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2011年2月10日 (木)

養鶏協会の農水大臣陳情書を批評する

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養鶏協会がこんな要望書を農水大臣に出していたことが分かりました。私はケージ養鶏とウインドレス業者の団体である養鶏協会とはなんの関係もないので、今頃知った次第です。( ̄○ ̄;) !いやー~こりゃまた、すいません

このような大規模伝染病の場合、業界団体の陳情は大きな力を持っていることは、宮崎口蹄疫の時の養豚協会の山田前大臣への直接の陳情が、ワクチン接種・全殺処分という思い切った手段に踏み切らせたことでも分かります。

農水省といえど、現実に業界団体の声をまったく無視して防疫活動を展開することは不可能です。現場の農家が非協力的ならば防疫は進まないからです。

さて、要望書はおおむね私の主張とかさなっていたので、これまたいい意味で驚いた次第です。

ワクチンに関しては「本病の発生リスクの高まった地域・農場については、条件付きで本病ワクチンの使用を認める」ことを要望しています。まったく同感です。

ただし、この「発生リスクが高まった地域・農場」という表現に引っ掛かります。「発生リスクが高まった」という基準がどこにあるのか不明瞭な表現だからです。

発生した県、あるいは地域は当然のこととして、野鳥にトリインフルが見つかった県までも含むのか、さらにはわが茨城県のように渡り鳥が多数飛来しており、関東最大の養鶏県であるが、いまだ発生は確認されていない県まで含むのかが分かりません。

もっと明確に、トリインフル・ワクチンを民間に解禁せよ、と陳情すべきです。なぜ、そう言えないのか、奥歯にものの挟まった言い方になるのかが分かりません。

次に、「本病ワクチンの選択権は使用者である養鶏生産者にあり、対象ワクチンは内外無差別とする」としています。

この文言の中の「ワクチン選択権」とはなんでしょうか。まさかワクチンの種類なわけはなし、やるやらないという選択権のことならば、ありえないことです。発生後のワクチン接種は当該の農家に選択権はありません。

発生以前の予防的段階ならば接種の選択権はありえますが、発生した地域でやる農家、やらない農家などという不均等なことはありえないことです。やると決めたら、決められた範囲の農家すべてに接種を行うべきです。

そしてワクチン問題に関しての最大の抜け落ちは、ワクチン接種後に殺処分をかけるかどうなのかという問題になんの意思表示もしていないことです。

このことこそある意味、宮崎県口蹄疫の際にもっとも難しい問題となったことであり、ワクチン接種を提案している以上、その後についても「殺処分させない」ことを明確に主張すべきでした。

次に、ワクチン以外では移動制限区域を3㌔にしろと言っています。これはEUの移動制限基準に範をとったもののようで、私も妥当な線だと思います。

この2カ月後の1月22日に、農水省の疾病小委員会が移動制限の縮小を答申しており、それに基づいて各県で早期の実施がされたことはこの間のブログでも書いてきました。

今後農水省は、いったんは10㌔の網をかけたのちに、発生動向調査(サーベイランス)をたぶん2回行った後に陰性が確認されれば、5㌔圏まで縮小するといういう方針のようです。

これが養鶏協会の陳情に対する妥協なのか、そもそもの規定方針なのかは不明です。

また、「発生農場及び移動制限・搬出制限に伴なう経済的損失についての補償の充実」を陳情しています。まぁ妥当ですが、これもワクチン・全殺処分とのからみで考えないと、規模が桁違いになります。

どうもこのあたりを読むと、養鶏協会は宮崎口蹄疫事件をちゃんと学習していないようないやな予感がします。

まったくそのとおりなことも養鶏協会は陳情しています。農水省の疾病小委員会の委員構成に文句を言っているのです。

「家畜衛生部会及び家きん疾病小委員会の委員構成の変更」として、「①現場実務に明るい研究者・技術者の委員を大幅に増加(1/2以上)させる。」、「②委員又は臨時委員として本病についての海外の国際的学者を追加する」という提案には、私も諸手を上げて賛成です。

今の疾病小委は動物衛生研究所の派閥によって占められており、民間の畜産家や団体がひとりもいない構成となっています。このために、現場から見ればなにをトンチンカンな議論をしていやがる、と思ったことも数あります。

口蹄疫ワクチンの時にも思いましたが、国際的にどのような防疫が行われているのかがまったく審議の俎上に乗りません。EUやFAOがどのような口蹄疫緊急対策をしているのかまったく聞く耳を持っていないのが今の疾病小委の現状です。

海外の進んだ動向に目をとざす今のあり方を変えるために、民間と海外の委員を入れることはたいへんに有効な手段です。

後もう一点。農水省の防疫主体を動物衛生課から生産局に移せというのもなかなか興味のある話です。動物衛生課は畜産業の現場とかけ離れた方針を平然と出してくると、養鶏協会に思われているようです。

それと最後にやはりこれも言っておきますか。「感染リスクのより高い放し飼い・平飼い飼育鶏の定期的監視」とはなんのこってす。この間でているのは全部ケージ養鶏とウインドレスじゃないですか。ブロイラーは通常、平飼養鶏とはいいませんよ。 こういうセクト的なことを書くから私は養鶏協会に入らないのです。こんな修羅場でケージ養鶏のセクトを張らないでいただきたいもんです。

         ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

要 望 書

平成22年12月1日

一般社団法人 日本鶏卵生産者協会
会  長   梅 原 宏 保

社団法人 日本養鶏協会
会  長   栗 木 鋭 三

       高病原性鳥インフルエンザ対策実施についての要請

 我が国養鶏産業の振興につきましては、日頃より格別のご支援、ご指導を賜り厚くお礼申し上げます。
 さて、この度既に農林水産省による発表の通り、島根県下において高病原性鳥インフルエンザ(H5亜型)の発生が報告されました。しかしながら、既に9県においての発生となりました。従って、このような状況から分る通り、本病対策としての防疫指針は全く機能しないことが明らかであります。
  本格的な本病発生のリスクの高いシーズンを迎えており、養鶏業界にとりましては不安に脅える毎日となりました。
  つきましては、早急に国としても国際標準に適合した本病対策に改定し養鶏生産者が安心して経営を継続できるよう、特に、下記の事項につき要請致します。

  • リアルタイムPCR手法の完全実施による24時間以内の移動制限の解除及び条件付きワクチンの導入

    (1)防疫指針の内容を改定し、本病の確定診断機関としているつくば市の(独)動物衛生研究所(動衛研)に加えて各県の中央家畜保健衛生所を追加する。

    (2)本病確定診断をウイルス分離のみとする現行手法に加えてリアルタイムPCR法を追加し、24時間以内の移動制限解除とする。

    (3)野外ウイルス感染との鑑別手法としてのDIVA(EUで実施中)を導入する。

    (4)本病ワクチンの条件付き使用

    ①本病の発生リスクの高まった地域・農場については、条件付きで本病ワクチンの使用を認める。

    ②本病ワクチンの選択権は使用者である養鶏生産者にあり、対象ワクチンは内外無差別とする。

    ③なお、既に承認の国産ワクチンについては輸入ワクチンと同一の基準・手法により再評価すること。

  • 発生時の対応について

    (1)本病発生に伴なう移動制限をEU並みの半径3㎞とする。(本病ウイルス及び鶏は日本及び欧米では実質的に同じものである。)

    (2)高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の定義をOIE基準に合致させる。(高病原性に強毒型・弱毒型の区別はない。)

    (3)発生農場及び移動制限・搬出制限に伴なう経済的損失についての補償の充実
    本年、宮崎県下で発生した口蹄疫と同様に海外悪性伝染病である高病原性鳥インフルエンザについても同様に損害補償を10/10とすること。

  • 本病対策に係る審議・検討内容の透明性確保

    (1)家畜衛生部会及び家きん疾病小委員会の委員構成の変更

    ①現場実務に明るい研究者・技術者の委員を大幅に増加(1/2以上)させる。

    ②委員又は臨時委員として本病についての海外の国際的学者を追加する。

    (2)同部会および同小委員会に係る資料及び審議内容は全て公開・公表する。

  • 本病予防体制の充実

    - 本病モニタリング・サーベイランス体制の充実 -

    ①野外又は屋外飼育の水禽類を中心としたサーベイランスを徹底し、野外インフルエンザウイルスの動向についての情報の収集・分析。
    →ウイルス分離された事例については高病原性・低病原性の識別・リスク評価を実施し、必要に応じて警報を発する。

    ②感染リスクのより高い放し飼い・平飼い飼育鶏の定期的監視

    ③高病原性鳥インフルエンザ(強毒型)発生事例の早期発見体制と当該情報の養鶏生産者への迅速な通報・連絡体制の確立

  • 家畜衛生組織の見直し

    消費・安全局動物衛生課の全機能を生産局に移管させること。
    現在の動物衛生課は規制中心とする業務運営のため畜産の振興・安定の視点は実質的に皆無に近い状態にある。



■写真 霞ヶ浦の内水面試験場の試験水面です。桟橋と資材置き場が見えます。

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コメント

確かに「なるほど」なことと、「???」なことが混在してますね。
より感染リスクの高い平飼い養鶏…変な差別してますね。ウインドレスで発生してるのに「何を言ってるんだ」と。


山口の公園のコクチョウでも発生してしまいました。公園などは感染リスクが養鶏より遥かに高いと思います。

言葉不足でしたので、補足させて下さい。

疾病小委員会メンバーの現場を知る人間への大量入れ替えといった、ダイナミックな改革案は大いに賛成します。またそこで派閥争いなんてなるなら御免ですが、方向性は良いと思います。

指揮系統の抜本的改革にも共感しです。


えー、スレチですいませんが、新燃岳火山灰被害地域の皆様、とりあえず避難勧告が出たら兎に角逃げて下さい!
自分の避難所を知らない人がかなり多いと、さっきテレビでやってましたが、今一度防災マップを確認して下さい!
何よりも皆様の命が大切ですから。

今年も開幕試合で募金やる予定です。

現状、ワクチン接種鶏やその鶏の卵の流通は、厚生労働省側が、認めていないので、難しいと想像します。
基本殺処分ありきでしょう。

ワクチンの効能について、一般消費者にも、理解できる説明がなされないと、鶏肉の流通が、止まってしまうのでは?

現段階では、農水省は、もしワクチンを接種したなら、殺処分する前提で、接種すると思われます。

まあ、今の農水行政を守るための委員会組織では、変わり映えしない手しか、打たないのでしょうけど。

現在の厚労省の考えでは、りぼんさんの仰る通りワクチン接種後の流通は認めないでしょう。
先般コメしたように、牛乳・乳製品でも検体採取時まで遡って製品回収を命じます。
(人畜共通疾病ならともかく、人体に影響の無い疾病だったとしてもです)
Aと言う疾病は人体に影響あるからダメ、Bと言う疾病は影響が無いからOK!と区分するのは、風評被害などを考慮して、全てダメ!!とした方が分かり易い(消費者に理解され易い)との判断ではないでしょうか?
消費者側対策が基本の厚労省に、生産者側の理論を理解させるのは、かなり困難な事だし、不可能に近いと思います。

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