拡大を前提とした効果的な調査が実施できたとは言い難い

【今後の改善のあり方】
◆ これまでの防疫対策は、「発見順に感染が拡がっている」という漠然とした認識に基づいて行われてきたが、そのような認識では、今回のような同時多発的な感染の拡大には対応できないことが明らかになった。

◆ したがって、口蹄疫が発生した場合、あるいはその可能性がある場合には、周辺地域の飼養状況や地理的条件等を考慮した上で、一定範囲の農場に対して家畜防疫員が立入検査を行い、農場主に対して聴き取りを行うとともに、直接家畜の状態について観察を行い、かつ、採血による抗体検査を行う体制を整備する必要がある。

■(4)初期対応の判断と対処は適切だったか
(4)-①
殺処分、埋却作業はスムーズに行われたか。
【検証結果】
○ 県では10年前の口蹄疫の発生を踏まえて防疫マニュアルを作成しており、6例目までは感染の確認から殺処分終了まで0~2日間、すべての防疫措置終了まででも3~5日間で行われ、少なくとも初期段階においてはマニュアルに基づいてスムーズに殺処分、埋却作業が行われた。

○ しかし、7例目の大規模農場での発生以降、殺処分が顕著に遅れはじめており、その時点で、これまでの経験や進め方では円滑な処分が担保できないことを認識して、県外を含めた大量動員や、公有地を含めた埋却用地の確保等について抜本的な対策を検討し、実施に移す必要があった。

円滑な殺処分の前提条件となる埋却用地の確保についても、基本的には市町村の調整に頼る形になっていたために、用地確保が遅れ殺処分に影響が出始めた時点でも、県として効果的な対策を講じることができなかった

○ 都農町の1例目の農場においては、マスコミのヘリコプターが上空を旋回していたため、家畜がその音に驚いて作業中に暴れたり、逃げ出したりする危険があり、殺処分が夕方以降にずれ込むという影響があった。

○ 関係市町からは、「どういう服装にすべきとかの詳しいマニュアルがなく、町で作った。防護服の付け方や作業後の消毒などを作業員に現場で説明したが、時間がかかった。絵が入ったマニュアルがあるとよかった。」との意見があった。

さらに、「市町村では財源がないと十分な対策ができない。消毒に人を雇うにも、消毒剤を買うにも費用がかかる。予算は組んでいないし、国や県が負担してくれるかどうかもわからない中では、高い消毒剤は買えない。きっと負担してもらえるだろうと考えて、高いものでも効果のある消毒剤を買った。国がしっかり措置すべきだ。」との意見があった

現場作業の調整を行う者が農場の詳細な状況を把握できず、畜舎に入ることができない大型の重機を手配したために作業が進まなかったというケースがあった

【今後の改善のあり方】
◆ 県は、今回の大量殺処分、埋却処分を経て、詳細な処分マニュアルを策定したが、えびの市や都城市での経験も踏まえて、市町村との連携も含む、より効果的な作業マニュアルを策定する必要がある。

現地対策本部においては、自ら調整業務に追われることなく、殺処分の状況を分析し、遅れの原因と対策を検討できるポストを設ける必要がある

また県本庁の対策本部においても、現地本部と密接に連絡をとりながら的確な状況分析を行い、先手先手で対策を講ずることができるポスト、スタッフを確保しておく必要がある

◆ 国においては、円滑な殺処分を可能とする様々な技術的支援ができるよう、知見を積み重ねておくことが重要である。

◆ 消毒や殺処分、埋却作業など、現地での対応においては地元市町村の役割が極めて大きいことから、市町村の役割分担を明確にし、それに必要となる財源補償も明確にしておくべきである。

◆ 円滑な殺処分、埋却処分を担保するためには、埋却地の確保が必須条件であるが、この点の備えが極めて不十分であった。後述するように徹底した準備が必要である。

◆ 家畜伝染病予防法では、殺処分・埋却処分は原則として家畜の所有者の責務と位置づけ、家畜防疫員がこれに代わることができる旨を定めているが、実際には、家畜防疫員を含めた県職員、市町村職員、関係団体職員等によって処分が行われており、迅速な処分のためには、当然そのような態勢が必要である。したがって、国においては、実態、あるいは必要性に即した家畜伝染病予防法の改正を検討する必要がある。

殺処分、埋却作業等を始めとして、県や市町村がそのために必要とする経費について、国がどのように負担するのかが最後まで不明のまま作業を進めざるを得なかった。必要な作業や物品の調達を適時・的確に行うためにも、国においては、要した経費の全額国庫負担を明確にする必要がある

以下次号

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■北朝鮮の平壌(ピョンヤン)付近で口蹄疫が発生し非常事態になっていることが17日に確認された。

  情報当局者は、「韓米の情報分析の結果、最近平壌市付近で口蹄疫が発生し、北朝鮮軍が兵力を投じて主要道路に臨時検問所を設置し検問を強化するなど、住民の移動を最小化している」と伝えた。当局者は、「北朝鮮には口蹄疫防除用の石灰や検疫薬品・装備が不足しており、検疫活動をまともにできずにいると承知している。まだ他の地域に口蹄疫が広がったり鳥インフルエンザが発生した状況はない」と付け加えた。

  北朝鮮は2000年代に入り軍部隊で大規模養鶏場と養豚場を運営しており、口蹄疫や鳥インフルが広まった場合には軍部隊自体の被害も避けられない。北朝鮮は2003年4月に重症急性呼吸器症候群(SARS)が広まると3カ月余りにわたりすべての国際航空路線と金剛山(クムガンサン)観光を中断するなど外部との接触を遮断した。

2005年の鳥インフル流行時は韓国政府に支援を要請し確保した防疫装備と薬品で対処した。北朝鮮は口蹄疫拡散防止と関連した外部支援要請や防疫活動に対しては消極的なものと当局は把握している。政府当局者は「北朝鮮はSARSや鳥インフルに比べ口蹄疫に対する警戒は弱い。住民たちは口蹄疫にかかった牛や豚も食べているそうだ」と伝えた。

  韓国軍も口蹄疫拡散防止と防疫に総力を注いでいる。軍は昨年11月30日以後、延べ13万人余りと装備1533台を投じた。軍関係者は「南北の軍ともに口蹄疫との戦争を行っていることになる」と話した。

(中央日報(1月18日)

■家畜の伝染病、口蹄(こうてい)疫が急速に広がり、「今年の旧正月(2月3日)は帰省せず、親不孝したとしても仕方がない」という動きが全国で出始めている。旧正月の帰省を自粛することで、口蹄疫拡大を防ごうというものだ。

 口蹄疫の発生がない全羅南道潭陽郡は12日、全羅南道に公文書を送り、「口蹄疫や鳥インフルエンザ・ウイルスの拡散を防止するため、旧正月の帰省の自粛を促すなど、政府レベルでの対策を立ててほしい」と要望した。全羅南道は17日、「潭陽郡の意向を中央災難対策本部に伝えた」と述べた。

 同じく口蹄疫の発生がない慶尚南道陜川郡では17日、三嘉面事務所に里長団や畜産農家など約80人が集まり、口蹄疫予防対策会議を開き、旧正月連休に親族などの帰省を自粛させることを決めた(面、里とも行政区域の一つ)。

全羅北道も「旧正月連休期間の移動を自粛するキャンペーンを国の対策として行うべき」との建議書を行政安全部に提出した。慶尚北道金泉市は市内の全5万4000世帯余りに対し、「旧正月帰省自粛」を呼びかける文書を送った。

また、同市も「旧正月の帰省を自粛するよう求める談話文を発表してほしい」という内容の建議書を慶尚北道知事や行政安全部長官らに送付した。忠清南道洪城郡でウシ110頭を飼育しているシム・ソングさん(55)は12日、ソウル市内に暮らす子供たちに電話をかけ、「今度の旧正月には帰ってくるな」と言った。「子供たちに会いたい気持ちはやまやまだが、仕方がない」と残念そうに語った。

 口蹄疫の影響はこれだけにとどまらず、亡くなった家族の遺体を埋葬できないという事態も続出している。

 江原道横城郡で暮らすホ・ヨンチョルさん(56)は、11日に母親を亡くし、父親が眠る墓の隣に埋葬しようとしたが、それができずに荼毘(だび)に付した。韓国では土葬の習慣が残る地域も多いが、ホさんは「父の墓に行く道は防疫区間になっており、通ることはできないと言われた。遺体を埋葬しに行く途中で通行止めにあったらどうしようもできない」と話した。

現在、納骨堂に収められている母親の遺骨は、口蹄疫の終息を待って、父親の墓に収める予定だという。会社員のオさん(50)も最近母親を亡くしたが、京畿道竜仁市にある先祖代々が眠る山に埋葬できず、17日に近くの楊州市に埋葬した。墓地がある山の方では口蹄疫が発生し、立ち入りが禁止されているためだ。

 また、口蹄疫が発生した地域の子供たちは、まるで窓もない監獄に閉じ込められているような状態だ。

 江原道鉄原郡にある清陽小学校5年生の児童(11)は、冬休みに入ったが家族とテーマパークに行くことはもちろん、友達とスキーに行くこともできず、じっと家に閉じこもっている。口蹄疫の脅威が深刻なためだ。

3歳の弟は何日も鼻水が続くなど、風邪の症状がひどいが、病院にも行けない。この児童は「歩いて5分のところに住んでいる友達に会うことも、おやつを買いに近所の店に行くこともできない。冬休みなのに、一日中家にいると思うとつらいし、コンピューター・ゲームもつまらない」と言った。

 大人たちも息が詰まるような思いは同じだ。江陵市に住む男性(75)は6日、健康診断を受けるため、前日の夜から絶食し、便を取って病院に行こうとしたが、口蹄疫で健康診断が中止になり、家にとどまることになった。京畿道安城市は13日から口蹄疫発生地域である一竹面・古三面などの老人福祉センター90カ所を閉鎖し、施設の利用を無期限で停止した。江陵市も1日、市内にある高齢者総合福祉センターを一時閉鎖した。

 こうした中、各地で開催される冬祭りや、毎年恒例の定期市も、ほとんどが中止された。昨年約140万人が訪れた江原道華川郡の「氷の国・華川ヤマメ祭り」は口蹄疫で中止となった。

また、毎年約45万人が集まる江原道・太白山の「雪花祭り」も、今年は口蹄疫のため開催中止が決定した。京畿道加平郡でも、「第3回スッポン島シンシン冬祭り」が中止となった。昨年約79万人が訪れたこの祭りは、今年京春線の複線・電化で大いに期待されたが、口蹄疫の発生により中止が決まった。

 旧正月を前に、大勢の買い物客で賑わうと期待された定期市も、口蹄疫の発生により相次いで閉鎖されている。忠清北道内の6市郡、24カ所で行われるはずだった会場には、「口蹄疫の発生により市場開催は中止」という立て看板があった。

京畿道安城市も口蹄疫の拡大を防ぐため、同市内の定期市を12日から暫定的に閉鎖し、華城市も13日から26日まで同市内の定期市4カ所を閉鎖することを決めた。

(朝鮮日報 1月18日)

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■写真 前日に続きわが家のワンコロ。おいおいモナカが、モカ茶丸をパックリくわえたぞ( ^ω^ )

2011年1月18日 (火)

2010年に宮崎県で発生した口蹄疫の対策に関する調査報告書 (二度と同じ事態を引き起こさないための提言) 抜粋 第3回

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本日の「日本農業新聞」(1月18日)韓国の口蹄疫がとうとう200万頭台に突入しました。

ワクチン接種も獣医師の不足により思うに任せないようです。被害額も1400億円に及ぶとと推定されています。たぶんこのような額ではおさまらないと思われます。

殺処分数は1月17日現在農家4148戸の198万9908頭で既に86%が処分されました。

ワクチン接種は、接種から3週間立ちましたがまだ効果が出ておらず、13日にすべての地域(済州島を除く)牛、豚に拡大し、358万頭を対象を拡大しています。

しかし、接種する獣医師が不足し、寒気を理由にして接種を拒否する農家もでており、対象予定の58%の209万頭に止まっています。

一方トリインフルエンザは17日現在、26件、357万羽のトリ、アヒルが殺処分対象となりました。

まさに絶望的な状況です。

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宮崎県検証委員会による「2010年に宮崎県で発生した口蹄疫の対策に関する調査報告書 二度と同じ事態を引き起こさないための提言」の転載を続けます。

非常に詳細、かつ真摯な態度で貫かれた報告書です。今まで多くの伝染病の事後報告書に目を通しましたが、報告書の白眉と呼びたいほどの内容です。

この報告書にも現れている宮崎県人の誠実さに心から敬意を表します。この誠実さがあったればこそ、宮崎県東部で封じ込めることができたのではないでしょうか。このテキストは全国市町村に配布されるべきです。そして、韓国語訳したらどうでしょうか。

以下引用 

(2)-④
■空港、港湾等での消毒など、国外からのウイルス侵入を防ぐ水際対策は適切になされていたか。
【検証結果】
宮崎空港には国際定期航空路線が2路線(韓国、台湾)就航しているが、4月20日の口蹄疫発生確認前も、国際線のボーディングブリッジ及び通路の2か所に、また、国内線のすべてのボーディングブリッジに消毒マットが設置されていた

さらに、口蹄疫発生後は、空港ビルのすべての出入口にも消毒マットが設置された。
○ 県内の港湾では、細島港及び油津港で外国船の定期航路(貨物)と不定期船の発着があるが、細島港では、口蹄疫発生前から外国船員の靴底消毒が実施されており、口蹄疫発生後には、細島、油津両港で、すべての外国船舶について踏込み消毒槽による靴底消毒が実施され、現在も継続されている。

また、宮崎港にはカーフェリー大阪航路が就航しており、口蹄疫発生後は消毒マットにより、旅客の靴底消毒が実施された。

○ 一方、県内の畜産関係者からは、水際対策についてこれまでの取組が不十分であり、例えば、豪州における取組と同様の措置が必要ではないかとの意見が多く出されている。

○ さらに、輸入飼料等についての防疫措置が完全になされているのかについて、県内の関係者からは不安の声が多く寄せられている。

【今後の改善のあり方】
◆ 国の口蹄疫対策検証委員会報告書(以下「国の検証報告」という。)では、防疫対策として最も重要なものとして、「発生の予防」「早期の発見・通報」「初動対応」を挙げているが、本委員会としては、これに加えて「徹底した水際対策」が重要であることを指摘する。

◆ 県内空港については、県と空港ビル管理者との協議等を行い、消毒マットの長さを長くするなどの改善が行われており、引き続き消毒を行っていくこととしているが、利用者に対する協力の告知等、確実に消毒が実施できるよう改善に努める必要がある。

◆ 県内港湾については、口蹄疫発生後は、細島港、油津港ともに、県港湾事務所が消毒マット、消毒槽、薬剤を港運業者に提供し、外国船が着くたびに船員の靴底消毒を実施しており、今後も継続していくこととしている。

また、宮崎港にも年に数回、外国船が入港することがあるが、同様の消毒を行うこととしている。

◆ 今回の本県での口蹄疫発生による被害は極めて甚大なものとなり、これに伴う国・地方自治体の財政的な負担も膨大なものとなったが、グローバル化が進み、人、物の交流が盛んになる中で、今後もこのような甚大な影響を及ぼすウイルスの侵入リスクがますます大きくなることを想定しなければならない。

我が国は島国であり、空港、港湾における水際対策を徹底すれば、他国と比較すると口蹄疫の感染リスクは相当程度軽減できる。
国においては、国の検証報告でも指摘しているとおり、畜産関係者や過去一定期間内に畜産農場に立ち入った入国者に対する聞き取り調査や消毒を行うなど、防疫先進国並に水際対策を強化することを早急に検討し、実施すべきである

◆ また、国においては、畜産農家の輸入飼料等に関する不安・不信に応えるために、輸入飼料の防疫対策について詳細に説明するとともに、個々の飼料の動きを把握し、ウイルスの侵入原因になっていないことを明確に説明する必要がある。

◆ また、水際対策ではないが、県においては、公共施設、公共交通機関等における防疫対策について、平常時、海外での発生時、我が国での発生時、九州での発生時、本県での発生時などで場合分けして、予め対策を定め、関係機関に周知・協力を求めることが必要である。

(2)-⑤
■県、市町村、関係団体の防疫演習は日頃から実施されていたか。
【検証結果】
○ 高病原性鳥インフルエンザを想定した演習は毎年実施されていたものの、口蹄疫を想定した研修や訓練・演習は行われておらず、農家を含め、万一発生した場合の準備ができていなかった

○ 関係市町から「発生時に県から消毒徹底の通知が来たとき、担当は危機感を持ったが、石灰が効くかどうかもわからず、何を農家に配ればよいかもわからなかった。」との意見があった。

【今後の改善のあり方】
市町村や農家、関係団体、民間獣医師を巻き込んだ防疫演習を定期的に実施し、県、市町村が作成している防疫マニュアルの実効性に関する検証を行うとともに、地域の危機意識の醸成を図る必要がある。また、その際には、警察や自衛隊の協力を求めることも含めて検討すべきである

◆ 防疫演習に当たっては、発生から消毒ポイントの設置、道路封鎖、殺処分、埋却等の一連の流れだけでなく、本県における今回の発生で顕在化した問題点、例えば、発生農場に関する情報や防疫措置の徹底についての農家への連絡、周辺農家への立入調査による異常畜の確認、各農家での防疫レベルのアップ、隣県も含めた情報提供、精度の高い疫学調査の実施など、全体的な事項にわたって演習、検証を行う必要がある。

国においては、今後整理される防疫作業における国と地方の役割分担を踏まえ、県境を跨いで発生した場合等も想定して、より大規模かつ専門的な演習を行うことを検討する必要がある
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(2)-⑥
■県の防疫対策マニュアル、市町村の防疫対策マニュアルの作成状況はどうであったか。
【検証結果】
○ 県では平成12年の口蹄疫の発生を踏まえて「宮崎県口蹄疫防疫対策マニュアル」を作成しており、今回の発生時においても初期段階では10年前と比較して円滑に防疫作業を実施することができた。

○ しかし、4月20日以前に既に10農場以上にウイルスが侵入していたこと、さらに、爆発的な勢いでまん延した等の今回の事態への対処としては、マニュアルが十分に機能したとは言えない。

市町村では、防疫対策マニュアルを作成していたところは少なく、現時点でも全市町村で作成されているという状況にはなっていない

【今後の改善のあり方】
◆ 県においては、今回の検証結果を踏まえて、より実効性の高い防疫マニュアルを作成するとともに、市町村、関係団体におけるマニュアルの作成についても積極的に支援を行い、関係団体・機関が真に連携・協力して防疫対策が実施できる態勢を構築する必要がある。

また、市町村、関係団体の対応に関する基本的な共通事項等については、県が作成する防疫マニュアルに定めておくことも検討すべきである。

◆ 上記のとおり経験を踏まえた実効性のあるマニュアルを作成すること、さらに、マニュアルに基づいて演習を行うことは極めて重要であるが、今回の口蹄疫の発生、感染拡大の経験から学ぶべき最も重要な点は、あらゆる可能性を考慮した完璧なマニュアルを目指す一方で、マニュアルの想定範囲をよく理解し、その想定範囲を超えて起きている、あるいは起こる可能性がある事象に対して、いかに迅速かつ柔軟に対応できるかという点で
ある。したがって、マニュアルの作成、運用に当たってもこの点を念頭に置くべきことを強く指摘する

(2)-⑦
■消毒剤等の防疫資材の備蓄は十分であったか。
【検証結果】
○ 防疫資材については、4月20日以前は高病原性鳥インフルエンザを想定して100名の動員で3日間の作業を行うのに必要な量の備蓄を行っていた。

○ 口蹄疫と高病原性鳥インフルエンザで殺処分方法が一部異なる以外は、ほぼ同じ資材を使用することから、当初の口蹄疫防疫作業に必要な資材は概ね備蓄分で足りていたと思われる。

○ しかし、発生農場への配送に手間取り、防疫措置の作業開始が遅れた事例があった。
○ また、豚の薬殺における鎮静剤や注射針等については、県では電殺を想定していたために備蓄されておらず、当初は不足した

【今後の改善のあり方】
今回の防疫作業での資材調達に従事した関係者や殺処分等の作業にあたった獣医師等の意見を踏まえ、発生状況に応じて必要となる防疫資材の種類、量をリスト化し、適切に備蓄しておくことが必要である

◆ この場合、まん延が拡大し大量の資材が必要となる場合に備えて、国や他県からの資材提供の協力体制を作っておくことが必要である。

◆ また、農場の規模や畜種、地理的条件などに応じて迅速かつ適切に防疫資材を配送できるよう、調達先や配送業者等との連絡体制、配送手順等の具体的な方法を詳細な防疫作業マニュアルの中に示しておくことが必要である。

■(3)早期発見と早期通報はできたか
(3)-①
都農町の1例目について開業獣医師から病性診断依頼があった時点で口蹄疫を疑い、検査を行うべきではなかったか。

6例目についても、3月31日の時点で検体を国に送るべきではなかったか。

【検証結果】
国の検証報告のとおり、少なくとも発見の1か月以上前から口蹄疫ウィルスが県内農場に侵入していたことは明らかである。

そして、その発見の遅れにより、防疫指針では対応できないレベルにまで感染が拡大していったことも事実と言わざるを得ない

○ この点に関し国の検証報告は、初発とされている6例目のケースについて「家畜保健衛生所は数度にわたって畜産農家を訪問し、検査を行ったにもかかわらず、口蹄疫を疑わず見逃していた。」としている。

他方、最初に家保職員が農場に立入検査を行った3月31日時点では、家畜の症状は発熱、乳量低下、下痢等であり、担当の民間獣医師はこの時点で「自分も家保職員も口蹄疫を疑っていなかった。」としている。

