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2011年1月15日 (土)

2010年に宮崎県で発生した口蹄疫の対策に関する調査報告書 (二度と同じ事態を引き起こさないための提言) 抜粋

040

宮崎県口蹄疫最終報告書が出ました。全文はこちらからどうぞ。http://www.pref.miyazaki.lg.jp/parts/000151738.pdf

抜粋して転載いたします。見やすくするために適時改行してあります。赤字は引用者のものです。極めて詳細な報告書であり、私の私見では国の報告書より勝っているような感さえあります。

全文を引用したいのですが、スペース的に不可能なので、抜粋して分割いたしました。

.              。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。.

 (略)

■(3)第1例目の感染確認と初動対応
①第1例目の感染確認
感染確認の第1例目となった農場の感染確認までの経緯(概要)は、次のとおりである。
【第1例目:肉用繁殖牛16頭】

・4月7日発熱(40.3°)と食欲不振で獣医師への往診依頼。
(流涎があり、活力ないが口腔内は異常なし。)
・4月9日牛の口腔内(上唇)で潰瘍、表皮の脱落が確認され、獣医師が口蹄疫を疑い家畜保健衛生所に通報。
・同日、家畜保健衛生所が立ち入ったが、他の牛に異常が確認できないため経過観察とした。
・4月16日他の牛の発熱等により獣医師へ往診依頼。当該牛の口腔内でびらんを確認。当該牛以外の流涎も確認し、家畜保健衛生所へ通報。

・4月17日16日に流涎のあった牛の発熱等により獣医師への往診依頼。
2頭にびらんを確認。家畜保健衛生所が検体を採取。
・4月19日検査によりブルータング等、類似する口蹄疫以外の病気が陰性だったため、家畜保健衛生所が再度農場に立ち入り、口蹄疫検査用の検体を採取、動物衛生研究所へ送付。
・4月20日農林水産省から宮崎県に、口蹄疫の感染が確認された旨の連
絡あり。

②感染確認後の初動対応(第6例目まで)
【防疫対策の体制】
第1例目(都農町)の口蹄疫感染確認後、県は直ちに本庁内に口蹄疫防疫対策本部、宮崎家畜保健衛生所内に現地防疫対策本部を設置し、口蹄疫の防疫対策に着手した。*関連資料2(1)(2)

なお、都農町役場内にも町の防疫対策本部が設置されたため、県では当該本部にも県職員を派遣・常駐させ、連絡調整業務に当たらせている。

【殺処分・埋却】
第1例目の疑似患畜の殺処分は、感染が確定した4月20日の夜に終了した。
第2例目以降第6例目までの疑似患畜の殺処分については、すべて感染確認から2日以内に終了している。

【交通遮断・消毒ポイントの設置】
感染拡大の防止については、「家畜伝染病予防法」(以下「家伝法」という。)、及び「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」(以下「防疫指針」という。)に基づき、県では農林水産省とも協議しながら、発生農場に入り込む道路の封鎖、移動・搬出制限区域の設定を行い、4月20日には、制限区域内の幹線道路4カ所に消毒ポイントを設置し、関係車両の消毒を開始している。その後、事態の進展に合わせて消毒箇所数を増やしながら対応している。

また、空港や港湾など、直接海外から人・物の出入りが想定される箇所での消毒などの防疫対策の強化を図っている。

【情報提供】
口蹄疫の発生に関する情報提供について、県では、第1例目の感染が確定した4月20日にマスコミ向けに記者会見を行っているが、発生農家の情報については、農場の規模のほか、農場の所在地については地区名(字名)までを公表し、農家の具体的な名前は公表しなかった。*関連資料1(5)

