韓国紙による韓国口蹄疫批判記事
ひさしぶりに韓国口蹄疫に触れます。
口蹄疫は、今まで清浄地域だった慶尚南道にも侵入しました。口蹄疫防疫の責任者である劉正福(ユ・ジョンボク)農林水産食品部(省)長官が28日、辞意を表明しました。
一方27日、FAOのフアン・ルーブロス畜産部門最高責任者は、「現在の韓国国内での口蹄疫の流行は、過去50年間で類例を見ないほど深刻な状況だ。この問題に対する備えやモニタリングが非常に重要だ」との声明を出しました。
韓国紙がこの間すさまじい爆発をした口蹄疫についてこのような批判記事を1月26、27日の二日にわたって掲載しました。
興味深いのは、11月の慶尚北道の初発において11月23日に既に発症しており、家保に通報があり簡易検査をしたところマイナスだったので、それ以上の詳しい検査を上部機関に依頼しなかったことです。
このことにより、初動が5日間遅れました。この5日間の遅れが致命的となり、防疫陣はこの間に拡大したウイルスの後追いに追われ続けることになります。
簡易検査はあくまでも簡易検査であり、しかも検体はサンプリング抽出にすぎません。ここでマイナスが出ても、他の個体で発生している場合が往々にしてあるということです。
わが国でも、現在進行しているトリインフルにおいて簡易検査(血清検査、PCR、ウイルス分離検査)がただちに家保で出来るようになりました。それは素晴らしい進歩なのですが、これを過信すると危ない。
あくまでも簡易検査はサンプリク数が一桁ないしは二桁です。これで仮に飼養規模1万羽だとすると、検査分母があまりにも少ないわけです。過信してはいけません。
次に、韓国では思ったとおり、輸出豚肉との関係で、ワクチン接種をためらっていたことが分かりました。
ワクチン接種の判断が、わが国と比べて極めておそかったことが指摘されていましたが、予想どおり韓国ではワクチン接種は想定外であり、どの段階で接種するかの定めがなかったようです。
このワクチン戦術のなさは、やはり防疫ならぬ貿易がらみだったようです。中央日報紙は、わずかの豚肉輸出のために国内養豚を壊滅させたと批判しています。
韓国は貿易で中国、ベトナムと大きなつながりをもつようになり、ヒト、モノの交流がさかんになりました。ベトナムは世界最大規模のトリインフル発生国で死者まで出しています。
一方中国は、もうなんでもありの非清浄国です。これらとの国のグローバル化により、韓国の今までの防疫体制のあり方そのものが崩壊したようです。
今後、民主党菅政権が6月までに強行しようとしているTPPが防疫状どのような結果をもたらすのかの未来図であるのかもしれません。
なお、もうひとつの引用記事において韓国で行われたと噂のあった豚の非人道的な処分(生き埋めといわれる)について動物愛護団体が抗議したという記事もあります。これはいつくか映像報道などがありましたが、複数情報がないために私のブログでは報じてきませんでした。事実については確証はありませんことをお断りておきます。
それにしてもわが国マスメィアは、KARAがどうしたとかいうどうでもいいことには大きな時間をさくくせに韓国口蹄疫の「こ」の字もでないのですから、まったく。
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以下中央日報記事を転載いたします。読みやすくするために改行を施し、赤字は引用者です。
口蹄疫:進歩なき防疫対策 2011/01/27 朝鮮日報
今回の口蹄疫(こうてい)感染拡大問題で、農林水産食品部などの担当部処(省庁)は、感染が確認されてから最初の五日間に行うべき対応を怠った。さらに、その後も急速に広まるウイルスを抑制することができず、右往左往するばかりだ。
昨年11月に慶尚北道安東市の農家から最初に感染が疑われるとの通報があったが、当局はこれを詳しく調査することなく、五日間にわたり何の対策も取らずに放置した。
その間に口蹄疫ウイルスは安東から京畿道にまで広まり、その後に行われた大規模な殺処分や予防ワクチン接種は、結果的に後追いの対策となった。
つまり今回の口蹄疫問題は、初期対応の失敗が最悪の状況を招いた人災というわけだ。そのため、殺処分に伴う補償や消毒費用などに2兆ウォン(約1500億円)以上の税金が投入される結果を招いた。
26日までに殺処分された家畜の数は、牛14万4249頭、豚257万3319頭など、計272万3811頭に上る。前日の262万5553頭に比べ、9万8258頭も増えた。このままのペースで行けば、旧正月(今年は2月3日)連休前までに殺処分される家畜の数は300万頭を超える見通しだ。