さらに、再び家保職員が立入検査を行った4月14日時点でも、乳質低下、脱毛であり、担当獣医師も「子牛の流涎、発熱は確認していない。」とし、「流涎は3月26日から4月25日まで終始確認されていない。」としている。

○ また、国の検証報告は、1例目のケースについて、「4月9日には獣医師が口蹄疫の可能性が否定できないと判断し、家保に通報した。しかし、家保は、口蹄疫の検査は行わず、経過観察が適当と判断した。」とし、さらに「現場はできれば口蹄疫であってほしくないという心情が強く働いたと考えられる。

こうした心理的な圧力が国への連絡を遅らせ、結果的に感染を広げたことは間違いない。宮崎県はもっと早期に検体を国に送るべきであった。」としている

○ 他方、このとき立入検査を行った家保職員は、「流涎や口腔内に軽度の潰瘍があるということで、口蹄疫も含めて考慮した。」、「症状のある牛が1頭で、感染力が強いと言われている口蹄疫とは考えにくい(横への広がりがなく水疱がない)ため経過観察とした。」、「上唇の痂皮と一部痂皮が剥離したもので、この症状だけでは口蹄疫とは疑えなかった。」とし、「今回の症例の場合、その症状、発生状況から口蹄疫とは疑えず、牛に呼吸器
系症状を起こすウイルス性の疾病の検査を家保で実施したが、すべて陰性であったた、不明疾病の原因究明として動物衛生研究所に検査を依頼したところ、口蹄疫と診断された。口蹄疫と疑えれば、ただちに動物衛生研究所に送付している。」としている。

○ なお、当該家保には、民間獣医師からの依頼による病性鑑定が年間200~300件ある。

○ さらに、当該農場の担当民間獣医師は、4月9日の家保への電話では、「3日前に熱が40度以上あった牛の口の中に小さい潰瘍がある。口蹄疫ではないと思うが、この牛をどう扱えばよいか、と相談した。」とし、4月19日時点でも「口蹄疫ではないと信じ込んでいた。」としている。

○ 上記のとおり、6例目及び1例目の病性診断時の症状は、当時口蹄疫の典型的な症状とされていたものではなく、感染の拡がりも確認されなかったために「口蹄疫ではない」と判断し、「経過観察」としたものであり、家保職員や民間獣医師の意図的な見落とし、報告遅れがあったものではないと考えるべきである

○ しかし、県本庁の判断としては、韓国での発生を受けて市町村への注意喚起を行っていた状況を鑑みると、口蹄疫の可能性が完全に否定できるものでなければ、速やかに検査を行う(国に検体を送る)という判断も必要であったと考える

現場の家畜防疫員は専門性に基づく判断を行うとしても、県本庁としては、近隣国での発生状況等を踏まえた危機意識に基づく、より高度なレベルの判断が求められるところである。

○ なお、民間獣医師からは、「日常的に家畜を診ているかかりつけの獣医師が家保に通報するのはそれ相当の判断、理由があり、農家の同意も得て通報しているのだから、家保はそのことを重視して、必ず採材し、検体を国に送ってほしい。」との意見が多くあった

【今後の改善のあり方】
◆ 上記のとおり、意図的な見落としがあったわけではないと考えられるが、「もっと早く検体を採取して確認を行っていればまん延を防止できたのではないか。」という指摘は真摯に受け止める必要がある。

まず、農家段階を含めて見落としをなくす、早期発見を確保するという観点から重要なことは、口蹄疫はその多様性が特徴であり、国も含めて「典
型的な口蹄疫の症状」という考え方そのものを改める必要があるという点である。

家保が農家や担当の獣医師から依頼を受けたときは、明確に口蹄疫を否定できる場合は別として、原則として国に検体を送付するシステムにすべきである

さらにその際には、検体のレベルに応じて、例えば「感染確認のための送付」と「念のため(非感染の確認)の送付」とで、市場の閉鎖等の取扱いを分ける等の措置をとる必要がある。

また、国・県ともに、このような検体の送付について関係者に十分説明し、過剰な反応を引き起こさないようにする努力が必要となる。

◆ 1例目の事例は、症状を呈している牛が1頭のみで横への拡がりがないことから経過観察としたものであるが、今回のような同時多発的な感染があり得ることを前提とするならば、口蹄疫の特徴である横への拡がりを一つの農場のみで捉えるのではなく、一定範囲の農場への立入調査と血液検査を行い、その状況も踏まえて判断を行う等の対応が必要である。

◆ 動物衛生研究所までの送付には相当の時間と労力が必要であり、陽性だった場合は送付している間に処分が遅れてしまうこと等を踏まえると、簡易検査キットの早期開発、あるいは各県の家保におけるPCR検査等の実施についても検討する必要がある

◆ このうち簡易検査キットについては、韓国における11月の発生時に機能を果たさなかった(簡易キットで陰性と診断したものが陽性であった)ことを踏まえて、より信頼性のあるキットの開発を急ぐ必要がある

◆ 家保における検査に関しては、「県段階で検査を行うと県の施設が感染源になり問題がある」、「OIEとの関係等で県レベルでの検査では信頼性に問題がある」、「現在動物衛生研究所で行っているレベルでの感染防止対策の整った施設・体制を地方で整えるのは困難」等の意見がある。

その一方で、実態上、口蹄疫に感染している可能性のある検体を用いて口蹄疫以外の様々な検査を行っていること、迅速な防疫対策の実施のためには今まで以上の迅速な診断が必要であることも事実であり、国においては、これらのことを踏まえた上で、より早く正確な診断が可能となる態勢の構築を早急に検討する必要がある。

◆ 今回の口蹄疫の感染拡大と被害の大きさから、家保の家畜防疫員は、今後の病性診断において精神的に大きな重圧を受けることとなる。国や県の役割は家畜防疫員の責任を問うことではなく、適切な診断ができるよう適時・的確な情報を提供すること、研修等を通じて診断技能を向上させること、さらには、家畜防疫員の専門的な診断に対して、国や県としてのより高度なレベルでの判断を行うことである。

このため、今後は、口蹄疫の様々な症例を分類整理し、その周知に努め、農家や獣医師が初期の段階から口蹄疫を疑い、速やかに検査できる体制を構築する必要がある。

また、近隣国での発生状況、その特徴的な症状(特徴がないことも含む)、感染の拡がり方などの具体的かつ詳細な情報を、都道府県や民間獣医師等に、適時・的確に提供できるシステムを整備する必要がある

[以下次回]

■写真 わが家の小犬たちです。左からモナカ、モカ茶丸、ミルクです。まさに一日、食う、寝る、遊ぶ以外しません。兄弟ですが個性がかなり違います。     

2011年1月17日 (月)

韓国口蹄疫 韓国、「ワクチン接種・清浄国」路線に転換か!

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韓国政府が口蹄疫防疫方針の抜本的転換をはかりそうな気配です。

韓国政府は今回の口蹄疫において約1500億円規模という大被害を出し、殺処分対象167万222頭(15日現在)となり、ワクチン費用だけで10万頭あたりで4200万円、トータルで56億円にのぼるとみられています。(「日本農業新聞」1月16日」)

これを受けて、地元紙によれば韓国政府は、「韓国は、中国や東南アジアなど、慢性的に口蹄疫が発生している地域と隣接しているため、発生した後の防疫対策だけでは限界がある」(政府幹部)と認識したようです。

まぁ妥当な判断でしょう。韓国は自由貿易立国として、中国市場や東南アジア市場に貪欲なまでの進出をしてきました。また仁川に巨大なハブ空港を作るなど、アジア経済の中心となることを国家戦略としてきました。

これはGDPの約5割を輸出に寄りかかる極端な輸出依存的体質からくるものです。このような体質の国が、水際作戦とリング・カリング政策だけで口蹄疫を防御できるはずもありません。

また地勢的に、海を間にするわが国と異なり、巨大な防疫ブラック・ホールのような発生国・中国、ロシア、それに隣接する情報開示という概念そのものがない北朝鮮に接しています。

これら3カ国の共通の特徴は、防疫情報の開示をせずに、国家ぐるみで隠匿するという前近代的体質です。中国はSARS発生の際に、患者を軍病院に隔離して国家ぐるみで隠蔽したあげく大発生につなげてしまいました。

トリインフルエンザにおいても、青海省の発生現場にWHO検査官を近づけさせない悪質な検査妨害事件を引き起こしています。

つまり、韓国は日常的に口蹄疫の脅威に国境を接しているわけです。そのことが残酷なまでに実証されてしまったのが、今回の事態でした。

ところで、朝日新聞の「99%宮崎の遺伝子配列と同一」という誤解を招きかねない記事により、宮崎との関連が韓国国内で言われているそうですが、真逆です。下の動物衛生研究所の作成した発生地図をご覧いただければ一目でお分かりいただけるでしょう。

Photo

中国国内で頻発する口蹄疫(隠蔽例が多数あると言われていますが)が韓国経由で日本へと伝播しているのであり、日本から韓国へ伝染する可能性はかぎりなくゼロです。

遺伝子配列が宮崎と近似しているのは、口蹄疫ウイルスの中国⇒韓国⇒日本という伝播経路から当然のことであり、あたかも宮崎県から今回の韓国へ伝染させたが如きニュアンスの朝日新聞の記事は、宮崎県民を愚弄するものであり、早急に訂正されるべきです。

それはさておき、今回の口蹄疫事件で、防疫網をあざ笑うかのように軽々と飛び火し、思いがけない別な箇所で発生する現象が起きました。このようなひんぱんな飛び火現象は、単に飼料輸送関係車両による伝播だけでは説明がつきません。

韓国国内には既に口蹄疫ウイルスが常在してしまっているのです。たぶん遠からず、野生偶蹄類にも感染例が見つかるはずです。

このような状況の中で、韓国政府が関税外障壁として使ってきたOIEの「ワクチン未接種・清浄国」ステータスを捨てる決意をしたことは自然の流れであったのかもしれません。

これにより、オセアニアを除くアジア地域において、日本のみが「ワクチン未接種・清浄国」でありつづけることになりました。

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牛や豚などの伝染病「口蹄(こうてい)疫」の感染が、全羅南・北道や慶尚南道、済州道を除く全国に拡大したことを受け、政府は13日、済州道を含む全国の牛や豚に対し、予防ワクチンを接種することを決めた。

また、口蹄疫の発生を根本的に防ぐため、「ワクチンを接種する清浄国」を目指した防疫政策への転換を図る方針を検討していることが分かった。これは、豚コレラをはじめとするほかの家畜伝染病を予防するため、ワクチンを接種するのと同じように、口蹄疫のワクチンを継続的に接種するものだ。

 韓国はこれまで、「ワクチンを接種しない清浄国」だった。このため、口蹄疫が発生すれば、まず殺処分を行うことで感染拡大を食い止めてきた。しかし、その結果、今回の口蹄疫の発生に伴って殺処分した牛や豚は13日現在で150万623頭に達し、補償金など政府の支出は2兆ウォン(約1488億円)台に上るとみられるなど、天文学的な被害を受けることになった。

 これに対し、政府のある幹部は「韓国は、中国や東南アジアなど、慢性的に口蹄疫が発生している地域と隣接しているため、発生した後の防疫対策だけでは限界がある」と語った。

政府が「ワクチンを接種する清浄国」を目指して政策を転換すれば、ワクチンを接種した後に口蹄疫が発生した場合でも、近隣地域の牛や豚をすべて殺処分する必要はなく、口蹄疫にかかった牛や豚だけを殺処分するだけで済む。

国際獣疫事務局(OIE)は、ワクチンの接種によって口蹄疫が発生していない国を、ワクチンの接種を行っていない国よりもワンランク安全な清浄国として認定している。なお、口蹄疫の予防ワクチンを接種した牛や豚の肉、牛乳などを摂取しても、人体に影響を与えることはない。

(朝鮮日報1月14日)
■写真 雪の湖岸の揚水風車。わざとソフトフォーカスで撮ってみました。

2011年1月16日 (日)

2010年に宮崎県で発生した口蹄疫の対策に関する調査報告書 (二度と同じ事態を引き起こさないための提言) 抜粋 第2回

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昨日からの宮崎県検証委員会の最終報告書の続きです。

読んで打たれるのは、その態度が誠実なことです。自らの防疫体制の欠陥を真摯に分析し、その改善を具体的にあげています。自らの失敗を認めることほど困難なことは世の中にないのですから。

このような検証報告は、えてして通り一遍の「正しい防疫で対処いたしました。チャンチャン」というような官僚的作文が多く、一般人が読んでも疫学用語の迷宮にさまよいこんでしまう場合が多い中で、出色のものだと思います。

国が作成している検証報告は、農水省の居直と自己正当化で満ち満ちています。すべての原因は宮崎県と宮崎県畜産農家であるがごとき表現がされています。

それに対してこの宮崎県最終報告書は、まさにタイトルにうたわれているように「二度と同じ事態を引き起こさない」という強い意思によって貫かれています。

このような報告書が出来上がったのも、まさに全県民が総力を上げて口蹄疫という悪霊を封じ込めたという実績に根があります。畜産農家に限らず、一般県民、いや宮崎を支援した国民誰しもが読める内容となっています。

その意味で、この最終報告書は声援を送り続けた全国民に向けた宮崎県の反省と感謝の手紙のようなものかもしれません。宮崎県民のみならず、すべての県の畜産農家、飼料・資材関係者、農業団体、行政組織でテキストにされるべきだと私は思います。

改めてこれに関わった宮崎県関係者と、調査に協力された膨大な数の関係者に心からの敬意を表します。ほんとうにご苦労さまでした。

省略してしまうのがもったいないので、できるかぎり掲載いたします。なお、赤字は引用者によります。実の話、赤字を付け始めると全文になりそうで困りました。(゚ー゚;

全文テキストはこらからご覧いただけます。http://www.pref.miyazaki.lg.jp/parts/000151738.pdf

              .。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。.

(1)-③
■感染拡大のルートについて
【検証結果】
○ 感染の拡大を何が媒介したかに関しては、国の疫学調査でも特定されていないが、発生農場間の人の動き、家畜・飼料配送車両、風、鳥やハエ等の媒介によるものなどが考えられる。

○ 感染拡大期には、大半の農場が徹底的に消毒を行い、外出を自粛し、人や車両の出入りも遮断していたにもかかわらず、感染が止まらなかったことから、感染の初期段階とまん延段階では、排出されるウイルス密度(空気中の単位体積当たりのウイルス量)が大きく異なり、感染を媒介したものも異なると考えられ、特に、風(飛沫)によって大量のウイルスが運ばれたことによるものも多かったのではないかと推測される

したがって、多数の農場が感染し、大量のウイルスが拡散されて空気中のウイルス密度が高かったと思われるまん延期では、農家が飼養衛生管理基準を遵守していたとしても、感染を防ぐことは難しかったのではないかと考えられる。

ただし、消毒や人・物の出入りの制限などを徹底し、最後まで感染しなかった農場もあり、各農家が飼養衛生管理基準の遵守を徹底し、防疫対策に最善を尽くすことが重要であることは言うまでもない。

【今後の改善のあり方】
今回の発生では、まん延が一定のレベルを超えると消毒や道路封鎖等の通常の方法では、拡大を止めることが出来なくなることが明らかになったと考えるべきである

◆ したがって、第一には発生の初期段階で発生地を中心とする適切な範囲をただちに完全封鎖し、速やかに防疫措置を講じる必要があることは言うまでもないが、発生の範囲、スピードが一定のレベルを超える、あるいは超えることが予想される場合は、時期を失することなく、一定エリア内の全頭殺処分等の抜本的な措置を講じることが必要である。

本県の事例においては、まん延段階におけるワクチンの接種及びその殺処分がそれ以上の感染拡大を防止したと見ることができるが、一方で、韓国における今回のまん延状況は、早期の予防的殺処分が必ずしもまん延防止の特効薬ではないことを端的に示している。

◆ 以上のことから、最も重要な点は、初期の発生地域においてウイルス量がまん延レベルまで増加する前に、いかに感染の拡大を抑止するかであり、初期の感染が確認された段階で、今回のような面的な拡がりの可能性を想定して、発生地域を中心とした家畜防疫員による一定エリア内の農場での抗体検査も含めた立入調査を実施し、異常畜の早期発見に努めるとともに、患畜・疑似患畜の早期処分を行うという初動体制を確立する必要がある。

◆ 国、県においては、人、車両、餌、あるいは飛沫等によって具体的にどのように感染が拡がっていくのか、さらに、これらに対する効果的な予防策は何なのか等を明らかにする必要がある。そして、それらに基づく資料や情報を畜産農家等に提供することによって、各農場や運搬業者等の自助努力で効果的・効率的にまん延を防止できるようにするとともに、定期的に研修会等を開催し、日頃から地域全体の防疫力を強化しておくことが必
要である。

■(2)発生前の防疫意識と対策準備は十分だったか
(2)-①
韓国等の近隣国で口蹄疫が発生していた中で、国家防疫を担う国、法定受託事務を担う県の危機意識は十分であったか。

○各農場や市町村、関係団体への注意喚起は十分になされていたか。

【検証結果】
○ 本委員会では、初期段階の発生農家に対する調査を行い、本県における口蹄疫発生前の段階で、韓国等で口蹄疫が発生していることへの認識及びそれに対する危機意識、さらに、飼養衛生管理基準の遵守等に対する認識等について聞き取り調査を行った。

その結果、ほとんどの農家で近隣国での口蹄疫発生に対する認識や危機意識がなかったということが明らかになった

○ また県は、韓国での口蹄疫発生を受けて、平成22年1月22日に家畜防疫会議を開催しているが、市町村及びJA等に調査を行った結果、当会議において、各農家への指導徹底について一定の要請があったことは事実であるが、参加者・機関の口蹄疫に関する危機意識を高めるまでには至っておらず、また、各農家への指導の徹底を強力に呼びかけるものではなかった。

さらに、会議後に各農家に伝達されたかについての調査等も行われていなかった。
○ また、ほとんどの農家で「飼養衛生管理基準」の存在そのものについての認識がなかったことも明らかになったところであり、発生前の本県における行政・関係機関・農家の口蹄疫に対する危機意識、準備は不十分だったと言わざるを得ない。

○ 国の疫学調査でも述べられているとおり、4月20日の時点では既に10以上の農場が感染していたと推定され、そのことが今回の感染の大規模な拡大につながったと考えるべきである。

その意味で、1月の説明会において十分に危機意識を高め、各農場における防疫対策の徹底、家畜の観察の徹底等が行われていれば、発生を防止することは困難だったとしても、早期発見により感染拡大を抑止できたのではないかとも考えられ、大きな反省点と言わざるを得ない。

○ また、国においても、単に通知文を発出したのみであり、韓国等においてどのような症状が出ているのか、各農家はどのような点に注意すればよいのか等について十分な情報提供を行っていたとは言えない

さらに、国が責任を持って対応すべき水際防疫も特に強化されたわけではなく、国も口蹄疫の我が国への侵入を現実に起こりうる危機として捉えていなかったのではないかと考えざるを得ない。

○ 以上のように、これまでも近隣国で発生がありながら、過去10年間我が国での発生がなく、万一発生しても10年前のように早期に抑えることができるだろうという認識の甘さや油断が、行政や畜産農家、関係団体などすべての関係者にあったと言わざるを得ない。

【今後の改善のあり方】
◆ 平成22年11月29日に島根県で鳥インフルエンザが発生し、また、韓国において口蹄疫の発生が確認されたことを受け、県は、ただちに市町村や関係団体を集めた緊急の会議を開催した。その中で県は、現在の状況や感染防止のために行うべき予防措置を、一人ひとりの農家にしっかり伝えるよう要請した。

このように、今後は、農場防疫、地域防疫が適切・迅速に行われるようにするために、正確な情報の伝達と要請・注意事項等について個別の農家に的確に伝わるよう努めるとともに、その情報に基づいて適切な対応ができているかを確認できるシステムも構築する必要がある

◆ この点に関して、隣県の対応状況を調査したところ、平成22年1月の韓国での発生を受け、鹿児島県においては、市町村、関係機関に対する説明会を開催するとともに、口蹄疫の症状や注意事項を記したチラシを全農家に配布し、さらに同内容のポスターを関係窓口等に掲示するなどの取組を実施している。

また、熊本県においては、本県での発生を踏まえて、全農家に対して農場への立入自粛を呼びかける耐水性のポスターを配布している。本県においても、このような隣県の取組を参考として、全農家にどのような注意事項をどのように届けるのか、効果的な防疫態勢を構築するという観点からの真摯な取組が求められる。

◆ 口蹄疫の多様性に鑑みると、情報伝達の際には、単に「典型的な症状に注意しなさい」ということではなく、他国で発生している口蹄疫の症状や感染原因等に関する詳細な情報を、一般の農家にわかりやすく、かつ、確実に入手できる方法で適時・的確に提供するとともに、通常の状態と異なると判断される症状があれば口蹄疫も疑うべきであること、その際には速やかに獣医師や市町村、家保等に通報すべきことを徹底して周知する必要
がある。

◆ 日常的な注意喚起についても、JAや農業共済組合、獣医師会等との連携を強化する必要がある。

◆ 国においては、海外での家畜伝染病の発生を受けて、具体的な症状等を写真で都道府県に通知し、警戒レベルを高めると共に、各農場において防疫措置を徹底するよう指導を行う必要がある。

(2)-②
○農家は飼養衛生管理基準を遵守し、日常的な消毒等の防疫対策を徹底していたか。

【検証結果】
本委員会が初期発生農家を中心に聞き取り調査を行った結果、養豚農家の一部を除いて、ほとんどの農家が飼養衛生管理基準の存在そのものを認識しておらず、当然の結果として、基準が求める防疫措置も講じられていなかった