また、口蹄疫に関する情報を広く県民に提供するため、4月20日には口蹄疫に関する情報提供のコーナーを設置し、県のホームページの「緊急情報」の欄に掲載している。

■(4)感染拡大とまん延期の対応
①感染拡大の状況
前述のとおり、口蹄疫の疑似患畜の殺処分については、第1~第6例目までは、農場の飼養規模も牛16頭~118頭と小規模であり、迅速な措置が行われたが、第7例目(4/26確認、牛725頭)、第8例目(4/28確認、牛1,019頭)の大規模農場への感染、第10例目(4/28確認)の豚への感染が確認された時期以降、殺処分・埋却に遅れが出てきている。

この殺処分の遅れや豚への感染により、発生地域でのウイルス量は爆発的に増加したと推測され、更に感染拡大が加速した。
感染地域としては、当初、川南町、都農町内であったが、4月28日にはえびの市に、5月16日には高鍋町、新富町、5月21日には西都市、木城町に感染が拡大している。

■②感染拡大に伴う防疫対策組織の強化等
○【県関係】
感染の拡大に伴い、県庁に設置された防疫対策本部は、増員による体制強化を進めるとともに、県外獣医師等支援班(5/1)、埋却支援班(5/4)を設置するなど、随時必要な機能を付加しながら体制を拡充した。

また、発生当初、現地対策本部を宮崎家畜保健衛生所内に設置した後、4月24日には川南町に現場本部も設置。えびの市での感染に伴い、現地対策本部を都城家畜保健衛生所にも設置したほか、新富町にも現場本部を設置するなど、感染拡大の状況に応じて、県としての組織体制を拡大していった。

さらに、5月20日には、県の防疫対策本部に総合支援部を設置し、災害対策本部の会議室に数十名規模の職員が一堂に会し、防疫業務や関連業務への支援、対外的な調整等の業務を全庁的、総合的に実施する体制を敷いた。*関連資料2(3)

○【国関係】
口蹄疫の発生が確認された4月20日に、農林水産省内に国の口蹄疫防疫対策本部が設置されていたが、感染の拡大に伴い、5月17日には内閣総理大臣を本部長とする政府口蹄疫対策本部が、また、宮崎県庁内には現地対策本部が設置された。現地対策本部には、山田農林水産副大臣、その後篠原副大臣が常駐し対応に当たった。

■③防疫対策の拡大
○【殺処分・埋却】
感染が拡大するとともに、防疫作業についても困難を極めることになった。殺処分・埋却処分については、5月以降の感染の急速な拡大により、処分を待つ疑似患畜数も急激に増加したため、殺処分・埋却に対応する人員は、5月下旬~6月中旬のピーク時には、毎日700~900人の規模となった。

作業に当たっては、適切な埋却地の確保、効果的な人員の配置、適時的確な資機材の搬出入など、多くの課題を抱え、時間との戦いの中で、現場では非常に困難な状況が続いた。

○【消毒ポイントの設置】
第1例目の感染確認当初、県指定の4カ所からスタートした消毒ポイントは、その後、市町村や関係団体等が独自に消毒ポイントを設置するなど、感染が拡大した5月初旬から急速に箇所を増やし、最大で403カ所(7月当初)に及んだ。

消毒の方法についても、全車両を対象として消毒槽の中を通過させる、動力噴霧器で消毒液を噴霧する、消毒マットを通過させる、道路に消毒液を直接散水する、あるいは道路から関係車両を引き込んで消毒液を噴霧する形式など、各ポイントの状況に応じた消毒法がとられた。

■④防疫対策への支援
○【自衛隊】
殺処分・埋却等の作業に遅れが生じ始めたため、知事は5月1日に自衛隊に対し、災害派遣として、口蹄疫の防疫関係作業の支援のための出動要請を行い、同日中に自衛隊の災害派遣チームが現地に到着し、防疫作業に合流することとなった。

主な業務としては、埋却地の掘削、死亡家畜の運搬や埋却等、畜舎の清掃や消毒作業、消毒ポイントでの車両消毒などの広範な支援であり、川南町役場を拠点としながら作業を行った。

1日の態勢としては、120人程度からスタートし、随時増員による態勢強化を図りながら、最大で330人以上、派遣期間を通じた延べ派遣人数は18,720人もの規模となり、自衛隊の災害派遣としては、本県の記録に残る限り過去最大のものとなった。

