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巨大ガラパゴス、それがわが日本農業です      韓国口蹄疫、畜産心臓部の慶州に侵入

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宮崎の皆様、大雪の影響はいかがでしょうか。

元旦のテレビで99歳詩人の柴田トヨさんの番組を観ました。「くじけないで」の詩集が、どのような人たちに受け入れられ、どのように立ち直る杖となったのかをつづった番組でした。

その中に宮崎県の口蹄疫被災者の牧場が登場します。酪農を営み夫婦で牛を慈しんできました。それが一瞬でなぎ倒されていきます。すべての牛が処分されて、空調のファンが寒風にカラカラと鳴る牛舎。すべての清浄化作業を終えての空白の日々。

夫は一時絶望のあまりに生活も乱れがちになります。私と同年配の方でした。この年代で、経営のすべてを失うことがどのようなことか、私たち畜産農家には肌でわかります。わかるというのもおこがましい、共に泣くしかない。

その時、妻が読み、そして夫の作業部屋の机に置いたのがこの柴田トヨさんの「くじけないで」でした。

去年の冬に夫は補償金の一部を当てて、15頭の乳牛を北海道から導入しました。まだ搾乳は先の話です。しかし、牛に餌をやる作業がうれしいという夫の作業風景が心に残りました。

そうなのです。私たちにとっての幸福とは、毎朝彼らに餌をやること、いや、やれることです。腹を減らして寄ってくる彼らに、「こらこら全部にやるから押すなって」と言いながら、餌をやること、日々この単純で確かな会話を彼らと交わしし続けていくこと、これにまさる喜びはありません。

宮崎県の被災農家が一日も早く復興されんことを心からお祈りします。くじけないで下さい

         。゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

さて、「南の島の黒毛和牛繁殖農家」様からコメントをいただきました。ありがとうございます。ひょっとして石垣ですか?私、名護の山の中で2年間ほど百姓していました。懐かしい!

頂戴した内容は以下です。

>英、独、仏の輸出入の相手国や品目の詳細を踏まえた上で分析する必要があると思います。食料自給率が高いのに食料輸入が多いという事は、食料輸出も多い事が容易に推察できます。

おそらく、英、独、仏は共同経済圏であるEU諸国内で多くの食料を輸出入していると思います。また、過去に植民地支配していた国々との貿易上の結びつきもあるでしょう。
日本と比べ食料輸出入の状況が違う可能性があります。中身を精査せずに、この統計上の数字だけで、結論付けるのは、少々早計ではないでしょうか?


なるほど。おっしゃることはよく理解できます。私が調べながら引っかかったのも、実はこの点でした。

ご承知のように自給率の数字の取り方には二種類あります。

ひとつは、世界で日本のみが使っているカロリーベース自給率です。韓国も計算していますが、重きを置いていません。ましてや世界中の国々で、カロリー自給率という農業経済指標を計算する国はただのひとつもありません。

他の諸国が使わないというのは、要するに意味のない数字だからです。意味があれば、GDPなどのようにすべての諸国が採用し、自国の農業を計る物差しにするはずですから。

この異様さはそのうち詳述するつもりでいますが、ではもうひとつ、より実態に近い農業生産額ベースの自給率があります。こちらで見ると、日本は自給率66%となります。これは農水省自身が計算してアップしている数字です。もっとも、なぜか農水省は完全に無視していますが。( ̄Д ̄;;←今年も絵文字にはまってます。

私はこちらの生産額ベース自給率のほうが、現役農家としてしっくりきます。ちなみに66%という数字は主要先進国のなかで第3位です。

ではこの生産額ベース自給率の第1位はというと、やはり米国でした。第2位はフランスです。共に100%超えをしています。これはカロリーベース計算でも同様です。

不思議ですよ、確かに。
主要5カ国のなかで食料輸入金額では米、独、英、日、仏の順でしたし、食料輸入量を割った重量も、同じく主要5カ国中で独、英、仏、日、米の順でした。

米国は食料輸入額でも世界一なのにもかかわらず、生産額自給率でも第1位なのです。フランスも相当量を輸入しているにもかかわらず第2位につけました。

この理由はこう説明できます。単純に輸出量が輸入量より多いからです。(*^-^)

もし日本が自給率を100%にしたかったのなら、輸入をしなければいいだけです。こうすれば、終戦直後のような飢餓的自給自足が可能となり、農水省の理想であるカロリー自給率100%が達成できるはずです。

皮肉はともかく、生産額ベース自給率第4位のドイツ、第5位の英国は農産物輸出も多いのですが、輸入も多いのです。日本は国内農業生産が輸入を上回っていますから、自給率は高く表示されます。輸入農産物額は460億ドルに対して、国内農業生産額は826億ドルです。