○ 県は、飼養衛生管理基準について、養豚農家に対しては「オーエスキー病」の清浄化に向けた取組の中で周知を図っていたが、牛関連の農場に対しては特に周知のための対策を講じていなかった

○ また、たとえ基準そのものの周知を行わなかったとしても、家畜防疫員あるいは農業改良普及センターの職員等が日常的に農家を訪問し、防疫対策の指導等を行っていれば、一定の注意喚起ができたと思われるが、特に牛関係農家と家保との関係が緊密ではなく、その指導は不十分だったと言わざるを得ない

○ さらに、農家にとっては、飼養衛生管理基準そのものが具体性がなく、わかりにくいものであり、今回のような口蹄疫の感染を具体的にどうやって防ぐのかということについて、実効性に乏しいものだったと言わざるを得ない。

■【今後の改善のあり方】
◆ 最終的には各農場、地域においてどれだけの防疫対策が日常的に行われているかが鍵であり、今後、農家等への指導の徹底や定期的に確認を行うシステムの構築が必要である。

◆ この点に関して、隣県の対応状況を調査したところ、熊本県においては国庫補助事業を活用して農家への周知を図っており、大分県においてはチラシを作成して家保が農家巡回を行っている。

本県においても、農家それぞれにしっかりと注意事項が届く効果的な取組を工夫するとともに、関係者を対象とした実践的な研修等を通じて徹底を図る必要がある。

◆ 国においては、飼養衛生管理基準を見直し、各種法定伝染病に応じた対処の方法を示した、農家にわかりやすい、より具体的な基準を定める必要がある。

現行の飼養衛生管理基準は、農場側の遵守事項を定めたものであるが、飼料等の運搬業者、集乳業者、人工授精師、獣医師等の畜産関連事業者の留意事項についても明確にする必要がある

◆ 県においては、飼養衛生管理基準をわかりやすく解説したパンフレット等を作成し、一つひとつの農場において十分に周知されるよう努めると共に、定期的に農場における遵守状況をチェックする体制を構築する必要がある。

なお、県は、今回の発生の終息後に、農場における具体的な消毒の方法や口蹄疫の症状、日常の飼養衛生管理の注意点などをわかりやすく示した「宮崎県農場衛生管理マニュアル」を作成し、農家に配布している。

今後は、こうしたマニュアル等の内容を確実に農家に周知するとともに、それが実行されていることを定期的に確認していく必要がある。

◆ 各農場において飼養衛生管理基準の徹底を図るためには、県における取組だけではなく、市町村や農協等関係団体において基準の遵守に関する意識を共有化し、様々な機会を通じて注意を喚起するよう努める必要がある。

また、日常的に家畜の状況を把握している管理獣医師との密接な連携関係を構築して、獣医師による日常的な管理を確保するとともに、特に高齢の農家等における基準の遵守が担保できるよう、地域ぐるみの防疫体制(共助の仕組み)を整備する必要がある

(2)-③
■県は、各農家の飼養状況、埋却用地の確保状況等を十分把握していたか。

【検証結果】
○ 国の「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」(以下、「防疫指針」という。)では、「都道府県は、家畜の所有者が患畜等の処理が速やかに実施できるよう、予め市町村等と協議を行い、その処理方法を検討するとともに、焼却、埋却等の場所の確保に努めるよう指導及び助言を行うものとする」とされている。

○ しかし、10年前の口蹄疫発生では埋却地の確保がスムーズに行えたこともあり、実際的な埋却地確保の重要性に対する認識が不足していたために、埋却地確保に関する事前の準備が行われておらず、患畜等の処理方法などに関する協議も行われていなかった

このため、発生確認後の殺処分に際し、初めて市町村を中心に埋却地探しが行われたが、埋却候補地を確保しても地下水や岩盤の影響で埋却ができないケースも少なからずあり、試掘を行ってから殺処分・埋却の計画立案という手順にならざるを得なかった。その結果、これらのことが殺処分に時間がかかった要因ともなり、感染拡大の要因となった

農場に関する情報については、国の情報システムを使用して発生場所の確認等を行ったが、農場が密集した地域においては鮮明な位置情報の表示ができず、防疫作業や消毒ポイントの設置等に十分に活用できたとは言い難い状況であった

○ また、県においては、近年開業した大規模農場に関する情報が把握されていないなど、各農場の飼養家畜の種類、頭数等について最新の詳細な状況を把握しておらず、情報の収集に相当の時間を要したのが実態であり、迅速に防疫作業計画を策定・実行する観点からは、実態把握が不十分であったと言わざるを得ない

【今後の改善のあり方】
◆ 本委員会で農家に対するヒアリングを行ったところ、複数の農家から「今後同じような事態が発生した場合は、近隣住民の反対があり埋却地を確保することが難しい」という声があったように、今後とも埋却地の問題は迅速な防疫作業の成否に関わる大きな課題である。

◆ 県としては、各経営体の飼養状況について毎年度定期報告を徴する等の方法により、正確な情報把握に努めるとともに、埋却地についても予定地の確保状況について報告を求めておくなど、発生時に迅速に防疫作業に着手できる情報の把握を徹底する必要がある。

◆ 今回の口蹄疫で大きな被害を受けた児湯地域においても、順次家畜の導入が進んでいるが、この段階においても埋却予定地の確保が不十分なまま再導入が進んでいる状況が認められた。

例えば、大分県においては、すべての農場の畜種、飼養状況等の基礎データに加えて、埋却用地の確保状況等についても収集・管理しており、防疫担当課のパソコンで瞬時に検索できるシステムを構築している

韓国における口蹄疫の再発等を踏まえ、本県において、早急に埋却用地の確保状況及び対応方策に関する情報の集約を行うとともに、迅速・的確に活用できるシステムの構築を早急に進める必要がある。

◆ また、市町村においても、県との情報の共有化を図るとともに、近隣の住民の理解促進に努めるなど、円滑な殺処分・埋却作業が可能となる体制を早急に構築する必要がある。

◆ しかしながら、上記の方法等により事前に埋却地を確保したとしても、実際の埋却作業に当たっては当該予定地が活用できない場合も想定すべきであるし、迅速な作業を進める上で、より大規模な埋却用地が必要となることも想定すべきである。

したがって、県としては、市町村や国と連携して、公有地の活用も含めた共同埋却地の確保・活用計画を策定しておくことが必要であり、さらに、当該計画を実効性あるものにするために、患畜等の共同埋却地への安全な運搬方法等も確立しておく必要がある。

今回の埋却地確保に際しては、国の「近隣住民と事前に十分協議すれば良く、同意を取り付ける必要はない」等の解釈が現場を混乱させた。地域においては協議と同意はほぼ同義であり、国においては、円滑な埋却処分のためには近隣住民の同意が不可欠であることを認識し、国民的な理解を得る努力、あるいは、法律上の措置として近隣住民の協力を義務づけることなども含めた検討を行う必要がある

◆ 各機関が上記のような取組を行ったとしても、今回のような大量処分が必要となった場合には、埋却処分のみでは迅速な処置ができない場合も想定すべきであり、国においては、他国で行われている焼却処分等も含め、他の実効性のある方法を早急に構築する必要がある。

[以下次回]

検証委員

商工団体   宮崎県商工会議所連合会副会頭(会頭代行) 清本英男
市町村宮崎県市長会長  (日向市長) 黒木健二
県宮崎県  副知事河野俊嗣
*22年10月14日以降は、宮崎県総務部長稲用博美
市町村宮崎県町村会長  (椎葉村長) 椎葉晃充
農業団体  宮崎県農業協同組合中央会会長羽田正治
県民協働NPOみんなのくらしターミナル代表理事初鹿野聡
学識(危機管理)    宮崎大学工学部教授原田隆典
学識(家畜防疫)    宮崎大学農学部教授(副学部長) 堀井洋一郎

2011年1月15日 (土)

2010年に宮崎県で発生した口蹄疫の対策に関する調査報告書 (二度と同じ事態を引き起こさないための提言) 抜粋

040

宮崎県口蹄疫最終報告書が出ました。全文はこちらからどうぞ。http://www.pref.miyazaki.lg.jp/parts/000151738.pdf

抜粋して転載いたします。見やすくするために適時改行してあります。赤字は引用者のものです。極めて詳細な報告書であり、私の私見では国の報告書より勝っているような感さえあります。

全文を引用したいのですが、スペース的に不可能なので、抜粋して分割いたしました。

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 (略)

■(3)第1例目の感染確認と初動対応
①第1例目の感染確認
感染確認の第1例目となった農場の感染確認までの経緯(概要)は、次のとおりである。
【第1例目:肉用繁殖牛16頭】

・4月7日発熱(40.3°)と食欲不振で獣医師への往診依頼。
(流涎があり、活力ないが口腔内は異常なし。)
・4月9日牛の口腔内(上唇)で潰瘍、表皮の脱落が確認され、獣医師が口蹄疫を疑い家畜保健衛生所に通報。
・同日、家畜保健衛生所が立ち入ったが、他の牛に異常が確認できないため経過観察とした。
・4月16日他の牛の発熱等により獣医師へ往診依頼。当該牛の口腔内でびらんを確認。当該牛以外の流涎も確認し、家畜保健衛生所へ通報。

・4月17日16日に流涎のあった牛の発熱等により獣医師への往診依頼。
2頭にびらんを確認。家畜保健衛生所が検体を採取。
・4月19日検査によりブルータング等、類似する口蹄疫以外の病気が陰性だったため、家畜保健衛生所が再度農場に立ち入り、口蹄疫検査用の検体を採取、動物衛生研究所へ送付。
・4月20日農林水産省から宮崎県に、口蹄疫の感染が確認された旨の連
絡あり。

②感染確認後の初動対応(第6例目まで)
【防疫対策の体制】
第1例目(都農町)の口蹄疫感染確認後、県は直ちに本庁内に口蹄疫防疫対策本部、宮崎家畜保健衛生所内に現地防疫対策本部を設置し、口蹄疫の防疫対策に着手した。*関連資料2(1)(2)

なお、都農町役場内にも町の防疫対策本部が設置されたため、県では当該本部にも県職員を派遣・常駐させ、連絡調整業務に当たらせている。

【殺処分・埋却】
第1例目の疑似患畜の殺処分は、感染が確定した4月20日の夜に終了した。
第2例目以降第6例目までの疑似患畜の殺処分については、すべて感染確認から2日以内に終了している。

【交通遮断・消毒ポイントの設置】
感染拡大の防止については、「家畜伝染病予防法」(以下「家伝法」という。)、及び「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」(以下「防疫指針」という。)に基づき、県では農林水産省とも協議しながら、発生農場に入り込む道路の封鎖、移動・搬出制限区域の設定を行い、4月20日には、制限区域内の幹線道路4カ所に消毒ポイントを設置し、関係車両の消毒を開始している。その後、事態の進展に合わせて消毒箇所数を増やしながら対応している。

また、空港や港湾など、直接海外から人・物の出入りが想定される箇所での消毒などの防疫対策の強化を図っている。

【情報提供】
口蹄疫の発生に関する情報提供について、県では、第1例目の感染が確定した4月20日にマスコミ向けに記者会見を行っているが、発生農家の情報については、農場の規模のほか、農場の所在地については地区名(字名)までを公表し、農家の具体的な名前は公表しなかった。*関連資料1(5)

また、口蹄疫に関する情報を広く県民に提供するため、4月20日には口蹄疫に関する情報提供のコーナーを設置し、県のホームページの「緊急情報」の欄に掲載している。

■(4)感染拡大とまん延期の対応
①感染拡大の状況
前述のとおり、口蹄疫の疑似患畜の殺処分については、第1~第6例目までは、農場の飼養規模も牛16頭~118頭と小規模であり、迅速な措置が行われたが、第7例目(4/26確認、牛725頭)、第8例目(4/28確認、牛1,019頭)の大規模農場への感染、第10例目(4/28確認)の豚への感染が確認された時期以降、殺処分・埋却に遅れが出てきている。

この殺処分の遅れや豚への感染により、発生地域でのウイルス量は爆発的に増加したと推測され、更に感染拡大が加速した。
感染地域としては、当初、川南町、都農町内であったが、4月28日にはえびの市に、5月16日には高鍋町、新富町、5月21日には西都市、木城町に感染が拡大している。

■②感染拡大に伴う防疫対策組織の強化等
○【県関係】
感染の拡大に伴い、県庁に設置された防疫対策本部は、増員による体制強化を進めるとともに、県外獣医師等支援班(5/1)、埋却支援班(5/4)を設置するなど、随時必要な機能を付加しながら体制を拡充した。

また、発生当初、現地対策本部を宮崎家畜保健衛生所内に設置した後、4月24日には川南町に現場本部も設置。えびの市での感染に伴い、現地対策本部を都城家畜保健衛生所にも設置したほか、新富町にも現場本部を設置するなど、感染拡大の状況に応じて、県としての組織体制を拡大していった。

さらに、5月20日には、県の防疫対策本部に総合支援部を設置し、災害対策本部の会議室に数十名規模の職員が一堂に会し、防疫業務や関連業務への支援、対外的な調整等の業務を全庁的、総合的に実施する体制を敷いた。*関連資料2(3)

○【国関係】
口蹄疫の発生が確認された4月20日に、農林水産省内に国の口蹄疫防疫対策本部が設置されていたが、感染の拡大に伴い、5月17日には内閣総理大臣を本部長とする政府口蹄疫対策本部が、また、宮崎県庁内には現地対策本部が設置された。現地対策本部には、山田農林水産副大臣、その後篠原副大臣が常駐し対応に当たった。

■③防疫対策の拡大
○【殺処分・埋却】
感染が拡大するとともに、防疫作業についても困難を極めることになった。殺処分・埋却処分については、5月以降の感染の急速な拡大により、処分を待つ疑似患畜数も急激に増加したため、殺処分・埋却に対応する人員は、5月下旬~6月中旬のピーク時には、毎日700~900人の規模となった。

作業に当たっては、適切な埋却地の確保、効果的な人員の配置、適時的確な資機材の搬出入など、多くの課題を抱え、時間との戦いの中で、現場では非常に困難な状況が続いた。

○【消毒ポイントの設置】
第1例目の感染確認当初、県指定の4カ所からスタートした消毒ポイントは、その後、市町村や関係団体等が独自に消毒ポイントを設置するなど、感染が拡大した5月初旬から急速に箇所を増やし、最大で403カ所(7月当初)に及んだ。

消毒の方法についても、全車両を対象として消毒槽の中を通過させる、動力噴霧器で消毒液を噴霧する、消毒マットを通過させる、道路に消毒液を直接散水する、あるいは道路から関係車両を引き込んで消毒液を噴霧する形式など、各ポイントの状況に応じた消毒法がとられた。

■④防疫対策への支援
○【自衛隊】
殺処分・埋却等の作業に遅れが生じ始めたため、知事は5月1日に自衛隊に対し、災害派遣として、口蹄疫の防疫関係作業の支援のための出動要請を行い、同日中に自衛隊の災害派遣チームが現地に到着し、防疫作業に合流することとなった。

主な業務としては、埋却地の掘削、死亡家畜の運搬や埋却等、畜舎の清掃や消毒作業、消毒ポイントでの車両消毒などの広範な支援であり、川南町役場を拠点としながら作業を行った。

1日の態勢としては、120人程度からスタートし、随時増員による態勢強化を図りながら、最大で330人以上、派遣期間を通じた延べ派遣人数は18,720人もの規模となり、自衛隊の災害派遣としては、本県の記録に残る限り過去最大のものとなった。

○【警察】
防疫措置としての交通遮断や通行制限、また消毒ポイントの設置も感染拡大とともに増大したが、これらの現場においては、特に農業関係者以外に口蹄疫に対する理解が十分にないことによる通行車両等とのトラブルや、交通渋滞などが生じたため、より円滑かつ確実に消毒等の防疫措置を行うために、警察からも多大な支援を受けることとなった。

口蹄疫対策として従事された警察官としては、本県以外の20都府県から実人員で2,300人が派遣され、本県警察を含め延べ38,000人(うち県外28,000人)の大規模な動員となった。

○【防疫措置への従事者数】
感染の拡大・蔓延によって、疑似患畜等の殺処分・埋却及びその関連作業、消毒ポイントでの車両消毒等々の防疫対策は、莫大な労力を要することとなった。

このため、県では4月24日に県外の家畜防疫員の派遣要請を行ったのを皮切りに、関係機関や国を通じた支援要請等も合わせ、延べ人数にして約158,500人の従事者数となった。

[内訳](平成22年7月15日終了時点まで)
・国関係職員約14,500人
・自衛隊員約18,500人
・県内外警察官約38,000人
・他都道府県職員約5,000人
・JA等関係団体職員約16,500人
・市町村職員約18,000人
・宮崎県職員約48,000人
(合計) 約158,500人

■⑤種雄牛の制限区域からの移動
県のブランド牛である「宮崎牛」をはじめとする肉用牛を生産する上で基盤となる種雄牛の管理や精液ストローの生産は、宮崎県家畜改良事業団(高鍋町)で一元的な管理が行われてきた。

都農町・川南町で発生した口蹄疫の感染拡大は、当該家畜改良事業団にまで及ぶ状況となり、これらの基盤の喪失が本県肉用牛生産に甚大な影響を与えると判断した県は、農林水産省に対して、種雄牛のうち主力の6頭の移動制限区域外への搬出の特認についての協議を開始(5/8)、5月10日に知事から農林水産大臣に対して要望を行った。

これに対し農林水産省からは、
・移動に際し、移動対象牛の臨床目視検査及びPCR検査により口蹄疫に感染していないことを確認すること

・移動時の輸送ルートの確認や、輸送車両の消毒等の厳格な衛生管理や、移動後の臨床目視検査(毎日)等の継続的な管理を行うこと

・移動制限区域内の畜産関係者への十分な説明を行うこと
といった条件が示され、12日には遺伝子検査の結果がすべて陰性であることを確認した上で、13日に移動を行い、14日から移動先での飼養管理を開始している。

このため、14日には家畜改良事業団で飼養されていた後代検定牛に感染が確認されたが、この関連による上記6頭の種雄牛の殺処分は行われていない。

その後、移動した種雄牛の臨床目視検査及びPCR検査を継続していたが、5月21日には、その中の1頭「忠富士」が、目視で確認できる症状を示すことなく、PCR検査で陽性を示したため、殺処分されることとなった。

なお、この際も、飼養管理を別にしていたこと等を理由に、残り5頭の種雄牛には関連としての殺処分が行われていない。

■⑥非常事態宣言の発出
口蹄疫の発生後、家伝法等に基づく懸命な防疫措置を行ったにもかかわらず感染拡大が止まらないことに加え、万全の防疫体制を敷いていたはずの家畜改良事業団にまで感染が広がったことから、それまでの対策を抜本的かつ強力に見直すことが必要となった。

そこで、口蹄疫の早期撲滅を最優先に、感染防止対策の徹底を図るため、5月18日に県として初の「非常事態宣言」を発出し、県民に事態の深刻さを理解していただき、県民生活への一定の制限を含めた協力をお願いすることとなった。*関連資料1(6)

■(5)ワクチン接種への対応
○①ワクチン接種の方針決定
口蹄疫の感染拡大を止める見込みが立たない中、県では、従来の封じ込め措置には限界があるとして、予防的殺処分やリングワクチンの接種などの抜本的な防疫対策への転換を求めるため、5月4日には、農林水産省との協議を開始している。

これに対して、5月6日には国の牛豚等疾病小委員会も開催されたが防疫措置の方針は従前の措置を継続することとされている。

しかし、5月19日の国の口蹄疫対策本部において、「新たな防疫対策」として移動制限区域内でのワクチンの接種による感染拡大防止の方針が決定された。
ただ、国の方針決定の時点で、畜産農家に対する補償については明確にされていなかった。


②ワクチン接種の実施と特別措置法の施行
政府の決定を受けて、県としては、ワクチン接種対象農家への十分な補償と経営再開への支援が確保された上で、対象農家や関係者の理解を得る必要があると判断し、国、市町村長との協議等を重ねた結果、国から補償の方向性が示されたため、5月21日にワクチン接種の実施を受け入れることを決定し、翌22日からワクチン接種を開始した。

ワクチン接種対象となった家畜は、3市5町の約125,700頭(接種後疑似患畜となった分を含む)であり、農家に対して主に市町村から承諾を得ながら接種を進めた。

ワクチン接種は、そのほとんどを5月26日までの5日間で終了し、6月5日からは接種した家畜の殺処分・埋却措置を開始。関係者の懸命の作業で6月30日に措置を終了している。

この間、ワクチン接種や予防的殺処分及び当該措置に対する補償等を定めた「口蹄疫対策特別措置法」及び関係政省令の整備が進められ、6月4日に公布・施行となり、法令上の根拠が整えられた。

なお、この過程で、県内において唯一民間で種雄牛を有する農家の対応に関し、県側が特例として殺処分を行わないという考え方を示したため、国と意見が対立することとなり、当該問題の解決に長い時間を要することとなった。
最終的には特例の適用は認められず、この民間種雄牛は7月17日に殺処分が行われた。

■(6)終息期の対応
①感染の終息
ワクチン接種以降、飛び火的に感染した数例を除くと、新たな感染はなくなり、殺処分・埋却の防疫措置が6月30日に終了した段階では、エリア内に家畜がいない状態となった。
移動・搬出制限区域は家伝法に基づき順次解除され、7月27日には県内全域での制限区域が解除されると同時に、口蹄疫非常事態宣言も解除された。*関連資料1(6)