○【警察】
防疫措置としての交通遮断や通行制限、また消毒ポイントの設置も感染拡大とともに増大したが、これらの現場においては、特に農業関係者以外に口蹄疫に対する理解が十分にないことによる通行車両等とのトラブルや、交通渋滞などが生じたため、より円滑かつ確実に消毒等の防疫措置を行うために、警察からも多大な支援を受けることとなった。

口蹄疫対策として従事された警察官としては、本県以外の20都府県から実人員で2,300人が派遣され、本県警察を含め延べ38,000人(うち県外28,000人)の大規模な動員となった。

○【防疫措置への従事者数】
感染の拡大・蔓延によって、疑似患畜等の殺処分・埋却及びその関連作業、消毒ポイントでの車両消毒等々の防疫対策は、莫大な労力を要することとなった。

このため、県では4月24日に県外の家畜防疫員の派遣要請を行ったのを皮切りに、関係機関や国を通じた支援要請等も合わせ、延べ人数にして約158,500人の従事者数となった。

[内訳](平成22年7月15日終了時点まで)
・国関係職員約14,500人
・自衛隊員約18,500人
・県内外警察官約38,000人
・他都道府県職員約5,000人
・JA等関係団体職員約16,500人
・市町村職員約18,000人
・宮崎県職員約48,000人
(合計) 約158,500人

■⑤種雄牛の制限区域からの移動
県のブランド牛である「宮崎牛」をはじめとする肉用牛を生産する上で基盤となる種雄牛の管理や精液ストローの生産は、宮崎県家畜改良事業団(高鍋町)で一元的な管理が行われてきた。

都農町・川南町で発生した口蹄疫の感染拡大は、当該家畜改良事業団にまで及ぶ状況となり、これらの基盤の喪失が本県肉用牛生産に甚大な影響を与えると判断した県は、農林水産省に対して、種雄牛のうち主力の6頭の移動制限区域外への搬出の特認についての協議を開始(5/8)、5月10日に知事から農林水産大臣に対して要望を行った。

これに対し農林水産省からは、
・移動に際し、移動対象牛の臨床目視検査及びPCR検査により口蹄疫に感染していないことを確認すること

・移動時の輸送ルートの確認や、輸送車両の消毒等の厳格な衛生管理や、移動後の臨床目視検査(毎日)等の継続的な管理を行うこと

・移動制限区域内の畜産関係者への十分な説明を行うこと
といった条件が示され、12日には遺伝子検査の結果がすべて陰性であることを確認した上で、13日に移動を行い、14日から移動先での飼養管理を開始している。

このため、14日には家畜改良事業団で飼養されていた後代検定牛に感染が確認されたが、この関連による上記6頭の種雄牛の殺処分は行われていない。

その後、移動した種雄牛の臨床目視検査及びPCR検査を継続していたが、5月21日には、その中の1頭「忠富士」が、目視で確認できる症状を示すことなく、PCR検査で陽性を示したため、殺処分されることとなった。

なお、この際も、飼養管理を別にしていたこと等を理由に、残り5頭の種雄牛には関連としての殺処分が行われていない。

■⑥非常事態宣言の発出
口蹄疫の発生後、家伝法等に基づく懸命な防疫措置を行ったにもかかわらず感染拡大が止まらないことに加え、万全の防疫体制を敷いていたはずの家畜改良事業団にまで感染が広がったことから、それまでの対策を抜本的かつ強力に見直すことが必要となった。

そこで、口蹄疫の早期撲滅を最優先に、感染防止対策の徹底を図るため、5月18日に県として初の「非常事態宣言」を発出し、県民に事態の深刻さを理解していただき、県民生活への一定の制限を含めた協力をお願いすることとなった。*関連資料1(6)