殺処分に伴い農家に支払われる補償金も、1兆7000億ウォン(約1250億円)を超えるものとみられる。
今回の口蹄疫問題の初期には、農林水産食品部の劉正福(ユ・ジョンボク)長官を司令塔に消毒などの対策が取られたが、京畿道、慶尚北道、江原道などへの感染防止に失敗したことを受け、昨年12月29日には政府次元で中央災難安全対策本部が発足した。しかし、その後も感染の勢いは衰えていない。
(1)最初の五日間は完全に無防備状態
今回の口蹄疫は慶尚北道安東市で最初に発生したが、この事実を農林水産食品部国立獣医科学検疫院が正式に把握したのは昨年11月28日だった。ところがその五日前の23日には、慶尚北道家畜衛生試験所にすでに通報されていた。
試験所の関係者は簡易検査の結果が陰性だったことを理由に、通報があったことを中央災難安全対策本部に報告しなかった。ところが28日に再び通報があったため検疫院が詳しく調べたところ、29日になって陽性反応が確認された。農林水産食品部は感染の疑いがあるとの通報が入った場合、必ず獣医科学検疫院に詳しい検査を依頼するという規定を定めていたが、現場の自治体がこれに従わなかったというわけだ。
その間にウイルスは車や人間を通じて安東全域に広まり、さらに糞尿運搬車によって京畿道坡州市にも感染が広まっていった。
2)右往左往する防疫当局
京畿道北部で最初に口蹄疫の疑いがあるとの通報が入ったのは昨年12月14日だった。
しかし、口蹄疫ウイルスに汚染された糞尿運搬車が坡州に立ち入ったのは11月17日と26日だ。安東市で指定されていた口蹄疫防疫網(発生農場から20キロ以内)が完全に崩壊していたにもかかわらず、政府が口蹄疫ワクチンの接種を開始したのは12月23日だった。
それも李明博(イ・ミョンバク)大統領が前日の国務会議(閣議)で「過去と同じような対策では解決しない。専門家と相談してより根本的な対策を取りまとめよ」と指示した後だった。
口蹄疫ウイルスを完全に制圧するには、殺処分が最善の方法だ。英国では2001年に2030件の口蹄疫が発生したが、1084万頭を殺処分することで感染の拡大を防いだ。しかし韓国では全国に感染が拡大するペースが速く、殺処分だけでは不十分だった。農林水産食品部も、どの時点で予防ワクチンを接種するかという基準を事前に定めていなかった。
一時は豚肉の輸出を続けるために予防ワクチンの接種をためらったという話もある。いったんワクチン接種を開始すれば、継続して接種を行わなければならない可能性が高いからだ。
しかし韓国からの豚肉輸出はわずかで、牛は一切輸出していない。口蹄疫がほぼ放置された状態にある中国やベトナムとの交流が増えた結果、韓国はウイルスに対してすでに無防備な状態に置かれているが、その対策として実利のない殺処分にこだわりすぎた。つまり、グローバル化という環境の変化に防疫対策が追い付いていないということだ。
(3)一部農家の無責任な態度
口蹄疫の感染拡大には一部農家の無責任な行動も大きく影響した。今回、口蹄疫が最初に発生した慶尚北道安東市の養豚地域では、複数の養豚業者が定期的にベトナム旅行に出掛けていた。しかも、帰国の際に空港でしっかりと消毒を行っていなかったことも分かった。
感染対策が出遅れた影響で、非常に多くの畜産農家で被害が相次いでいる。これまで苦労して育ててきた家畜を地中に埋める心情は尋常ではないはずだ。ところが一部の農家では、少しでも補償金を多く受け取るため、被害状況を水増しするといったモラルハザード現象も起きている。
最近は豚肉価格が1頭当たり60万ウォン(約4万4000円)前後と、昨年の30万ウォン(約2万2000円)に比べ2倍近くに跳ね上がっている。
その影響で、一部の養豚業者は殺処分に伴う補償金目当てに消毒を怠っているとのケースも農林水産食品部に報告されている。この報告を受けて農林水産食品部は26日、豚に対する殺処分の補償金を、前年度平均価格の130%を上回らないよう規定を変更した。
このように口蹄疫が韓国畜産業の根幹を揺るがすほどに大きな問題となっている中、畜産業従事者の一部では相変わらず海外旅行に出掛けているケースもあるという。
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- 「口蹄疫清浄地域」の慶尚南道でも口蹄疫の疑い
口蹄疫清浄地域だった慶尚南道(キョンサンナムド)でも口蹄疫が疑われるという申告が入った。慶尚南道金海市酒村面(キムヘシ・チュチョンミョン)の養豚農家から口蹄疫の疑いがあるという申告があり、国立獣医科学検疫院に精密検査を依頼したと23日、明らかにした。