日本は国内農業依存度、つまり農業生産に占める国内農産物シェアが主要国で第1位です。しかし、その反対に輸出額はだんぜんビリというか、ほとんどなされていません。ようやく端緒についたところだと言っていいでしょう。

まさにこの国内シェアと生産額が首位、しかし輸出がビリというギャップが日本農業の特徴なのです。

その理由はいくつかあるでしょう。
まずは、国内市場が非常に大きいことです。メディアからはみじめたらしい話しか聞こえてきませんが、1億人を超える人口大国であり、1人あたりGDPが3万4千ドル、しかも舌と目が肥えた単一言語をもつ成熟市場など世界にそうザラにあるものではありません。いや皆無でしょう。

この国内市場だけで、ある意味閉塞して成長を続けられたのが日本経済であり、日本農業だったわけです。それは苛烈な国内競争を生み出しましたが、ガリバー型巨大企業が単一に支配することなく、多数の競合という図式が維持されつづけてきました。

わが農業でも事情は一緒です。時々、特に財界人の人たちが農業異質論を唱えると、私は、なにを言ってるんだか、あんたらと一緒だよ、と常に心の中でつぶやいています。

国土が亜寒帯から亜熱帯にまで縦に長く、世界でトッイプクラスの長大な海岸線を持ち、脊梁山脈によって複雑な気象と地形を持ち、それ故に実に多様な作物と品種があります。

りんごだけで何種類ありますか、大豆の種類だけで両手両足の数を軽く超えます。均一化が進んだとはいえ野菜にしてもその地でしか採れない野菜など数かぎりなくあります。

そして果樹、野菜、畜産、米に関しては、うぬぼれではなく世界最高の農業技術を持っています。日本の米、果樹、野菜、牛肉、豚肉、そしてわが家業の卵で、世界のどこの国にも負ける気はしません。

施設栽培、露地なんでもオーケーです。冬にでも夏にでも、春の端境でも日本のどこかの産地が出荷ができます。

やりすぎなくらいの規格、こまやかな品作り、次々に生まれる新品種、これらを通年にわたって適切な市場価格で供給できる日本農業が、そうそう簡単に外国農産物に国内シェアを譲り渡すはずがないではありませんか。

それに対して、ヨーロッパ諸国は寒冷な土地柄であり、米作は一部を除いて不可能で、効率の悪い麦作が中心でした。彼らが肉食に傾いたのは、麦や牧草を効率よく動物タンパクに転換するには牧畜しかなかったからです。

たとえば、ドイツや英国で出来る果樹は限定されています。品種がおそろしく貧しいのです。野菜も通年供給は不可能で、相当量を輸入に頼っています。英国の野菜の生産額ベース自給率は、驚くなかれわずか40%にすぎず、果樹に至っては10%です。

施設園芸で乗り切る努力をしたのですが、しかしイタリア、スペイン、南仏、北アフリカ、イスラエルなどの温暖な地帯の農産品と市場競争で負けてしまいました。

そしてなによりEUです。EUについて語りだすと長くなるので回を改めますが、このヨーロッパ単一市場は、カロリー、生産額ベースを問わず国内自給率という概念そのものを無意味にしつつあります。

一方わが国は、EUのようなアジア共同市場は、少なくともTPP以前にはなかった条件でした。

このようにそれぞれの国にはそれぞれの特色があります。わが国はその中でアドバンテージがある地位にあると私は思っています。巨大ガラパゴス、それがわが日本農業です。

■写真 毎日零下です。大霜が降ります。皆さん風邪をひかないでくださいね。

        ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■追記 朝鮮日報の口蹄疫、トリインフルの記事をスクラップします。慶州と南楊州で口蹄疫への感染が確認されたのは初めてです。当局の防疫網がまたもや破られたことになります。

慶州は韓国最大の韓牛産地であり、韓国牛生産の心臓部です。ここに侵入されるとしたら、韓国畜産業ははかりしれない打撃を受けることになります。

殺処分された家畜の数は58万456頭、殺処分にともなう補償額も推定で5500億ウォンを超えました。防疫当局は、江原道横城の家畜に対してもワクチンを接種することにしました。

トリインフルは忠清南道天安市にある種カモ農場と、全羅北道益山市にある養鶏場で発生しました。鶏10万2000匹、カモ1万羽が殺処分されました。韓国はまさに前門の虎、後門の狼といった非常事態に突入したことになります。

