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トリインフル・ワクチンを解禁せよ!

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トリインフルエンザ(AI・Avian influenza)という悪魔がまた広がる気配を見せています。

先日の記事でも書きましたが、シベリア地域といういわばトリインフルの供給元の地域において、今まで言われてきた弱毒タイプから強毒タイプH5N1型に既に変異しているのではないかという暗い予想が立てられています。

ということは・・・、毎年必ずトリインフル強毒タイプを持った渡り鳥は日本や韓国に飛来するということになります。トリインフルの定期便が開通してしまったようなものです。

下図を見てください。わが国は完全に発生国によってぐるりを包囲されてしまっています。わが国自体も発生国です。

トリインフルはアジアこそが発生の本場なのです。しかも伝播するのは国境なき渡り鳥です。これでどうやって防げというのでしょうか!

Photo  H5N1型の流行状況 :家禽か野鳥が死亡 :人と家禽か野鳥が死亡
[Wikipediaより引用]

私たち畜産農家にとって致命的なのことは渡り鳥のみならず、防疫方法が消毒と防鳥ネットしかないという情けなさにあります。

私はもう何度も言ってきていますが、事後に疫学調査をしても真の原因はつかめません。

マスメディアは、やれ、防鳥ネットに穴がひとつ開いていただのと鬼の首を取ったように書き立てますが、そんなものは開いていてあたりまえです。ネットは風ですぐに破れてしまうものなのです。

愛知でネズミ穴があったって?そんなもののひとつもない養鶏場などこの世にありゃしませんって。

疫学調査など、「わからないと行政の責任問題になるからやっている」ようなしろものにすぎません。行政の自己満足に堕していると言ったら言い過ぎでしょうか。

本来このような強力な伝染力を持つ悪性海外伝染病を防ぐには、ただひとつの方法しか有効ではないはずです。

そう、ワクチンです。ワクチンを定期的に初生雛(*生まれたばかりの雛のこと)からおおよそ30日間隔で接種し、最終的に大雛期に不活化ワクチンを接種して終了するワクチネーション・プログラムを実施することです。

ワクチンによって抗体を上げる、これしか防ぐ方法はないはずです。百人の養鶏家に聞いても百人がそう答えるでしょう。ワクチンしかない。ワクチンを解禁せよ、と。

かつてN2型弱毒タイプの大発生があった時にも、養鶏協会は緊急の全国集会を持ち、強くワクチン解禁を求めました。

しかし農水省にニベもなく拒否されました。その理由は、以下です。

「鶏用ワクチンが開発されているが、感染予防には完全ではなく、ニワトリの感染を完全回避はできず、感染しても発症を低減できるのみである。

そのため、鳥インフルエンザウイルスの感染拡大の阻止には無力であると判断されている。また、ワクチンを使用すると、抗体検査による感染鶏区別が不能となり摘発淘汰が困難となる。ワクチンを使用した地域ではウイルス撲滅に失敗している。日本では、使用は禁止されている。」
[Wikipediaより引用]

要するに、一回接種すると、ワクチンによる抗体か、自然感染による抗体か区別がつかなくなる、という例のお定まりの言い分です。

この言い分は確かに2005年の茨城トリインフル事件においては有効な言い訳でした。なぜなら、茨城の場合発生した理由は業者による違法ワクチンの可能性があったからです。

しかし、現在は明らかに状況が違います。感染拡大の原因は、渡り鳥であり自然界由来のものであることは明白です。ならば、ワクチン抗体と混同される可能性はありません。

もうひとつの理由に、ワクチンがいまだ臨床試験の段階で、「プレパンデミックワクチン」にすぎず、実用のワクチンの開発には実際のトリインフルがが発生してから、その株をもとに開発開始するため半年以上かかるから、とも言われています。

要するに、現在流行しているトリインフルの株を見てから作るので間に合わないと言いたいようです。

この理由も変ですね。現場の家保の獣医師さんがなんと指導しているかといえばこうです。

「トリインフルエンザと似た症状を呈するニューカッスル病(ND)は、あるていどトリインフルにも有効です。NDワクチンををしっかり打って下さい」。

で、養鶏農家は藁にもすがるような気分でたぶんダメだろうと思いながらもNDワクチンを打っているわけです。ばかばかしい。ならば初めから、H5N1型の去年発生したタイプの株のワクチンを打てばいいではないですか。

それでもなおかつダメと言う理由があるとすれば、それは接種した地域の疫学調査においてワクチン由来の抗体と自然界由来の抗体の見分けがつかないということくくらいでしょうか。

ところがこれもおかしいのです。トリインフルのNSP(非構造タンパク)フリーワクチン、別名マーカーワクチンを使えばいいだけのことです。マーカーワクチンによって確実に自然由来の抗体と識別が可能です。

そんなものはないって?ないのではありません。開発していないから「ない」だけの話です。口蹄疫とトリインフルは初めから殺処分ありきの一本槍でしたから、製薬会社が商売にならないので作らないだけにすぎません。

解禁しないから、開発が極度に遅れてしまっているのです。ニワトリが先か、卵が先かをやっている時じゃないでしょう、今は!