慶尚南道によると、該当農家で飼育中の豚は立つことができず、水泡が生じているという。また39頭の子豚が死んだ。これを受け、慶尚南道は農場主ら関係者と家畜の移動を禁止し、緊急防疫に入った。この日夜には半径500メートル以内の農家の豚6500頭余りを予防次元で殺処分した。精密検査の結果は24日午後に出る予定。
22日には国内最大規模の韓牛産地である慶尚北道尚州(キョンサンブクド・サンジュ)でも口蹄疫が発生し、畜産基盤が崩れるのではないかという懸念が強まっている。
特に政府が全国の牛を対象にした一次ワクチン接種をすでに終えたにもかかわらず、口蹄疫が拡散し、これまでの防疫作業には効果がなかったという指摘も出ている。これに対し政府側は「ワクチンを接種した後、およそ14日後に抗体が形成されるだけに、今月末ごろから沈静化するだろう」と明らかにした。
一方、京畿道利川(キョンギド・イチョン)では伝染性が強い鳥インフルエンザが発生した。京畿道(キョンギド)災難安全対策本部は、申告が入っていた利川市雪星面(ソルソンミョン)の農場の鶏について「高病原性鳥インフルエンザと確認された」と23日、明らかにした。この農場は鶏200羽が死んだことを受け、21日に申告した。
(中央日報 1月24日)
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(中央日報 1月21日)
口蹄疫:農林水産食品部長官が辞意表明
牛や豚などの伝染病「口蹄(こうてい)疫」の発生を受け、防疫作業を指揮してきた劉正福(ユ・ジョンボク)農林水産食品部(省に相当)長官が28日、辞意を表明した。劉長官はこの日午前、記者会見を開き、「今回の口蹄疫の流行を早期に終息させ、事態の収拾を図った上で、潔く身を引きたい」と述べた。
辞意表明の理由について劉長官は「あらゆる出来事には原因と結果が付き物だ。時間がたてば責任の所在も明確になるが、政治家は是々非々とは関係なく、結果に対し潔く責任を取る姿勢を示さなければならないと考えた。決して長官職にしがみつくつもりはない」と語った。
劉長官の辞意表明について、大統領府の関係者は「劉長官の発表は『辞意の表明』というよりも、『事態の収拾に万全を期す』ことを強調したものと見るべきだ。正式に辞意を表明したわけではなく、『責任を持って事態を収拾する』と発言しているため、もう少し見守る必要がある」と話した。
一方、国連食糧農業機関(FAO)は27日(現地時間)、「口蹄疫の流行による、過去に類例を見ない最悪の事態が韓国で発生した」として、アジア各国の畜産や出入国管理の関係機関に注意を促した。
FAOのフアン・ルーブロス畜産部門最高責任者はこの日、声明文を発表し、「現在の韓国国内での口蹄疫の流行は、過去50年間で類例を見ないほど深刻な状況だ。この問題に対する備えやモニタリングが非常に重要だ」と述べた。(朝鮮日報 1月26日)
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コメント
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初動対応の重要性を改めて痛感させられました。
また、宮崎県におけるワクチン接種も賛否両論ありましたが、結果として県内の東部地区(一部飛び火)で食い止める事につながった事は、感染拡大に必死に取り組んだ関係者の努力は勿論、決断の賜物と感じています。
もし、自分が決断しなければならない立場だったとしたら・・・と考えると、違った決断をし感染拡大を止められなかったかも知れません。
勇気ある決断だったと思います。
韓国の農林水産食品部長官の辞意表明?は、潔さを感じますが、現在の責任者として事態の収拾(終息)が済んでから辞職するのが責任の取り方ではないかと思います。
でも、この潔さをどこかの国会議員に聞かせてやりたいものですね。
投稿: 北海道 | 2011年1月31日 (月) 10時00分
コントロール不能の酷い状態になってますね。
北海道さんに同意します。
自分が責任ある立場だったら…どんなことが出来ただろうか?
鹿野道彦大臣、頼むよ!
宮崎の農家を最優先で助けて下さい!
口蹄疫から間も無く鳥インフルエンザが蔓延してしまいました。
大手であろうと毅然とした態度で臨んで下さい。
そして泣きっ面に蜂の火山爆発…。
泣いているのは個人で頑張ってきたのに、生活の糧を一瞬で奪われた小規模農家です。
心よりお願いします。あなたの長い農政経験と各方面への調整能力を最大限に生かして助けて下さい!