②口蹄疫終息宣言
すべての制限区域及び口蹄疫非常事態宣言が解除されたが、口蹄疫の完全な終息宣言を行うためには、県内全域での清浄性の確保が必要であった。

制限区域が解除された時点では、発生農場等において口蹄疫ウイルスを含んでいると推定される大量の糞尿等の汚染物が残されており、これについては国とも協議した結果、一定期間の封じ込めを行った上で、切り返しによる発酵で温度を基本的に60℃以上に上げること等でウイルスの不活化を行った。また、併せて、県内全域での家畜の清浄性の確認を行った結果、8月27日に、最終的な「口蹄疫終息宣言」を行うこととなった。
*関連資料1(8)

■(4)復興段階の体制
(略)

■第4章検証から見えた問題点と今後の改善のあり方
ここでは、第3章で示したアンケート調査で寄せられた多数の意見や助言、さらに、現地調査及びヒアリング調査等の結果を踏まえ、そこから見えてきた7項目、計42の課題・論点について検証を行い、今後の改善のあり方を提言する。

○(1)感染源と感染経路の解明はできたのか
(1)-①
初発農場について
【検証結果】
○ 国の「疫学調査に係る中間取りまとめ」(以下「国の疫学調査」という。)においては、各発生農場における発症日について、立入検査を行った際の臨床症状やその進行の程度、血清中の抗体価の測定結果等をもとに、疫学の専門家が一定のルールに従って推定したとされ、結果として、6例目が3月26日以降、1例目が4月5日以降、7例目が4月8日以降に発症したと推定されている。

○ これに対し、地元においては、「7例目が初発ではなかったのか」という強い意見が多く出されていたこともあり、本委員会としてはこの点を中心に検証を行った。

・6例目の農場については、3月26日に2頭に発熱、乳量低下が見られた。その後同一の症状を示す牛が増加したため、獣医師が家畜保健衛生所(以下「家保」という。)に連絡した。

家保は、3月31日に、口蹄疫を疑った訳ではなかったが3頭の血液、鼻腔スワブ、ふん便を採取し、ウイルス、細菌、寄生虫検査を実施した。その後4月22日に、1例目の関連農場として県の疫学調査班が立入検査を行い検体を採取したが、その際、3月31日分についても併せて検査を行った結果、PCR陽性であった。このことから、国の疫学調査は最初に症状が見られた3月26日を発症日と推定している。

・7例目の農場については、当該農場を経営する会社からの聞き取りによれば、4月22日に農場の獣医師が発熱、食欲不振、流涎、びらんを確認したものの、蹄に水疱が見当たらなかったために経過観察することとし、その旨を担当役員に報告。翌23日に症状を呈する牛が増加したことや、周辺農場に感染が拡大し始めたことから担当役員が本社と協議し、県に報告を行うこととしたが、夜遅かったため、翌朝連絡することとしていたとのことである。

そして翌24日に、家保から当該農場に対して、他の農場の関連農場として立入検査を行う旨の電話連絡があり、この電話の中で、初めて農場側から家保に異常の報告がなされた。このときの家保の立入検査では、全体の半分程度の牛房で流涎を確認し、検体を採取している。

家保による立入検査、あるいは殺処分の際には、農場側から上記以外の内容の申し出はなかったが、その後の調査で、4月8日の時点で食欲不振を示した牛が確認されたこと、4月9日から17日まで多数の牛に食欲不振改善薬を投与していること、さらに、4月17日に農場全体に熱、鼻水等の風邪の症状を示す牛が出たため、4月18日から20日にかけて全頭に抗生物質を投与していたことが明らかになった。

こうした状況から、国の疫学調査は4月8日を発症日と推定している。・しかし、4月8日の症状を口蹄疫の症状とするならば、翌9日に同一棟の数十頭の牛に食欲不振改善薬を一斉投与していること、その後数日のうちに同一の症状を呈する牛が爆発的に拡大していたこと、そして、今回の口蹄疫は発生初期においては伝染力が弱かったとされていることを併せて考えれば、作業日誌や診療記録上からは明らかになっておらず、また、従業員からの証言も得られていないものの、当該農場では、4月8日以前に口蹄疫の症状が出て感染が拡がり、翌9日以降にまん延状態になったと推定することが妥当である。

・また、3月下旬に風邪、食欲不振等の症状を呈する牛がいたことは作業日誌等から明らかになっており、これらの症状が口蹄疫であったとの確証はないものの、当該農場の獣医師が一人で他の関連農場も任されていたために、管理が行き届いていなかったのではないかということも考えあわせれば、国の疫学調査が発症日として推定した4月8日より前に、当該農場で口蹄疫が発生していたと推定することが妥当である。

・以上のような事実から、今回の発生の初発農場がどこであったかについては、「6例目が初発であると結論づける」、あるいは「7例目が3月26日(6例目の発症推定日)以前に発症していなかったと結論づける」だけの明確な根拠はないと言わざるを得ない。

さらに、感染経路や感染原因が特定されていないことも考え合わせると、国の疫学調査が初発農場を6例目と推定していることとは異なり、「6例目あるいは7例目が初発農場の可能性がある」という指摘にとどめるべきである。

■【今後の改善のあり方】
◆ 10年前の発生の際も同様であったが、今回は特に被害が甚大であったがために、初発がどこか、あるいは各農場間の疫学関連はどうかということに対する関心が非常に高く、そのことが地域に様々な波紋を広げる結果となった。

農家にとって初発農場とされることによる精神的負担が非常に大きいことや、その精神的負担が農家からの早期通報を妨げる要因ともなりかねないことを考慮し、国は、初発の特定に際して「慎重な調査」を行うとともに、「調査途中での公表のあり方」についても「慎重」を期すこと、そして、本件についても引き続き徹底した疫学調査を行うことを強く求める。

農場で発症が確認された時点では、時間的な余裕がなかったために十分な疫学調査が行われておらず、7例目の農場に見られるような発症確認日前の家畜の状態を確認することが困難であった。このため、後日の調査に相当の労力を要し、必要な情報の確認ができない結果となった。

疫学調査の重要性に鑑みれば、そのあり方について国・県で改めて検討を行う必要があり、特に、まん延段階であっても「初発の可能性がある」と判断される場合は、国と県が協力して別動の調査班を作り、詳細な調査を行うなどの対応が必要である。

◆ また、疫学調査は、畜産関係にとどまらず、農場関係者等の日常生活における関連についても検証を行う必要があり、そのためには、市町村等に協力を求めることも検討する必要がある。

◆ 初発がどこなのかを特定することは、我が国への感染経路を解明するために不可欠なものであり、感染拡大を抑止する上でも非常に重要である。したがって、国においては、初発農場についての科学的な検証が可能となるよう、定期的なサーベイランス検査、発症確認時の検体の採材方法等に関する新たなルールを作る必要がある。

■(1)-②
○感染源、感染原因について
【検証結果】
○ 特に初期段階での発生農家に対する現地調査等を通じて、えさ、人の動き、家畜などの感染原因を調査したが、特定するには至らなかった。

国の疫学調査においても、初発とされた6例目の農場について、「推定発症日が一番早いこともあり、海外からウイルスが侵入した可能性を念頭に置いて、様々な可能性について調査したが、家畜の導入や出荷、飼料、敷料などで当該農場へのウイルスの侵入につながるような情報は確認されなかった」とされ、そのような中で、「当該農場が見学者等を受け付けていたが、訪問者に関する記録は取られていなかったため、外部からの人の移動について、これ以上、検証することは困難であり、こうした人の移動によってウイルスが侵入した可能性は否定できない」としているのみであり、結局、発生原因、侵入経路については、まったく特定できていない状況である。

○ 国の疫学調査は、中国からの輸入粗飼料は農林水産省の立ち会いのもとにくん蒸が行われていること等から感染の原因となった可能性は極めて低いという前提に立って検証を行っているが、感染原因・経路を特定することの重要性に鑑みれば、そのような前提条件をはずして徹底的な調査を行うべきである。

○【今後の改善のあり方】
我が国にどのようにしてウイルスが侵入し、本県の農場にどのように感染したのかは、今後、実効性のある防疫体制を整える上で最も重要な点である。

また、平成22年6月に終息した韓国において、同年11月に再び口蹄疫が発生し、爆発的な拡がりを見せている状況を見れば、本県あるいは我が国も、常に同様の危険にさらされていることを強く認識すべきである

島国である我が国は、陸地で他国と接する国と比べれば、海外からの感染ルートの解明や水際対策が比較的容易なはずであり、まさに国の役割として、徹底した感染原因解明のための調査を継続することを強く求めたい。

今回の国の疫学調査では、発生農場から「輸入飼料を使用していた」という申告があった場合に当該飼料の調査を行っており、関係者の渡航等についても、基本的に申し出に基づくものにとどまっている。

これだけの被害をもたらした口蹄疫の感染原因、感染経路を究明するのであるから、輸入飼料がどの農場に運ばれたのか、あるいは、人の海外渡航や感染国からの入国についても、入管手続後の動きを全体的に調査する体制を整備するなど、より徹底した対応を行う必要がある。

今回の疫学調査を行う中で、調査の強制力が問題となった。現行の家畜伝染病予防法上での家畜防疫員等の調査権は、伝染性疾病の予防上必要がある場合の立入調査権、及び動物の所有者等に対して報告を求める権利を規定するのみであり、今回のような、終息後の本格的な感染原因等に関する調査においては有効な規定とはなっていない。
このため、国においては、疫学関連調査の重要性に鑑み、立ち入り調査権や強制調査権の明文規定を検討する必要があると考える。

○以降の報告書は次回に掲載します。

■写真 蝋梅(ろうばい)です。名のとおり、蝋燭のような光沢の美しい梅です。

2011年1月14日 (金)

韓国口蹄疫 全土にワクチン接種を決定  韓国は宮崎を学んでいなかった

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まずは韓国の口蹄疫情報からいきます。

口蹄疫:済州を除く全国でワクチン接種へ

牛や豚の伝染病「口蹄(こうてい)疫」を防ぐため、済州道を除く全国で予防ワクチンを接種することになった。

 李明博(イ・ミョンバク)大統領は12日午後、口蹄疫の問題をめぐり緊急の関係閣僚会議を招集し、このような方針を固めた。

 孟亨奎(メン・ヒョンギュ)行政安全部(省に相当)長官は、会議後に行った記者会見で、「ワクチンの接種を、(口蹄疫の被害が出ていない)全羅南・北道や慶尚南道などでも行うことを決めた」と述べた。これまでは、京畿道、仁川市、江原道、忠清南・北道の全域と慶尚北道・全羅北道の一部地域で飼育されている牛、繁殖用の母豚や種豚など、278万頭に対しワクチンの接種を行ってきた。

 防疫当局はまず、すべての牛(約330万頭)を接種の対象とし、豚(約990万頭)も対象とするか否かについては、今後の家畜防疫協議会で決定する方針だ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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「日本農業新聞」(1月14日)によれば、韓国政府は13日にワクチン接種地域を全土に拡げることを決定しました(済州道は除く)。

対象は牛、母豚、種豚です。

殺処分対象は13日現在で150万頭に達しました。一日3、4例発生しており、拡大ペースは止まりません。

今まで京畿道、江原道、忠清北道、忠清南道、慶尚北道、仁川広域市、および未発生の全羅北道、ソウル特別市を対象にワクチン接種をしてきました。しかし感染に歯止めがかからず未発生地域の慶尚南道、全羅南道でも接種を決定しました。

現在の韓国政府のワクチンの準備量は1100万頭分で、これは家畜総数(豚1千万頭、牛300万頭)の8割にあたるそうです。

なお、口蹄疫発生数は1月13日現在で118例。殺処分対象は農家3695戸で、150万623頭に達しました。内訳は、豚137万5521頭、牛が12万630頭となっています。

また、韓国の畜産専門家は「拡大が続く可能性が高い、しばらくはワクチン不使用・清浄国を断念するしかない」と述べています。

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例によって遅ればせの韓国政府の対応です。隣国でのことなので、あまり批判的なことは言いたくないのですが、韓国は日本の宮崎県の事例をまったく研究にしていないことがはっきりしました。

宮崎県の口蹄疫事件を研究すれば、初動制圧が破綻した場合、通常の防疫包囲網では役に立たず、緊急ワクチンを早急に、かつ、できうる限りの広範囲で接種するしか方法がないことがわかるはずです。

韓国は11月末で初動制圧が失敗し、ウイルスがどこに飛び火したのか分からないにもかかわらず、あいも変わらぬリング・カリング方針で対応しようとしました。

これは韓国の口蹄疫緊急指針が、初動偏重路線だったからです。初動でリング・カリングしてしまい、疫学調査をして拡大を調べ、埋却を素早くする・・・韓国政府はこの3点セットが万能だと考えていたようです。

だからいったん「ありえない」は感染の飛び火をすると、防疫の全面崩壊に近い崩れ方をしてしまいます。二枚目の札の準備がないのです。

言い方を変えれば、リスク・コントロールの発想がなく、すべてで後手後手でした。たとえば、初動のみに集中するあまり、ワクチン備蓄量は30万ドーズというお粗末な量しかなく、本格的な接種は発生から1カ月たって、ワクチンの追加を得てからでした。

しかも初期には地域も少なく、対象は牛に限られていました。現在ですら肥育豚は接種除外されています。

無意味だとは言いませんが、ワクチン接種が有効に働くのは、以下の条件が必要です。
①初期の発生段階。
②牛・豚同時接種。
③発生農場の制限区域外周を中心として、できうるかぎり広域に接種。

宮崎県は①の初動は失敗しましたが、②、③の条件はクリアすることが出来ました。その後にワクチン接種・全殺処分にしたために傷口を広げる結果となりましたが、感染拡大という観点からは成功だったと言えます。

これによって、宮崎県東部に限定された拡大で封鎖することに成功しました。

韓国はこの3条件すべてに後手を踏んでいます。とうぜん、韓国は宮崎県の事例を横目で見ていたでしょうが、学んではいなかったようです。たぶん憶測ですが、自国の口蹄疫指針に絶大な自信を持っていたからです。

また昨年3、4月のように小規模でくい止められるとタカをくくっていたとしか思えません。東アジア随一の口蹄疫防疫体制にあぐらをかいた油断と奢りです。

韓国は、「日本に学ぶものはなにもない。宮崎は日本特有の失敗だ」と思っていたと思われます。その結果がこの防疫体制の崩壊と未曾有の大発生です。

私たち日本人は、韓国のこの事態に学ぶべきです。
初動ではウイルスを殲滅することは不可能だと思って対策をたてるべきです。つまり初動制圧が破綻した「後」を考えておくべきです。

感染が飛び火した場合どうするのか、どのラインでくい止めるのか、どの時期にワクチン接種をするのか、どこまでの範囲で打つのか、その補償はどうするのか、即応態勢はどう整えるのか、近隣の県との共同体制はどうするのか、清浄国復帰は3カ月か6カ月かなどなど、宮崎を見舞った嵐が過ぎ去った今、検討しておくべきことは沢山あります。

■写真 霞ヶ浦にかかる大橋です。光る湖面があまりに美しいので撮ってみました。

2011年1月13日 (木)

韓国口蹄疫 殺処分141万頭に トリインフルエンザで120万羽殺処分

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本日の「日本農業新聞」(1月13日)によれば、韓国口蹄疫いの殺処分141万頭に達しました。12日現在、発生件数は116例となり、殺処分対象は脳か3573戸が飼育する141万6772頭に上りました。

内訳は、豚が129万6598頭、牛が11万6096頭です。既に対象家畜の93%に当たる131万7818頭を殺処分しました。

一方トリインフルエンザの感染が拡大し続けています。韓国政府は12日、4段階ある警戒レベルを「注意」から上から2番目の脅威レベルの「警戒」に引き上げました。

昨年12月に渡り鳥から発生が確認されてから、4道に拡大し、1月9日から11日の3日間で発生申請が12件となりました。

高病腹性トリインフルエンザ(H5N1)は昨年12月8日に、全羅南道益山地域で発生し、1月12日現在で、既に忠清南道、全羅北道、京畿道の4道に広がっています。

トリインフルによる殺処分対象数は260万羽で、うち既に112万羽を処分しました。韓国政府は、13日から27日までの間は在来市場での生きているアヒル販売を禁止しました。

                 .。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。.

以上の記事でお分かりのように韓国口蹄疫はまったく止まるところを知りません。韓国全土を覆い尽くすまでわずか南部の3道を残すのみとなってしまいました。この勢いをどこかで止めないと、殺処分数は200万頭を超える可能性がでてきました。

ワクチン接種は既に始まっていますが、発生初期に接種すべきタイミングを逃し、備蓄自体も30万ドーズしかなく、接種地域を極小化しての罹りやすい牛のみの接種となったことが今になって響いてきています。

韓国政府は懸命にワクチンを世界から集めているようですが、圧倒的に数量が足りません。1月2日に90万ドーズが追加され、再度の追加も予定されています。しかし、宮崎県の接種例のように倍量で接種するためにこの数量は半分で見ねばなりません。

そしてこれを接種するための防疫員も、連日膨大な数の大型家畜を検査し、殺処分をしながら接種し続けていると想像されます。絶望的な奮闘を続けている韓国防疫陣の健闘をお祈りします。

また、宮崎大学末吉益雄先生の指摘されるように、韓国現地は氷点下5度を下回る厳冬期となっています。そのために消毒液タンクはすぐさま凍結し、噴霧器のノズルは詰まり、作業に大きな障害となっています。

消石灰も降雪のために雪表面に残ってしまい、ウイルスがいる地表には届かないことも考えられるといいます。

一般道の車両消毒も、タイヤの凍結防止から夏期のような徹底した消毒は不可能でしょう。

このように消毒が不十分にしか行えないため、感染に歯止めがかからないと思われます。そして残存したウイルスは時限爆弾となって、雪が溶ける春以降また蘇る可能性があります。

一方、下に転載した「中央日報」の記事によれば、私の予想どおり非汚染地域では食肉にするためのパニックが起きています。これは、いったん汚染地域の行政区に入ってしまえば、発生農場と遠かろうと、近かろうと食肉処理ができなくなるからです。

また食肉処理場自体も限定されてしまったために、処理能力自体が大きく落ちる一方、食肉価格は品不足のために暴騰し始めました。悪いことに年間最大の需要期の旧正月が眼前だからです。

韓国政府は苦肉の食肉輸入を予定しているようですが、入っても遅すぎるか、量的にも焼け石に水なようです。韓国政府は、今まで清浄国ステータスを護持することで、FTAによる食肉輸入をブロックしてきたわけですが、その堤防が決壊の危機にあります。

いずれにせよ、韓国が元の「ワクチン非接・種清浄国」に復帰することはほぼ絶望的だと思われます。

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このような中、やはり宮崎県のような不祥事が韓国でも発生しました。

今年に入り、慶尚北道畜産技術研究所に口蹄疫ウイルスが侵入した事件が韓国で問題となっています。

この研究所は「当時優良韓牛と貴重品種の韓牛、乳牛、豚など偶蹄類1100頭余りを飼育していた」(「中央日報」)のですが、そこでの発生を実に6日間も隠匿するという事件が起きました。

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濫山珈琲様から貴重なコメントをいただきました。ありがとうございます。

「宮崎県民として濱田様にお願いがあります。現在韓国が口蹄疫で韓国国民の方々が苦しんでいます。そこで韓国に義援金を送るように日本の畜産関係者に働きかけて頂けないでしょうか。

宮崎県民なので苦しいのは身をもって体験しています。そんな時台湾から義援金を頂きました。大変勇気つけられました。支援の輪を広げて頂きたいというのが宮崎県民としてのお願いです」。

まったく仰せのとおりです。私もひとりの畜産農民としてなんとかしたい気持ちで一杯です。国際的防疫も、このようなひとりひとりの農民の気持ちが大河になって、つながりあっていくことだと思っています。

現実問題としては北海道様もおっしゃるように、宮崎県の被災農家が呼びかけていただくことが、最も効果的です。

そしてそれにJA宮崎や宮崎県が賛同し、義援金事務局を作り、義援金の日本側受け皿を作ってもらったらいかがでしょうか。私もそのときにはこのブログのみならず、大きく声を上げて義援金を募りたいと思っております。

この件に関してはもう少し考えて別途に記事にいたします。

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■慶尚北道畜産研究所、口蹄疫発生を6日間隠す
史上最悪の口蹄疫に、最高の防疫装備と人材を持つ慶尚北道(キョンサンブクト)畜産技術研究所の防疫網を突破された。だが研究所側は6日間にわたり政府に報告していなかったことが明らかになった。
慶北畜産技術研所のチョン・チャンジン所長は11日、「畜産技術研究所の受精卵移植センターで飼育していたメスの韓牛1頭が5日に国立獣医科学検疫院から口蹄疫の陽性判定を受けた」と話した。地方にある畜産技術研究所の口蹄疫防疫網に穴が開いたのは昨年5月の忠清南道(チュンチョンナムド)に続き2番目だ。

  研究所にあった韓牛が口蹄疫に感染した以上、種牛はもちろんすべての偶蹄類1100頭余りを殺処分しなければならない。この研究所は当時優良韓牛と貴重品種の韓牛、乳牛、豚など偶蹄類1100頭余りを飼育していた。だが、口蹄疫検査をした国立獣医科学検疫院はもちろん農林水産食品部さえこの事実を知らずにいた。研究所が検査を依頼しながら所長の名前と住所だけ記入しあたかも個人農家に見えるようにしたためだ。

  研究所側は時間を争わなければならない殺処分埋却も6日が過ぎた11日まで完了しなかった。チョン所長は「現在670頭を殺処分埋却した。自らの人材と装備で解決したため遅れているが急いで終えたい」と話した。研究所の口蹄疫発生で種子改良などすべての試験は中断された。また、優良種豚生産と普及、精液供給もこれ以上できなくなった。