宮崎口蹄疫事件でNSPフリーワクチンが使用できなった、というか本来の接種後識別可能という特長を生かして使用できなかったのは、清浄国への転落を短期間で終わらせるという関税外障壁がひとつの理由でした。

牛、豚は確かに関税外障壁の部分は大きいと思います。私もそれを否定できません。しかし、養鶏は違います。日本の畜産業数あれど、数少ない国際価格競争力を持つ分野です。

今でも関税はないに等しいところで日本の養鶏業はやっています。ワクチン未接種・清浄国から転落してワクチン接種・清浄国にランク落ちしてもいっかなかまいません。

困るのはワクチン未接種・清浄国というトップランクからころがり落ちて傷つく農水省官僚の自尊心くらいなものです。ああ、バカバカしい!

直ちに農業現場の声に耳を傾けて、農水省はAIワクチン接種を解禁しなさい!
それしか防ぐ方法はないのです!

■写真 見事に斜めに並んだので撮ってみました。

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トリインフルエンザ」カテゴリの記事

コメント

なるほど…
ワクチンとはいっても口蹄疫のケースとはかなり異なる事情ですね。

考えてみれば人インフルエンザワクチンは型を予想して生産して量産し、接種を推奨しているわけですし。(それでも100%の効果ではない)

「抗体値による感染区別ができなくなるから」
というのは空論だったんですか…真に受けてましたわ。

投稿: 山形 | 2011年2月 4日 (金) 08時41分

網の穴もネズミの穴もマスコミが騒ぐのは、それを原因の一つとしないと、記事にならないからであって、殆どの関係者は、そんな事と感染は結びつかない事は分かっていると思います。
実際に鶏でも牛でも飼わないと、分からないと思いますよ。
私は鶏に関しては詳しくありませんから、コメントできませんが、養鶏の専門家(関係者?)の中で深い議論が必要である事は間違いないと思います。
毎年発生する可能性がある限り、何か策を打たないと同じ事の繰り返しになります。
被害者(被害畜)を出さない為にも、研究者や行政を含めて議論・検討を早急に行うべきと思います。

投稿: 北海道 | 2011年2月 4日 (金) 13時15分

以前佐渡トキセンターの例を出したように、ネットのほつれなんて全く持ってマスコミや家畜保健所の「話題」のためのものです。
馬鹿馬鹿しい!(もちろん最大限に努力はされるべきですが)

ウインドレスという隔離養鶏工場ですら侵入するのですから、馬鹿馬鹿しいにもほどがあります。

投稿: 山形 | 2011年2月 4日 (金) 13時26分

愛知でネズミ穴があったって?>>>動物衛生研究所に問い合わせたところ、ねずみは、もともと、鳥インフルエンザの運び屋には、なりえない動物である。との回答を得ました。また、野鳥とウインドレス鶏舎との間の媒介動物、昆虫類について、農水から調べよと命令があれば、すぐ調査には、入れるとのこと。いわゆる農水が、調査指示したり、そういう必要性のある疫学調査報告書が出て。命令が、出ない限り、調査活動は一切できないとの回答でした。では、調査能力はあるのか?の質問には、決定的なメカニズムの解明の保障は出来ないが、命令されれば、かなりの調査技術は、持っているとのこと。つまり、国民が、農水本省に対して、報告書がなっていないと、かなりの圧力を加えない限り、発生したら、殺処分すると言う繰り返しの対処療法しかしない。つまり、知事レベルの対策しか、今後もしないとのことです。
もっと、強く、農水に、今までの、鳥インフルや口蹄疫の被害を、総合的に、数値で認識させ、殺処分で、沈静化を待つ対策以外の方法の開発を強く要請しなければ、何の変化もしないとのこと。。

結局、各畜産養鶏農家が、潰れても、農水の行政には、関係ない。と、言うことです。

投稿: りぼん。 | 2011年2月 4日 (金) 19時46分

>牛、豚は確かに関税外障壁の部分は大きいと思います。私もそれを否定できません。しかし、養鶏は違います。日本の畜産業数あれど、数少ない国際価格競争力を持つ分野です。

豚に関しては分かりませんが、牛に関して、関税外障壁は本当に大きいのですかね?
自分は和牛なのでどーもピンときません。
豪や米を押しのけて、消費者に受け入れられる牛肉生産国ってあるんでしょうか?ブラジル・アルゼンチン・中国?。加工用や外食で更に安い牛肉の需要はあるかもしれませんが、それは、外国間の争いですよね。
この点でも、農水省に煽られているのではないでしょうか?