■(5)ワクチン接種への対応
○①ワクチン接種の方針決定
口蹄疫の感染拡大を止める見込みが立たない中、県では、従来の封じ込め措置には限界があるとして、予防的殺処分やリングワクチンの接種などの抜本的な防疫対策への転換を求めるため、5月4日には、農林水産省との協議を開始している。

これに対して、5月6日には国の牛豚等疾病小委員会も開催されたが防疫措置の方針は従前の措置を継続することとされている。

しかし、5月19日の国の口蹄疫対策本部において、「新たな防疫対策」として移動制限区域内でのワクチンの接種による感染拡大防止の方針が決定された。
ただ、国の方針決定の時点で、畜産農家に対する補償については明確にされていなかった。


②ワクチン接種の実施と特別措置法の施行
政府の決定を受けて、県としては、ワクチン接種対象農家への十分な補償と経営再開への支援が確保された上で、対象農家や関係者の理解を得る必要があると判断し、国、市町村長との協議等を重ねた結果、国から補償の方向性が示されたため、5月21日にワクチン接種の実施を受け入れることを決定し、翌22日からワクチン接種を開始した。

ワクチン接種対象となった家畜は、3市5町の約125,700頭(接種後疑似患畜となった分を含む)であり、農家に対して主に市町村から承諾を得ながら接種を進めた。

ワクチン接種は、そのほとんどを5月26日までの5日間で終了し、6月5日からは接種した家畜の殺処分・埋却措置を開始。関係者の懸命の作業で6月30日に措置を終了している。

この間、ワクチン接種や予防的殺処分及び当該措置に対する補償等を定めた「口蹄疫対策特別措置法」及び関係政省令の整備が進められ、6月4日に公布・施行となり、法令上の根拠が整えられた。

なお、この過程で、県内において唯一民間で種雄牛を有する農家の対応に関し、県側が特例として殺処分を行わないという考え方を示したため、国と意見が対立することとなり、当該問題の解決に長い時間を要することとなった。
最終的には特例の適用は認められず、この民間種雄牛は7月17日に殺処分が行われた。

■(6)終息期の対応
①感染の終息
ワクチン接種以降、飛び火的に感染した数例を除くと、新たな感染はなくなり、殺処分・埋却の防疫措置が6月30日に終了した段階では、エリア内に家畜がいない状態となった。
移動・搬出制限区域は家伝法に基づき順次解除され、7月27日には県内全域での制限区域が解除されると同時に、口蹄疫非常事態宣言も解除された。*関連資料1(6)

②口蹄疫終息宣言
すべての制限区域及び口蹄疫非常事態宣言が解除されたが、口蹄疫の完全な終息宣言を行うためには、県内全域での清浄性の確保が必要であった。

制限区域が解除された時点では、発生農場等において口蹄疫ウイルスを含んでいると推定される大量の糞尿等の汚染物が残されており、これについては国とも協議した結果、一定期間の封じ込めを行った上で、切り返しによる発酵で温度を基本的に60℃以上に上げること等でウイルスの不活化を行った。また、併せて、県内全域での家畜の清浄性の確認を行った結果、8月27日に、最終的な「口蹄疫終息宣言」を行うこととなった。
*関連資料1(8)

■(4)復興段階の体制
(略)

■第4章検証から見えた問題点と今後の改善のあり方
ここでは、第3章で示したアンケート調査で寄せられた多数の意見や助言、さらに、現地調査及びヒアリング調査等の結果を踏まえ、そこから見えてきた7項目、計42の課題・論点について検証を行い、今後の改善のあり方を提言する。

○(1)感染源と感染経路の解明はできたのか
(1)-①
初発農場について
【検証結果】
○ 国の「疫学調査に係る中間取りまとめ」(以下「国の疫学調査」という。)においては、各発生農場における発症日について、立入検査を行った際の臨床症状やその進行の程度、血清中の抗体価の測定結果等をもとに、疫学の専門家が一定のルールに従って推定したとされ、結果として、6例目が3月26日以降、1例目が4月5日以降、7例目が4月8日以降に発症したと推定されている。