そして、一方では開局60年記念シリーズ生放送とかで、ソウルの市場から中継やってるTBSとか…バカかと!
当分は渡航禁止にすべきレベルですよ。
山形からもかなりの数(冬の農閑期の農家が多い)が渡航してます。
政治判断よりも、未来に禍根を残すことだけは絶対に避けて下さい!
落ち着いてから、ゆっくりツアーに行けばいいんですから。
投稿: 山形 | 2011年1月31日 (月) 11時25分
青空です。気が重くなります。
国内の鳥インフルエンザの断続的な発生、宮崎県の火山噴火、そして最後の防衛線を北、東とも突破された韓国の惨状。
今回の記事、というよりは韓国の報道ですが、少し気になった部分があります。
それは「輸出ができない」の件りです。
現役養豚家様のブログにて、かつてOIEコードの死守は輸入非関税防疫として南アメリカ等の安価な牛豚肉輸入の阻害のため。とあり、議論の中核をなしていました。あたかもそれが、天地開闢以来の犯さざるべき不文律のように。言い分は理解していますし、障壁消滅は激烈な生存競争のスタートサイン(ほぼ半滅する闘い)であると。業者、国家とも暗黙の了解として守る「勅令」としての位置づけであると理解していました。
恐らく韓国の養豚家についても日本ほどではないにしても非関税貿易障壁として活用していたと推察してます。
しかし、記事やコンタン様のブログでの翻訳記事にしても、輸入障壁と書いている記事を見ません。また政府発表でも「輸出ができなくなる」との言が中心です。
これを見て思い知らされました、OIEコード、輸入「非関税防疫」は国家施策にはなり得ない。殺処分によるコストが一定を上回ると容易に覆る不文律だと。
その伏線として、公的なスタンスは「輸入したいのは山々だが、OIEコードがある以上やむを得ず輸入できない、清浄化するのを待つ他ない。実に残念です」(もちろん本音は違いますが)ということなのでしょう。つまり、極めて細い糸の上に成立する、運よく享受できる好条件なのだと考えるようになりました。
いずれ口蹄疫の侵入、感染拡大時、恐らく政府は韓国の例やFAOの具申を上げ殺処分形態からルール自体を180度転換するでしょう。いや、今にして思えば宮崎口蹄疫の際積極的な防疫支援を国があえてしなかったのは感染拡大させ、非洗浄国に転落さしめ、TPP障壁を排除する狙いがあったのではと勘繰りたくもなります。
恐らく「輸入阻害を目的とした非関税障壁は認めていない」と主張すらしたでしょう。
韓国はここまで口蹄疫の恐怖を国民に見せ付けた上で、ワクチン接種且つ殺処分のルールを転換しました。口蹄疫が人体に影響がないとわかっていても、主婦、特に韓国の方々は直情で素直な性格の方が多いので、国内産の畜産への印象は大幅に下落したでしょう。輸入畜産物の納品が始まるのは当該国の生産調整の関係から5カ月を要すると思われるので、その間は供給不足で価格は落ちませんが、輸入品納品時に大幅に国産畜産品の下落が始まることが心配です。
韓国の姿は他でもない日本の近い将来です。しかし、それに対するに全国的に防疫レベルは依然心もとない。
愛知県の鳥インフルエンザの初動防疫の行政の初手は早かったですが、15万羽で、埋設地を公有地に指定せざる得なくなりました。また埋設完了にもあと1週間前後を要すると。発生から10数日要します。
あれだけ埋設問題が噴出していたのにもかかわらず、且つ家畜数が多いとは言え、一農家発生での状況です。
昔浜松支店にいましたので豊橋は商圏でしたが、市街地を除けば空白地は多くある地帯です、埋設地に苦労するというのはややうなずけません。ブロイラー全国屈指の地域でもそうですので、実地見識と経験がある宮崎県以外は同時発生には対応不能だと確信しました(口蹄疫でですが)。
愛知県を責めているわけではありません。必死の努力と解明に向け、あらん限りの努力をしていることはHPでも伝わってきます。しかしやはり、経験のない人間が1,000人クラスの混成部隊を突然機能的に使いこなすことは不可能だということでしょう。
せめて、国家的に独立した権力ある防疫組織(緊急時は自衛隊、警察、消防すら傘下に収める)を創設できないものでしょうか。経験者の知見を集中させ、緊急時は総括指揮をとり、補償等の検討も指示できる程の力を持った組織を。
少々、参っているようです。悲観的になりすぎました。
投稿: 青空 | 2011年2月 1日 (火) 00時54分