今回の話題からはそれてしまいましたが、気になるのでコメントしました。

投稿: 南の島の黒毛和牛繁殖農家 | 2011年2月 4日 (金) 20時33分

@kawakamimitsue 河上みつえ
宮崎の火山が噴火し続けている。
牛や鳥を大量に殺処分して、命を粗末にしていることに
宮崎の大地の神様が怒り猛っているように感じる。
18時間前 webから

@kawakamimitsue 京都府宇治市
民主党元衆議院議員『京都の二人目』、河上みつえです。
『国民の生活が第一。』の国家ビジョン実現に全てを懸けます。

心よりお詫び申し上げます。
2011-02-04 21:14:54 | 日記昨夜ツイッターで、宮崎での噴火についてつぶやいた件で、宮崎の畜産農家さんをはじめ、全国のみなさまを深く傷つけてしまい、誠に申し訳ございませんでした。

昨年から現在に至るまで、宮崎をはじめ全国で多くの畜産農家さんが、日々、手塩に掛けて育てられた家畜たちの、自らの身を切るかのごとくの殺処分を強制され、計り知れない精神的・物理的ダメージを強いられ続けているこの状況を、心から憂い、辛く悲しい気持ちで見つめておりました。一向に収まらない状況に、果たして殺処分を繰り返す政府の対応は、蔓延阻止、再発防止に的確であるのかと根本的な疑問を抱きつつ、何もして差し上げられない自らの非力を悔しく、情けなく思っておりました。

子どもの頃、今は亡き祖父母との夕食時に、『食べ物を粗末にしたらばちがあたる。米一粒牛乳一滴でも命がこもっているんやで。食べ物で命を頂き、その命で生かされてるんや、残したらあかん、全部食べや。』といつも食事の時に言われて大きくなりました。

家畜たちは、食されることでその使命を全うします。命を頂くことは本当に有難いことです。だからこそ、食事の前に『頂きます』と頂く命に手を合わせ、感謝するんだと思います。

今回、その使命を全うすることなく突然命を絶たれた家畜たちの無念、家畜たちを育んだ農家のみなさまの無念や怒り、絶望は到底計り知ることができません。

一連の口蹄疫、鳥インフルエンザの蔓延は天災であり、人災でもあります。

止むことなく、家畜伝染病が蔓延する状況を心から憂い、何とか収まってほしい一心で、自然の神様に祈る思いでメッセージを発しました。絶たれた命の鎮魂を一心に祈り、火山の噴火が一刻も早く鎮みますように、くらしに平和が訪れますようにと、自然に対する畏敬の念を抱きつつ、メッセージを発したつもりでした。罹災された農家や関係者のみなさまを非難するような意図は全くございませんでした。

しかし事実として今回、私の不適切で思慮のない表現が、思いがけず非常に多くのみなさまの心を深く傷つけてしまいました。
私の不徳を心から恥じると共に、重ねまして、心より深くお詫び申し上げます。
殺処分された動物達の鎮魂、火山の鎮静を心より祈念申し上げます。

投稿: | 2011年2月 5日 (土) 01時47分

民主党元衆議院議員河上みつえ様。ご投稿の趣旨がわかりかねます。私はあなたの発言を知りませんし、申し訳ありませんが、関心もありません。

私のコメント欄でどのようなことを書き込まれることも原則自由ですが、私のブログとまったく関係のない弁明を書き込むことはご遠慮ねがえますでしょうか。

投稿: 管理人 | 2011年2月 5日 (土) 06時13分

管理人様、いつも拝見させていただいていますが、はじめてコメントします。
参考までに、鳥インフルの鶏用ワクチンについて調べたところ、平成16年の発生をうけて、当時、薬事審議会や、食品安全委員会にかけて、輸入ワクチンの有効性、安全性を検証し、薬事法の承認もとって備蓄しているようです。
その経緯は薬事・食品衛生審議会動物用医薬品等部会の議事録に詳しく載っています。
•動物用医薬品等部会議事録(平成16年9月2日)(PDF:201KB)
「鳥インフルエンザ不活化ワクチンの承認について」
衛生管理課長が当時、未承認のインターベット社製ワクチンを320万羽分(2回接種で160万羽分)を備蓄しているが、今後は薬事法で承認されたものを備蓄したい、備蓄の予算もとっていると発言しています。
さらに、次回の部会では、
•動物用医薬品等部会議事録(平成16年11月10日)
AI(H5N2亜型)不活化ワクチン(NBI)、レイヤーミューンAIV、ノビリスIA inac の3種の輸入ワクチンについて検討され、安全性も高く、十分な感染防御、発症防御ができたとして、承認されています。また、ワクチン接種鶏の鶏卵の安全性についても言及され、食品安全委員会の問題がないとの見解も示されています。

これらの、議事録をみると、農水省は、OIEの摘発淘汰方式の限界とワクチンを有効とする見解や、メキシコ等でのワクチンの使用実績、DIVA方式についても、十分知識をもっていたことがわかります。しかし、衛生管理課長は、できれば使いたくない。いざというときに備えて置いておくだけで、承認はするが、自由に使えるということにしないと頑なな姿勢を崩していません。
現在、鶏用ワクチンがどの程度、備蓄されているのかわかりませんが、管理人様のいわれるとおり、今こそ、緊急ワクチンを使用すべきで、手をこまていていては日本の養鶏は崩壊してしまうと危機感をもっています。
長文失礼いたしました。

投稿: メンドリまま | 2011年2月 5日 (土) 09時03分

メンドリまま様。私こそ大変に勉強になりました。これは記事にさせて下さい。ありがとうございました。

投稿: 管理人 | 2011年2月 5日 (土) 16時57分

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