  ◆鳥インフル危機警報、注意から警戒に引き上げ=一方、農林水産食品部は鳥インフルエンザが全羅南道(チョンラナムド)に続き、京畿道(キョンギド)地域まで広がったことを受け、危機警報水準を「注意」段階から「警戒」に引き上げた。
(「韓国中央日報」)
■口蹄疫を心配する農民、次々と食肉処理場へ

「すでに4時間が過ぎた。順番が後ろのほうなので、いつに牛を送ることができるか…。このまま夜を明かすことになるかもしれない」。

  11日午後3時、大田市大徳区梧井洞(テジョンシ・テドクグ・オジョンドン)のチャンウォン食品。トラック運転手のイ・ホングンさん(41)は「普段なら2、3時間あれば十分だが、今日はいつになるか分からない」と話した。

  牛・豚の食肉処理場にこの日、20台余りのトラックが集まった。4.5-5トンのトラックには1台当たり9-10頭の牛が載せられている。駐車場北側の係留場には牛50余頭が食肉処理を待ちながら列をつくっている。ここでは1時間に10頭を処理できる。トラックに載せられた牛まで合わせて、この日の作業は夜遅くまで行された。この日、一日の限界である150頭が食肉処理された。遅く到着した一部の農民は牛とともに野宿するしかなかった。

  口蹄疫が全国に拡散し、各地域で食肉処理戦争が起きている。口蹄疫発生農家の周辺の食肉処理場が閉鎖されたうえ、危険地域に入ることができないため、特定の処理場に集まるしかない。

政府は口蹄疫発生農家の3キロ以内を危険地域、3-10キロを警戒地域とし、食肉処理と移動を制限している。最近は牛と種豚に対する口蹄疫ワクチン接種が始まったため、出荷への支障を懸念した畜産農家までが加わり、食肉処理場が大混雑している。

また、まだ成長中の牛までも出荷されている。農家は普通24-26カ月ほど育てた500キロ以上の牛を出荷する。しかし口蹄疫の発生以降、500キロになっていない牛も食肉処理場に運ばれている。

  畜産農家は事情に理解を示しながらも不満を抱いている。農家は移動制限を行政区域単位でなく、距離に変えなければならないと述べた。移動制限を行政区域単位にした場合、発生地域と10キロ以上離れていても同じ市・郡という理由で出荷できなくなるからだ。

また、週末・休日にも食肉処理をするべきだと要求した。現在、食肉処理をするためには検査官の公務員が現場に出て行かなければならないが、大田を除いた他の市・郡では休日は休み、食肉処理場が閉まっている。

  チョ・ウィピル忠北韓牛協会長は「口蹄疫の拡散とワクチン接種で出荷の支障を懸念した農民が先を競って食肉処理場に集まっており、旧正月が心配される」と述べた。

今のように牛を次々と出荷すれば、旧正月には物量不足と価格暴騰が憂慮される。チャンウォン食品のキム・ジェシク代表は「豚の場合、全体の3分の1ほどが殺処分されると予想されるが、どう需給を合わせるかが心配」と話した。

もちろん輸入を増やせばよいが、実際に輸入されるまでには時間がかかる。このため政府と自治団体は早期出荷を自制するよう呼びかけている。牛肉履歴システムに予防接種の事実を登録すればいつでも出荷が可能で、3-6カ月が過ぎても現在の等級が変わらないため、適正価格が受けることができるからだ。
(「韓国中央日報」)

 

2011年1月12日 (水)

ニッポン農業一般常識クイズ 第5問目の答え合わせ  日本農業の対GDP比は?

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TPP議論の時に妙に説得力をもってしまう数字があります。そう例のあの数字、あの数字ですよ。

前原外相がこう言います。
「GDP構成比1.5%の農業を守るために、残り98.5%を犠牲にするのか」

いや~説得力あるなぁ。なんか郵政民営化選挙の時の小泉(チチ)の「郵政職員ウン万人のために郵政改革をできないのかぁぁぁ!」みたいな迫力ですな。

では農業大国と自他ともに許すフランスの農業のGDP構成比を調べて見ましょうか。農水省のサイトを「○○国の農林水産業概況」でググるとバッチリ示されています。http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_gaikyo/fra.html

■主要5カ国を並べてみれば、第1位のフランスの対GDP比は1.8%、次いで第2位が日本の1.5%、第3位米国1.1%です。第4位ドイツは0.9%、第5位英国は0.8%となります。

これがニッポン農業一般常識クイズの第5問目の答えです。答え、第2位。

いやもう、爆笑ものです。日本は先進国中第2位の農業GDP構成比を誇るのですよ。これをよくもわずか1.5%などといいますよ、前原さん。ヽ(´▽`)/ワ、ハハ

いやもちろん発展途上国で、国土が広大な面積をもち、かつ人口が多い国はおしなべてこの対GDP比は高くなります。農業生産額第1位の中国は11.3%、第3位のインドは17.7%、第4位のブラジルは5.7%です。

先進国は、農業人口が他の産業の工業や、サービス産業にシフトします。ですから、農業の人口比率が対GDP比で相対的に少なくなっていきます。これはわが国だけの話ではなく、世界一般の状況です。

農業の人口比率をみると、日本が2.4%なのに対して、たとえばインドは49%とほぼ国民の半分が農民なわけです。中国に至っては62%と過半数が農民です。いやこれも逆にすごいと言えばすごい。

■これが先進国となると、先進5カ国中農民の人口構成比率が高い国は、第1位が日本2.4%、第2位フランス2.2%、第3位米国1.8%、第4位ドイツ1.7%、第5位英国が1.5%となります。なんとわが国は先進国中トップの農民数がいるのです。さすがこれは私も驚きました。

絶対数では第1位が国548万人、第2位日本303万人、第3位ドイツ142万人、第4位フランス139万人、第5位の英国などは100万割れの94万人しかいません。

まぁ日本は兼業農家が200万人ていどいますから、専業だけを数えればヨーロッパ諸国と同程度の数になると思われます。

日本農業のステータスをまとめてみますね、日本農業は先進5カ国中で第2位の農業生産額を持ち、農業生産額の対GDP比でも第2位と上位グループであり、逆に食料輸入額では第4位、ひとりあたりの食料輸入額でも第4位、食料輸入額の対GDP比でも第4位と下位に属し、一方農民数では第1位、総人口比で第2位となります。

素直にお聞きしたい。このどこが日本農業が壊滅状態なのでしょうか?どこが弱小農業なのですか。前原大臣は、他の先進諸国のデーターを見てから、ものをいったのでしょうか。

民主党政権がきちんとしたデーターをもとにしてTPP議論をしているとはとうてい思えません。

わが国の農業は、他の先進諸国と同じように、過去に工業へのシフトが起き、農民数が減った代わりに生産効率を上げて高い農業生産を上げているのです。おそらく耕地面積などを勘案すれば、日本農業は世界で屈指の生産効率を叩き出しているはずです。

それをどの口でわが国の農業を卑しめるのか!ヽ(#゚Д゚)ノバカヤローシネ~

■写真 雪の朝になんで地べたに寝ころがって写真撮っているのやら(笑)。

2011年1月11日 (火)

ニッポン農業一般常識クイズ 第4問目の答え合わせ   日本の農業生産額は第何位?

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どうも農業という分野はろくなことが起きない限り、都市の人たちに思い出してもらえないようで、やれリーマンショックで失業者を農業をやらしたらどうだとか、今度はTPPで日本経済のお荷物だ、いや違うニッポン農業を守れだとか、まぁにぎやかなことです。

たまにはいいことで思い出してほしいものですね。(* ̄ー ̄*)←絵文字って誰が考えたの?

私はちょっと前に「日本農業滅亡論」も、その反対の「日本経済、農業によって滅亡論」もメダルの表裏だと書きました。なぜなら、この一見正反対のこの議論は、同じ根から生えた夫婦樹のようなものだからです。

同じ根とは、いうまでもなく農水省卸もとの「食料自給率40%」という国民的常識です。この食料自給率とはカロリー自給率であり、複雑怪奇な計算式を使います。これについては、そのうち韓国口蹄疫がおさまったら腰を落ち着けて分析してみたいと思っています。

計算式は複雑怪奇ですが、訴えるイメージは強烈です。なんせ、日本人は6割を外国農産物に頼っているってことですから。日本農業は自分の同胞の食さえ満足に供給していないんだ、と誰しも思うわけです。

ほとんどの論者が、TPP絡みで日本農業を語る時、「食料輸入大国」とか、「輸入食料依存大国」だのとお決まりのように言います。

では、その「輸入食料依存大国」だと年中書き散らしている評論家にある人が、日本農業の生産額の国際的順位を聞いたそうです。

その人いわく、「そうね50位?まぁ最下位から数えたほうが早いよな」、だそうです。

ちなみに、「TPPのために開かれた日本農業をこの6月までに合意する」と年頭所感で述べた菅総理大臣のお答えはといえば、「80位くらい」だそうです。

これは私が出した「ニッポン農業一般常識クイズ」の第4問になります。さっさと答えを言ってしまいましょう。

日本は世界第5位の農業国です。これは先進主要5カ国という枠組みをはずして、全世界の国々の中の農業生産額の順位です。順位は、第1位が中国、第2位が米国、第3位がインド、第4位がブラジル、そしてわがニッポンは第5位、第6位はフランスです。

これはFAO2005が根拠ですが、さらに日本は先進主要5カ国国でいえば、実に世界第2位となります。

では、先進主要国の農業生産額の順位をみてみましょう。
第1位が米国1826億ドル、第2位日本826億ドル、第3位フランス549億ドル、第4位ドイツ379億ドル、第5位英国184億ドルとなります。第5位の英国の実に2倍超です。

ついで世界の農業大国といわれるロシアは世界順位第7位269億ドル、オーストラリアは17位259億ドルとなります。わが国はこの両国の3倍以上になるわけです。

このどこが衰亡でしょうか!?なにが50位だ!何が80位だ。80位といえば破綻国家のアフガニスタンやウガンダ並の最貧国じゃないか。こんな程度の農業知識しかない男が、「開国元年」などとえらそうに言っているのですから、イヤになります。FAO統計くらい調べてから、日本農業の政策を語れってんだ。( ゚д゚)、ペッ

とまぁ、このように私のような農業者が啖呵を切ると、かならず返ってくる反論があります。そう、例の「日本は農産物が高いから、そのような生産額になるのだ」というものです。

日本農産物が、高関税で輸入をブロックしているから、日本の消費者は世界で最も高い農産物を買わされている、という言いぐさは、もう耳にタコが出来るほど聞かされてきました。

では、食肉を例に取ります。下の図を見てください。広大な面積と少ない人口密度をもつ米国の優位は揺らぎません。しかし、同じような広大な面積の国土を持ち、農民収入は月1万円に届くかという中国とはどうでしょうか。

中国と日本は、豚と鶏肉価格においてはほとんど同じ水準の価格だと分かります。所得水準から言えば、驚異的なことです。牛は飼育面積が大きいためにどうしても米国が有利となります。しかし、その分、わが日本の牛生産は世界で比肩するものがない超高品質を持っています。

_edited1 日本の農産物が高いかどうなのかは、家計内の食料支出をみれば見当がつきます。その数字も出ています。

2003年に総務省統計局が出した「世界の統計2003年版」に家計消費支出の食料支出の占める割合が日本は25%弱です。この数字はカナダ、ドイツ、イタリア、イギリスとまったく一緒です。

日本の消費者が不利益をしているというのはまったくのデマです。先進国としてはいたって平均的水準です。むしろ、現在はこの統計をとった2003年時よりデフレが進んでいますから、今採ればもっと下落した数字が出るはずです。

自給率は、広大な国土を持ち、人口密度が低く、所得水準が低い国がどうしても高く出る傾向があります。広大な土地と低い人口密度の米国やオーストラリア、ブラジルなどがそうであり、貧困国はそもそも外貨で輸入食料が買えないために自給率はイヤでも高くなります。

また、輸出が輸入より多い国も、自給率は高く出ます。フランスやドイツがそうです。

わが国は農産物輸出はほとんどなく、国土も狭く、人口密度は世界有数です。このようなハンディを持ちながらも、世界主要5カ国で農業生産額第2位、世界順位第5位のステータスにいることは、わが日本農民は誇りに思うべきです。

農水省はカロリー食料自給率40%という、世界のどこの国も採用していない恣意的な数字を弄ぶことで、日本農業を不当に卑しめ、農業者の誇りそのものを奪ってしまったのです。

■写真 霞ヶ浦にかかる大橋から霞ヶ浦タワーを見る。この大橋が出来るまで、私の村から土浦まで、湖岸を半周しなければなりませんでした。この橋の右手を見ると、写真には写っていませんが筑波山のふたつの峰が見えます。

2011年1月10日 (月)

英国口蹄疫演習が昨年11月に開かれました。     日本でも早急にやるべきです!

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東アジアで立て続けに起きた韓国と日本の大規模な口蹄疫発生を受けてなのでしょうか、昨年11月に英国で口蹄疫演習が行われました。

EUは加盟国に対して5年に2回の口蹄疫演習を義務づけています。これは2001年の600万頭を殺処分にした口蹄疫事件が、英国のみならず欧州全体の畜産の危機に直結した歴史に学んだからです。

EUは口蹄疫を一国の事件ではなく、全加盟国の問題として考えています。これは東アジア域内でいまだ、満足な情報交換すらされず、ましてや口蹄疫に対する国際的な防疫など机上にすら登っていないわが国とは根本的に異なっています。非常にうらやましい。

わが国政府は口では「開かれた農業」とやらを言いますが、実態としては残念ながら、眼前に起きている韓国口蹄疫に対する情報提供すらなにひとつしていません。

韓国口蹄疫についての情報量は民間のネット情報が圧倒的であり、農水省からの情報はわずかな状況です。これで「開国」だのと片腹痛い。こんな状況で「開国」したのならば、まったくノーガードで「国際化」をするはめになるのは必至です。

まぁ、それはともかくとして、英国はこのEUに定められた定期的口蹄疫演習を、昨年11月に実施しました。11月9日ですから、韓国口蹄疫の大発生以前なようです。しかし、宮崎県や韓国の春の発生事例は参考にされたことと思われます。

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さて、英国の口蹄疫演習は、DEFLA(デフラ・英国農務省)の6階のバレーボールコートが3面入ろうかという大きな広間で行われました。

たぶん非常時にはこの部屋にズラリと机やPCが並び、各省庁の連絡官が詰めるのだと思います。いちいちナンですが、霞が関の密室で、自分の局内部の人間だけでゴソゴソやっているどこぞの国とは大違いですな(←朝飯前なので、やたら腹がたつ)。

どうしてこう違いがでるのでしょうか?答えは簡単。EUは口蹄疫を文字通り「国家的危機」というクライシス・コントロールと位置づけているからです。日本はしょせん畜産というマイナーな分野で起きた事故ていどの扱いです。

ちなみに蘊蓄を垂れれば、クライシス・コントロールと、クライシス・マーネージメントとは違います。

同じ「危機管理」と訳されますが、故江畑謙介氏によれば、crisis controlは、「危機予防、防止まで含んだ積極的な概念」であることに対して、crisis managementは、「現実に危機が起きた時にどのようにするのかという概念」だそうです。

ですから、クライシス・コントロールは積極的に平時において何を積み重ねておくのか、どのような起きない仕組みを作るのかということです。

2001年の英国口蹄疫事件を英国は深刻に総括しました。その政府報告書にはこのような一文があります。

「緊急時の対策は用意されEUでも合意されていた。しかし、情報は獣医局に限定され、省庁や内閣で共有されていなかった。また訓練も行われていなかった」

実はこのような総括が今回の宮崎事件の検証委員会から出ると期待していたのですが、その影もありませんでしたね。ですから次回起きても、また同じドタバタがくりかえされて、待機患畜がつみ上がるのでしょうね。

英国と日本は「危機」のとらえ方の深度が違うのです。確かにわが国も9月に机上訓練をしていますが、一回こっきりです。英国は去年だけで何回していると思いますか。

まず6月に「口蹄疫の疑いが浮上した」との設定で行い、次に10月に「危機のレベルがあがった」として行い、第3回は11月に野外訓練まで実施しています。

この11月の英国農務省で行われたものは、これら3回の全体総括です。この総括作業は年を越しても行われ今年2月まで続けられるそうです。喉元過ぎればなんとやらの国とはえらい違いです。ニッポン農水省、給料ていどの仕事はしろ!

英国の演習では、イングランド北部のノーザラントン市で発生したという設定で、初動制圧に失敗し、各地に飛び火したという状況で行われました。

まさに現在の韓国の状況そのものです。こうした深刻な状況の中で、省庁や地方自治体の垣根を超えた広域防疫体制をいかに素早く構築するのかが、この演習のテーマでした。

ですから、この演習には首相官邸を先頭に、農務省、国防省、警察、外務省などの各省庁が結集し、加えて発生地とされたノーザラートン市の担当官も加わりました。

これで野外訓練までしたというのですからすごいの一語です。まさに舞台でいえば、コスチュームをつけたリハーサルまでしたということですね。日本のはせいぜい台本の読み合わせくらいです。

危機管理においては、防疫指針の文言がそのまま実現するとは限りません。法律文言など、いかようにも解釈できるからです。家畜伝染予防法もしかりです。昨年宮崎現地では、県の解釈と国の解釈が真っ向から対立さえした結果、現場が混乱を続けました。

これを平時にすり合わせ、実際に非常時につつがなく防疫指針が守られるか、家伝法が役に立つのかを見極めねばなりません。そのためには、英国のような野外訓練まで含む徹底した数次にわたる演習が必要なのです。

なにもかも英国の口蹄疫対策に劣っているわが国も、このような野外演習まで含む徹底した口蹄疫演習を早急におこなうべきです。

■写真 レンコン田んぼの夜明けです。画面下の光っているのが水田です。このところ夜明け写真マニアみたいになってきましたこの季節はなんてことがないのですが、夏だと朝4時に起きねばならず、夕陽マニアに転向します。(o^-^o)

■写真 英国口蹄疫緊急対策計画の表紙です。

2011年1月 9日 (日)

韓国口蹄疫  口蹄疫を韓国食肉市場から考える

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「青空」様、非常に興味深いお話です。韓国の牛肉価格は現在非常につり上がっています。とうぜん非汚染地区へ需要が殺到したと思われます。

おまけに、年間を通して最も消費重要が強い年末と新年時期で当たっています。

この商機を流通業者が見逃すはずもありません。ある意味、「口蹄疫特需」とでもいうべきものが韓国国内に生じても不思議ではありません。

すると、牛肉が足りず、一方出荷不可能な地帯は急激に拡大していっている、いわばハサミ状になってしまったわけで、流通業者は今のうち「安全な」牛肉をストックして売りさばこうと考えるでしょう。

非汚染区の生産者も刻々と南下を続ける口蹄疫を前にして、感染するか、殺処分をかけられる前に少しでも売り急ぐ心理となるでしょう。

元々、韓国では牛肉は非常に高価です。韓国紙によれば世界で2番目だそうです。1位はわが国ですが、韓国牛の肉質からみればおかしな気がします。また最上級以外の牛肉では、韓国のほうが日本より高かったそうです。

「韓国の国産牛肉の価格は1キログラム当たり9万4278ウォン(約6781円)で、日本に続き世界で2番目に高かった。オーストラリア産輸入牛肉は1キログラム当たり4万2775ウォンで、中国、日本、台湾に次いで高かった。」(韓国「聯合ニュース」10年11月1日)

「東京は、牛肉最上級の価格はソウルより高かったが、一般の肉の市販価格はソウルより安かった。」(韓国「中央日報」5月16日)

この原因は、このように言われています。

「 韓国の牛肉の価格がこれだけ高い理由は、物量が不足している上、流通構造が複雑だからだと分析された。牛肉価格は特に最近2~3年の間で急激に上がった。狂牛病で2004年から米国産牛肉の輸入を禁止したのが直接的原因だ。輸入牛肉市場の60~70%を占めていた米国産牛肉の空席をオーストラリア、ニュージーランド産が十分に補うことができなかったからだ。」(同上)

このために、外国産牛肉価格の暴騰がおきました。しかし、事態は外国産でとどまらず、国内産牛肉までに波及していきました。

「2003年1キロ当たり6914ウォン(オーストラリア産冷凍肉基準)から昨年1万450ウォンまで上がった。外国産牛肉価格が上がるとそれに乗じて国産牛の価格まで急上昇した。2003年1キロ当たり5万8494ウォンだったソウル地域の国産牛ロースは昨年7万3148ウォンまで跳ね上がった。」 (同上)

つまり、逃げ道のない牛肉価格の高騰です。そしてこの牛肉価格の高騰が起きたのが、去年の口蹄疫事件以前であったことにご注目ください。

口蹄疫以前に韓国の牛肉市場は充分にホットな状態だったのです。ここに韓国牛肉生産を直撃する口蹄疫事件が降って湧いたわけです。どうなるかは火を見るより明らかでしょう。

外国産牛肉の品不足、輸入、国産を問わない価格高騰が起きていて、国産食肉のおおよそ過半が汚染地区に入るとなれば、後は想像する必要すらありません。

しかも、この市場動向に加えて、韓国には前近代的な食肉流通システムが頑固に生き残っていました。

「牛肉価格上昇には複雑な流通構造による流通マージンも影響している。供給物量が不足すると中間販売商が流通マージンを増やしたのだ。農水産物流通公社によると昨年中間輸入商、食肉処理場、加工工場、販売店などを経て上乗せされた流通マージンは牛肉価格の39.3%にのぼる。2002年22.9%にとどまった流通マージンが供給不足に比例して毎年増えている。またかなりの高級レストランでは最終販売価格の2、3倍で牛肉を販売している。」(同上)