○ これに対し、地元においては、「7例目が初発ではなかったのか」という強い意見が多く出されていたこともあり、本委員会としてはこの点を中心に検証を行った。

・6例目の農場については、3月26日に2頭に発熱、乳量低下が見られた。その後同一の症状を示す牛が増加したため、獣医師が家畜保健衛生所(以下「家保」という。)に連絡した。

家保は、3月31日に、口蹄疫を疑った訳ではなかったが3頭の血液、鼻腔スワブ、ふん便を採取し、ウイルス、細菌、寄生虫検査を実施した。その後4月22日に、1例目の関連農場として県の疫学調査班が立入検査を行い検体を採取したが、その際、3月31日分についても併せて検査を行った結果、PCR陽性であった。このことから、国の疫学調査は最初に症状が見られた3月26日を発症日と推定している。

・7例目の農場については、当該農場を経営する会社からの聞き取りによれば、4月22日に農場の獣医師が発熱、食欲不振、流涎、びらんを確認したものの、蹄に水疱が見当たらなかったために経過観察することとし、その旨を担当役員に報告。翌23日に症状を呈する牛が増加したことや、周辺農場に感染が拡大し始めたことから担当役員が本社と協議し、県に報告を行うこととしたが、夜遅かったため、翌朝連絡することとしていたとのことである。

そして翌24日に、家保から当該農場に対して、他の農場の関連農場として立入検査を行う旨の電話連絡があり、この電話の中で、初めて農場側から家保に異常の報告がなされた。このときの家保の立入検査では、全体の半分程度の牛房で流涎を確認し、検体を採取している。

家保による立入検査、あるいは殺処分の際には、農場側から上記以外の内容の申し出はなかったが、その後の調査で、4月8日の時点で食欲不振を示した牛が確認されたこと、4月9日から17日まで多数の牛に食欲不振改善薬を投与していること、さらに、4月17日に農場全体に熱、鼻水等の風邪の症状を示す牛が出たため、4月18日から20日にかけて全頭に抗生物質を投与していたことが明らかになった。

こうした状況から、国の疫学調査は4月8日を発症日と推定している。・しかし、4月8日の症状を口蹄疫の症状とするならば、翌9日に同一棟の数十頭の牛に食欲不振改善薬を一斉投与していること、その後数日のうちに同一の症状を呈する牛が爆発的に拡大していたこと、そして、今回の口蹄疫は発生初期においては伝染力が弱かったとされていることを併せて考えれば、作業日誌や診療記録上からは明らかになっておらず、また、従業員からの証言も得られていないものの、当該農場では、4月8日以前に口蹄疫の症状が出て感染が拡がり、翌9日以降にまん延状態になったと推定することが妥当である。

・また、3月下旬に風邪、食欲不振等の症状を呈する牛がいたことは作業日誌等から明らかになっており、これらの症状が口蹄疫であったとの確証はないものの、当該農場の獣医師が一人で他の関連農場も任されていたために、管理が行き届いていなかったのではないかということも考えあわせれば、国の疫学調査が発症日として推定した4月8日より前に、当該農場で口蹄疫が発生していたと推定することが妥当である。

・以上のような事実から、今回の発生の初発農場がどこであったかについては、「6例目が初発であると結論づける」、あるいは「7例目が3月26日(6例目の発症推定日)以前に発症していなかったと結論づける」だけの明確な根拠はないと言わざるを得ない。

さらに、感染経路や感染原因が特定されていないことも考え合わせると、国の疫学調査が初発農場を6例目と推定していることとは異なり、「6例目あるいは7例目が初発農場の可能性がある」という指摘にとどめるべきである。

■【今後の改善のあり方】
◆ 10年前の発生の際も同様であったが、今回は特に被害が甚大であったがために、初発がどこか、あるいは各農場間の疫学関連はどうかということに対する関心が非常に高く、そのことが地域に様々な波紋を広げる結果となった。