■鳥インフル:天安と益山で発生
2年7カ月ぶりに感染確認
口蹄疫は慶州まで感染拡大
ソウル大公園内の動物園とオリニ大公園の動物園は10日まで休園 

韓国で2年7カ月ぶりに鳥インフルエンザ(AI)の発生が確認された。鳥インフルエンザは鶏やカモなどの鳥類が主に感染する伝染病だ。牛や豚など蹄が偶数に割れた動物が主に感染する口蹄疫が史上最悪のペースで広まる中、人間に感染する恐れもある鳥インフルエンザの発生も確認されたことで、政府は超非常態勢に入った。

 農林水産食品部は31日、「忠清南道天安市にある種カモ農場と、全羅北道益山市にある養鶏場から、先月29日に鳥インフルエンザ感染の疑いがあるとの届けがあった。
届けを受けて詳しく調べたところ、これらの農場で高病原性鳥インフルエンザの発生が確認された」と発表した。高病原性鳥インフルエンザは感染力が強い上に、鶏の場合は感染から1~2日と短期間で死ぬほど致命的な伝染病だ。

 感染拡大を防ぐため、防疫当局は届けのあった天安と益山のカモ農場や養鶏場だけでなく、そこからカモや鶏などを買い取った別の養鶏場やカモ農場でも、鶏10万2000匹、カモ1万引きを殺処分した。また感染確認現場から半径10キロ以内を警戒地域に指定して消毒活動を強化すると同時に、鶏やカモの移動を制限するなど、緊急の対策に乗り出した。

 韓国で高病原性鳥インフルエンザの発生が確認されたのは2003年、06年、08年で、08年5月以降は感染が報告されていない。これを受けて韓国は08年8月に鳥インフルエンザ清浄国として指定されたが、今回の感染確認でこの地位を失うことになる。

 高病原性鳥インフルエンザには鶏やカモなどの鳥類が感染するが、感染した鳥と長期間にわたり接触した場合には、人間にも感染するケースがあり、咳や発熱、筋肉痛など、季節性インフルエンザと同じような症状を訴えるようになる。しかし韓国では人間に高病原性鳥インフルエンザが感染したという報告はない。

 防疫当局の関係者は、「鳥インフルエンザのウイルスは、摂氏80度で1分間加熱すれば死滅する。感染拡大の危険がある地域からの商品出荷は行われないため、市場に流通する鶏やカモの肉、卵などは安全だ」と説明している。

 一方、昨年11月28日に慶尚北道安東で感染が確認された口蹄疫は、この日も感染の勢いが衰えていないことがわかった。口蹄疫は牛や豚などの家畜に感染する伝染病だ。

 農林水産食品部はこの日、「慶尚北道慶州市安康邑、京畿道南楊州市真乾邑、慶尚北道永川市花山面など3カ所の韓牛農場と、江原道横城郡隅川面の養豚場で口蹄疫の陽性反応が出た」と発表した。
慶州と南楊州で口蹄疫への感染が確認されたのは今回が初めてで、いずれも政府が設定した防疫網(感染拡大地域から半径20キロ以内)から外れた地域だ。また慶州は韓国最大の韓牛産地でもある。

 この日の時点で口蹄疫の感染が確認されたのは32の市と郡で、発生件数は65件にまで拡大した。殺処分された家畜の数は58万456匹、殺処分に伴う補償額も推定で5500億ウォン(約398万円)を上回った。防疫当局はこの日、江原道横城の家畜に対しても口蹄疫予防ワクチンを接種することにした。

 ソウル市は口蹄疫と鳥インフルエンザの感染拡大を防ぐため、1日から10日までの期間、ソウル大公園の動物園と、ソウル市陵洞のオリニ大公園動物園を開園しないと発表した。

(朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2011年1月1日)

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コメント

電機製品の分野では、日本は80年代に勝ちすぎたせいでその後包囲網が形成されるように国際規格化が進められ、現在の携帯電話に代表される「ガラパゴス化」しました。
「技術は最高なのに商売できず海外移転・空洞化」
一方、以前より比較的独創性の高いシャープが、その名も「ガラパゴス」で世界に打って出ようとしてます。

農業分野でも高い技術を持つ日本は、同じように世界を相手に商売するしかありません。
コストでは敵わなくても、高品質や安全性といったストロングポイントを押し出して戦うしか道は無いでしょう。
TPPはいくら反対してもいずれやってくることになるでしょう。
かつて、牛肉・オレンジ開放で大騒ぎした時とはスケールの違う話で、農業・農政全体のパラダイムシフトの時期です。

強い不安を感じる農家さんも多いでしょうが、頑張っていただきたいです。
そして私が一番不安なのは政治(農水省)が素早く時代についていけるのかです。

投稿: 山形 | 2011年1月 4日 (火) 00時51分

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