決定的な品不足と、4割にも登る加工・流通マージンをもつ流通業者が、この決定的な品不足に際して何を考えるのか・・・それはひとつしかありえません。

投機です。彼らは金を借金してもかき集めて、非汚染地区の食肉をかき集めようとするでしょう。彼らに金を貸すホットマネーは、金余りのこの世界で掃いて捨てるほどいます。

食肉流通業者はこの「口蹄疫特需」を前にして、非汚染区のみならず、アンダーグランドで素性の怪しい食肉、つまり汚染区の肉にも手を伸ばした可能性もありえます。経済が口蹄疫という統制がかかった場合、経験則に照らせば、かならず「裏面経済」を生みだすからです。

このようなことは、形は違いますが、日本でも逮捕者を出したBSEの輸入牛肉偽装事件などでも多々ありました。

いずれにせよ、このことによってふたつのことが起きたでしょう。ひとつは、平時より盛んな畜産関係車両の交通量の増大です。

と場には、早い処理を望む業者が列をなし、と場自体が汚染区、非汚染区の境なくあるために、家畜運搬車、食肉運搬車などのひんぱんな非汚染区と汚染区の行き来がかえって増えてしまったことでしょう。

しかも、一般道路における「消毒」は宮崎大学・末吉先生が指摘されるように凍結によるスリップ事故を恐れておざなりになりがちです。ただでさえ気休めなのに、ましておやです。

こうしてウイルスは、この家畜運搬車と食肉運搬車に乗ってより広範に非汚染区にバラ撒かれていきました。

そしてもうひとつは、食肉の中に潜む汚染区の食肉です。これは統計数字には出てこないアンダーグランドの流通ですが、なしとは言えないでしょう。

口蹄疫を防疫の側面だけではなく、違った経済の側面からも見てみると、今回の韓国口蹄疫も別の顔が見てきます。

■写真 昨日の大木の枝を引いて撮ってみました。なにかアフリカのサバンナの夜明けみたいですが、うちの村です。

■追記 農水省は7日、韓国で大流行している口蹄疫の分析の結果、昨年宮崎県でひろがったものとほぼ同一の遺伝子配列が一致したと発表しした。
(略)韓国の口蹄疫ウイルスを韓国政府が分析した結果、宮崎のウイルスと99%以上一致した。
(「朝日新聞」1月8日)

       ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

以下、昨日の「青空」様コメントを掲載します。後半は略させて頂きました。畜産拠点化提案は面白いのですが、現実性と絡めて別の機会にコメントさせていただきます。

■こんばんは、青空です。
韓国の状況はより悪化している印象です。あまりにも大きく広がっているため、今後圧倒的に人員・消毒資材・重機等が不足し、より感染拡大を見せる可能性があります。同時に発生している鳥インフルエンザも拡大の様相を見せていることから既に防疫体制の構築は困難を極めていると考えます。

宮崎県の場合や、昨年の韓国口蹄疫の発生に対しては防疫布陣は基本的に「封じ込め」です。外にウィルスが漏れないように前線を展開し包囲する形です。
しかし今の韓国の状況では既にウィルスを包囲する形の布陣は不可能です。汚染地域の方が未感染地域を上回ってしまいました。

私見ですが、現在の感染拡大を見ていると次の構図を想像しています。
①口蹄疫発生に伴い、一部の出荷が止まる
②食肉業者は、非感染地域からの入荷を増加させ需要に対応する。
③感染地域が広り、更に別地域の非感染農家からの入荷を増やし対応する。

つまり、感染が広まるほど、非感染農家からの物流が極端に増加するという悪循環の構図です。

しかも家畜運搬車量は恐らく、感染地域の業者からも導入されるでしょう。そうしないと当該地区の運搬業者は干上がってしまいますし、そもそも非感染地域の各種業者のキャパでも対応不可能だと考えます。

結果として非感染地域は従来以上に人・物の流れが増加し、コントロール不可能となり、いずれかの農家が感染し、多すぎる物流により非感染農家まで初期感染で相当レベル逡巡してしまうという仮説が立てられます。

また、口蹄疫は、車輛消毒ではウィルスを殲滅できないのではと感じています。これは是非動研等で科学的に立証して頂きたい事項です。以前何かの記事で読みましたが車輛消毒は物理的な洗浄程度の効果しかなく、安心できる水準の消毒は一車体当たり10分前後は必要だとありました。ということは、消毒度ポイントにある道路は、一時間に12台、12時間で144台しか通れないことになります。現実的に完全な消毒の履行は不可能です。

つまり、口蹄疫については一般道路の消毒が気休め程度の効果しかないのに、万全と考えてしまうためにかえって感染を拡大しているということになります。韓国の感染が止まらないのは上記のような、消毒の過信と物流・人の移動がかえって増大するという点によるのではないでしょうか。

2011年1月 8日 (土)

韓国口蹄疫 100万頭超える! 宮崎大学・末吉益雄先生の提言

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韓国口蹄疫が94万8364頭となり、100万頭の大台を目前にしています。「日本農業新聞」(1月8日)によれば、現在処分を待っている待機患畜も含めると107万5015頭となるようです。

内訳は、豚が97万4469頭と大半を占め、牛が9万7524頭となっています。

今までワクチン備蓄量が30万ドーズしかないために不可能だった豚のワクチン接種が、1月2日に90万ドーズ追加されて、遅ればせで始まったようです。

まだ制御可能な状況からは遠く、このままだと仮にワクチン接種後の殺処分が行われないとしても、東アジア最大規模の被害頭数になることが決定的になりました。

口蹄疫疫学チームに現地から参加した宮崎大学末吉益雄先生は、同日の「日本農業新聞」の中でこう述べているのでご紹介します。

●①冬場特有の対策のとりにくさ。冬場は消毒液が凍結してしまう。消毒液は気温20度で使用を前提としているために、寒さで消毒液が散布できなくなってしまった。

また道路や車両のタイヤに消毒液を散布すると、スリップ事故を起こしやすくなる。また消石灰も散布後の積雪で、効果的が落ちてしまう。

●②宮崎県の場合、口蹄疫が比較的苦手とする紫外線が強い夏場だったが、韓国の場合冬で日照時間が短く、積雪のために紫外線が地表に届かず、ウイルスの死滅がしにくい。

このように現在の韓国の冬季の口蹄疫拡大を分析した上で、わが国に対してこのような警告を発しています。

●③もし、現在日本に伝播した場合、同様な理由で全土に拡がる可能性がある。複数県に発生した場合、どの地域にどのようなワクチンを接種するのか、事前にシミュレーションする必要がある。

発生してからでは遅い。九州で発生したら、関門海峡、北海道なら津軽海峡を境に防疫ラインを敷くといった想定が必要だ。

●④複数県での発生の場合、県外からの応援が期待できない恐れもある。自分の地域は自分で守れる態勢を事前に構築しておく必要がある。

●⑤韓国でも、地域を超えた屠畜場へ出荷していたことも感染拡大が広がった要因だった。家畜の移動について、同様な条件をもつ日本も検討しておく必要がある。

●⑥冬場に出来る対策は消石灰の活用だ。畜舎の周りに撒くなどの対策をしてほしい。

また、今後の韓国での状況をこのように見ています。

●⑦韓国では雪の下で生き延びたウイルスが、春になり雪が溶けて動き出す恐れがある。

●⑧ウイルスが南下しているが、南には養豚地帯がある。釜山と福岡は人の行き来が盛んだ。

●⑨来月は韓国の旧正月だ。韓国で最も人の移動が盛んになる。

●⑩春先にかけて日本に感染拡大の危機が高くなるだろう。

以下韓国紙をスクラップします。
韓国紙では飼料運搬車や糞尿回収車が全国を走り回っており、それが感染拡大の原因と考えられているようです。失礼ながら、それはあたりまえなわけで、韓国自身のもう少し突っ込んだ原因分析が必要なのではないでしょうか。

また、「日本農業新聞」では「韓国の島民新聞」と提携しており、口蹄疫による韓国農村内部の影響が報じられ始めました。機会を改めてご紹介します。

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■韓国だけが急拡散…口蹄疫ミステリー(1)

この冬、世界でも韓国だけで激しい口蹄疫がはびこっている。昨年11月28日に慶尚北道安東(キョンサンブクド・アンドン)で初めて発生してから、全羅北道(チョンラブクド)、全羅南道(チョンラナムド)、慶尚南道(キョンサンナムド)、済州道(チェジュド)を除く全国が口蹄疫の勢力圏に入った。

埋却処分された牛と豚だけで100万頭を超え、埋却場所を確保するのも厳しい状況だ。被害額も雪だるま式に増えている。時価補償額だけで6000億ウォンを超える。

ワクチン接種費用だけで数十億ウォン、防疫装備とスタッフ動員にも数千億ウォンの費用がかかった。政府関係者は、「直接被害額は1兆ウォンで、景気低迷など間接被害まで合わせれば金額はさらに増えるだろう」と話す。

  隣接する台湾と中国、モンゴル、ロシアなどでも昨年に口蹄疫が発生しているが、韓国ほど激しくはなかった。日本も昨年4月に宮崎県で口蹄疫が確認されたが、他の地域には拡散しなかった。それならば韓国だけ“統制不能”が懸念されるほど口蹄疫が広がった理由は何だろうか。

  専門家らは全国的に移動する糞尿回収車と飼料供給車を挙げる。これらの車両が全国を回りながらウイルスを伝播しているということだ。実際、安東で初めて発生してから10日以上慶尚北道外に出なかった口蹄疫は、12月中旬から京畿道(キョンギド)北部を中心に急速に広まった理由は糞尿回収車のせいだというのが国立獣医科学検疫院の暫定疫学調査の結果だ。

  検疫院のキム・ビョンハン疫学調査課長は、「安東で口蹄疫は初めて発生したこと、ある糞尿処理装備開発会社が安東の養豚団地の糞尿2トンを京畿道坡州(パジュ)に持ち込み糞尿乾燥試験を行ったことが確認された。

この会社の近くの農家で口蹄疫が発生した」と明らかにした。その後、坡州、漣川(ヨンチョン)、抱川(ポチョン)、江華(カンファ)など養豚農家密集地域で相次ぎ口蹄疫が拡散した。

建国大学獣医学科のイ・ジュンボク教授も、「口蹄疫が韓半島で広まったのは、畜産農家が全国に広がっている上、媒介となる糞尿処理車や飼料供給車などが隅々まで走り回っているため」と指摘している。

イ教授はまた、「平昌(ピョンチャン)・横城(フェンソン)など江原道(カンウォンド)に口蹄疫が広まったのは京畿道楊州(ヤンジュ)の工場で作った飼料とこれを運搬した飼料供給車が原因となった可能性がある」としている。

この冬、世界でも韓国だけで激しい口蹄疫がはびこっている。昨年11月28日に慶尚北道安東(キョンサンブクド・アンドン)で初めて発生してから、全羅北道(チョンラブクド)、全羅南道(チョンラナムド)、慶尚南道(キョンサンナムド)、済州道(チェジュド)を除く全国が口蹄疫の勢力圏に入った。
埋却処分された牛と豚だけで100万頭を超え、埋却場所を確保するのも厳しい状況だ。被害額も雪だるま式に増えている。
時価補償額だけで6000億ウォンを超える。ワクチン接種費用だけで数十億ウォン、防疫装備とスタッフ動員にも数千億ウォンの費用がかかった。政府関係者は、「直接被害額は1兆ウォンで、景気低迷など間接被害まで合わせれば金額はさらに増えるだろう」と話す。

  隣接する台湾と中国、モンゴル、ロシアなどでも昨年に口蹄疫が発生しているが、韓国ほど激しくはなかった。日本も昨年4月に宮崎県で口蹄疫が確認されたが、他の地域には拡散しなかった。それならば韓国だけ“統制不能”が懸念されるほど口蹄疫が広がった理由は何だろうか。

  専門家らは全国的に移動する糞尿回収車と飼料供給車を挙げる。これらの車両が全国を回りながらウイルスを伝播しているということだ。実際、安東で初めて発生してから10日以上慶尚北道外に出なかった口蹄疫は、12月中旬から京畿道(キョンギド)北部を中心に急速に広まった理由は糞尿回収車のせいだというのが国立獣医科学検疫院の暫定疫学調査の結果だ。
  (韓国 中央日報 1月7日))

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■広がる口蹄疫、韓国だけで100万頭を埋却

口蹄疫のために埋却処分された家畜が100万頭を超えた。農林水産食品部は6日午前までに口蹄疫に感染したり、予防のために埋却された家畜が94万8364頭と集計されたと明らかにした。

またこの日追加で口蹄疫発生が確認された農場4カ所で飼育する家畜は牛550頭と豚5万5731頭に上ることがわかった。通常、口蹄疫が発生すると該当農場と半径500メートル以内で飼育する家畜をすべて埋却するため、この日までに埋却対象となった家畜は最低で100万4095頭以上となる。

これは統計庁が調査した全国の牛と豚の飼育頭数1233万頭の7.6%に相当する規模だ。統計庁によると、昨年12月1日基準で国内で飼育されている牛は韓牛、肉牛、乳牛を合わせ335万2000頭、豚は988万1000頭に上る。

  農林水産食品部は、豚が口蹄疫にかかるケースが急速に増えていることから、豚にも予防ワクチンを接種することを決めた。接種対象は忠清南道(チュンチョンナムド)・忠清北道(チュンチョンブクド)、京畿道(キョンギド)南部地方の種豚と母豚21万頭。

農林水産食品部のイ・サンギル食品産業政策室長は、「口蹄疫が発生した養豚農家を対象に疫学調査を行ったところ、人との接触が多い母豚から主に感染が現れたため、種豚と母豚に限定してワクチンを接種することにした」と説明している。
(中央日報 1月7日)

■李大統領「旧正月の大移動での口蹄疫拡散に備えを」

李明博(イ・ミョンバク)は6日、口蹄疫問題について、「検疫も検疫だが、抗体をはじめ根本対策を立てなくてはならない」と述べた。

青瓦台(チョンワデ、大統領府)で緊急関係閣僚会議を招集した席で、「(海外)旅行客1500万人が出国し、800万人が入ってくる。(根本対策がなければ口蹄疫が)年中行事になりかねない」と述べた。

その上で、「中国・ベトナムの場合、毎年口蹄疫が発生する地域であり根本的対策を求めていくのがよい」との考えを示した。青瓦台関係者は、「これらの国を訪れたすべての人を防疫することを検討しろという意味」と述べた。現在は入国者のうち畜産関係者だけが防疫を受けている。

  李大統領は国民的な帰郷・帰省シーズンとなる来月初めの旧正月連休に備えなくてはならないと注文した。「旧正月連休の際、国内だけでなく国外へも大規模移動が避けられない期間のため、どうすれば口蹄疫拡散を防ぐことができるか徹底して備えるように」と指示したものだ。
(中央日報 1月7日)

■写真 夜の底が白みはじめた時刻の大樹の枝。ちょっとコワイぞ。 

2011年1月 7日 (金)

湖の早朝三景

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今日は朝から湖で写真を撮っていたために記事を書く時間がありませんでした。早朝の湖は心がしんとする美しさです。

最初の写真の右の水車は揚水風車です。残念ながら回っているところを見たことがありません。( ^ω^ )

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日の出前からカモなどの水鳥が魚を探して湖面にでていきます。

下の写真の右側に見える囲いのようなものは、祖だで作った自然護岸です。今コンクリートで囲まれてしまった湖に自然護岸を取り戻す運動をしています。

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2011年1月 6日 (木)

韓国口蹄疫  野生偶蹄類集団と家畜の交差の可能性

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韓国口蹄疫において、野生動物への感染の可能性を考えてみます。

世界各国で野生偶蹄類への口蹄疫の感染が発表されています。たとえば、英国ではノロジカ、中国シカに感染が見られました。

また、野生のイノシシは豚と同じ口蹄疫に対する感受性を持ち、同僚のウイルスを排出します。

アフリカでは、アフリカ・バッファロー、ミュール・ジカ、インパラ、シマカモシカなどへの感染が確認されています。

イスラエルでは、マウンテン・ガゼル集団に感染が生じて50%が死亡しました。また米国では、ミュール・ジカの10%に感染が認められました。

そして、昨日頂戴したコメントによれば、中国の内モンゴル自治区とモンゴルで白尾カモシカも感染したとの情報もあるようです(未確認)。

■追記 AniVet様から英文のサイトProMed
の本文の提供がありましたので付記いたします。
以下引用

中国内モンゴル自治区のひどい口蹄疫感染が国境を越えてコンゴル国の東部地区に侵入、その付近で家畜に感染して、さらに共存する野生の白尾カモシカにも感染してしまったが、狡い中国共産党政府はFAOにも報告しない!。中国では、口蹄疫感染豚は共産中国の何処にでもいる!またPRRSと口蹄疫の混合感染で仔豚がかなり死亡したので、市場の豚肉価格が2倍以上に上昇した。
[The reported rise in sales of processed pork, combined with falling hog and pork prices "because of FMD outbreak in south China", falls in line with the following, earlier information, translated from local Chinese sources:

1. Posting 20100318.0866: "Since there have recently been severe outbreaks of FMD in Jilin, Heilongjiang, Liaoning, and Inner Mongolia" (provinces from where no official disease notification is available as yet; for the list of infected provinces, see further), "there has been an impact on development of the livestock industry.
引用終了

*この英国文献(鹿児島大学岡本嘉六教授訳出)は最下段に抄録しました。全文はこちらからどうぞ。
http://vetweb.agri.kagoshima-u.ac.jp/vetpub/Dr_Okamoto/Animal%20Health/Wildlife.htm

実は、私は昨年の宮崎県児湯郡でもその可能性を最後まで捨てきれませんでした。当地を詳しく踏査されているある研究者の方からご教示を受けました。

氏のご教示によれば、宮崎県児湯郡の地形は、丘陵や山地から海にかけて複雑で急峻な地形です。このような地形には野生動物が多く住んでいます。鹿やイノシシなどです。このふたつの動物は、社会問題になるほど大量に棲息していると思われます。

餌を求めて山地から下ってくることもあり、そのまま定住することもめずらしくはありません。

また、人間が営む畜産もこのような山地に多くの畜舎や放牧地を持っています。その多くは開放型畜舎であり、野生動物集団との接触の可能性があります。たとえば、放牧地の柵の破損からの野生動物侵入は珍しくはないはずです。

いわば、日常的に家畜と野生動物が共生している地形です。「共生」と表現すると微笑ましいニュアンスですが、要するに家畜集団と野生動物集団の生活圏と動線が交わっているのです。

韓国国内でこのような野生偶蹄類集団と家畜が交差していないと考えるほうが不自然でしょう。韓国は険しい脊梁山脈を持ち、今回の発生は平野部のみならず山間地でも発生しています。

わが国では残念ながら、まったく野生偶蹄類への感染の調査はなされませんでした。環境庁も宮崎県も危機感がありませんでした。ご教示頂いた研究者の方は再三にわたって県庁に調査の必要を訴えたのですが、なしのつぶてだったそうです。

韓国においても、児湯地域の地形と似た地形を見受けます。パンデミックと闘う防疫当局に野生動物までへの目配りが難しいのは理解できますが、野生動物への早急な調査が望まれます。

野生動物への感染は、すなわち口蹄疫の土着化を意味しますから。

■写真 冬の田園の夕暮れ。すすきも枯れてきました。

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以下、宮崎県在住の研究者のコメントを抄録します。

■宮崎県北部の口蹄疫発生地域は、平野部の農村地帯とは違い山地が海に迫っており起伏が激しく、海岸段丘がうねっている場所です。

都農、川南、高鍋、新富、木城は全て丘陵から山地にかけての斜面で、海に近い場所でも複雑な地形です。

家畜の畜舎の多くは人家から離れている所で、丘や林に囲まれていることが多く、最近は山地に多くの農場ができています。また近隣の山には放牧地があちこちにあります。

牛舎は大小さまざまで、多くは開放畜舎であり、林、藪や草原に囲まれていて野生動物が日常的に周囲を徘徊しています。

川南の市街地から近い発症豚舎に鹿が居座っていたことが目撃されています。餌のオコボレや堆肥を狙っていると思われます。猪は鹿よりも人家に近づいて、農地を荒らしまくっています。

日向市の場合、市役所から車で10分、距離は5キロくらいの山地の入り口ですが、毎晩鹿が家の周りを歩いていますし、猪は裏手でヌタ場を作っており、林道に無数の獣道があります。夕暮れにはウリボウをゾロゾロ従えて母猪が林道を横断しています。

周辺の谷間の水田には猪よけの電気柵が必須です。していなかった田んぼのなかで稲がなぎ倒されていたことを何度も見ています。

都農の山中を調査していた時に、山の放牧場(水牛牧場のすぐ近く)で鹿が昼間からウヨウヨしていました。木城町でマスコミが放牧場の牛と鹿を撮影していましたが、全く同じことは川南と都農でもおこっています。

というわけで、野生動物の実情をよく知っているので、発生当初から野生動物と接触する感染リスクについて警戒を呼びかけ、県にもメールでアドバイスしたつもりですが、全く手ごたえがなかったので驚きました。

野生動物が再感染に関係するリスクですが、このまま野生の鹿と猪の疫学調査なしで、感染を確かめないままの児湯地区の畜産業の再開は危険だと思っています。もしもすでに感染しているとすれば、野生の鹿と猪は畜舎の周辺に慣れている、言い換えれば共生関係になっている個体が多いはずです

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■口蹄疫の拡散における感受性のある野生哺乳動物の潜在的役割

多くの国々は、口蹄疫に感受性のある(野生または野生化した)自由生活の動物集団を抱えている。口蹄疫がそれらの動物集団に侵入すれば、それらの動物だけでなく家畜にも伝播される。野生動物と家畜の間のウイルスの伝播は、両種の動物が密接している場所ではありふれたことである。