農家にとって初発農場とされることによる精神的負担が非常に大きいことや、その精神的負担が農家からの早期通報を妨げる要因ともなりかねないことを考慮し、国は、初発の特定に際して「慎重な調査」を行うとともに、「調査途中での公表のあり方」についても「慎重」を期すこと、そして、本件についても引き続き徹底した疫学調査を行うことを強く求める。

農場で発症が確認された時点では、時間的な余裕がなかったために十分な疫学調査が行われておらず、7例目の農場に見られるような発症確認日前の家畜の状態を確認することが困難であった。このため、後日の調査に相当の労力を要し、必要な情報の確認ができない結果となった。

疫学調査の重要性に鑑みれば、そのあり方について国・県で改めて検討を行う必要があり、特に、まん延段階であっても「初発の可能性がある」と判断される場合は、国と県が協力して別動の調査班を作り、詳細な調査を行うなどの対応が必要である。

◆ また、疫学調査は、畜産関係にとどまらず、農場関係者等の日常生活における関連についても検証を行う必要があり、そのためには、市町村等に協力を求めることも検討する必要がある。

◆ 初発がどこなのかを特定することは、我が国への感染経路を解明するために不可欠なものであり、感染拡大を抑止する上でも非常に重要である。したがって、国においては、初発農場についての科学的な検証が可能となるよう、定期的なサーベイランス検査、発症確認時の検体の採材方法等に関する新たなルールを作る必要がある。

■(1)-②
○感染源、感染原因について
【検証結果】
○ 特に初期段階での発生農家に対する現地調査等を通じて、えさ、人の動き、家畜などの感染原因を調査したが、特定するには至らなかった。

国の疫学調査においても、初発とされた6例目の農場について、「推定発症日が一番早いこともあり、海外からウイルスが侵入した可能性を念頭に置いて、様々な可能性について調査したが、家畜の導入や出荷、飼料、敷料などで当該農場へのウイルスの侵入につながるような情報は確認されなかった」とされ、そのような中で、「当該農場が見学者等を受け付けていたが、訪問者に関する記録は取られていなかったため、外部からの人の移動について、これ以上、検証することは困難であり、こうした人の移動によってウイルスが侵入した可能性は否定できない」としているのみであり、結局、発生原因、侵入経路については、まったく特定できていない状況である。

○ 国の疫学調査は、中国からの輸入粗飼料は農林水産省の立ち会いのもとにくん蒸が行われていること等から感染の原因となった可能性は極めて低いという前提に立って検証を行っているが、感染原因・経路を特定することの重要性に鑑みれば、そのような前提条件をはずして徹底的な調査を行うべきである。

○【今後の改善のあり方】
我が国にどのようにしてウイルスが侵入し、本県の農場にどのように感染したのかは、今後、実効性のある防疫体制を整える上で最も重要な点である。

また、平成22年6月に終息した韓国において、同年11月に再び口蹄疫が発生し、爆発的な拡がりを見せている状況を見れば、本県あるいは我が国も、常に同様の危険にさらされていることを強く認識すべきである

島国である我が国は、陸地で他国と接する国と比べれば、海外からの感染ルートの解明や水際対策が比較的容易なはずであり、まさに国の役割として、徹底した感染原因解明のための調査を継続することを強く求めたい。

今回の国の疫学調査では、発生農場から「輸入飼料を使用していた」という申告があった場合に当該飼料の調査を行っており、関係者の渡航等についても、基本的に申し出に基づくものにとどまっている。

これだけの被害をもたらした口蹄疫の感染原因、感染経路を究明するのであるから、輸入飼料がどの農場に運ばれたのか、あるいは、人の海外渡航や感染国からの入国についても、入管手続後の動きを全体的に調査する体制を整備するなど、より徹底した対応を行う必要がある。