地域において口蹄疫が存続する際の野生動物集団の潜在的重要性は、当該野生動物種の口蹄疫への感受性、それらの動物種が臨床徴候なしで感染状態を持続する能力、それらの動物種の分布、密度、ならびに、家畜やその他の感受性動物との接触の程度などの様々な要素によって異なるだろう。

一般的に、サハラ以南のアフリカ以外では、野生動物の口蹄疫が家畜の病気の延長で起きていると思われる。しかしながら、野生化した動物種の口蹄疫の疫学モデルは、野生化した動物集団に一旦定着すると、そこから根絶することは困難か、不可能であることを示している。米国の先の口蹄疫発生時に、病気を根絶する制御計画の一部としてカリフォルニアで数万頭のミュールジカ(mule deer)が銃殺された。イスラエルでは、マウンテン・ガゼル(Gazella gazella)における口蹄疫の発生の広がりを防ぐために、ガゼルが広範な地域で殺処分され、発生地帯の約50%が殺された。アフリカでは、家畜と野生動物、とくにアフリカ・バッファロー(Syncerus caffer)との接触を防ぐために柵が設けられ、自由生活の動物集団の口蹄疫ウイルスに対するワクチン接種は実行性に乏しい。

■ヨーロッパにおいて

 野生のシカ(Deer of Ireland)がヨーロッパにおいて、少なくともある場合には、口蹄疫の伝播に役割を演じると長年考えられてきた。

 イギリスには、かなりの数のシカ集団が存在する。6種の自由生活のシカの内5種について行われた実験で、家畜からシカ、ならびに、シカから家畜への伝播が可能であり、その中の2種、ノロジカ(Capreolus capreolus)と中国シカ(山羌、Muntiacus reevesi)は重症化し、しばしば致死的であることが示された。その時、野生のシカ集団がイギリスにおける口蹄疫の伝播と継続に重要な役割を持つことはありそうもないと考えられた。それはシカの頭数に関連しており、自然界で家畜とシカが相互に接近することは少ないと考えられたからである。ウシ、ヒツジおよびシカが並んで牧草を食べているシカ公園のような場所における伝播は起きそうである。

 これらの研究が行われた時点以降に、イギリスのシカ集団の規模はかなり拡大している。いくつかの地域、とくに高台では、家畜とシカが同じ場所で普通に草を食べており、種を越えた(家畜からシカ、ならびに、シカから家畜)伝播が起きると想定される。家畜からシカへの病気が伝播する可能性を忘れてはならない。

 ヨーロッパにおいて口蹄疫が家畜から広まり、野生のシカ集団に定着した場合、その地域においてワクチン未接種で動物を飼育することは安全でなくなるであろう。

 野生のシカにおける口蹄疫の制御は困難だろう。その広がりは、関連する動物種の社会的繋がりと密度に依存し、「数週間から数ヵ月後に消滅する」かもしれない。

 重度の臨床症状のあるシカは遠くへ行けず、ウイルスを運ぶことはないだろう。しかしながら、臨床徴候が出る前の感染状態、あるいは、臨床症状が軽い場合に、その期間は口蹄疫を広げることがあり得る。

 野生または自由生活の動物集団において感染が持続するかどうかに影響する要因には、「頭数密度と分布、生息地の要件、社会的繋がり、年齢構成、行動圏、ならびに、分散の障壁」が含まれる。地理的密度、集団の規模および連結性(connectivity)は集団間での伝播に影響する最も重要な要素である。

● 野生イノシシ(Sus scrofa)も口蹄疫に感受性がある。野生イノシシの口蹄疫は、家畜のブタと同様であり、おそらく、ブタと同量のウイルスを排出する。世界の他の地域における野生イノシシは、その他の動物種への感染源とみなされており、イギリスとヨーロッパのその他の地域で野生イノシシが感染してブタに伝播することはないとする根拠は全くない。

Wildlife Information Network, The Royal Veterinary College, United Kingdom

2011年1月 5日 (水)

韓国口蹄疫 韓国種牛に発生!豚、未発生地域にもワクチン接種検討へ!処分数78万頭に!!

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さまざまなコメントを頂きました。ありがとうございます。
韓国口蹄疫は78万頭に殺処分数が達し、5道1広域市に拡大しています。ワクチン接種頭数は70万9百頭です。豚への接種も検討され始めたようです。

下の韓国紙のスクラップでもお分かりのように、韓国口蹄疫が制御不能の状態を呈しています。嶺西(ヨンソ)地方で発生した口蹄疫が太白(テベク)山脈を越えて江陵に侵入しました。

この地は韓国ブランド牛を飼育する種牛農場「ハンウリョン」ブランド事業団でした。これによって、江原道内の高級韓牛6大ブランドがすべて影響を受けることになります。

江原道6大韓牛ブランドとはハンウリョン韓牛、横城(フェンソン)韓牛、原州雉岳山(ウォンジュ・チアクサン)韓牛、ハイロク韓牛、洪川(ホンチョン)ヌルプルム韓牛、大関嶺(テグァンリョン)韓牛です。

これによって、中央日報・朴鍾権論説委員の言うように「江原道(カンウォンド)は大関嶺(デグァンリョン)、ハイロク・雉岳山(チアクサン)、横城(フェンソン)、ヌルプルムに続いてハンウリョンまで、6大ブランドがすべて感染した」ことになるそうです。

韓国は、この間積み上げてきた韓牛ブランド化事業に重大な危機を迎えたことになります。とうぜんのこととして、種牛にもワクチン接種が急がれていると思われます。

また、韓国政府は未発生地域においてもワクチン接種を検討していることがわかりました。この口蹄疫の勢をみるとそれは不可避な状況だと思われます。

つくづく初期のあいまいなワクチン戦術が恨まれます。あの時期に徹底した牛・豚同時ワクチン接種と、殺処分を組み込むべきでした。ワクチン接種・全殺処分・懐疑派の私ですらそう思います。韓国政府は決断力と批判される異になるでしょう。

宮崎口蹄疫事件においては、結果として多大な犠牲を払いながらも、宮崎県東部地域での封じ込めに成功しました。この宮崎事例と韓国事例を比べてみるとなにかが分かってくるかもしれません。思いつくままに書き出してみましょう。

●初動では、韓国はお家芸とでもいえる素早い処分をかけました。宮崎県のほぼ20日間に近い初動制圧の遅れとは大きなな差があります。

●その後の埋却処分も、一説(やや信じがたいですが)1日1万頭のペースで進みました。これも発生から1カ月たった5月中旬で数万頭の待機患畜を抱えていた宮崎とは大きな違いです。

●疫学調査も、韓国では早期に発表されました。これもわが国が終息した後にようやく出るといった極度の遅さとは対照的です。

●口蹄疫発生と同時に、韓国においては中央に省庁横断的な緊急対策本部が設置されました。これは後に中央災難安全対策本部に格上げになります。
一方わが国では、農水省動物衛生課が主管する国の対策本部と、県知事が権限を持つ県対策本部との二重構造が緊急対策を進める上での亀裂を招きました。

ここまでは、どなたも思われる、韓国防疫陣の能力の高さを証明することばかりです。しかし、その後はあり得べからざる状況を私たちは見ることになります。

●宮崎県では児湯地域を中心にして、えびの市を除き南北に感染拡大したところで感染は停止しました。
一方韓国においては、この4月に京畿道で発生し、終息した後に、11月に再発し、忠清北道⇒忠清南道⇒再び京畿道・江原道へと循環していき、まだその勢いはまったく止まらず今に至っています。

では、この感染拡大期にとられた両国の防疫方針を比較します。

●韓国は初動におけるリング・カリング方式(*患畜、疑似患畜をとわず、発生農場から一定の範囲内の家畜をすべて殺処分とする方式)をとったことに対して、わが国は5月中旬より、ワクチンを牛・豚同時接種することで感染速度を緩め、その間に殺処分の遅れを取り戻し、埋却を進めました。

私には、韓国政府は自らの成功パターンである初動リング・カリング方式に過大な自信をもち過ぎたように思えます。今までわずかな殺処分で封じ込めに成功していたという歴史が、韓国防疫当局に成功パターンとして確固たるものとなり、結果、それが破綻するともはや次に打つ手が思い浮かばなくなってしまったのです。

この傾向はわが国でもありました。それは2001年の旧宮崎口蹄疫の制圧成功により、それを超える事例を想定しえなくなって、2010年の失敗を招いてしまいました。

●韓国政府は、リング・カリング方式以外に防疫戦略を持っていなかったのだと思われます。ですから、いったん初動制圧に失敗し、飛び火が重なると防疫当局はパニック状態になったと思われます。

もちろん常識としてワクチン備蓄はしていたとしても、このような大規模伝染拡大を想定したものではありませんでした。

*[追記] 韓国ワクチン備蓄量についてコンタン様から情報提供をいただきました。ありがとうございます。30万ドーズとして、宮崎のように接種すれば15万頭分です。豚はしたくてもできなかったことになりますね。1月2日の90万ドーズの追加を得て豚や未接種地域まで検討することになったと思われます。それにしてもたった備蓄30万ドーズとは・・・。

[引用開始]
韓国のワクチンの保有量は、当初30万ドーズ。1月2日に90万ドーズ追加。1月14日と1月20日に125万ドーズずつ追加予定。

それに対して、韓国の飼育頭数(2009年)は、牛が308万頭(但し、1/3時点で66万頭が殺処分対象)豚が958万頭 となっています。[引用終了]

そして肝心のワクチンをどのように使用していくのか、どの時期に投入するのか、その範囲はどのようにすべきなのか、その後にどのような処理をしていくのか、をまったく考えていなかったようです。

韓国の口蹄疫緊急対策方針がこの4月の発生を受けて、変更になったことも各地の防疫陣を混乱させたようです。いずれにせよ、柔軟な防疫方針の運用ができなかったことは確かです。

●このことは宮崎県における、山田前大臣に指揮権が移行した後の国の断固とした方針決定とは対照的です。国は、ワクチン接種した後に、一切の妥協をすることなく全殺処分にしました。その補償などのために口蹄疫特別措置法すら作りました。

これは県、民間種牛においても例外ではなく、その苛烈さが県知事との確執にまで発展しました。

一方韓国政府は、いまだワクチン接種の範囲も定かではなく、ようやく感染爆発が連続した今に至って、豚や未発生地域でのワクチン接種を検討するという対応の鈍さをみせています。

豚の接種はようやく検討が始まったようですが、牛のみにワクチン接種を限定するという致命的なミスをしています。

また、ワクチン接種後に殺処分をしないという韓国の方針は、もはや「ワクチン未接種・清浄国」に復帰する意思をなくしたかにも見えます。自由貿易を国是とする韓国にとって、それは「清浄国」という巨大な貿易上の楯を失くすことを意味します。

●宮崎県においては、一般市民まで含めて非常事態宣言後は集会や大会が自粛されました。これは大きな負担を県民にかけましたが、有効な感染封じの方法であったと思われます。

もし、この集会の自粛がなければ、隣接する県に持ち出された可能性が高いのではないでしょうか。

一方韓国においては、情報不足ですが、そのようなことがなされているとは思えません。それは韓国へ渡航する日本人観光客に対して韓国政府がなんの警告もしていないことをみれば分かります。

日本政府もさることながら、韓国政府は仁川国際空港の近隣で発生を見ながら、なぜ観光客に警告を与えないのでしょうか。ありえないことです。

●韓国口蹄疫の事例をみると、リング・カリング方式でいくら発生地点周辺からウイルスを除去しても、それは真の「清浄化」にはつながらず、場所を変えて飛び火発生する可能性が高いようです。

口蹄疫ウイルスは場所を変えて、国内のどこかに潜伏し続けていると考えるべき対象だと認識したほうがいいと私は思います。ただ、発症に気がつかず自然治癒してキャリアーになってしまい、管理者の目にとまらないだけかもしれません。

というのは、韓国の年来の発生の特色は、頻発することです。昨年4月までは発生頭数こそ少なかったものの頻発しています。そのつど初動全殺処分で対応していましたが、実はウイルスは既に防疫網をくぐって外部に持ち出されていたと思われます。

そうでなければ、あのような3月~4月期の飛び火現象はありえません。それが大規模化したのがこの11月以降の状況なのではないでしょうか。韓国においては、すくなくとも北部5道においては口蹄疫ウイルスは随所に潜伏しており、発生する機会を待っていただけなのかもしれません。そう考えるとぞっとします。

●私は韓国において口蹄疫ウイルスは土着化したと思っています。野生の鹿やイノシシに口蹄疫が感染してしまっていたのです。これは山中の僻村でも発生している事例から想像されます。、

このような野生動物への感染は決して珍しいことではなく、アフリカのインパラなどに例がありますが、いったん野生偶蹄類への口蹄疫が感染すれば、それはウイルスの土着化を意味します。となると、ウイルスの根絶は半永久的に絵空事になります。

韓国畜産は、この1月中でその運命が決まるでしょう。私たちは支援の声を送りつつ、注視していかねばなりません。

以下、韓国紙をスクラップします。

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江原6大韓牛ブランド、口蹄疫で“焦土化”

「韓牛を守るために初日の出行事までキャンセルしたというのに…」。日曜日の2日午後2時、江原道(カンウォンド)江陵(カンヌン)市庁の大会議室。嶺東(ヨンドン)地域を代表する韓牛ブランド「ハンウリョン」事業団のチェ・ドングァン団長は悲痛のため言葉を失った。崔明熙(チェ・ミョンヒ)江陵市長の主宰で開かれた「口蹄疫防疫対策」会議でだ。

  この日、江陵市庁は一日中、衝撃から抜け出せなかった。江陵市邱井面於丹里(クジョンミョン・オダンリ)の韓牛農家で口蹄疫陽性判定が出たことが、午前10時ごろに伝えられてからだ。防疫担当公務員と畜産農家代表ら約40人が緊急招集された。崔市長は「高級韓牛ブランドを守るために全力を尽くしてきたが、信じられない…」と茫然自失した表情だった。

  江陵市と畜産農家は、嶺西(ヨンソ)地方で発生した口蹄疫が太白(テベク)山脈を越えて嶺東地方に広がらないよう総力を尽くしてきた。一部の道路を閉鎖し、二重、三重の遮断防疫をしたが、結局、口蹄疫は広がったのだ。

この日、江陵で口蹄疫が発生したことで、江原道内の高級韓牛6大ブランドがすべて影響を受けることになった。江原道6大韓牛ブランドとは▽ハンウリョン韓牛▽横城(フェンソン)韓牛▽原州雉岳山(ウォンジュ・チアクサン)韓牛▽ハイロク韓牛▽洪川(ホンチョン)ヌルプルム韓牛▽大関嶺(テグァンリョン)韓牛。

  昨年12月22日に平昌(ピョンチャン)「大関嶺韓牛」ブランド地域で初めて口蹄疫が発生して以来、6ブランド地域に相次いで広がった。ハンウリョン韓牛は江原道、東海岸と隣接した江陵・東海(トンヘ)・三陟(サムチョク)など7市・郡で飼育する韓牛の共同ブランド。

昨年4月、ハンウリョン韓牛1277頭は嶺東圏では初めて、江原大親環境農産物安全性センターから無抗生剤畜産物認証を受けた。「ハンウリョン」ブランド事業団のチョン・ナムジン係長は「無抗生剤畜産物の認証を受け、全国最高韓牛ブランドに飛躍する基盤を用意したが、口蹄疫の発生で心配が深まっている」と述べた。すでに口蹄疫の発生で直撃弾を受け、ブランド品の韓牛生産地域ではため息ばかり聞こえてくる。ブランドの名声を取り戻すための対策はまだ考えられないほど衝撃を受けている。

  1995年からブランド化事業を推進した横城韓牛は、2009、2010年に農林水産食品部から国家名品ブランドとして認証を受けた。横城畜産協同組合のコ・ミョンジェ組合長は「肉汁が多く、味に深みがある横城韓牛が受難し、天が崩れ落ちるような気持ち」と語った。洪川地域の代表ブランドでヌルプルム韓牛は1等級品質の肉生産費率が94%にもなり、国内ブランド韓牛のうち最も優秀だという評価を受けた。

  大関嶺韓牛は汚染されていない自然環境で飼育されるという点を前面に出していた。このため97年から毎年200-300頭を日本に輸出しているが、今回の口蹄疫で大きな打撃を受けた。原州地域の代表韓牛ブランドである雉岳山韓牛は隣接する首都圏の消費者向けに集中マーケティングをしてきたが、今回の感染で販路を失う危機を迎えている。生産・飼育・食肉処理・加工・販売など全過程を電算化して統一された飼料を供給するハイロク韓牛の関係者も頭を悩ませている。

(韓国中央日報1月4日)

口蹄疫:未発生地域でもワクチン接種を検討

慶尚南道天安でも発生

未発生地域でもワクチン接種を検討中

牛や豚などの伝染病である口蹄(こうてい)疫が2日、忠清南道の天安市でも発生した。特にこの日、口蹄疫が発生した忠清南道天安の乳牛農家は、交通量が多い京釜高速道路近隣にあり、忠清南道最大の韓牛(韓国産の肉牛)団地である洪城をはじめ全国に拡散する可能性が大きいため、防疫当局は厳戒態勢を取っている。

 今回の口蹄疫拡散により、政府は口蹄疫が発生していない地域でも予防のためのワクチン接種を検討することにした。現在までは発生地域のみを対象にワクチンを接種してきた。劉正福(ユ・ジョンボク)農林水産食品部長官は、この日記者に会い、「先制的、予防的な意味で口蹄疫が発生していない地域についてもワクチン接種を検討している」と話した。

 一方、昨年12月31日に忠清南道天安市と全羅北道益山市で発生した、ニワトリやカモなど鳥類の伝染病である鳥インフルエンザ(AI)は、さらに2日に慶尚南道泗川市で死んでいた野生のマガモからも検出された。しかし、ニワトリやカモの農場からは、さらなる発生はなかった。
(朝鮮日報 1月3日))

■【噴水台】韓牛の悲鳴

牛は地球上で人間に次いで多いほ乳類だ。 家畜として飼われたのは8000年前。 韓国の韓牛はモンゴル・中央アジア系統で、中国の延辺韓牛、日本の和牛と同じ種という。 三国史記は、新羅(シルラ)の智證王が農耕を勧めたことで初めて‘働く牛’になったと伝えている。 農耕社会で牛は財産目録1号だ。

  柳致真(ユ・チジン)は演劇「牛」でその比重を見せた。 小作人ククソの家の財産、生計手段であり、長男の結婚資本、次男の創業費用だ。 その牛が連れて行かれて家庭が没落する過程を描いている。 このため朝鮮時代にはむやみに屠殺できないように牛籍を作った。 角の形、毛の色、旋毛の位置を記録した牛籍台帳は1970年代まで面事務所の主要帳簿だった。

  韓牛は黄牛が代表的だが、黒牛と白牛もいる。 母似のしま模様の小牛や詩人の鄭芝溶(チョン・ジヨン)の「郷愁」に出てくる牛はともにまだら牛だ。 まだら模様がトラと似ているため虎斑牡とも呼ばれる。 日帝強制占領期の黄牛単種化で消えたが、最近復元され、鬱陵島(ウルルンド)に400頭余りが飼育されている。 黒牛は済州(チェジュ)特産だ。 承政院日記には、仁祖13年、済州国家放牧場で保護飼育するように求める啓が記録されている。

  耕運機の登場で仕事を失った韓牛は食肉として再照明を受ける。 文化人類学者マーガレット・ミードは「英国人とフランス人は牛肉を35部位、東アフリカのボディ族は51部位に分けるが、韓国人は120部位に分けて食べる」と驚嘆した。 現在、市販される牛肉も部位別名称は39にのぼる。 カルビも本カルビ・コッカルビ・チャムカルビ・カルビサル・マグリ・トシサル・アンチャンサル・ジェビチュリの8種類にもなる。

  最近は「ブランド韓牛」だ。 飼料と去勢の時期、肥育方式の違いでそれぞれ最高の肉質を誇っている。 南海(ナムヘ)ファジョン・河東(ハドン)ドルイプ・陜川(ハプチョン)ファント・チャムイェウ・トバウなどの名前もいろいろだ。 ところが全国で韓牛の悲鳴が痛ましい。

口蹄疫のためだ。 清浄地域の江原道(カンウォンド)は大関嶺(デグァンリョン)・ハイロク・雉岳山(チアクサン)・横城(フェンソン)・ヌルプルムに続いてハンウリョンまで、6大ブランドがすべて感染した。

映画「カウベル」の牛は口蹄疫時代の伝説だ。 なんと40年を生きた。 牛の平均寿命は20年だが、食肉処理適齢の24-30カ月も生きられず殺処分された家畜が60万頭を超える実情でだ。 主人公のチェさんは寄付で100万ウォンを寄託したが、果たしていつごろ軽快な鈴、鳴き声を聞けるのだろうか。

  朴鍾権(パク・ジョングォン)論説委員 韓国中央日報 

■追記コメントに上記中央日報社説に対してコメントがありましたので付記いたします。

以下引用

中央日報記事の訂正を願います。
韓牛のまだら牛などが「日帝強制占領期の黄牛単種化で消えたが」とあたかも日本が韓国牛の改悪した論調に記述されていますが、反日朝鮮人の書く文章はすべて吟味しなければなりません。韓国では儒教がいまだに、社会の隅々に悪影響を及ぼしていて、「黒色は不吉な色とされているので特に体表が黄色で黒まだら色の牛は特に不吉とされ淘汰された」のです。

引用終了

■写真 夕陽に染まる畑。なにか火星のようですね。

2011年1月 4日 (火)

韓国口蹄疫 韓国農民への手紙            한국 농민에의 편지

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한국의 축산농가의 여러분에게, 일본의 축산농가에게서의 격려의 말을 보냅니다
. 우리들은 한국의 FMD의 확대를 마음속으로부터 걱정하고 있습니다.

우리들은 이 사건을 타국으로서 생각하고 있지 않습니다.
매일 한국의 FMD의 확대의 뉴스를 읽고, 내(우리) 것 처럼 마음을 괴롭히고 있습니다.

우리나라와 한국은 좁은 해협에서 사이에 둘 수 있었던 이웃나라입니다.
그리고, 바이러스에는 국경은 없습니다. 그러니까, 우리들의 나라의 축산농가와, 한국의 축산농가는 같은 배를 탄 동료입니다.
우리들은 같은 흰 장화를 신는 농민입니다.

우리나라는, 작년 미야자키현(宮崎縣)에서 약29만마리에도 이르는 대량의 피해를 낸 FMD를 경험했습니다.
그 손톱 자국은 크고, 아직도 많은 농민이 재건 도상의 길게(오래) 괴로운 싸움을 계속하고 있습니다.
많은 농민은 아직도 텅 빈 축사와 다액인 빌린 돈을 안아서 고생하고 있습니다.
그리고 많은 농민은 소나 돼지의 무덤을 만들고, 꽃을 바치고 있습니다.

끝나지 않는 밤은 없습니다. 한국의 농민의 여러분, 열심히 해 주십시오. 반드시 폭풍에는 끝이 있습니다.

꺾이지 말아 주십시오.

여러분의 이 고난이 하루라도 빨리 끝나는 것을 마음속으로부터 기념하고 있습니다.

이 문장은 자동번역에 따랐습니다. 우스운 부분이 많이 있을 것이라고 생각합니다만, 양해해 주십시오.

韓国の畜産農家の皆さんに、日本の畜産農家からの励ましの言葉を送ります。私たちは韓国の口蹄疫の拡大を心から心配しています。

私たちはこの事件を他国のこととして考えていません。毎日韓国の口蹄疫の拡大のニュースを読み、わがことのように心を痛めています。

わが国と韓国は狭い海峡で隔てられた隣国です。
そして、ウイルスには国境はありません。ですから、私たちの国の畜産農家と、韓国の畜産農家は同じ船に乗った仲間なのです。
私たちは同じ白い長靴を履く農民なのです。

わが国は、昨年宮崎県で約29万頭にものぼる大量の被害を出した口蹄疫を経験しました。
その爪痕は大きく、いまだに多くの農民が再建途上の長く苦しい戦いを続けています。
多くの農民はいまだにからっぽの畜舎と多額の借金を抱えて苦しんでいます。
そして多くの農民は牛や豚の墓を作り、花を供えています。

韓国の農民の皆さん、がんばって下さい。必ず嵐には終わりがあります。
終わらない夜はありません。
くじけないで下さい。

皆様方のこの苦難が一日も早く終わることを心から祈念しております。

この文章は自動翻訳によりました。おかしな部分が多々あるだろうと思いますが、ご了承ください。

■本日の「日本農業新聞」によれば、韓国の殺処分数は65万頭に達しました。

2011年1月 3日 (月)

巨大ガラパゴス、それがわが日本農業です      韓国口蹄疫、畜産心臓部の慶州に侵入

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宮崎の皆様、大雪の影響はいかがでしょうか。

元旦のテレビで99歳詩人の柴田トヨさんの番組を観ました。「くじけないで」の詩集が、どのような人たちに受け入れられ、どのように立ち直る杖となったのかをつづった番組でした。

その中に宮崎県の口蹄疫被災者の牧場が登場します。酪農を営み夫婦で牛を慈しんできました。それが一瞬でなぎ倒されていきます。すべての牛が処分されて、空調のファンが寒風にカラカラと鳴る牛舎。すべての清浄化作業を終えての空白の日々。

夫は一時絶望のあまりに生活も乱れがちになります。私と同年配の方でした。この年代で、経営のすべてを失うことがどのようなことか、私たち畜産農家には肌でわかります。わかるというのもおこがましい、共に泣くしかない。

その時、妻が読み、そして夫の作業部屋の机に置いたのがこの柴田トヨさんの「くじけないで」でした。

去年の冬に夫は補償金の一部を当てて、15頭の乳牛を北海道から導入しました。まだ搾乳は先の話です。しかし、牛に餌をやる作業がうれしいという夫の作業風景が心に残りました。

そうなのです。私たちにとっての幸福とは、毎朝彼らに餌をやること、いや、やれることです。腹を減らして寄ってくる彼らに、「こらこら全部にやるから押すなって」と言いながら、餌をやること、日々この単純で確かな会話を彼らと交わしし続けていくこと、これにまさる喜びはありません。

宮崎県の被災農家が一日も早く復興されんことを心からお祈りします。くじけないで下さい

         。゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

さて、「南の島の黒毛和牛繁殖農家」様からコメントをいただきました。ありがとうございます。ひょっとして石垣ですか?私、名護の山の中で2年間ほど百姓していました。懐かしい!

頂戴した内容は以下です。

>英、独、仏の輸出入の相手国や品目の詳細を踏まえた上で分析する必要があると思います。食料自給率が高いのに食料輸入が多いという事は、食料輸出も多い事が容易に推察できます。

おそらく、英、独、仏は共同経済圏であるEU諸国内で多くの食料を輸出入していると思います。また、過去に植民地支配していた国々との貿易上の結びつきもあるでしょう。
日本と比べ食料輸出入の状況が違う可能性があります。中身を精査せずに、この統計上の数字だけで、結論付けるのは、少々早計ではないでしょうか?


なるほど。おっしゃることはよく理解できます。私が調べながら引っかかったのも、実はこの点でした。

ご承知のように自給率の数字の取り方には二種類あります。

ひとつは、世界で日本のみが使っているカロリーベース自給率です。韓国も計算していますが、重きを置いていません。ましてや世界中の国々で、カロリー自給率という農業経済指標を計算する国はただのひとつもありません。

他の諸国が使わないというのは、要するに意味のない数字だからです。意味があれば、GDPなどのようにすべての諸国が採用し、自国の農業を計る物差しにするはずですから。

この異様さはそのうち詳述するつもりでいますが、ではもうひとつ、より実態に近い農業生産額ベースの自給率があります。こちらで見ると、日本は自給率66%となります。これは農水省自身が計算してアップしている数字です。もっとも、なぜか農水省は完全に無視していますが。( ̄Д ̄;;←今年も絵文字にはまってます。

私はこちらの生産額ベース自給率のほうが、現役農家としてしっくりきます。ちなみに66%という数字は主要先進国のなかで第3位です。

ではこの生産額ベース自給率の第1位はというと、やはり米国でした。第2位はフランスです。共に100%超えをしています。これはカロリーベース計算でも同様です。

不思議ですよ、確かに。
主要5カ国のなかで食料輸入金額では米、独、英、日、仏の順でしたし、食料輸入量を割った重量も、同じく主要5カ国中で独、英、仏、日、米の順でした。

米国は食料輸入額でも世界一なのにもかかわらず、生産額自給率でも第1位なのです。フランスも相当量を輸入しているにもかかわらず第2位につけました。

この理由はこう説明できます。単純に輸出量が輸入量より多いからです。(*^-^)

もし日本が自給率を100%にしたかったのなら、輸入をしなければいいだけです。こうすれば、終戦直後のような飢餓的自給自足が可能となり、農水省の理想であるカロリー自給率100%が達成できるはずです。

皮肉はともかく、生産額ベース自給率第4位のドイツ、第5位の英国は農産物輸出も多いのですが、輸入も多いのです。日本は国内農業生産が輸入を上回っていますから、自給率は高く表示されます。輸入農産物額は460億ドルに対して、国内農業生産額は826億ドルです。

日本は国内農業依存度、つまり農業生産に占める国内農産物シェアが主要国で第1位です。しかし、その反対に輸出額はだんぜんビリというか、ほとんどなされていません。ようやく端緒についたところだと言っていいでしょう。

まさにこの国内シェアと生産額が首位、しかし輸出がビリというギャップが日本農業の特徴なのです。

その理由はいくつかあるでしょう。
まずは、国内市場が非常に大きいことです。メディアからはみじめたらしい話しか聞こえてきませんが、1億人を超える人口大国であり、1人あたりGDPが3万4千ドル、しかも舌と目が肥えた単一言語をもつ成熟市場など世界にそうザラにあるものではありません。いや皆無でしょう。

この国内市場だけで、ある意味閉塞して成長を続けられたのが日本経済であり、日本農業だったわけです。それは苛烈な国内競争を生み出しましたが、ガリバー型巨大企業が単一に支配することなく、多数の競合という図式が維持されつづけてきました。

わが農業でも事情は一緒です。時々、特に財界人の人たちが農業異質論を唱えると、私は、なにを言ってるんだか、あんたらと一緒だよ、と常に心の中でつぶやいています。

国土が亜寒帯から亜熱帯にまで縦に長く、世界でトッイプクラスの長大な海岸線を持ち、脊梁山脈によって複雑な気象と地形を持ち、それ故に実に多様な作物と品種があります。

りんごだけで何種類ありますか、大豆の種類だけで両手両足の数を軽く超えます。均一化が進んだとはいえ野菜にしてもその地でしか採れない野菜など数かぎりなくあります。

そして果樹、野菜、畜産、米に関しては、うぬぼれではなく世界最高の農業技術を持っています。日本の米、果樹、野菜、牛肉、豚肉、そしてわが家業の卵で、世界のどこの国にも負ける気はしません。

施設栽培、露地なんでもオーケーです。冬にでも夏にでも、春の端境でも日本のどこかの産地が出荷ができます。

やりすぎなくらいの規格、こまやかな品作り、次々に生まれる新品種、これらを通年にわたって適切な市場価格で供給できる日本農業が、そうそう簡単に外国農産物に国内シェアを譲り渡すはずがないではありませんか。

それに対して、ヨーロッパ諸国は寒冷な土地柄であり、米作は一部を除いて不可能で、効率の悪い麦作が中心でした。彼らが肉食に傾いたのは、麦や牧草を効率よく動物タンパクに転換するには牧畜しかなかったからです。

たとえば、ドイツや英国で出来る果樹は限定されています。品種がおそろしく貧しいのです。野菜も通年供給は不可能で、相当量を輸入に頼っています。英国の野菜の生産額ベース自給率は、驚くなかれわずか40%にすぎず、果樹に至っては10%です。

施設園芸で乗り切る努力をしたのですが、しかしイタリア、スペイン、南仏、北アフリカ、イスラエルなどの温暖な地帯の農産品と市場競争で負けてしまいました。

そしてなによりEUです。EUについて語りだすと長くなるので回を改めますが、このヨーロッパ単一市場は、カロリー、生産額ベースを問わず国内自給率という概念そのものを無意味にしつつあります。

一方わが国は、EUのようなアジア共同市場は、少なくともTPP以前にはなかった条件でした。

このようにそれぞれの国にはそれぞれの特色があります。わが国はその中でアドバンテージがある地位にあると私は思っています。巨大ガラパゴス、それがわが日本農業です。

■写真 毎日零下です。大霜が降ります。皆さん風邪をひかないでくださいね。

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■追記 朝鮮日報の口蹄疫、トリインフルの記事をスクラップします。慶州と南楊州で口蹄疫への感染が確認されたのは初めてです。当局の防疫網がまたもや破られたことになります。

慶州は韓国最大の韓牛産地であり、韓国牛生産の心臓部です。ここに侵入されるとしたら、韓国畜産業ははかりしれない打撃を受けることになります。

殺処分された家畜の数は58万456頭、殺処分にともなう補償額も推定で5500億ウォンを超えました。防疫当局は、江原道横城の家畜に対してもワクチンを接種することにしました。

トリインフルは忠清南道天安市にある種カモ農場と、全羅北道益山市にある養鶏場で発生しました。鶏10万2000匹、カモ1万羽が殺処分されました。韓国はまさに前門の虎、後門の狼といった非常事態に突入したことになります。

■鳥インフル:天安と益山で発生
2年7カ月ぶりに感染確認
口蹄疫は慶州まで感染拡大
ソウル大公園内の動物園とオリニ大公園の動物園は10日まで休園 

韓国で2年7カ月ぶりに鳥インフルエンザ(AI)の発生が確認された。鳥インフルエンザは鶏やカモなどの鳥類が主に感染する伝染病だ。牛や豚など蹄が偶数に割れた動物が主に感染する口蹄疫が史上最悪のペースで広まる中、人間に感染する恐れもある鳥インフルエンザの発生も確認されたことで、政府は超非常態勢に入った。

 農林水産食品部は31日、「忠清南道天安市にある種カモ農場と、全羅北道益山市にある養鶏場から、先月29日に鳥インフルエンザ感染の疑いがあるとの届けがあった。
届けを受けて詳しく調べたところ、これらの農場で高病原性鳥インフルエンザの発生が確認された」と発表した。高病原性鳥インフルエンザは感染力が強い上に、鶏の場合は感染から1~2日と短期間で死ぬほど致命的な伝染病だ。

 感染拡大を防ぐため、防疫当局は届けのあった天安と益山のカモ農場や養鶏場だけでなく、そこからカモや鶏などを買い取った別の養鶏場やカモ農場でも、鶏10万2000匹、カモ1万引きを殺処分した。また感染確認現場から半径10キロ以内を警戒地域に指定して消毒活動を強化すると同時に、鶏やカモの移動を制限するなど、緊急の対策に乗り出した。

 韓国で高病原性鳥インフルエンザの発生が確認されたのは2003年、06年、08年で、08年5月以降は感染が報告されていない。これを受けて韓国は08年8月に鳥インフルエンザ清浄国として指定されたが、今回の感染確認でこの地位を失うことになる。

 高病原性鳥インフルエンザには鶏やカモなどの鳥類が感染するが、感染した鳥と長期間にわたり接触した場合には、人間にも感染するケースがあり、咳や発熱、筋肉痛など、季節性インフルエンザと同じような症状を訴えるようになる。しかし韓国では人間に高病原性鳥インフルエンザが感染したという報告はない。

 防疫当局の関係者は、「鳥インフルエンザのウイルスは、摂氏80度で1分間加熱すれば死滅する。感染拡大の危険がある地域からの商品出荷は行われないため、市場に流通する鶏やカモの肉、卵などは安全だ」と説明している。

 一方、昨年11月28日に慶尚北道安東で感染が確認された口蹄疫は、この日も感染の勢いが衰えていないことがわかった。口蹄疫は牛や豚などの家畜に感染する伝染病だ。

 農林水産食品部はこの日、「慶尚北道慶州市安康邑、京畿道南楊州市真乾邑、慶尚北道永川市花山面など3カ所の韓牛農場と、江原道横城郡隅川面の養豚場で口蹄疫の陽性反応が出た」と発表した。
慶州と南楊州で口蹄疫への感染が確認されたのは今回が初めてで、いずれも政府が設定した防疫網(感染拡大地域から半径20キロ以内)から外れた地域だ。また慶州は韓国最大の韓牛産地でもある。

 この日の時点で口蹄疫の感染が確認されたのは32の市と郡で、発生件数は65件にまで拡大した。殺処分された家畜の数は58万456匹、殺処分に伴う補償額も推定で5500億ウォン(約398万円)を上回った。防疫当局はこの日、江原道横城の家畜に対しても口蹄疫予防ワクチンを接種することにした。

 ソウル市は口蹄疫と鳥インフルエンザの感染拡大を防ぐため、1日から10日までの期間、ソウル大公園の動物園と、ソウル市陵洞のオリニ大公園動物園を開園しないと発表した。

(朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2011年1月1日)

2011年1月 2日 (日)

ニッポン農業一般常識クイズ 答え合わせ第2回   日本は食料輸入下位国だ

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皆さん、どのようなお正月を迎えていらっしゃるでしょうか。私はまったく平常と変わらないトリ飼生活です。たまには三賀日くらい寝正月してみたい(ρ_;)

さて去年の暮れに出して、そのまま答え合わせが1回しかできなかった「ニッポン農業一般常識クイズ」の答え合わせをしましょう。まずはおさらいということで第1問から見ていくことにしましょう。

●[ニッポン農業一般常識クイズ その1]
日本の農業は食料自給率が4割だから、6割は外国から輸入しているような食料輸入大国である。イエスかノーか?

●[ニッポン農業一般常識クイズ その2]
では、一人あたりの農産物輸入額を比べて世界の主要国である英、米、独、仏、伊、カナダ、オージー、韓国の中でうちの国どの辺?

●[ニッポン農業一般常識クイズ その3]
国内GDPに占める食料輸入比率を先進5カ国の英、米、独、仏の中で並べて下さい。

ちなみに農水省の作った主要国の国内自給率(カロリーベース方式)の順位は下図です。

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■12月29日に詳しく見てみましたが、日本は食料輸入タイ国どころか、むしろ米、英、独、仏、日の主要先進5カ国中をみると食料輸入金額で第4位でした。米、独、英、日、仏の順です。

また国民1人当たりの食料輸入額においても、同じく主要5カ国中で、英、独、仏、日、米の順で第4位でした。

一人当たりの人口で食料輸入量を割った重量も、同じく主要5カ国中で独、英、仏、日、米の順で第4位です。

とどめに対GDPに対する輸入農産物の比率はというと、主要5カ国中で、独、英、仏、日、米の第4位です。

食料輸入の金額、輸入量、対GDP比率において、主要先進国の第4位というボジションにいることがわかります。まさに常識的な水準で、ここから日本が輸入食料大国であるという結論を導き出すのはそうとうに厳しいことが分かります。

もし日本が農水省のいうように世界でワーストの自給率破綻国家であるのならば、輸入食料は、自給率が100%を超えているフランスや米国の数倍なければならないことになります。

■では第2問の答え。一人あたりの農産物輸入額の人口一人あたりにすると、英、独、仏、カナダ、伊、日、豪、韓の順となります。第6位で、むしろ下位グループです。

よく評論家やキャスターがしたり顔して、なにかと「日本は世界でも指折りの食料輸入国ですからねぇ」などと言うのは、いついかなるデーターを根拠に語っているのでしょうか

■第3問の答え。国内GDPに占める食料輸入比率は、さきほど述べたように英、独、仏、日、米です。ここでも下位グループです。

1位の英国が1.9%なのに対して、日本はその半分以下の0.9%にすぎません。GDPの1%にも満たない輸入比率をして、どうして輸入大国だなんて言えるのでしょうか。

これらの輸入食料の額と量を調べてみれば、いかに「国内食料自給率40%」という農水省の数字が、現実とかけ離れているかおわかりいただけると思います。この自給率40%という数字で、私たち国民は自動的に6割を輸入しているという誤った結論を想像してしまうのです。

農水省官僚は、実体とかけ離れた数字を広めることで、日本農業があたかも瀕死な存在で、国民の食を保障していない存在だと誹謗しているのです。自らの所轄分野を侮辱して、省益としている官庁、それが農水省という奇妙な役所です。

■写真 郵便局のおまけの郵便ポストの貯金箱。よくできていて、実際の集配時間の張り紙まであります。

2011年1月 1日 (土)

新年あけましておめでとうございます。 「平成の開国元年」を迎え撃ちましょう!

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新年あけましておめでとうございます。
本年の皆様のご多幸とご健勝をお祈りいたします。

さて年頭、菅直人首相は1日元旦付で、平成23年の年頭所感を発表しました。「本年を、明治の開国、戦後の開国に続く平成の開国元年にする」そうです。

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)など貿易自由化に向けた交渉を本格化させる考えを表明しました。そして「開国と農林漁業の活性化を両立させる政策」を、今年前半までに打ち出すとしました。

民主党の耐えられない軽さからくる思いつきは今に始まったことではありませんが、思いつきで経営基盤そのものを根底から揺るがされる私たち農家からすれば、真剣に対案を考えていかねばならない年となりました。

たとえば、現在隣国の韓国では口蹄疫が燃え盛っています。貿易自由化とはこのような国々との農畜産物の自由化をするということを意味します。壁を取り払うことを意味します。

輸入農産品との価格競争にとどまらず、隣国の伝染病が従来とはまったく異なる次元で侵入してくることとなります。いわば私たちは背と腹の両方からの脅威にさらされることになります。

現在、わが国においては残念ながら防疫問題はまったく国民的な関心を呼んでいません。あくまでも、宮崎県に限った悲劇、畜産業だけの問題とする風潮が定着しています。マスコミは、隣国の口蹄疫が薄皮一枚でわが国に再び侵入する可能性を報道しようともしません。

この無関心さは、まるで2010年4月から5月の連休開けまでの宮崎口蹄疫報道の異様な空白期間に酷似しています。

所轄官庁である農水省ですら素早い情報を出そうとしない鈍感ぶりです。結局、私たちは唯一、韓国の新聞から情報を得ている有り様です。そら恐ろしいほど無関心と無警戒ぶりです。

私たちは改めて問うていかねばなりません。
韓国口蹄疫と貿易自由化はまったく別次元なことなのでしょうか?また宮崎口蹄疫事件で示されたわが国の広域防疫の不在は、防疫自由化と無関係なことなのでしょうか?

このような状況の中で、「平成の開国元年」、言い換えれば農産物の「国境」が取り除かれようとしています。なんの気構えもないまま、ただただ世界の潮流に押し流されるような「開国」、それが眼前に来ています。

真に貿易上の「国境」を取り払うためには、「国内農業の活性化」などと抽象的に語るのではなく、農民のリアリズムに徹して語り合っていかねばなりません。そしてその中で地域の農業を強くすることが、最大の防御となっていくことでしょう。

今年2011年は、私たち農業者が「開国」とやらを真正面から受けて立つ元年となります。
また向かい風の一年となりますが、知恵を寄せ合い、情報をネットし、声を上げていきましょう。

 

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