今回の疫学調査を行う中で、調査の強制力が問題となった。現行の家畜伝染病予防法上での家畜防疫員等の調査権は、伝染性疾病の予防上必要がある場合の立入調査権、及び動物の所有者等に対して報告を求める権利を規定するのみであり、今回のような、終息後の本格的な感染原因等に関する調査においては有効な規定とはなっていない。
このため、国においては、疫学関連調査の重要性に鑑み、立ち入り調査権や強制調査権の明文規定を検討する必要があると考える。

○以降の報告書は次回に掲載します。

■写真 蝋梅(ろうばい)です。名のとおり、蝋燭のような光沢の美しい梅です。

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コメント

宮崎の事件が比較的小さな地域に限定されていたのに、あれだけの殺処分となったのは、農場と家畜の猛烈な密集に根本的な原因があったと思います。

あそこに農場を開いた人々は、石を投げれば届くような距離に隣の施設があるような状況に何の危険も感じなかったのでしょうか。

そして今後又同じような畜産コンビナート風のものが、あそこに再建されるのでしょうか。 問題収拾には多大な税金が使われるのですが、農場開業は自由勝手というのは、どうだかなあと感じるのですが。

7例目の農場での風邪の症状という話がいつも出てきます。牛飼いなら、誰でも分かると思いますが、成牛が風邪引いて餌食べないって状況、見たことありません。子牛(4~5ヶ月齢以下くらい)は、簡単に風邪を引いてしまいますが。
寒さに強いといわれている牛、しかも肥育牛(成牛)が風邪を引くなどとは、とても信じ難い話です。だから、風邪の症状を示していても、風邪などではなく、抗生物質で治るようなものではないことを疑うことができるはずです。このこと、いつも不思議でたまりません。7例目の牛だけ、そんなに風邪を引きやすいんですかねぇ。
うちの牛、成牛となった後、ただの一度も風邪など引いたことはありません!(子牛は、たまに罹り、フロロコール&メタカム注でほぼ治りますが)

7例目の大規模牧場の牛群管理がめちゃくちゃな管理しかしていなかったから、川南地域の感染ハブ農場になった事は事実でしょう!何せ、1万2千頭の牛をたった一人の獣医師で健康管理するなんて無理ですよ!採卵鶏ではなく、体重が400kg以上の肥育牛ですよ!1日あたり、平均45頭の牛に食欲増進剤?を投与して飼育牛750頭の内、のべ350頭の肥育牛に投与するなんて、いくら宣伝費を賭けても大規模農場だとしても、残留薬など、とてもやばくて、安心して食肉として食べれないよ!!まして、A5などいないカス牛ばかりだよ!!

報告書は現在目を通しつつありますが、まだ読み終えていません。今晩にでも読んでしまおうと努力していますが。

利根様が心配されているように川南地区では再建に向け走り出しています。生業である以上、一刻の停止が生活保持が不可能になるという点では理解はできますが、あれほど問題となった埋設地の確保恐らく全く手つかずのままで走り出していることが心配です。
また、被害者協議会と県との確執はかなり深刻に感じます。今後行政の担当者がリスクを回避しようと、当該地区の農家に対してあまり協力的な姿勢(直接接触や会合、行政支援)を示さなくなるのではと懸念しています。県と農家の関係悪化は復興にはマイナスにしかならないと思いますし、今後の韓国からの侵入リスクが高い、長崎や佐賀、福岡(韓国船便の防疫体制はほぼ皆無とみています)と関係が深い宮崎県(仔牛の移動)は再侵入のリスクが高い地域であることを思うと、かなりハイリスクな状況と感じます。

今回の報告書に対しても県内の評価は農家、関係者と一般人では評価が大きく異なります。
協力者である一般人と畜産農家(被害農家)との間でもやや亀裂があるやに感じます。
これだけの大惨事で皆笑顔でとは夢空事ですが、あの当時宮崎県単体での感染封殺ができたのは他でもない農家・一般人・業者・行政・近接県の一体となった総力戦ができたからだと感じています。
亀裂が徹底的になる前になんとかそれぞれの関係修復が図れぬものかと思うのですが。

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